Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
人気の無い街並みに爆音が響く。
時折、崩れ落ちる建物がその威力を物語る。
ラナ「アイス・ジャベリンッ!」
エリナ「ファイア・ジャベリンッ!」
氷と炎の槍が、互いにぶつかり消滅する。
ラナ「―――ッ!」
爆発の煙が不自然に動いたことに気づき
咄嗟に横の建物の影に隠れる。
すると、先ほどまで居た場所が
見えない何かで抉られる。
ラナ「不可視の刃・・・」
風の魔法特有の不可視の刃が飛んできていたのだ。
それに気づき回避出来たことに安堵した瞬間だった。
自身の足元から膨れ上がる魔力の波と展開される魔法陣。
大戦争を生き抜いた彼女は、直感的にそれが危険だと判断して
更に横へと大きく跳躍する。
魔法陣から真上に大きな炎柱が出現する。
その炎柱は、周囲に大きな火球を振り撒きながら消えていく。
だがその周囲に撒かれた火球は、周囲を焼き尽くすように
広範囲を攻撃する。
ラナ「アイス・シールドッ!」
大量の火球がランダムで降り注ぐ状況。
さすがに回避出来ず、氷盾で避けきれない一撃を防御する。
氷盾は強度があるのか、受け止めてもビクともしない。
しかし、1つの火球を受け止めた瞬間だった。
突如周囲から巨大な土壁が出現し、ラナを覆う。
更に、大量の氷槍がそのラナを覆っている土壁を貫く。
何本もの氷槍が貫いた後、はるか遠くから聞こえた
「ブレイク」という声と共に爆発した。
爆発した場所に駆けつけたエリナだが
煙が晴れた場所には、血の跡だけが残されていた。
エリナ「・・・また探すところからかぁ」
ため息をつくと、スグに瓦礫と化した場所から移動し
建物の影に姿を隠す。
同じく、エリナと別方向に逃げて隠れるラナは
回復魔法を自身に使いながら周囲をうかがう。
ラナ「・・・さすがは、我らが待ち望んでいた王女様ってところかしら」
自嘲気味にそう呟く。
先ほど、エリナは風の刃をこちらがどう避けるか
解っていて誘導したのだ。
だから、建物の影に隠れたにも関わらず
正確にこちらの足元から炎柱を出せたのだろう。
それだけなら、まだいい。
恐ろしいのは、その後の火球からだ。
火球を1つ防いだ瞬間からの攻撃。
恐らく火球1つ1つに魔力的な『糸』をつけていたのだろう。
建物や地面とは違う反応をした火球の場所にこちらが居る前提で
『見えていない』にも関わらず、遠距離から
あれだけ正確な魔法による連撃を行ってきたのだ。
そもそも神族は魔族と違い、限られた魔力をどう使うかという
考え方が一般的であり制御技術を中心に訓練を行う。
一方、魔族は神族よりも魔力量が平均的に総じて高いため
1つの魔法に効率良く魔力を収束させて、最小限で最大限の攻撃を
行う神族とは違い、急速に魔力を集め
膨大な魔力をばら撒くという感じになっている。
そのため、両者では同じ魔法でも決定的に違う部分がいくつも存在する。
その1つが『魔法の習得数』だ。
魔族は、ばら撒くように魔法を使うために
様々な攻撃系を中心とした魔法を習得する。
神族は、魔法の制御や効率化の問題で
1つの魔法を極めようとする傾向が強く
必然的に習得魔法が少ない。
そのため選択範囲が狭く、決め手に欠けることも多い。
属性も天才と呼ばれる部類でなければ
1属性しか習得出来ないというのも
選択の幅を狭めていると言える。
魔族は、その圧倒的な魔力量で
遠距離から魔法での殲滅が中心。
身体能力も比較的高いために
接近・遠距離どちらも可能な万能型が多い。
普通なら、今戦っている神族王女も
神族ならではの選択の狭さに苦労しているはずだ。
だが、彼女は違う。
エレメンタルマスターの二つ名が示すように
彼女に属性による縛りはない。
神族らしい魔法の正確な制御技術も然ることながら
魔族を想わせる魔力量と魔法の種類。
神界でも数えるほどしか居ない六翼による魔力量と
魔族を越えるとも言われる圧倒的な魔法習得率。
攻撃方法も、神族と魔族を合わせたような
繊細さと大胆さを兼ね備えた変幻自在と言えるほど
先の読めない攻撃展開。
正直、これほどやるとは思っていなかった。
―――しかし
ラナは、瞳を閉じて思い出す。
大戦争で家族を亡くし、身寄りの無かった自分を引き取って
育ててくれた、普段は無口で無愛想な男の顔を。
ラナ「・・・唯一、私が勝っているのは
大戦争を駆け抜けたという実戦経験のみ」
ラナは、ゆっくり眼を開ける。
ラナ「神界第二王女 エリナ=アスペリア。
ここで、必ず仕留めてみせる」
その決意と共に、作戦を練りだす。
―――最悪、負けてもいい。
自分の役割は、作戦完了までの陽動だ。
あの人がやりたいと願う悲願の第一歩。
その礎となれるなら、自身の命なんて
計算に入れる必要などないのだから。
最終章 想いの強さ
エリナも、周囲に魔力の網を張り巡らせながら
魔力を限界まで溜め込んでいた。
エリナ「・・・次は、逃がさない」
先ほどの一撃で倒せなかったことが彼女にとっては
かなりの痛手であった。
初めから積極的に戦う気が無い素振り。
だが背を向ければ、逃がすまいと攻撃してくる姿勢。
・・・どう考えても囮である。
先に行ったセリナのことも気がかりだ。
出来れば早々に決着をつけたい。
?「相手と実力が拮抗し、状態が停滞したときこそ
有利であると同時に不利なのです。
相手に考える時間を与えてしまえば、それだけ
有効な策を練る時間を与えてしまう。
逆に、考える時間を確保出来れば
こちらも相手に対して策を練る時間を得たことになる。
つまり、どれだけ早く対策を練り攻撃をするか。
相手に対策を立てさせないかが重要なのです」
ふと、今は神界に居るであろう
とある騎士の言葉を思い出す。
そう、こちらもある程度の対策を練ってはいるのだが
それは相手も同じだろう。
神族である以上、相手にそこまで変化に富んだ戦いが出来るとは
思っていないが、相手は本当の殺し合いを生き抜いてきた精鋭。
ほんの少しでも油断すれば、こちらの命が危ない。
出来れば対策を立てられる前に倒したかった。
・・・だが、既にこうなってしまったことを
どうこう言っても始まらないだろう。
いくつか追い詰め方は、考えた。
あとは、予定通りに相手を誘導するだけ。
いざ、動こうとした瞬間。
周囲に展開していた魔力の網に、反応が出る。
相手に気づかれないように、極僅かな魔力による索敵。
相手は気づいていないはず。
・・・なのに、相手はまるでこちらの動きを知っているかのように
大胆に警戒もせず歩いている。
エリナ「・・・遅かった、かなぁ」
それは、既に相手が対策を立て実行したという合図。
見過ごせない以上、こちらは仕掛ける側。
・・・つまり、罠にかかりにいくことに他ならない。
エリナ「さあ・・・いくよ、エリナ。
きっと大丈夫。
いつも通りにやれば、絶対大丈夫」
自身を励まし、儀式兵装の杖を握り直す。
そして、スグそこまで迫った相手に速攻で仕掛ける。
エリナ「アイス・ジャベリンッ!」
死角からの魔法。
完全に捉えた一撃。
氷槍は、吸い込まれるようにそこに居た人影に当たる。
・・・だが。
軽い水の音と共に、その人影は崩れ去る。
エリナ「・・・幻影魔法ッ!」
これを仕掛けてきたということは、相手は・・・。
咄嗟に後ろを向くエリナ。
すると、儀式兵装である槍を構えて
こちらに突っ込んでくるラナの姿。
エリナは、状況を的確に判断する。
槍の刃に薄い水色。
強化魔法を使用済みだと判断。
距離は近すぎて攻撃魔法も
防御魔法すら間に合わない。
回避は、無理。
下手な回避は、命取りになりかねない。
なら、解は―――
エリナ「ファイア・ソードッ!」
儀式兵装の杖の先から、炎の刀身が出現する。
炎の剣で槍の一撃を逸らしながら受け止める。
一瞬で奇襲を受け止める判断をしたエリナに
ラナは驚くも、そのまま連続の突きを繰り出す。
相手は、あくまで魔導士。
このまま接近戦で押し込めば勝てると槍を振るう
ラナだったが、槍を繰り出すたびに
表情が曇っていく。
神族は、魔法習得の少なさが決め手に欠けるため
最終的に接近戦で勝負を決めることが多い。
そのため、強化魔法などを使用した状態での
接近戦は、日頃から訓練している。
当然、魔導士に後れを取るようなことはない。
しかし今、自分の攻撃は全て防がれている。
槍と剣という相性差をも覆し、時折狙い済ましたかのような
エリナからの一撃があったりもする。
正直、予想外だった。
大戦争でも、ここまで接近戦が出来る魔導士なんて
見た事がない。
嫌な気配がして、ラナは後ろに下がって距離を取ろうとする。
その瞬間をエリナは、見逃さなかった。
相手が後ろに下がる瞬間、炎の剣を横に薙ぐ。
当然、下がるラナには当たらない。
だが・・・。
ラナ「―――ッ!?」
刀身が切り離され、まるで炎槍のように飛んできたではないか。
その一撃を避けきれず、ラナの胸に炎剣は突き刺さる。
決まったかに見えた一撃だった。
しかし炎剣が刺さったラナは、水となり消える。
エリナ「ウソッ!!
幻影魔法だったのッ!?」
幻影魔法とは、その名の通り幻影を見せる魔法だ。
幻影は、動くことはもちろん、質量を持って戦うなんて
本来はありえないのだ。
今まで戦っていたラナが、途中で幻影に入れ替わる場面なんて無かった。
そもそも幻影が動く訳が無い。
しかし、目の前の相手は水となり消えた。
それが何を意味するかに気づいた時
ラナの槍がエリナの左腕を捉えていた。
エリナ「―――ッ」
痛みに耐えながら右腕をラナに突き出して叫ぶ。
エリナ「光の雫よっ!!」
周囲を強い光が覆う。
その光が消えた時、その場には誰も居なかった。
物陰に隠れたエリナは、左腕に回復魔法をかける。
咄嗟に回避行動を取ったため、相手の攻撃が腕に当たるだけで
済んだが、もう少し遅ければ串刺しにされていただろう。
何かあると考え、周囲に微弱な魔力索敵網を
張っていたため、後ろからの奇襲に何とか反応し
致命傷を避けることが出来た。
しかし現在、完全に相手のペースになってしまっている。
あの動く幻影魔法は、やっかいだ。
もうこれは、周囲がどうとか関係なく
文字通り全力で戦わなければならないと
エリナは考える。
そんなエリナの近くをラナの幻影魔法が歩いていた。
ラナ「まだ、近くに居るはず・・・」
ラナにも余裕は、なかった。
先ほどの一撃は、まさに一撃必殺のはずだった。
アレで仕留められなかったのが痛い。
これで対策でも立てられたら実にやっかいなことになる。
そう考えている時だった。
ガラガラと小さく瓦礫が崩れる音がスグ横から聞こえてくる。
ラナ「・・・っ!!」
その音のした場所へ、跳躍して向かう。
すると瓦礫の影から這い出してきたばかりの
エリナの無防備な背中が見えた。
思わずラナの口元に笑みが浮かぶ。
自分が今、跳躍している。
このままこの無防備な背中に落下しながら
槍を突き刺せば終わりだ・・・と。
槍がエリナの背中に迫った瞬間・・・。
氷の盾が目の前に広がり、槍を受け止める。
だが―――
ラナ「そんなこと、解っていたわッ!!」
エリナの横から『もう一人のラナ』が現れ、エリナに向けて
槍を突き出す。
完全な奇襲に避けることは出来ないはずだった。
しかしエリナの前で、またしても槍が止まる。
それは不可視の風盾。
奇襲を止められたラナだったが、その口元には笑み。
そう、ここまでは予想した通りなのだ。
本命の一撃は、もう一人のラナとは反対側の瓦礫の影から出てきた
『更にもう一人のラナ』だった。
ラナ「―――さようなら」
その言葉と共に、槍をエリナに向かって真っ直ぐ突く。
そして槍は、エリナを捉え胸を貫いた。
これで終わり。
ラナは、そう思っていた。
しかし―――
胸を貫かれたはずのエリナは、水の音と共に消え去る。
ラナ「幻影魔法ッ!?」
まさか自分と同じ手で来るとは思っていなかった。
その油断が、致命的なミスとなる。
咄嗟に周囲を伺うも、奇襲が来る様子はない。
こちらの不意をつけたであろうタイミングで
仕掛けてこなかったことに疑問が湧く。
その瞬間だった。
圧倒的な魔力量を感じ、全身に恐怖が走る。
嫌な気配を感じて上を見上げると
上空には、空を覆うように広がる魔法陣。
それは、街の一区画を全て覆っていた。
エリナ「もう、躊躇わない。
遠慮も、配慮も、後のことも気にしない。
ただ、全力で戦うのみ」
どこからともなく聞こえてくるエリナの声。
エリナ「そこに居るのが幻影だって構わない。
どうせ確実に近くには居るのだから、このあたり一帯を
まとめて、全部消し去れば問題無い」
まるで独り言のような呟き。
そして魔法陣から出現し、下へと落下し始める大量の火球。
それは雨のように降り注ぎ、地面に当たると爆発しながら周囲を炎で焼き尽くす。
エリナ「これは、私のオリジナル魔法。
人に見せるのは、これが初めて。
全てを焼き尽くす炎の雨。
―――名は『ナパーム・レイン』」
その戦いは、一方的だった。
逃げ場の無い炎の雨に
ラナの幻影達は、一瞬で消滅し
近くに隠れていたラナ本人も、防御魔法や瓦礫を利用して
凌ごうとするも圧倒的な熱量によって
全てが破壊され、溶けていく中を無事で逃げきれる訳がない。
文字通り、街の一区画は丸ごと焼き尽くされた。
圧倒的な爆発の連鎖は、魔法陣の消滅と共に
やがて終わりをむかえる。
周囲の街並みは、瓦礫のかけら1つすら残さずに破壊され
地面からは、未だに蒸気が立ち昇っている。
ラナ「・・・あぁ・・・くっ」
何とか、防御魔法を最後まで展開し続けたものの
殆ど気休め程度にしかならず、防ぐことが出来なかった。
全身に相当なダメージを負いながらも
無理やり立ち上がろうとするラナ。
しかしその想いとは違い、身体は言うことを聞かない。
エリナ「・・・これで勝負アリ、でいいかしら?」
気づけば、ラナの目の前には
六翼を広げたエリナの姿。
ラナ「・・・いえ、まだです」
身体が動かないため、顔すらこちらに向けない状態で
ラナは、そう言葉を発する。
エリナ「・・・もう動けないのに、どうして」
そう言いながらラナに近づくエリナ。
そしてラナの目の前まで来た瞬間。
ラナ「・・・あの人のために散れるのなら、私はそれでいい」
いつの間にかラナの手に握られていた魔法石。
ようやくラナの意図に気づいてハッとするエリナ。
その瞬間―――
魔法石が輝き、周囲を巻き込んだ大爆発が起こる。
事前に展開していたウインドシールドが爆発を防いだため
無傷で済んだものの、まさか自爆してくるとは思わなかった。
エリナ「どうして・・・」
その疑問に答える者は、もうここには居なかった。
一方、学園の正門前は静かだった。
ワング「あちらもあちらで、盛り上がっているようですねぇ」
『ナパーム・レイン』が街の一部を焼き払っている光景を眺めながら
ワングが、感想を述べる。
ヴァイス「・・・ぐっ・・・がっ」
喉元を掴まれ片腕で持ち上げられた状態のヴァイスが、苦しそうな声をあげる。
ワング「まあ、キミは頑張った方ですよ。
その辺に転がっている連中よりは・・・ですがね」
周囲には、倒れた生徒達。
まさに一方的だった。
魔法をいくら放っても、ワングの周囲に展開されているであろう
謎の見えない壁で霧散してしまう。
強力な魔法なら多少は霧散までに時間があるとはいえ
ワングに届く前に、やはり消えてしまう。
よって数による魔法攻撃が、事実上無効化されていた。
なら、接近戦ならどうだったのか?
それを行うだけの度胸を、まだ学園生徒達は持ち合わせていなかった。
今の世界において『魔法』というものが占める割合は高い。
攻撃・防御・補助
全てにおいて魔法を使用している。
その魔法が効かない相手。
化け物とも呼べる相手に出会い、実戦経験の少ない彼らは
パニックを起こし、冷静な判断力が無くなり
組織的な行動はもちろん、戦いを放棄して逃げ出す者まで居た。
そんな状態で、ワングを止めることなど出来る訳が無い。
学園生徒の経験の無さが露呈した結果とも言える。
ワング「まあ死に逝くアナタに言っても意味は無いのでしょうが
一応、言って差し上げましょうか。
アナタの魔力は確かに強力です。
さすがは魔王の血族と言えるでしょう。
しかし・・・それだけなのですよ、アナタは」
ヴァイス「な・・・なに、が・・・いい、たい」
ワング「せっかくの魔力をロクに練り込めもせず、制御も適当。
ただ膨大の魔力を放射しているのみ。
要するに効率が悪すぎるのですよ。
1を強化するのに10の魔力を使用しているような感じでしょうか。
消費魔力と結果の効果が噛み合っておらず、非常に無駄な部分が多すぎます。
まあ、魔族らしいと言ってしまえば・・・その通りなのですがね」
その言葉にヴァイスは苦しいのか、何も答えない。
ワング「せっかくの才能とも呼べる力に頼りきった単調な力押し。
それでは宝の持ち腐れ以下です。
己の力量を知り、考え、行動し、努力する。
そんな初歩的なことも出来ないキミでは
私どころか・・・そうですね、人族にも劣ると言えましょう」
苦しげに喘ぐだけだったヴァイスの瞳に意思が戻り
自分を掴む腕を両手で掴む。
ダメージによって力が入らず、形だけになってしまっているが
それでもヴァイスが、懸命にもがく。
ヴァイス「人族、以下・・・だと・・・。
・・・ば、かに・・・するな・・・!」
ワング「ほう・・・まだこれだけの元気が残っていましたか。
それとも自身のプライドが傷いた結果でしょうか。
どちらにしても若者は、やはりこうでなくては」
何気なく、ヴァイスを掴んでいた手を離す。
その瞬間、ヴァイスの腹部をワングの強烈な蹴りが襲う。
ヴァイスは、声にならない声を上げながら
はるか後方にある学園の教室の窓を破りながら中へと吹き飛ばされる。
ワング「まあ最後に、人生の先達たる私から一言。
余計なプライドは、自身を破滅させるだけで
何の役にも立ちはしませんよ」
?「確かにそうだな」
突然聞こえてきた声に、ワングは驚きの表情を浮かべる。
?「余計なことばかりしているから
お前はこうして私と出会ってしまった。
まさに自身の破滅だな」
正面から堂々と現れたのは
フォースの学園長にして魔界を統べる者。
『赤き暴風』をはじめとして
数々の二つ名で呼ばれ、大戦争を駆け抜けた生きる伝説。
その名は、マリア=ゴア。
魔王妃となってからも、その力は衰えることなく
数々の伝説を今もなお生み出し続ける偉大な女性。
ワング「・・・わざわざそちらから出てきてくれるとは」
マリア「こちらにとっても好都合だ。
余計な被害をこれ以上出されることもなくなる」
何気なく儀式兵装の大鎌を手に出すマリアに
ワングは、一層の警戒をする。
大戦争中、彼女1人に一体どれだけの数の部隊が
・・・同胞達が散っていったことか。
マリア「さて、ではさっさと終わらせてしまおうか」
そう言うとマリアの周囲に火球が3つ出来る。
それぞれが別々の動きをしながら、ワングに向かって飛ぶ。
しかし、ワングの手前で何かに邪魔をされるように
3つの火球は霧散して消滅する。
マリア「・・・ほぅ」
ワング「・・・ふっふっふ。
この私に魔法が―――」
ワングが自身満々に言葉を並べている時だった。
何かを破るような強引な音と共に、ワングの地面に突き刺さる炎槍。
それを見たワングは、言葉を失う。
マリア「これぐらい収束させれば貫通可能、か。
・・・めんどうだなぁ」
まるで何事も無く次の炎槍を生成するマリアに
ワングは、驚きの表情を向ける。
マリア「ん?・・・ああ。
何も不思議なことじゃないだろう。
私は、オリビアや神王と何度も戦ってきたんだ。
あいつらの防御の堅さは、お前らが一番良く知ってるだろ?」
確かに、オリビアは神界で一番と評されるほど防御が上手い。
神王も、どちらかと言えば防御やカウンターを狙うことが得意だった。
確かにそんな強力な防御を抜くために必要な技術だったとはいえ
そんなに簡単にこちらの防御が抜かれるなんて・・・。
ワングにとって、この霧散能力は自分の自信の源でもあったがゆえに
その精神的なダメージは計り知れない。
マリア「そら、ぼ~っとするな」
いつの間にか5つの炎槍を生成していたマリアが
連続で炎槍を撃ってくる。
ワング「ア、アイスシールドッ!!」
霧散の力だけでは無理なため、氷盾を張って防御する。
しかし、その氷盾すらも貫通して炎槍が飛んでくる。
そして避けきれない1つの炎槍がワングの足を貫く。
ワング「・・・ぐっ」
防御していたのでは、自分は負けるだけだろう。
・・・だったら。
ワング「アイス・ジャベリンッ!!」
氷盾にギリギリまで隠れながらの
カウンターを狙った氷槍を3本放つ。
しかし、それらはマリアのはるか前方で小さな爆発と共に
消え去ってしまう。
ワング「・・・何だ、今のは」
マリア「軽い魔法で相殺しただけじゃないか
いちいち驚くほどのことかねぇ。」
何を言ってるんだ、こいつは?
そんな目でワングを見るマリア。
ワング「くそっ!
もう一度だっ!!」
必死に氷槍を何本もマリアに向けて放ち続けるも
全て、はるか手前で爆発消滅させられる。
ワング「何て・・・制御技術、だ・・・」
氷槍すべての進行方向を先読みし
その場所に小さな火球を置いてぶつけることで
魔力干渉し、相殺しているのだ。
簡単そうに見えて、しっかりと
どの場所に火球を出現させるのかという
空間把握や、魔力制御は神族だって簡単に出来るものじゃない。
しかも、もし外してしまえば無防備な自分へ
魔法が直撃してしまうことにもなる。
そんな豪胆さも、信じられない領域だ。
ワング「・・・」
少しづつ後ろに下がるワング。
そして、そんなワングの後ろからゴーレムの集団が現れる。
マリア「・・・はぁ。
もう逃げの一手なのか」
不満げにため息をつくと、儀式兵装を片付けて
さっさと後ろを向いて歩き出すマリア。
マリア「ここまで逃げ腰では、面白くも何ともない。
興味が無くなった。
・・・あとは、お前の好きにしろ」
そう言いながら片手を上げて
ひらひらとさせながら学園の奥へと歩いていく
マリアの姿に、ワングは戸惑いの表情を浮かべる。
確かにこのままでは負けるだけだと、逃げることを選択し
足止めのゴーレムを呼んだのは自分だ。
逃がしてくれるというのならありがたい話ではあるが
その理由が解らない。
彼女は確かに言った。
『あとは、お前の好きにしろ』と。
ワング「―――ッ!」
その言葉の意味に気づいた時。
彼は、大きな突撃槍に貫かれていた。
それは、まさに吹き抜ける一陣の風。
後ろからワングに合流するために歩いていたゴーレムの一団は
その風によって大きく空へと跳ね飛ばされながら消滅していく。
高々と串刺しのまま持ち上げられるワング。
その突撃槍を持つ相手の顔を見て、驚く。
ワング「『魔族狩り(デモンハント)』だと・・・!!」
セオラ「生徒達の仇は、取らせて貰いますわよ」
突撃槍の儀式兵装を手にしていたのは
大戦争『魔族狩り』の二つ名で、特に魔族に恐れられていた竜族。
今は学園にて教師を務める竜界No3の実力者 セオラ=ムルムだった。
何人もの生徒達を失った今の彼女に
手加減などという言葉は存在しない。
胸を貫かれ、ロクに動けないワングを
槍を大きく振るって真上に投げるように放す。
真上に投げ出されたワングを見ることもなく
ただ左手を上に掲げたセオラは、呟く。
セオラ「―――竜の息吹(ドラゴンブレス)」
空に向かって放たれた竜の息吹。
息吹に包まれ、ワングはそのまま光の中へと消えていった。
息吹の光が、まるで天へと昇る柱のように周囲を照らしている。
そんな光すら、届かぬ街の片隅では
2つの影がぶつかり合う。
そこは、街中で戦いが起きていることが嘘のように
静寂に包まれていた。
その静寂を時折、剣戟の音が破る。
セリナ「たぁっ!!」
ジャック「はっ!!」
2人の儀式兵装が、勢い良くぶつかる。
そのままお互いに剣を振るうも
剣同士がぶつかるだけで相手に届かない。
何度目かの攻撃の瞬間、セリナの儀式兵装が
いつの間にか剣から槍に変化していた。
普通なら驚くところだが
ジャックは、あくまで冷静に距離を詰めようと動く。
槍のリーチを生かし、接近をさせまいと連続突きを繰り出すセリナに
さすがに回避しきれず剣で受け止めるジャック。
それでも強引に距離を詰め、槍の一撃を回避し
剣の間合いに入った瞬間、一気に剣を横へと薙ぐ。
横薙ぎを、後ろに回転しながら跳躍して回避するセリナ。
回転しているセリナが逆さの状態で、ジャックの方へ向いた瞬間
いつの間にか弓になっていた儀式兵装から放たれる魔力矢。
体勢を崩しながらも、身体を捻って回避するジャック。
着地したセリナは、そのまま距離を取るように小刻みな跳躍をしながら
弓矢による魔力矢を乱射してくる。
ジャック「ウォーターシールドッ!」
本来の盾系の魔法と違い、どちらかと言えば
セリナ側に近い場所に出現した水盾。
展開された水盾は、魔力矢を完全には防がず
魔力矢の速度と威力を減少させるだけで、矢自体は貫通している。
あまり意味がないように思える水盾。
だが、速度の落ちた矢の間を綺麗にすり抜けて
前に出ようとするジャックを見れば
それが無駄ではないことは、一目瞭然だ。
セリナ「アイス・アローッ!!」
接近されたくないセリナは、氷矢を放つ。
氷矢が水盾に当たった瞬間、水盾は一瞬にして凍る。
その凍ってしまった水盾を魔力矢が軽々と貫いていく。
ジャックは瞬時に、横の建物横の路地に隠れる。
隠れた建物の少し上に向かって魔力矢を1発だけ放つセリナ。
すると上にあった大きな看板に当たり
落下した看板は、そのまま路地の入り口を塞ぐ。
それを確認したセリナは、儀式兵装を剣に変化させると
距離を取るために移動する。
手数と変幻自在の攻撃で、押し込んでいるようにも見えるセリナだが
実は、追い込まれているのは、どちらかと言えば彼女の方だった。
ジャックの戦いは、まさに戦場を生き抜いてきた歴戦の兵そのもの。
何か突出したものがある訳ではないにも関わらず
どうしても押し負けてしまうのだ。
だから、どうしても距離を取りたいセリナだが
ジャックは、それを許すまいと接近戦を挑んでくる。
結局は、セリナが逃げ回りながら戦っているのが現状だ。
セリナを見失ったジャックは
ある程度の広さがある通りに出て
剣を構えて瞳を閉じている。
それをセリナが見つけ、かなり遠い距離から
弓に変化させた儀式兵装で狙撃しようと建物の上から
狙いを定める。
魔力矢を収束させ、威力を上げた時。
セリナは、正面からの視線を感じる。
セリナ「・・・やっぱり、見つかってしまいましたか」
いつの間にか目を開けて、こちらを見ているジャック。
構わず魔力矢を撃つ。
通常よりもかなり速度の速い矢がジャックに向かって飛ぶ。
前に出ると踏んで少し手前を狙った一撃だったが
その予想を大きく裏切る。
ジャックは、周囲の建物を利用して
様々な場所を跳躍したり、走りながら
狙撃できないように接近してくる。
セリナは、構えていた次の矢を
そのまま上空に向けて構えると、そのまま放つ。
はるか上空に飛んだ矢が、空中で炸裂し
何十本もの矢になって雨のように降り注ぐ。
ジャック「うおぉぉぉっ!!」
気迫の叫び声と共に
防御魔法を一切使用せず、魔法矢の雨の中を
走り抜けていく。
そのままセリナの前まで走ってきたジャックは
彼女に向けて跳躍して剣を振り下ろす。
セリナ「パワー・アイス・サードッ!!」
儀式兵装を剣にして強化魔法を付与し
ジャックの一撃を受け止める。
セリナ「―――ッ!」
上級強化魔法を使用したにも関わらず
押し負けて後ろに下げられる。
セリナ「アイスジャベリンッ!」
ジャック「ウォーター・アローッ!」
双方の魔法が綺麗にぶつかり、全てが消滅する。
下級魔法を貫けなかったことにセリナは、驚く。
ジャック「そのような想いの無い攻撃など
所詮は、形ばかりだ」
剣を水平に構えたジャックは
前かがみの体勢を取る。
ジャック「戦う意思が無いのなら
全てを捨てて大人しく去れッ!!」
あっという間に距離を詰めてたジャックは
剣を横に薙ぐ。
重い一撃に、表情が厳しくなるも
何とか受け止めるセリナ。
セリナ「神界王女として、そしてセリナ=アスペリアとして
・・・みんなが笑って過ごせる日々のために
私はここで負ける訳にはいかないんですっ!」
強引に剣を弾いて、返す刃でジャックに斬りかかる。
ジャック「そのような形ばかりの意思で
この私が倒せるつもりかっ!!」
セリナの一撃よりも速く、ジャックは距離を詰めて
そのまま勢い良く体当たりを入れる。
カウンター気味に入った一撃に
セリナは大きく吹き飛ばされる。
一瞬、意識が飛びそうになるも
何とか足で着地して、体勢を立て直す。
ジャックは、また剣を構えて前かがみの姿勢を取る。
ジャック「私は、グレイのようなバランスのよさも
バガムのような素早さも
ガルスのような腕力も
ワングのような特殊な儀式兵装も
ラナのようなオリジナル魔法も
何も持ち合わせてはいない。
だが、彼らは私を隊長として認め
共に戦ってくれた。
私には背負うものがある。
その全てを賭しても成さねばならぬ願いがある。
その想いが、背負うものが
私を強くしてくれるッ!!
皆のためなど、そのような薄っぺらい信念に
何を成し遂げることが出来るというのだっ!!」
ジャックは真っ直ぐとセリナに向かって走り出す。
それを受け止めようとするセリナ。
セリナ「―――ッ!?」
走ってくるジャックは、特に何も魔法を使用していない。
にも関わらず、彼の姿がセリナには数倍大きく見えた。
そんな巨人の一撃に、セリナは大きく吹き飛ばされ
いくつもの建物を破壊して、ようやく止まる。
ダメージを受け、よろよろと立ち上がるセリナ。
そんなセリナを睨みつけるジャック。
セリナ「・・・私は」
みんなと笑顔で過ごしたいという願いも
それを薄いと言われ腹が立つことも本当だ。
しかし、この願いでは届かないということなのか。
私の願いは、そんなに薄いものなのか。
意味の無い自問自答を繰り返す。
そんな時だった。
「神界第一王女ってのは、キミの全てか?」
「キミは、キミだ。
他の誰でもない。
肝心なのは、キミ自身の気持ちなんじゃないのか?」
頭の中で、ふと和也に言われた言葉が聞こえてくる。
『セリナへ。
お前の自由に生きなさい』
お父様からの手紙を思い出す。
セリナ「・・・」
瞳を閉じて考える。
そして自分の心と向き合う。
イメージする。
自分の心に向き合って、自分の世界を構築する。
それは、みんなと笑い合う笑顔の世界。
最近では、フィーネや亜梨沙など人も増えた。
種族なんて関係ない。
皆が手を取り合っていける世界。
それはいつも思い描いている世界だ。
いつも通りの世界に安心する。
そんな時だった。
ふと、隣に暖かな温もりを感じる。
気づけば、私は誰かと腕を組んでいた。
私は、その相手の顔を見る。
―――そこには
私の大好きな和也(ひと)の笑顔―――
セリナ「・・・そう、だったんですね」
ゆっくりと目を開ける。
セリナ「意外と、簡単なことでした」
自然とこぼれる笑み。
セリナは、儀式兵装の剣を構えると、八翼を広げる。
急激に魔力が集まり、魔法陣が出現する。
セリナ「我が言葉は、太古より続く盟約を代行せしもの。
ゆえに代行者として命ずる。
古の力、元素を司る精霊達よ。
我が呼びかけに応え、あるべき力を我が前に示せ」
膨大な魔力が、セリナの儀式兵装に集まっていく。
セリナは、基本的に翼を出すことはない。
本人の性格もあり、真剣に戦う時でも
どこかで心のブレーキがかかり、本当の意味での全力を
出したことがないのだ。
そんな彼女が今、全ての力を出そうとしていた。
八翼の限界まで魔力を集め、制御し、何度も練り込む。
セリナ「・・・で、できた。
『魔剣・フラガラッハ』」
肩で息をしながらも、完成した魔法を見て、そう呟く。
彼女の剣は、刀身に文字通り『全ての魔力』が付与されており
闇のような真っ黒い刀身になっていた。
セリナ「・・・私は、みんなが笑顔で笑っていける世界を
種族を超えて、みんなが手を取り合える世界を見たい。
・・・大好きな、あの人の隣でっ!!」
セリナが構えた剣を見て、ジャックは驚く。
あれだけ膨大な魔力を全て剣に付与するだけでも
ありえないほどの制御力が必要だ。
しかもただ付与しているのではく、八翼という
超がつくほど強力な魔力全てを、何度も練り込んで圧縮し
密度の高い魔力へと変換し続けたのだ。
こんなことは、亡き神王達ですら不可能だろう。
ジャック「・・・だが、やらねばならない。
超えなければいけない。
私にも、背負っているものがあるッ!!」
自身の儀式兵装に強化魔法を付与すると
真っ直ぐセリナに向かって走っていくジャック。
そしてジャックがセリナに斬りかかる瞬間だった。
ジャック「―――ッ!?」
セリナの魔剣フラガラッハも
当然こちらに斬りかかってくるのは、わかっていたことだ。
あんなもの、当たれば一撃、当然受け止めることなど
出来る訳が無い。
だからこそ、それを回避して、カウンターを入れることだけに
専念しての行動だった。
・・・だが。
迫った瞬間、魔剣の暴力的なまでの魔力的圧力によって
こちらの強化魔法が全て根こそぎ吹き飛ばされたのだ。
それだけならいい。
儀式兵装すらその圧力に負け、分解されて魂へと返る。
よって、丸腰となった自分に
魔剣の刃が、容赦無く迫る。
ジャック「―――これが、伝説と呼ばれた八翼の」
その言葉は、最後まで続くことなく魔剣の闇の中へと消えていった。
セリナの一撃で、剣を振るった場所だけ
何もかもが分解され、消滅して、まるで何かで
くり抜いたかのような形になっていた。
そのころ、竜界の国境付近。
?「予想通り、やってきましたか。
だがしかーしっ!!
この私が居るかぎり、生きたまま帰れるなんて
思っちゃ~いませんよねぇ~っ!!」
謎のポーズを決めながら、何処かの国のメイド長が叫ぶ。
他の国は、全て陽動のためとはいえ攻め込まれた。
そんな報告を聞いて、彼女は竜界にも来るのではと考え
こうして軍を率いて待っていたのだ。
竜族兵A「・・・この人っていつもこうなんですか?」
竜族兵B「・・・大体は、こんな感じかなぁ」
竜族兵A「そ、そうなんですか」
竜族兵C「でもまあ、アレでも強いし部下への気配りも出来る
良い上官であることは間違いないのよねぇ」
何だかアレなメイド長「さあ、リピス様のために蹴散らしますよっ!!」
竜族兵達「全ては、リピス様のためにっ!!」
そしてその数分後。
全ての将が倒れ、魔力制御を失ったゴーレム達が
次々と崩れ落ちていく。
和也「お・・・終わった、のか?」
フィーネ「・・・たぶん、ね」
リピス「ということは、我々の勝利だということだ」
学園でも勝利を喜ぶ声が聞こえてくる。
それにより、ようやく学園都市での戦いが終わりを告げることになった。
一般人には被害は無かったとはいえ
学園生徒の2割が名誉の戦死を遂げ、各世界でも
ゴーレム達との戦いで死傷者がそれなりに出てしまった。
政治でも、元神族軍が起こした事件だけに
神族側への厳しい追及・・・といっても騒いでいるのは
魔族が中心なのだが、それでも竜族・人族からも
あまり良い声は出ていない。
しかし、今回。
何故か魔界側だけが攻め込まれていないのと
首謀者含め、重要な人物を神界王女自らが
粛清したこともあり、魔界陰謀説などの話題も飛び出し
かなり白熱した議論となった。
だが結果的に、神界への処置は
当面は外交面で不利益を被るものの
一時的なもので長期化はしない決定となった。
街は、一般人が無事なものの
建物は、かなり破壊されており
復興までには時間がかかりそうだった。
学園もしばらくは、休校となり
皆は、それぞれ街の復興を手伝っている。
今回、俺はただフィーネ達と囮になった感じなだけで
何もしていない。
もっと上手く動けていたら、もっと多くの命を
救えたのではないかという意味の無い後悔。
そう思った瞬間。
和也「・・・っ!」
突然の頭の痛みに頭を抑えながら座り込む。
目の前に突如浮かぶ、見覚えの無い石碑。
「・・・また、全てを護ることは出来なかったか」
「・・・俺に力があれば」
死んだ者達を思う後悔の念。
そして今度は、荒れ果て別の場所にすら見える
いつも訓練をしている丘の風景。
「俺は、また守れなかったのか・・・」
またも後悔の念。
そして見知らぬ、出会ってすらも居ない
金色の髪の少女の笑顔。
気づけば、涙が出ていた。
どういうことだか、理解が出来ない。
混乱した頭の中身を整理する前に
誰かが自分の正面に立っている気配に気づく。
見上げると、そこには一人の少女が立っていた。
「私の名前は、久遠」
頭の中にまた、声が響く。
苦しむ俺に、彼女は何も言わずに
そっと手を差し伸べてくる。
その顔は、少し寂しそうな笑顔だった。
俺は、差し出された手に違和感を感じることなく握る。
すると、和也と少女は
その場から消えるように姿を消した。
最終章 想いの強さ ~完~
・おまけ
セリナ編が、そのまま進んだその後の世界。
*風間 亜梨沙
風間の家に生まれ、若くして風間流の師範代になった
若き天才。
学園を卒業後、王女達と一緒に
合同結婚式を挙げて念願だった和也の嫁になる。
1人の娘が生まれ、幸せに暮らした。
和也が多忙なため、彼に代わって
風間一族を纏める立場となる。
和也が天界に行くことが多くなり
たまにしか会えなくなったことが不満となり
たびたび天界に押しかけていくことになる。
そのたびに風間を強引に任される師範代達は
ため息をつくのだった。
*フィーネ=ゴア
魔王の1人娘として生まれ
幼少期から激しい人生を送ることになるも
そこで運命の相手に出会い
人らしく生きるようになった少女。
学園を卒業後、合同結婚式で
夢だった和也の嫁となる。
事件後、魔界では
天界よりも優位に立ったと増長する者が
後を絶えず、魔界全体の統率力を強化するために
何かと忙しくなり、たびたびミリスと喧嘩をすることになる。
そのたびに神界に家出してくるため
神界と魔界は、何度も一触即発の自体を迎えることになる。
和也との間に1人の娘を授かり
その娘を溺愛したという。
*リピス=バルト
竜界の王女にして金竜最後の生き残り。
大戦争では激動の人生を経験し
一度は、挫折したこともある王女。
学園卒業後は、彼女の提案により藤堂 和也との
合同結婚式が行われ、彼女も妻となる。
卒業後も続く和也争奪戦に関係ないとばかりに
自国の内政に従事するも
時折、ちゃっかり和也を独占していたりするなど
策謀家としての素質も見せる。
2人の娘にも恵まれ、竜族を繁栄させ
のちに学園の教科書に載るほどの活躍を見せる。
*セリナ=アスペリア
神界第一王女として生まれ
常に王女としての重圧に悩まされてきた少女。
学園卒業後の合同結婚式に参加して
和也の嫁となる。
和也への気持ちを隠さなくなった彼女は
エリナを超えるほど積極的になり
時にはフィーネ達をも押し退けるほどに。
また亡き父を超える政治手腕を発揮し
神族を一つに纏め上げるなど
偉大な王としての素質を開花させる。
1人の息子と2人の娘を授かり
幸せに暮らした。
*エリナ=アスペリア
神界第二王女として生まれるが
その責任を丸投げて、自由に生きようとする
非常に奔放な性格の少女。
学園卒業後、合同結婚式に参加して
姉共々、和也の嫁となる。
姉に代わって外交の場に登場することが多くなり
その姿は、女性達の憧れとなる。
また古代遺跡や古代魔法に関しての
研究チームを作ることに尽力し
魔法学の象徴とまで呼ばれる存在となる。
休暇になると、必ず和也の部屋に入り浸ったり
よく他の誰かと和也の取り合いをしている姿も
恒例行事となる。
和也との間に2人の息子を授かり
幸せに暮らしたという。
上記は、あくまで可能性の話。
物語が別の可能性を選ぶのであれば
また違った結末を迎えることになるだろう。
まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
ようやくセリナ編が完結しました。
仕事が忙しかったり、物語の演出に悩んだりと
色々と散々でした。
特に演出や、今後の物語の構成に関しては
かなり悩みました。
おかげでかなり文字数も増えました。
一番短い章と比べると倍以上の差があったり・・・。
物語は3人のヒロイン回が終了して
感動のフィナーレに・・・向かいません(笑)
原作を知っておられる方なら、やっぱりかと
笑っておられるかと思います。
原作を知らない人は、まだあるんだ、長いよと
突っ込んでいることでしょう。
申し訳ないですが、まだあるんです。
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。