Tiny Dungeon Another Story   作:のこのこ大王

39 / 52
第▼章 抗う者達

 

 

 

 

 咲耶は、ゆっくり目をあける。

 

 そこは、一面が真っ白な世界。

 

 見たことが無い、初めて見る世界。

 

 

「気が付いたかしら?」

 

「・・・ここは?」

 

「・・・私の世界ってところかな」

 

「アナタは。一体・・・」

 

「さて、あまり時間が無いの。

 

 アナタには、相応しい仕事を用意してあげる。

 あまり良い道ではないけれど

 頑張って生き残るも、諦めて死ぬも

 好きにすればいいわ」

 

 

 

 

 

第▼章 抗う者達

 

 

 

 

 

「え? ちょっと待ってっ!

 

 私は、あの人の助けになるって聞いたから

 ついてきたのよっ!?」

 

 突然の話の流れに、咲耶は慌てて久遠に詰め寄る。

 

「ええ。

 

 だから、もうその役目は終わったわ」

 

「どういうこと?」

 

「・・・悪いけど

 別に『天保院 咲耶』だから助けた訳じゃないの。

 

 『奴にとっての急所』が『天保院 咲耶』だった

 という話であって、アナタそのものには用がないの」

 

「・・・意味が解らないわ。

 

 それに、詳しい話をしてくれるって言ってたじゃない」

 

「・・・これでも十分、詳しい話をしているのだけれどね」

 

 『面倒だわ』と久遠は、ため息をつく。

 

「和也が戦う相手にとって『天保院 咲耶』という存在が

 位置する場所は、非常に大きくて

 ある意味、急所とでも言うべきものだった。

 

 でもね、前に言ったけど

 アナタは、元々『生き残る可能性が無い』存在なの。

 

 だからいくらアイツの急所でも

 狙うことが出来なかったのよ。

 

 ほんの僅かでも可能性があったのなら

 また違ったのだけどね」

 

「・・・それなら、どうして私は

 和也に助けられたの?」

 

「それは、和也のおかげよ。

 

 和也が、頑張ってくれたおかげで

 本来なら可能性が無い未来が開けた。

 そして、その可能性が新たな可能性を示した。

 

 アイツにとっては、信じられないことでしょうね。

 あるはずのない可能性を

 あるはずの無い未来への道を、強引に『作られた』のだから」

 

「・・・じゃあ、私は」

 

「そう。

 

 アナタは、和也と彼に影響された者達によって

 助けられたってことになるのかしらね」

 

「・・・」

 

 その話を聞いて咲耶は、急に怖くなった。

 

 何故なら、あの場で本来なら自分は

 死んでいたという現実をハッキリと認識してしまったからだ。

 

 急に死を意識してしまい、戸惑う咲耶。

 

「・・・話を続けるわ。

 

 『天保院 咲耶』という急所への攻撃は

  もう終わったの。

 

 そしてこれ以上、和也の援護は出来ない。

 だからあとは、和也次第よ」

 

「・・・私は、何もしてないわ」

 

「だから言ったでしょう?

 

 アナタは、本来死ぬはずだった。

 助かる未来は、無かった。

 

 何千、何万という時間を繰り返しても

 アナタは、その全てで死ぬ存在なの。

 

 そんなアナタが生きている。

 生き残る可能性という道が出来てしまった。

 

 それを作った時点で・・・それそのものが

 アイツへの攻撃となるの。

 

 だから助かった後のアナタには

 もう本来なら何の価値もない。

 

 あとは、好きにすればいいって

 そう思っていたのだけれど・・・」

 

 咲耶の肩に

 そっと触れる久遠。

 

 久遠が咲耶の肩を軽く押す。

 

 すると後ろの見えない亀裂へと

 咲耶は、吸い込まれそうになる。

 

「な、何なのっ!?」

 

「さっきも言ったでしょう?

 

 アナタに仕事を用意してあげるって。

 感謝してよね。

 

 このまま放置されて消滅するはずのアナタに

 ちゃんとした道を用意してあげるのだから。

 

 和也に感謝しなさい」

 

「・・・和也。

 

 そう、和也っ!

 

 あの人は、無事なのっ!?」

 

「和也は、無事よ。

 

 といっても、これから最後の戦いに行く訳だし

 どうなるかは、解らないけどね」

 

「なら、少しでいいから

 あの人に会わせてっ!!」

 

「心配しなくていいわ。

 

 ・・・どうせスグに忘れるから」

 

「・・・どういうこと?」

 

「その先に行けば

 アナタは、ここでの出来事も

 私や和也のことも、全て忘れるわ。

 

 だから自分の心配でもしながら、そっちに行きなさい。

 

 そっちも、決して楽な道ではないのだから」

 

「・・・私は、忘れないわっ!」

 

「・・・そう。

 

 まあ、何をどう頑張った所で

 忘れるということからは、逃れられないけどね」

 

「・・・それでも。

 

 それでもっ!

 

 私は、忘れないっ!

 だって、約束したものっ!!

 

 あの人とっ!

 また会おうってっ!!」

 

 もう身体の半分以上が吸い込まれている。

 その状態でも咲耶は、叫ぶ。

 

「だから・・・和也のことだけは

 絶対に忘れないからっ!!!」

 

 その叫びを最後に、彼女は吸い込まれ

 見えない亀裂は、元に戻った。

 

「・・・本当に、これでよかったのかしら?」

 

 そう言いながら振り返った彼女の前には―――

 

「ああ。

 それに今、会ってもあまり意味はないからな」

 

 いつもとは、少し雰囲気が違う和也が居た。

 

「・・・もう全ての記憶を?」

 

「まあ、な」

 

 苦笑する顔を見て思う。

 

 確かに、その記憶は彼にとって

 あまり良い記憶という訳では

 ないということを。

 

「それでも、これで俺は

 皆と共に戦いにいける」

 

 そう決意する彼に

 私は、何を言うべきだろうか。

 

「私は・・・」

 

「ありがとう」

 

 私の話を遮るように

 突然告げられる感謝の言葉。

 

「え・・・?」

 

「本来なら、こんな戦いにすら立つことが

 出来なかった。

 

 でも、久遠のおかげで俺は

 自分の運命に抗うことが出来る」

 

「・・・それは、私の台詞よ。

 

 私は、ただアナタを利用しているだけ。

 過去、私に関わった人達は

 みんな最後に、私を怨んで消えていった・・・」

 

 悲しそうな顔をする久遠。

 和也は、そんな彼女に近づいて

 そっと抱きしめる。

 

「少なくとも、俺は感謝してる。

 

 何度も負け続けた頼りない俺だけれど

 見捨てずに信じ続けて、助け続けてくれた

 ・・・そんなキミを怨むなんてとんでもない」

 

 その言葉を聞いて

 久遠は、彼を選んでよかったと

 心からそう思った。

 

 やがて白い世界に、巨大な門が現れる。

 

 そして門は、ゆっくりと開く。

 

「そろそろか」

 

 門の中は、どこまでも続いているように見える

 真っ黒な世界。

 

「・・・自信を持って。

 アナタは、数え切れないほど多くの

 勇者や英雄と呼ばれた人達ですら成し得なかった

 『奇跡』を起こした・・・特別な人」

 

 私がそう言うと、また和也は苦笑した。

 

「そんなに俺は、良いもんじゃないよ。

 それに『アイツ』には、未だ一度も勝てていない」

 

「・・・でも、これから勝ってくれるんでしょう?」

 

「ああ、当たり前だ。

 最後は、やっぱり勝って終わりたいからな」

 

 今度は、満面の笑みで和也は答えた。

 

「さて、じゃあ行ってくるかな」

 

 覚悟を決めた顔で、門の前に立つ和也。

 

「・・・和也」

 

「ん?」

 

 ふと呼び止められて、振り返る和也。

 

 すると―――

 

「ちゅ・・・んぁ・・・」

 

 短いながらも想いのこもったキス。

 

「・・・ははは」

 

 顔を真っ赤にしながら、乾いた声で笑う和也。

 

「じゃあ、いってらっしゃい」

 

「ああ、行ってくる」

 

 照れ隠しをしながらも、ハッキリとした口調で

 返事をすると和也は、門の中へと入っていく。

 

 和也が中に入ると、門は自動的に閉まる。

 

「・・・さて、と」

 

 門が閉まったことを確認すると

 久遠は、その場に倒れる。

 

「最後まで見届けられないのが、残念だわ・・・」

 

 そう・・・彼女は、もはや限界だった。

 力を使い果たし、その存在ごと消えようとしていた。

 

 久遠は、瞳を閉じてゆっくりと眠る。

 

 そして久遠は、光に包まれて消えた・・・。

 

 

 

 

 

第▼章 抗う者達 ―完―

 

 

 

 




まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。

一部、ご指摘を受けまして
台詞の頭に名前をつける文章形式を変更して
つけないようにしてみました。

書き物の知識がない初心者なので
頂いたアドバイスを反映させながら
よりよい作品にしていければと思っています。

読みにくい、解かりにくいなどありましたら
また指摘頂けるとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。