Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
山の影から現れた巨大な魔導機兵。
だがそれは、上半身だけの出来損ない。
しかし―――
両腕をまるで二脚銃架のようにして
背中に背負った巨大な魔導砲を突き出した。
魔導砲が、設置されると
急激な魔力収束が起こる。
周囲のゴーレム達を解体してまで
一気に魔力を集めていくため
スグに発射可能な魔力が集まってしまう。
そしてそのまま発射体勢に入る。
狙いは、もちろん―――
「この方角は・・・学園都市ですっ!!」
「ダメッ!!
間に合わないっ!!」
魔導機兵を破壊しようにも距離がありすぎた。
そのまま無常にも魔導砲が発射された。
未来(あす)を信じて
轟音と共に光の束が駆け抜ける。
まさかの隠し技に、やられたと悔しがる亜里沙だったが
魔導砲の射線上に人影を見つける。
「・・・姫様ッ!?」
魔導砲から発射された光に、咲耶が立ちはだかるように立つ。
「モード・ドレインッ!!!」
咲耶の言葉は、一瞬にして魔導砲との衝突時に起きた
魔力衝突音でかき消される。
一瞬、後ろに飛ばされそうになるも
何とかギリギリの所で耐えるが、とてもではないが
あと何秒もつかも解らないほど、圧倒的な差だ。
儀式兵装にヒビが入る音がする。
それでも彼女は、諦めない。
強襲型魔法剣・紅を持っていた手の方も
そのまま盾を抑えるために、前へと突き出す。
「私は、護ると・・・誓ったのだからッ!!!」
彼女の魂の叫びに応えてだろうか。
1つの奇跡が起こった。
彼女が居る場所から上へと光が伸びる。
よく見るとそれは『紅』からだった。
そこで彼女は、紅の真の性能に気づく。
そして―――
「紅ッ!!
完全解放ッ!!!」
その瞬間、上へと伸びていた光が
巨大な柱と化す。
受け止めていた魔導砲の威力も
かなり抑えられていく。
紅は、本来
『外部の魔力を内部に取り込んで刀身を形成する』
という性質を持っている。
だから専用の施設で魔力を溜める必要がないのである。
その性質が、盾に吸収されずに零れ落ち
結局、魔導砲の魔力に戻ってしまう魔力を取り込み
入りきらない分を、勝手に刀身として出力したのだ。
これは、和也ですら知らなかったこと。
まあ、魔法を正面から吸収しようなんて
普通は、思わないので仕方がないと言える話ではあるが。
これにより、儀式兵装の盾と
魔法剣によって、かなりの魔力を受け止めることに成功する。
だが、それでも魔導砲の威力は
強力なものであった。
後ろに下げられる咲耶。
殺しきれない魔力によって体中に傷が出来るも
彼女は、決して逃げようとはしない。
「私は・・・絶対に、諦めないッ!!!」
その瞬間、世界全てが光に包まれるような感覚が起こる。
魔導砲を受け止めていた咲耶を中心に、周囲が光によって白に染まる。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
発光が止まり、ようやく周囲に色が戻る。
すると、発光の中心点には
防御姿勢のまま立っている咲耶の姿。
だが、すぐに咲耶は
その場で崩れ落ちるように倒れる。
「姫様ッ!!」
慌てて亜里沙が駆け寄って抱き起す。
「・・・どう?」
「・・・大丈夫。
気を失っているだけみたい」
イリスの問いかけに、ほっとした表情で答える亜里沙。
「そう・・・じゃあ、あとは任せたわ」
そう言うとイリスは
巨大な魔導機兵に向き直る。
上半身だけの魔導機兵は
再度、魔力を集めだそうとしていた。
「もう1発、撃つつもり?
悪いけど、その前に終わりよ」
イリスの儀式兵装から
単発式特融の大きな薬莢が排莢される。
そして金麟と魔力が、儀式兵装に集まる。
「・・・意外とやれるものね」
そう呟くイリス。
集まった金麟と魔力を練り上げるのは
本来、リピスしかしていないことのはずだが
イリスは、当然のように同じく魔力を練り込んでいた。
「まあ、これだけやれれば十分かな」
リピスほどではないが、それでもかなりの力が
彼女の手元で収束していた。
それは、かなり離れたこの位置からでも十分だと
思えるほどに強力な力。
「さっさと舞台から退場しなさい。
―――竜(ドラゴン)の咆吼(バスター)ァァァァァッ!!!」
放たれた一撃は、まるで竜のように
力強く一直線に飛び
巨大な魔導機兵の魔力コアを食いちぎるように貫いた。
コアが潰された魔導機兵は
音をたてながら崩れていく。
最後の魔導機兵が崩れた瞬間だった。
四界中のゴーレム達が、次々と崩れ去っていく。
初めは。何事かと思っていた者達も
それが自分達の勝利の合図だと知ると
その場で歓喜して喜んだり
泣き崩れて座り込む者など
様々な反応を見せた。
だが数分後には
四界は、勝利を喜ぶ声で満ち溢れた。
その様子を知った巨人は
怒りと疑問の声をあげる。
「何故ダッ!!
オ前達ハ、ドウシテソウ戦エルノダッ!!
絶望ニ支配サレ、世界ノ破滅ヲ願ッタ怨嗟ノ想イヲ
ソウ簡単ニ覆セル訳ガナイッ!!」
「・・・世界は、何も絶望している人だけじゃない。
希望を持って生きている者達だって数多く居るっ!!
未来(あす)を信じて、必死に生きているんだよっ!!」
「ナラバ、私ヲ倒シテ
証明シテミセヨッ!!
絶望ニ勝ル希望ナドトイウモノガ
本当ニアルノナラナッ!!!」
巨大な腕が和也に向かって振り下ろされる。
その瞬間―――
和也のはるか後方から
物凄い数の魔法が飛んできて
巨人の腕を破壊する。
和也は、驚いて後ろを振り向く。
すると―――
何もない地平線を埋め尽くす、人、人、人の波。
それは、決して途切れることなく続いている。
数えきれないほどの多くの人が
こちらに向かって歩いてきていた。
その人々の先頭を歩く者達を見て
和也だけでなく、巨人ですら息を呑む。
先頭に見えるのは、各種族の歴代の王達の姿。
後ろに続くのは、歴史書に載っているような
有名な戦士から、その名すら忘れらされたような
名も無き戦士まで、階級や種族に関係なく勢揃いしていた。
「一体コイツラハ、何処カラ現レタノダッ!!
我ガ世界ニ干渉ナド出来ヌハズナノニッ!!」
巨人が支配する世界では
干渉力によって送り込まれた和也以外は
入れないはずの世界。
だが―――
「これこそが人々の希望の力。
アナタの対極に位置する力よ」
それは、何処からともなく聞こえてきた声。
希望の化身である少女の声。
一定の距離まで近づくと
一斉に儀式兵装を手にして
突撃を開始する。
彼らの声は、世界を揺るがすほどの叫び。
魂の叫びとも言えるその迫力に
巨人は、無意識に一歩後ろへと下がる。
この瞬間、絶望の化身である巨人は
初めて『恐怖』という感情を知る。
未来を信じて戦い、そして散って逝った者達が
世界のために、再び剣をとって立ち上がる。
この奇跡に、思わず涙がこぼれる。
途切れることのない人の波に背を向け
巨人に向き直る。
「これが・・・俺達の答えだっ!!!
俺達はッ!!!
決して絶望に屈しないッ!!!!」
そう叫びながら、和也も巨人に向かって駆け出す。
これは、一人の少年の物語。
彼は、壮絶な人生を経験してもなお
絶望に屈せず、希望と未来を信じて歩き続けた。
その軌跡の物語。
・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
気が付けば光の中に居た。
ふと視線を感じてそちらを向く。
「本当に、貴方を選んでよかった」
そこには、見覚えのある姿。
希望の化身・久遠。
「ああ、何とかなったよ」
思わず和也は、苦笑する。
「それで、これからなんだけど・・・」
「なんだ? まだ何かあるのか?」
「いいえ。
これからやるのは、世界の作り直し」
「作り直し?」
「私達の力の影響で
世界は、本来の姿からかけ離れすぎた。
そして元に戻すことも不可能。
だから作り直すしかないの」
「・・・そっか」
「そこで、貴方にお願いがあるの」
「・・・ん?」
「世界を作る際の基準を貴方に任せようと思うの」
「おいおい、勘弁してくれ。
そんな責任、欲しくないよ」
「これは、世界のために戦ってくれた
報酬みたいなものだと思ってくれていいわ。
もう消えてしまう私に代わって
世界を作って欲しいの」
「・・・その世界は
どんな世界でもいいのか?」
「ええ、貴方に任せるわ」
「・・・よし。
―――なら」
和也は、心の中で世界を創る。
その一端を見た久遠は、思わず声をあげる。
「ちょ・・・ちょっとっ!!」
「だって、何でもいいんだろ?」
不敵な笑みでそう答える和也を見て
久遠は、不満そうな顔をするが
スグに表情を変える。
「・・・なら、私も1つ干渉しちゃおうかな」
そして、世界は創り直された。
それは『絶望の干渉』が一切無かった世界。
大戦争も、竜王の乱心も、神王の病気も
かつて絶望が干渉したが故に生まれた世界の歪みを
全て『無かったこと』にした世界。
そこでは、多少の種族間のいざこざはあるものの
争いの無い、平和な世界。
大戦争で戦死した者達も、大戦争が無くなり
普通に生活していた。
そんな世界の空に
世界を覆うほどの巨大な魔法陣が出現する。
そして『記憶の継承』が行われる。
様々な記憶が世界中の人々の中に現れる。
かつて、大戦争というものが起こり
世界が争いに包まれる世界を。
いくつもの世界の果てに
世界の命運をかけた壮大な戦いがあったことを。
一人の人族の少年が
世界のために戦い続けたことを。
それら全ての記憶が継承された瞬間。
再び世界は、歓喜に包まれた。
そして死別した者達と、こうしてまた
暮せているという奇跡に感謝した。
―――そして半年後。
学園都市に向かう道を
1組の冒険者が歩く。
フードを深く被り
寄り添うように歩いている。
「・・・まったく、視界が悪くて仕方がない」
「なら、フードをとれば?」
「・・・解ってて言ってるだろ?」
「さあ?
どうかしらね?」
あれから、2人は世界を見て回った。
何より自分の目で世界を見たかったのだ。
そうしてようやく、この学園都市へと帰ってきた。
「まさかこんなに有名人になるとはな・・・」
「世界を救った英雄だもの。
仕方がないのではないかしら?」
「・・・誰のせいだと思ってるんだよ」
和也は、今の世界を創った際
隣に歩いている『消えるはずだった』久遠を
一人の人間として世界に誕生させたのだ。
まさかそんなことをするとは思っていなかった久遠は
和也のそんな願いの1つに、ささやかながら抵抗すべく
今までの世界の記憶を、世界全ての人々に
継承させるという干渉を行った。
そのせいで、こうしてフードで顔を隠していなければ
どこの誰に出会っても、騒ぎになってしまうのだ。
適当なやり取りをしながら学園都市の門の前まで来る。
「・・・あれ?」
和也は、思わず首をかしげる。
普段は開きっぱなしの門が
閉じられているのだ。
「何かあったのか?」
そう言いながら門へと近づく。
そして門の目の前まで来た時だった。
「開門ッ!!!
世界を救った英雄のご帰還だッ!!!」
「一番初めに英雄をお迎え出来るとは
光栄でありますッ!!!」
2人の門兵が最上級の敬礼をしながら声をあげる。
和也が驚いている間に
門が大きな音をたてながら開く。
すると―――
街は、お祭りのような騒ぎだった。
真ん中の道だけ開けられ
左右には、これでもかというほどの人。
皆が歓声をあげている。
「さあ、どうぞっ!!
お通り下さいっ!!」
門兵に促され、2人は道を歩く。
2人の姿が見えると
歓声は、悲鳴に聞こえるほど騒がしくなる。
そんな中を驚きながらも歩いていく。
やがて学園フォースの門が見える。
その門の前には―――
魔王と魔王妃。
神王と神王妃。
竜王と竜王妃。
天保院家と風間家。
そしてその関係者達。
更に
フィーネ。
リピス。
セリナ。
亜里沙。
咲耶。
エリナ。
イリス。
後ろには、アイリス達や
ヴァイスやギル達も笑顔で立っていた。
「ほら、ボケっとしてない」
後ろから久遠に押されて
前に出る。
「・・・ただいま」
何を言うか迷ったが
やはりこれだろう。
数秒ほどの沈黙の後
「和也ぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
彼女達は、眩しいほどの笑顔で
和也に向かって走り出すのだった。
未来(あす)を信じて ―完―
Tiny Dungeon Another Story ―完結―
まずは、最後まで読んで頂きありがとうございます。
ついに完結致しました。
初めは、こんな大作になると思っておらず
思いがけない1年超えの作品となりました。
思い返せば、当初の予定から
かけ離れたシナリオになり、何度修正したか
覚えていないほどです。
元々は、本家作品の番外編というかFDのような作品である
Endless Dungeon
の製作発表前から始めた企画であり
本家とのネタ被り(妹キャラ・2人目の金竜など)もあり
色々な意味で良い経験をさせて頂いたと思っております。
誤字脱字など、次回作への反省点も多い内容ではありますが
とりあえずは、完成出来てよかったです。
今、読み返すとはじめの方は
何故あんなに本家に寄り添ったシナリオだったのか
自分でも疑問です(笑)
正直、ここまでオリジナル路線でやるなら
完全オリジナルでも良かったかも?と思ったりもしましたが
本家作品があったからこそ、これだけの話が書けただけの話であり
二次だからこその良さもあると再確認も出来ました。
大世界杯(学園都市全てを使ったチームデスマッチみたいなもの)
とかのネタも当初は入れていく予定をしていたのですが
結局は、入れず仕舞いになってしまいました。
まあ機会があれば、おまけ的な感じで
どこかで書けることがあるといいなとは思っています。
少しだけ休憩を挟んでから
見切り発車して失敗した問題作を何とかすべく
作業に戻りたいと思います。
最後になりましたが
初心者の初作品であり、このような駄文にも関わらず
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
もしよろしければ
次回作以降でも、お会い出来ると嬉しいです。
本当に最後まで読んで頂きありがとうございました。