Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
種族を超えて
ここは、何もない空間だった。
一面何も無く、ただ地面のような白い大地が
広がるのみだ。
空は、夕暮れのように染まっている。
そんな異世界のような場所で
誰かが戦っていた。
片方は、人。
その手には、漆黒の刃。
真っ直ぐに相手を見つめるその瞳からも
揺ぎ無い信念を感じることが出来る。
もう片方は、異形。
巨大な身体に大きな翼を持つ。
腕も左右に3本づつあり、その全てに武器を持っている。
近づいただけでも精神を蝕まれてしまいそうなほどの
深い闇・・・怨念を背負っているかのような存在。
「オマエハ、ジュウブンニタタカッタ。
ダガソレモ、ココマデダ。
マケヲミトメレバ、イママデノセカイノナカカラ
スキナケツマツヲエラバセテヤロウ。
・・・ドウダ、ワルイハナシデハアルマイ」
「・・・皆が戦うことを選んだ。
命を賭けて、未来を勝ち取るために。
それなのに、俺が先に負けるなんてありえないだろ」
「・・・オロカナ。
ワレニカテヌコトハ、オマエジシンガ
イチバンリカイシテイルダロウニ」
「そんなの、やってみなきゃ解らないだろっ!」
「ナラバ、ココデ
クチハテルガイイッ!」
物理的攻撃だけでなく、数多くの魔法も
一瞬にして大量に飛んでくる。
まるで大軍を1人で相手にしているような感覚。
普通なら回避不能に見える無数の攻撃。
―――だが。
「真眼―――開放ッ!!」
真眼を開放した瞬間。
全ての攻撃が数秒後、何処に着弾するかが見える。
だからこそ、その見えた未来の通りに
攻撃を回避して、相手に迫る。
「・・・ナンダトッ!?」
「はぁぁぁっ!!」
鬼影による一撃で、腕を1本切り落とす。
だがスグに腕は、再生されてしまう。
―――真眼。
それは、魔眼の最終形態。
数秒先の未来を見通す力。
今までの歴史の中で、誰一人として
たどり着くことが出来なかった境地。
本来ならば、和也も
手にすることは、出来なかったはずの力。
だが、数え切れないほどの平行世界を経験し
その全てを引き継いでいる、今の和也は
人の一生をはるかに超える時間を過ごしている。
それも、戦いで埋め尽くされた時間。
この特殊な状況が、彼に更なる力を与えたと言える。
・・・しかし。
「シネッ!!」
まるで巨大な壁が迫ってくるような『面』での攻撃に
回避することが出来ず、防御姿勢を取るが・・・
「くそっ!!」
だが、圧倒的な力に大きく吹き飛ばされる。
いくら相手の攻撃が見えるといっても
回避不能な一撃だけは、どうしようもない。
そしてなにより
魔眼・真眼共に、防御や回避のための力であり
純粋な攻撃に関しては、意味が無いといえる。
常に再生する相手を超える火力が無い和也。
攻撃がほぼ当てられないものの
それ以外に特に問題がない異形の化物。
ほとんど互角に見える両者。
だが、その僅かにある差が
決定的な差となって、お互いの勝敗を別けてきた。
この差が埋められない以上、和也に勝ち目など無い。
―――それでも。
「・・・それでも、俺は
諦める訳には、いかないんだよぉぉぉっ!!!」
心と身体を奮い立たせて
気迫と共に異形の化物へと突撃する和也。
そして渾身の一撃を振り下ろす。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
その頃、学園の中庭に
全生徒が綺麗に整列していた。
皆、その顔は
決意とやる気に満ちている。
そこへ、学園長であるマリア=ゴアが
学園の外壁の上に現れる。
丁度、全生徒を見渡せる位置だ。
更に、学園長の後ろには
オリビアの姿もある。
2人ともいつもの格好ではなく
戦闘をするための衣服を身につけていた。
「・・・詳しい説明など
もはや不要だろう。
よって簡潔に話しをする」
ここで一度、言葉を切り
大きな深呼吸をする。
そして―――
「連中は、踏み荒らそうとしている。
我々の命を。
我々の自由を。
我々の誇りを。
・・・だが。
戦争に個人的な感情を持ち出すことは
愚か者のすることだ。
味方を危険に晒すだけで
邪魔以外の何者でもない。
―――しかし。
それらを黙って見過ごすほど
我々は、甘くはないっ!!
手には、力をっ!!
胸には、誇りをっ!!
持ったのならば、いざ進めっ!!
恐れるものなど、あるものかっ!!
強くっ!!
気高くっ!!
ただ真っ直ぐ、前だけを向いてっ!!
戦友(なかま)と共に、突き進めっ!!
その行いを以ってっ!!
奴らにっ!!
世界にっ!!!
ここは、我々の居場所なのだとっ!!
我々は、生きているのだということをっ!!
思いっきり見せ付けてやれっ!!!
さあっ!!!
世界を賭けた大勝負の始まりだっ!!!!」
魂の叫びとでもいうような
学園長の言葉を合図に―――。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
学園全体が震えるほどの声が、周囲に響く。
種族を超えて
外壁に展開する生徒達は
その光景に思わず息を呑む。
地平線の彼方から現れたのは
ゴーレムの群れ。
それは、決して途切れることなく
現れ続けている。
何百万? 何千万?
最前線と言える場所に配置されているのは
生徒の中でも、特に優秀な者達ばかり。
そんな彼らでも、気が遠くなるような
大軍が押し寄せてきていた。
先ほどの決意が揺らぎそうになる。
「・・・へっ!
どれだけの数だろうと、負けるかよっ!!」
それは、誰かが言った言葉。
―――だが。
「そ、そうよっ!
私達なら、勝てるわっ!!」
「・・・当たり前だろ?
俺達だって、あの数え切れない戦いの記憶を
引き継いでるんだっ!!」
「ああ、そうさっ!
あんな未来にしないためにも
俺達がやるしかないんだよっ!!」
「今度こそ、徹底的に蹴散らしてやるわっ!!」
その勇気ある声が、周囲に再び火を灯す。
ゴーレムの大軍が迫ってくると
やがて呻き声が聞こえてくる。
それは、まるで地獄から這い出ようとする
死人達を思わせるような声。
いくら数多くの戦闘を体験した記憶があるといっても
やはり恐怖心は、なかなか抑えることが難しいだろう。
しかし彼女は、違った。
六翼を広げ、最大まで溜め込んだ魔力を
更に効率良く練りこむ。
エレメンタルマスターと呼ばれる少女。
神界王女 エリナ=アスペリア。
彼女は、街の中央にある大きな時計台の最上階に居た。
そこは、街の全てが見渡せる絶好の場所。
「この一撃が、開戦の狼煙となる。
だからこそ、皆を勇気付けるため
手加減無しの全力で、いかせて貰うわっ!!」
空に広がる巨大な魔法陣。
そこから降り注ぐ巨大な火球の雨。
「全てを焼き尽くせっ!
ナパーム・レインッ!!」
その燃え盛る雨は
文字通り、周囲を焼き尽くし
ゴーレム達を飲み込んでいく。
その圧倒的な光景に歓声が上がる。
だがエリナは、そんな声を無視するように
次の魔力収束を始めていた。
「私は、私にしか出来ない役割を果たすだけ。
・・・だからセリナちゃん、お願いね」
見つめる先は、はるか遠い場所。
姉が向かった場所を見つめながら
また魔法を展開する。
「さて・・・どんどん行きましょうかっ!!」
そしてまた、ゴーレムの群れに火球の雨が降り注ぐ。
それから少し後の事。
神界から行軍していた神族軍は
境界を超えたあたりで、ゴーレム集団を見つける。
「これは、世界の命運を賭けた戦いですっ!!」
そう叫ぶのは、軍を率いている者。
神界宰相 カイン=ライト。
彼は、儀式兵装の剣を掲げる。
「我らの未来を護るためっ!
命を賭して戦い抜くのだっ!!
ここが我らの死に場所と心得よっ!!
総員、突撃ィィィッ!!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
同じ頃。
竜界でも敵と対峙していた。
「リピス様のためっ!
世界のためっ!!
今こそ竜族の力を四界に見せ付けてやるのだっ!!」
軍を率いているのは、竜界No2。
破滅の竜 メリィ=フレール。
「全軍、前進せよっ!!!
我らは、竜族ッ!!!
誇り高き戦士ッ!!!
どんな時でも、誇りを胸に気高く謳えっ!!!」
「全ては、リピス様のためにっ!!!!!」
そして人界でも。
「この戦いに、全てが詰まっていると言えるじゃろうっ!!」
先頭に立つのは、人界をまとめる者。
風間流最高師範 風間 源五郎。
「この最後の戦いを乗り越えることが出来れば
我らが悲願である、人族への不当な差別も
無くなることになるっ!!
この一戦ッ!!
人族が、決して他種族に劣っていないことを
見せ付けてやるのじゃっ!!!
そしてっ!!
我らの手で、真の平和を勝ち取るぞっ!!!」
「おぅッ!!!!!」
更に魔界でも。
「この戦いで活躍した者は
必ず後の歴史書において、永遠に名を刻むことになるでしょうっ!!」
魔族軍の先頭に立つのは、紅い髪の少女。
紅の死神 ミリス=ベリセン。
「命を惜しむなッ!!
名こそを惜しめッ!!
我ら魔族こそが四界最強ッ!!!
我らの名で、歴史書を埋め尽くてやりましょうっ!!!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」
それぞれの軍で突撃命令が出て
一斉に世界中で戦いが始まった。
まるでかつての大戦争のようである。
だが大戦争とは、大きくその内容が違う。
誰が、四種族全てが手を取り合って
戦う日が来ると予想出来ただろうか。
そして学園都市で戦う者達は
その奇跡を一番感じていた。
外周の門が破られ、内部の各所にある門が
既に第二・第三の防衛ラインとなっていた。
街の外周エリアでは、既に市街地戦が繰り広げられている。
「へっ!
ゴーレムなんて余裕だぜっ!!」
ゴーレムを倒してポーズを決める神族男生徒。
「馬鹿ッ!
上よッ!!」
路地に居た竜族が、咄嗟に声を出す。
「同じ手にかかるかよっ!!」
上から落下してきたゴーレムを真横に跳んで回避する。
「ファイア・アローッ!!」
2本の炎矢がゴーレムに命中して
魔力コアが露出する。
「はぁっ!!」
走りこんでいた竜族生徒が
そのまま魔力コアに、一撃を決める。
勢い良く魔力コアが壊れると
ゴーレムも崩れ落ちる。
「・・・アナタ、死にたいのッ!?」
竜族が、神族男生徒に詰め寄る。
「そんなつもりは、無いさ。
さすがに気づいてたからな」
「・・・じゃあ、どうしてっ!!」
「悪い悪い。
相手を油断させるつもりだったんだよ。
・・・そっか。
確かアンタだったよな。
俺の・・・敵を討ってくれたの」
蘇るのは、違う世界の記憶。
油断して死んだこと。
そして彼女が、代わりにゴーレムを倒したこと。
「・・・」
「手間をかけさせて、すまない。
・・・そして、ありがとう」
「解ってるなら、それでいいわ・・・」
「ああ、今度こそ生き残ってやるぜ。
だからまあ、背中は任せていいか?」
「ええ。
隙があったら遠慮なく、蹴ってやるわ」
「え?
うっそ。
そんな流れだっけっ!?」
「はいはい、じゃあ行くわよ」
そして2人は、路地から飛び出し通路に出る。
正面に居たゴーレムを素早く撃破すると
そのまま先へと進んでいった。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「くそっ!
数が多すぎるっ!!」
「さっさとしろっ!
後ろに下がるぞっ!!」
ゴーレムの群れに追われて逃げる魔族男生徒と神族男生徒。
大通りに出た所で追いつかれる。
「ギギギッ!!」
「トカゲもどきの癖にっ!!」
後ろからトカゲのようなゴーレムが
飛びついてくる。
それを何とか避ける魔族男生徒。
「邪魔しやがって・・・ッ!!」
神族生徒が助けに行こうとするが
遅れてやってきたゴーレムに阻まれる。
「無効種とは、ついてないな・・・」
魔法が使えないため、ゴーレムに切りかかる神族生徒。
かつて様々な世界で様々なゴーレム達が登場していた。
魔導砲のような腕を作って魔法を放つ『砲撃種』
魔法が一切通用しない『無効種』
様々な形をした『変化種』
それぞれをそう分類して、彼らは呼んでいた。
特に砲撃種と無効種は
その迎撃方法が大きく違ってくるため
区別して呼ぶことで、誰もが理解しやすくしている。
提案したのは、オリビア王妃。
それをマリア王妃が素早く全体に伝えることにより
迎撃効率を向上させることに成功していた。
「く・・・このっ!!」
何度も飛びついてくるトカゲ型ゴーレムに捕まってしまい
押し倒されるが、頭に剣を突き刺して
それ以上の追撃を防いでいる。
だが、それでも長くは続かない。
そんな時だった。
「デルタフォーメーション!」
「フォーメーションアタァァァック!!」
「離脱ッ!!」
複数の声が聞こえると同時に
目の前のトカゲ型ゴーレムが崩れ落ちる。
「今のは・・・」
ゴーレムと戦っていた神族生徒も
目の前のゴーレムが一瞬で蹴散らされ
呆然としていた。
「俺達エリナ様親衛隊が、この場を引き受ける」
「お前達は、防衛ラインが下がったことを伝えてくれ」
「撤退完了までは、エリナ様の名にかけて死守してみせる」
姿こそ見えないが
複数の声が聞こえてくる。
「・・・ああ、すまないが頼む」
状況を理解した神族生徒が、そう言うと
魔族生徒と共に後ろへと下がる。
少しして、彼らを追うように
ゴーレムの集団が現れる。
「来たな、ゴーレム共めっ!」
「我々の真の力・・・その命を以って知るがいいっ!」
「エリナ様親衛隊は、四界最強だっ!」
それぞれが言葉を口にすると
まるで1つに繋がっているかのように
見事な連携を見せる。
「さあ、いくぞっ!」
「これが、我らの新たなる必殺技っ!」
「マキシマム・デルタフォーメーションッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「くそっ!!
このままじゃ、味方と一緒に敵まで門の中へと
入ってくるぞっ!!」
門を開けて撤退する味方を支援していた
魔族男生徒が叫ぶ。
「ダ、ダメだっ!!
仲間を見捨てるなんて・・・出来ないっ!!」
同じく魔族の生徒が声を出す。
「じゃあ、どうしろって言うんだよっ!!
俺達だけじゃ、あれだけの数を止めきれないぞっ!!」
「絶対ダメだっ!!
オ、オレは、もう・・・逃げ出さないって決めたんだっ!!」
そう言って門から外に出る。
逃げ込んでくる味方。
それに密着するぐらいに近い敵。
突撃してくる敵を受け止めることは
並大抵では、出来ないことだ。
多分、あっさりと自分は死ぬことになるだろう。
『死』の恐怖で足が震える。
だが、もう自分は逃げないと決めたのだ。
あんな想いは、二度とゴメンだと。
「へえ。
成長したじゃない」
後ろから突然声をかけられ
驚きながらも振り返る。
―――そこには
「さて、じゃあ行きましょうかっ!!」
「俺達は、撤退支援に回る。
イオナは、レアの援護をしてやれっ!!」
「はいっ!!」
かつて別の世界で
自分を殴った神族の少女。
レア=レイセン。
彼女のチームが援護に来ていた。
前線から傷ついた仲間が必死に逃げ込んでくる。
途中で後ろから攻撃されて逃げ損なってしまう
仲間が出ないように、レア達が前に出て
ゴーレム達をけん制する。
レア達は、確かに強かったが
圧倒的な物量の前に、厳しい戦いを強いられていた。
「ハッ!!」
レアの一撃でゴーレムが崩れる。
そのレアの後ろからゴーレムが迫るが・・・
「させないっ!!」
イオナの狙撃により、ゴーレムは崩れ落ちた。
「数が多すぎるぞっ!」
「文句言ってないで、手を動かしなさいよっ!」
味方の神族生徒達も、愚痴が出るほど押し込まれていた。
「これじゃ、門を閉めるタイミングなんて無いじゃないかっ!!」
門を閉めようと準備していた魔族生徒だが
乱戦になりすぎていて、閉めるどころの話では
無くなっていた。
「門が閉められなきゃ、どうしようもないぞっ!!」
誰に言う訳でもなく、魔族生徒は叫ぶ。
「・・・なら、そのまま開けておけ」
後ろから肩を叩かれて
驚きながら振り返る。
「あ・・・あんたは、確か・・・」
「あとは、俺達に任せな」
そう言って彼らは、門へと走っていく。
「引くタイミングを私が作るから
その間に、逃げてっ!!」
「先輩っ!!
囮になるつもりでしょうっ!!
そんなのダメですよっ!!」
「お前だけを見捨てる訳ないだろっ!」
「そうよっ!
私達なら何とかなるわっ!」
レアの提案を仲間達が一蹴する。
「・・・そうそうっ!
まだまだこれからだぜっ!!」
何処からとも無く響く声と共に
大量の炎矢が降り注ぐ。
その攻撃によってゴーレム達が崩れていく。
その瞬間に少しだけ隙が出来る。
「今のうちに集結してっ!!」
誰かの言った言葉で
レア達は、1ヶ所に集まる。
「・・・あれ。
アナタ達は・・・」
「援護に来たぜ」
「今度は、私達が助ける番だから」
援護に来たのは、魔族のチーム。
その中心に居るのは
レイス=ジャハル
ファナ=リドルド
「まあ、あんた等には
いつぞや世話になったみたいだからな」
「もう、何でそう上から目線なのよ」
いつも通りのレイスに、ファナが突っ込む。
「よかった。
2人とも生きてたのね」
ホッとした顔のレナ。
「ええ。
アナタ達も無事でよかったわ」
「まあ、借りを返しにきたとでも思ってくれ」
会話をしながらも、周囲に残っているゴーレム達を蹴散らしていく。
先ほどまで劣勢だったのが嘘のように
一気に攻勢へと転じていた。
全てを倒すと、門まで逃げ込む。
周囲に敵や味方が居ないことを確認してから門を閉める。
「・・・そう言えば、名乗ってなかったわね。
私は、レア=レイセン。
この娘は、イオナ=リハート」
紹介されてイオナも頭を下げる。
「そう言えばそうだったな。
俺は、レイス=ジャハル。
こっちは、ファナ=リドルド」
「ファナって呼んでくれていいわ。
よろしくね」
「こちらこそ。
私のこともレアって呼んでくれて構わないわ」
そう言って握手をする2人。
「グアアアァァァッ!!!」
突然の叫び声に
全員が門の上に出る。
すると門の前には
いつの間にか、大量のゴーレム達が迫っていた。
「とりあえず、まずは
あいつらの始末からかな」
「ええ、そうね。
みんなっ!
いくわよっ!!」
「俺達も負けてられないっ!
いくぞっ!!」
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「ガガアアァァッ!!!」
炎の矢が、文字通り雨のように降り注ぐ。
「くっ・・・!!
これじゃ前に出れないぞっ!!」
「何人かで防御魔法を使えば―――」
「馬鹿野郎っ!
それぐらいで何とかなる訳ないだろうっ!!」
砲撃種の大軍が
魔法を乱射しながら行軍していた。
それを止めるために
数多くの生徒達が集まっていたが
圧倒的な物量の前に、多くの生徒が
戦死もしくは負傷していた。
「だが、ここを抜かれる訳にはいかない。
この先の大通りまで進まれたら
両側の連中が、挟み撃ちにされてしまうっ!」
「―――だったら、押し返せば問題ありませんわ」
突然、後ろから声をかけられた
生徒達は、一斉に振り返る。
そこには、一人の神族女生徒。
「グアァァァッ!!」
ゴーレムが、後ろから現れた女生徒に
大量の炎矢を放つ。
「この程度の攻撃で―――」
翼を開いて足元に魔法陣が出現する。
そして炎矢が迫る中、魔法陣から放たれた光が
周囲を照らす。
魔力による発光が収まり
視界が戻ると、生徒達は驚きの表情のまま固まる。
周囲が氷に覆いつくされ
大量の炎矢も、空中で凍りつき
地面に落ちていた。
「―――『氷の騎士』と呼ばれるワタクシを
倒せるなど、思っていませんわよね?」
彼女は、かつて亜梨沙との戦いに敗れた
名門レーベルト家の長女。
アクア=レーベルト。
「グガガッ!!」
周辺のゴーレム達が、一斉に集まりだす。
更に膨れ上がるゴーレムの軍団。
「数を揃えた所で、所詮は烏合の衆。
ワタクシの相手では、ありませんわ」
そう言い放つアクアだが
明らかな数の差。
「おいっ!
無理せず隠れろっ!!」
近くで隠れていた魔族男生徒が
アクアに声をかける。
「ご心配なく。
あの程度・・・相手にもなりませんわ」
そう言って手のひらに魔力を集める。
「ガァァァッ!!」
ゴーレム達が示し合わせたかのように
一斉攻撃を仕掛けてくる。
まさに炎の雨というような大量の炎矢。
「光栄に思いなさい。
我がライバルを倒すために編み出した
新しい技の実験体となれるのですからっ!!」
そう言って集めた魔力を開放する。
「さあ、全ての者に永遠の静寂を。
―――アブソリュート・ゼロッ!!!」
まるで周囲の氷が侵食していくかの如く
一瞬にして全てのものが氷に閉ざされる。
その光景に見ていた生徒達は
再び口をあけて呆然としていた。
燃えていた家。
飛んできていた大量の炎矢。
ゴーレム達。
全てが凍っていた。
「・・・ブレイクですわ」
剣を天へと掲げながらアクアが
そう呟くと、凍っていたゴーレム達が
全て一気に砕け散る。
粉々になった氷の結晶が宙に舞い
幻想的な世界のようになっていた。
「・・・すごい」
「・・・これが、噂に名高いレーベルト家の力」
やがて周囲から興奮気味に声があがる。
「さあ皆さん。
このワタクシが居るかぎり
この場は、誰も通しませんことよっ!!」
その言葉に諦めかけていた生徒達が
再びやる気を取り戻す。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「はぁぁっ!!」
飛び込んだ勢いのまま
正面にいたゴーレムを、一瞬で撃破する。
「甘いっ!!」
その横を縫うように
正確な槍による突きが、奥に居たゴーレムを倒す。
「爆ぜろっ!!」
周囲に集まろうとしていたゴーレム達を
一撃で壊滅させる。
それでもスグにゴーレム達が集まってきて
彼らを包囲する。
彼らは、防衛線をしている訳ではない。
自ら前へと出て、攻め込んでいるのだ。
味方の防衛ラインは、とっくに下がっているのに
彼らだけは、この場を維持し続けていた。
「わかっていたけど、きっついねぇ」
堪らずに弱音を吐いたのは、ギル=グレフ。
「いいからさっさと手を動かせ」
ギルと入れ替わるように動いて
槍を振るうのは、アレン=ディレイズ。
「ここで止まる訳には、いかんのだっ!」
周囲に魔法を放ってゴーレムを
けん制するのは、ヴァイス=フールス。
彼らは、ある目的のために
あえて前へと進んでいた。
それでも、度重なる戦闘で
疲労の色が出ていた。
「ガガガッ!!」
孤立している彼らに
容赦なく襲い掛かるゴーレム達。
「くっ!」
倒しても倒してキリが無い。
周囲は、敵だらけ。
「一度、隠れてやり過ごすっての手だぞ」
あくまで正面から前進することを選ぶヴァイスに
ギルが、声をかける。
「そういう訳には、いかんのだっ!
私にも、意地というものがあるっ!
譲れないものがあるっ!
命を賭してでも成さねばならぬものがあるっ!!」
そう叫ぶヴァイスに向かって
ゴーレムが3体同時に飛び掛る。
「・・・なっ!?」
しかし空中で、ゴーレム達は
魔力コアを破壊されて崩れ落ちる。
「―――威勢が良いガギどもじゃね~かっ!」
「まあ彼も成長した、ということでしょうか」
「どちらでも構わん。
我々のやることに影響が無ければな」
「それにしても、我々以外にも
こんなことをしている連中が居たとはな」
「それが魔族の、しかも学生というのだから
何とも言えない話よね」
次々と現れるのは
神族軍の制服を纏った集団。
「そこの小僧。
ここは、我々が引き受けてやろう。
さっさと行くが良い」
奥から最後に現れたのは
いかにも歴戦の兵という感じの男。
「お前たちは・・・」
その顔ぶれにヴァイスが言葉を詰まらせる。
ギルやアレンも驚きの表情をしている。
「『命を賭してでも成さねばならぬものがある』・・・か。
その信念が本当ならば、貫き通してみせろっ!
さあ、早く行くがいいっ!!」
「・・・感謝する」
ヴァイスは、彼らに一礼すると
ギル達と共に先へと進む。
「・・・ふっ。
魔族から礼を言われるとはな・・・」
そう呟くと、儀式兵装を取り出す。
周囲には、既に彼らを取り囲むようにゴーレム達が
集まってきていた。
「我ら『第3特別遊撃隊』の力を
愚か者共に見せ付けてやれっ!!」
「うおおぉぉっ!!!」
掛け声と共に周囲に散開して
ゴーレム達を次々に撃破していく様子は
まさに歴戦の兵といえる強さだった。
各地で激戦が繰り広げられている頃。
学園の外にある森林を利用して
ゴーレムをやり過ごしている者達が居た。
「本当に来るんでしょうね?」
そんな疑問を口にしたのは、フィーネ。
皆が戦っているのに自分達だけは
こうして隠れていることに不満げだ。
「もう少しの辛抱だ。
あまり殺気立つと見つかるぞ」
それをなだめるのは、リピス。
ここで見つかっては、何の意味が無い。
彼女だけでなはく
後ろに居る亜梨沙や、セリナにまで
同じことを言われていた。
「落ち着きがないのも困り者よね」
「・・・アナタにそう言われるってことは
よっぽどなんでしょうね。
少し頭を冷やさなきゃ」
「ちょ、それどういう―――」
「いいから騒がないで」
イリスにまで注意されるなんてと
言いたげなフィーネに、イリスが反論しようと
するが、咲耶に口を塞がれる。
「・・・皆さん、来ましたよ」
小声だが鋭い声に
全員が、一斉に気配を最大限に消す。
すると奥の方から独特な足音と共に
その主が姿を現す。
「・・・あれが、魔導機兵」
巨人が騎士の鎧を着ているような
そんな巨大なものが歩いてくる。
しかも1体ではなく何体もだ。
―――魔導機兵
はるか昔の大戦で使用された古代技術で作られた兵器。
強襲型魔法剣などと同じ失われた過去の遺産。
「稼動するものが発掘されたなんて
聞いたことがないですよ」
「それも多分、向こうの力って所でしょうね」
驚きながら呟く亜梨沙に、咲耶が答える。
「どちらにせよ、アレを学園都市に近づける訳にはいきません」
「そうだ。
あれの背中にある魔導砲は
城塞すら一撃で破壊する火力があるとされているからな」
セリナとリピスが、今回の目的を口にする。
偵察部隊の報告で、発見することが出来た魔導機兵。
これが学園都市に迫ってしまえば
魔導砲の一斉攻撃によって、防衛どころの話ではなくなる。
だからこそ、敵陣の中へ突入して
脅威となる魔導機兵を排除し、かつ逃げ延びることが可能な
戦力として、彼女らが選ばれた。
いくら防衛線に成功しようとも
この魔導機兵が1体でも残ってしまえば
何の意味もない。
近づく部隊に息を殺して待つ咲耶達。
―――そして。
「いくわよっ!!」
その声と共に一斉に飛び出す彼女達。
近くに居たゴーレム達を蹴散らしながら
魔導機兵まで一気に迫るために全力で走る。
それに気づいた魔導機兵達も彼女らの方を向く。
「ここは、絶対に通さないわよっ!!」
フィーネの言葉と共に
全員が一斉攻撃を開始して
周囲に爆音が響き渡るのだった。
種族を超えて ―完―
まず、ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回は、最終決戦的な感じだったので
登場キャラが多すぎて収拾つかない・・・。
そしてどうしてもダイジェストっぽくなってしまうのが
私が、まだまだ素人だということなのかも知れないですが・・・。
暇つぶしがてらに読んで頂けると幸いです。