Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
「遅いっ!」
蹴りによる一閃で、ゴーレム達が崩れ落ちる。
「はっ!!」
横では、正拳突きでゴーレムが吹き飛ばれている。
吹き飛んだゴーレムが、周囲のゴーレムを巻き込んで
壁に激突する。
「もらいましたよぉ~」
壁にまとめられたゴーレム達の上から
大きな鎚が降って来る。
地面を揺るがすほどの一撃で
魔力コアごと粉砕されて、砕け散る。
激戦地となっている場所の1つでは
アイリス=カチス
カリン=ヤクト
リリィ=コネクト
この竜族の3人が中心となり防衛していた。
竜族の次代を担う者として
徹底的な訓練をしてきた彼女達は
更に平行世界という記憶を得て
その才能を開花させていた。
圧倒的なまでの戦いに
周囲の生徒達も気合が入る。
「竜族ばかりに良い格好させるかよっ!」
「俺達だって、まだまだやれるぜっ!!」
魔法による援護攻撃で、周囲を固めることにより
効率よく防御出来ていた。
「第ニ部隊、魔法攻撃っ!!
第三部隊、後退支援っ!!」
それは、戦いながらも部隊指揮をしている
アイリスの功績が大きい。
今までの経験と、種族間の問題が無い状態なら
彼女の指揮経験は、立派な武器となっていた。
一方、学園の本陣では
マリアが唸っていた。
「・・・私が前線に立てないとはなぁ」
正直な話。
マリアやオリビア、そしてセオラなど
大戦争で、その名を轟かせた者達が
最前線に立つことが被害を抑えるという点でも
理想的である。
だが、学園都市全体を使用した防衛線において
都市全体の防衛を考慮しつつ、その場の判断で
被害を最小限に抑える判断や指示を出せる者は
やはり実戦経験や部隊指揮経験を持つ者に限られてしまう。
本来ならば、自らが最前線に立ちたかったという想い。
だからこそ、戦況が伝わってくるごとに唸り声をあげてしまう。
・・・まあ単純に地図と、にらめっこというのも性に合わない。
「しかし、あの娘らに任せると決めたのだ。
それを信じてやらねばな」
一度大きく深呼吸をすると、矢継ぎ早に指示を出す。
「私が今、出来ることは被害を最小限にすることだ」
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「邪魔よっ!!」
咲耶の一撃で、ゴーレムが倒れていく。
魔導機兵に迫る彼女達は
その行く手を遮るゴーレムの集団を蹴散らしていた。
さすがに、学園都市の最高戦力だけあって
その殲滅力は、凄まじいものがある。
学園都市の激戦区よりも数が多いゴーレム達を
一瞬で壊滅していく。
「このまま駆け抜けるぞっ!!」
リピスを先頭にゴーレムの群れを抜け切る。
その時だった。
物凄い地響きが周囲に鳴り響き
地面が揺れているように感じる。
「な・・・あれはっ!?」
先頭に居たリピスが、驚きの声をあげる。
全員が、その声に釣られて
正面に視線が集まる。
山の手前にあった大きな森から出てきたのは
巨大な城塞のような建物。
それが移動しているのだ。
「移動要塞・・・ッ!?」
それを見たセリナも声をあげる。
「移動要塞って何なのっ!?」
フィーネも驚きを隠せない表情をしながらも
セリナに詰め寄る。
「移動要塞とは―――」
―――移動要塞
魔導機兵と同じく古代兵器の1つ。
城塞のような建物が巨大な魔力結晶によって
移動することから、その名がつけられた。
だがこれも魔導機兵と同じく
廃墟同然のようなものしか発見されておらず
動くことは、もちろん不可能であり
未知の部分が多すぎて手がつけられていないものである。
「―――ですから、完全に動くものなんて・・・」
「どうやら、相手は
よっぽど私達を脅威に感じているってことでしょうね」
セリナ達とは対照的に咲耶は、あくまで冷静に話す。
「これは、二手に分かれるしかないだろう。
知識のある私とセリナで、移動要塞を潰す。
フィーネは、要塞への道を確保して貰う。
当然、咲耶達への援護も頼む。
咲耶達は、魔導機兵の破壊だ。
無理そうなら足止めだけで構わない。
我々が城塞破壊後に、フィーネと合流して
そちらに向かうまで耐えてくれればいい」
「逆にこっちが先に全部潰して、援護に行ってあげますよ」
ニヤッとした顔で、そう言う亜梨沙に
全員が笑顔になる。
「全員、無事で勝ちましょうっ!!」
咲耶の掛け声に、全員で手を合わせて声をあげる。
そして綺麗に散開して走り出す。
絶望からの刺客
「風間流 山津波」
その一撃で、魔導機兵の片足が崩れ落ちる。
「風間流 水平連斬」
その一撃で、崩れた片足の代わりに地面についていた手が
潰されて魔導機兵は、盛大に倒れる。
何とか起き上がろうとした瞬間。
「―――風間流 五光」
2本の刀から放たれる一瞬の5連撃に
胸部にある魔力コアが破壊され、魔導機兵は機能停止となる。
彼女達もまた、数々の経験と知識により
更に上の力を手にしていた。
「へぇ、やるじゃない」
愉しそうな声で、腕の儀式兵装を振り回しながら
イリスは、亜梨沙の戦いぶりに感心する。
イリスの腕に当たったゴーレム達は
全て一撃で魔力コアごと吹き飛ばされて土塊となっていく。
「二人とも、強すぎるだけだと思うけどね」
横から飛んできた炎矢を盾で吸収した後に
正面のゴーレムに盾を向け直す。
「リバースッ!!」
盾から炎矢が出現すると、そのままゴーレムの魔力コアを貫いて破壊する。
「でもまあ、私は
私の出来ることをただやるだけ」
そう言いながらも、また1体のゴーレムを破壊する咲耶。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
「消えなさいっ!!」
巨大な炎が、周囲全てのゴーレムを飲み込む。
その中から無効種だけが無傷で現れるも
フィーネの薙刀によってあっさりと撃破されていく。
圧倒的な戦いで、次々とゴーレムを撃破し
その数を減らしていくフィーネ。
何度目かになる魔法を放った時だった。
「―――ッ!?」
放った魔法が、まるで跳ね返されるように
自分へと返ってきたのだ。
咄嗟に跳躍して回避する。
「さすがは、姫だ」
「・・・アナタは、確か」
フィーネの前に現れたのは―――
「私は、偉大なる貴族 ゴルダ=ハーン」
尊大な態度で現れたのは
かつて強硬派として人界との戦争を起こして
マリアによって処刑された1人。
今は、記憶が戻った瞬間に
魔界から追放されるという目に遭い
身を隠していた、ゴルダだった。
「自分から死ぬために出てくるなんて
・・・手間が省けて助かるわ」
そう言うと八翼を広げて魔力を収束させる。
「ファイア・ボール!」
巨大な火球をゴルダに向かって放つ。
だがゴルダは、逃げる様子も無く
少し大きめの盾を前に出す。
その盾に火球が直撃した瞬間だった。
「―――ッ!?」
火球が、跳ね返り
フィーネに向かって飛んできたのだ。
何とか横に跳躍して回避する。
「ふはははっ!
どうです、この儀式兵装の力はっ!!」
「・・・どうしてアナタが儀式兵装を2つも持っているのよ」
「さすがは、魔王の娘なだけはある。
そう、これは私が神より授かった新たな力だっ!」
「神から授かった?」
「そう、神だ。
魔界を追放された私に、神が現れた。
『世界を統べる力をやろう』と。
それがこの力。
かつて魔王が持っていた、四界最強の盾っ!!
全ての魔法を反射する圧倒的な力っ!!
そして更にこの翼っ!!」
そう言って翼を広げるゴルダ。
背中には、黒い八翼。
元は、二翼しかなかったはずのゴルダに
何故、八枚もの翼があるのか。
理由を考えていると咲耶の言葉を思い出す。
「(そうか、これが相手の干渉・・・)」
「私が、新たなる魔界の指導者となるのだっ!
手始めに、貴様や目障りだった王妃どもも
まとめて殺してくれるわっ!!」
「面白いこと言うじゃない。
そこまで言うからには、この場で殺されても
文句はないわよね?」
「くくくっ!
いかに魔王の娘とて、魔法の通じぬ私に
勝てる訳がないだろう!」
数秒ほど、両者は睨みあって
そして激突した。
同じ頃。
要塞の入り口では
2人が戦っていた。
「これでは、キリがないな」
リピスが思わずため息をつく。
それもそのはず。
先ほどから倒しても倒しても一向に数が減るようには
見えないからだ。
「・・・リピスは、先に行って下さい」
「いや、しかし―――」
「移動要塞をあまり前に進ませる訳には行きません。
万が一、学園都市が見える場所まで行かれたら
士気に関わります」
もし学園都市で戦う生徒達が
こんな巨大兵器を見てしまっては
大幅な士気の低下は、免れない。
「ここは、突破力のある方が
先に進むべきでしょう?」
「・・・わかった。
無理は、絶対にするなよ」
「もちろんです」
笑顔でそう答えるセリナ。
リピスは、一瞬にして正面の敵を撃破すると
そのまま駆け抜けていく。
それからしばらく、終わりの見えないゴーレムとの
戦いを続けている時だった。
周囲のゴーレム達が、突然攻撃を止めて
綺麗に整列する。
その様子が不気味で、構えを解かずに様子見をするセリナ。
「これは、これは。
誰かと思えば、神族王女様ではないですか」
丁寧な口調で1人の魔族が現れる。
「アナタは―――」
目の前に現れたのは
かつて、フィーネに敗れた魔族。
数々の被害を出した張本人。
ダレス=ドーレ。
「お初にお目にかかります」
丁寧な一礼をするダレス。
「アナタは、どうして『そちら側』なんですか?」
「・・・さすがは、二つ名を持つ神界期待の王女様ですね。
スグにそれに気づくとは、予想以上ですよ」
軽く咳払いをしてから、ダレスは語りだす。
「私は、自分の研究を思い通りに行えればそれでいい。
その環境を用意してくれる。
それさえ問題無ければ、あとは世界がどうなろうと
知ったことではないのですよ」
「・・・アイスジャベリンッ!」
セリナは、一瞬の隙をついて
突然の氷槍による攻撃を行う。
確実に捉えたと思った一撃だったが・・・。
「甘いですね」
そう言って儀式兵装の剣で氷槍を『切り払う』。
氷槍は、霧散して消えていく。
「―――それは」
「いや、私もね。
アレ以来、色々な知識が入ってきましてね。
そこから更に研究した結果。
どうやら種族を統一した方が効率的であるということが
解ったのですよ。
その研究結果がコレです」
仰々しく構えるダレス。
そして―――
「魔眼・・・開放ッ!!」
その言葉と共にダレスの瞳には
魔力が色を持つ。
「さあ今度は、こちらから行きますよっ!」
そう言うとセリナに向かって一直線に走ってくるダレス。
「たあっ!」
掛け声と共に迫ってきた
ダレスの一撃を防ごうとするも―――
「―――ッ!?」
剣状態の儀式兵装の刀身部分である
魔法剣が受け止めることも出来ずに切り裂かれる。
何とか横に回避が間に合うも
スグに距離を取るために、更に後ろに跳躍するセリナ。
驚きながらも剣状だった儀式兵装を槍に変化させる。
魔法剣である剣状態では、魔法を斬ることが出来る
魔眼相手では話にならないのは、先ほどの結果の通りだ。
「確か、神王 アルバート=アスペリアが
魔眼使いだったと聞いたことがあります。
どうですか?
お父上の得意とされた能力を相手にする気分は?」
「はっ!」
これが答えだとでもいうような
強烈な槍による一撃を、難なく受け止めるダレス。
「まあ、強化魔法が無ければこんなものですね」
そう言いながら翼を広げる。
灰色の八翼が展開される。
「神族ばかりを合成した結果
どうにも色の悪い翼になってしまいましたが
まあ八翼という力の方が重要でしょうか」
八翼による魔力収束で、一瞬にして強化魔法を使用するダレス。
「さあ、アナタも取り込んで差し上げましょう」
強力な強化魔法による一撃を
横に跳躍して回避するセリナ。
すると地面に当たった一撃で、大穴が出来る。
「(強化魔法も無しで受け止める訳には、いきませんね)」
和也の記憶を持つ彼女は、魔眼に対しての確かな
知識を持っているため、強化魔法などを全て切っていた。
そのため、圧倒的な力差が生まれてしまっている。
ダレスの動きに合わせるように
距離を取り続けて反撃の機会を探るセリナは
再び槍を構えるのだった。
そして、奥へと向かったリピスは
ようやく要塞の中心部である
動力部へと到達する。
中には、巨大な魔力コアがあった。
「・・・これを破壊すれば」
「そう簡単にいきますかな?」
突然声をかけられて、振り返ると
そこには、神族の老人が1人。
「・・・メリィから聞いている。
1人、首謀者が逃亡中だったとな。
よくもまあ、我ら竜族で遊んでくれたものだ」
目の前に現れたのは
かつてイリスを作り出した研究者の中心人物。
「遊んだなどと滅相も無い。
我々は、新しい兵士の研究をしていただけ」
「魔族といい、神族といい。
よほど兵士強化の実験が好きなのだな」
思わずため息が出る。
そうまでして、戦争がしたいのかと。
「まあ、我々にとっては
研究さえ出来れば、それでいい」
「・・・なるほど。
それがお前たちの『条件』か」
「・・・はっはっはっ!
さすがは、竜王女。
理解が早い」
「だが、残念だったな。
この私の目の前に現れた以上
生きて帰れるなどと、思うなよ」
「ふははははっ!
それは、こちらの台詞ですよ」
そう言うと、老人の身体に変化が起きる。
3mほどの大きさになり、背中には巨大な竜の翼。
顔も前に尖った形にとなって、頭には角が出てくる。
やがて見た目が完全に、ドラゴンとなってしまう。
「・・・なんだ、その醜い姿は」
「これぞ、金竜の始祖の力ッ!!
あんな『出来損ない(イリス)』とは違う
竜族本来の力を完全に解放した姿ッ!!」
「・・・どこまでも、竜族を侮辱するか」
儀式兵装を構えるリピス。
「さあ、我が実験の礎となれることを
喜ぶがいいっ!!」
1匹の竜と化した老人が
勢い良くリピスに飛び掛る。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
一方、ひたすら前へと進んでいたヴァイス達は
ようやく目当てのものを見つける。
そこには、一体の魔導機兵の姿。
亜梨沙達が戦っている魔法機兵とは
姿形が、少し違う改装されたものだ。
その魔力コアには、一人の魔族が埋め込まれていた。
それは、ヴァイス=フールスだった。
「やはり、存在していると思っていたよ」
学園都市に迫る、その魔導機兵を見たヴァイスが語り出す。
「かつて私は、力を求めた。
何者にも負けない、最強の力を。
だが結果は、この通りだ。
安易な力に頼り、自己研鑽をしなかったものの末路。
数多くの世界で私は、ただ自身の力に溺れ
他者を見下すだけの、どうしようもない屑だった」
一度、大きく深呼吸。
そして。
「だが私は、運がいい。
平行世界とはいえ、やり直す機会を得た。
そしてこうした自らの行いを省みることで
ようやく思い出すことが出来た。
何故、剣を手にしたのかという初心を。
私は、何のために強さを求めたのかということを」
「へぇ、そいつは何だい?」
隣に立つギルが、その先を促す。
「私は、憧れたのだ。
歴史書で語られる、戦場で活躍した者達達に。
人々を守るために、自らの命を賭して戦った者達に。
そして、未来を信じて戦った全ての勇者達にッ!!」
ヴァイスは、勢い良く儀式兵装の剣を手にする。
「だからこそっ!
目の前にある我が過ちを
自らの手で清算しなければならんのだっ!!」
目の前で魔導機兵のコアになっているのは
かつての弱かった自分。
そんなものを放置しておきたくはない。
だからこそ、誰よりも先に自分の手で潰すために
ヴァイスは、ここまでやってきたのだ。
「まさか、アンタから
そんな言葉を聞ける日が来るなんてなぁ。
・・・でもまあ、嫌いじゃないぜ」
双剣を構えて、ヴァイスより前に出るギル。
「自らの過ちを認め、前へと進む。
簡単そうに見えて実は、なかなか出来ることではない」
ギルとは、反対側からアレンが槍を手に前へと出る。
「私1人では、遺憾ながら破壊は不可能だろう。
だが、3人ならば破壊も可能なはずだ。
悪いが協力してくれるとありがたい」
「いいってことよ。
それに、こういう熱い展開も悪くはないってね」
「我が槍が、道を切り開こう。
存分に、本懐を成し遂げるがいい」
「うむ。
では、いくぞっ!!」
ヴァイスの掛け声で、一斉に飛び掛る3人だった。
絶望からの刺客 ―完―