Tiny Dungeon Another Story 作:のこのこ大王
ドクッ、ドクッ。
自分の鼓動が早くなるのを感じる。
この学園で何度戦っても、この瞬間だけは緊張する。
?「大丈夫よ、私。
それに今日は、先輩と戦えるのだから」
大きく深呼吸をする。
その時、肩に誰かの手が触れた。
?「もう、相変わらず緊張してるの?」
困った子ねと言うような、少し優しい声が聞こえる。
その声を聞いた瞬間、身体から緊張が驚くほど無くなっていく。
振り返るとそこには、いつもの優しい顔をしたレア先輩が居た。
レア「試合前に必要以上の緊張をしてしまうのは、アンタの悪い癖よ」
肩に少しかかる程度の髪に、さっぱりとした性格。
階級を1つでも上げることが難しいと言われるこの学園で
現在5階級であり、その人柄から皆に慕われる人。
名前は、レア=レイセン。
私の大好きな人。
レア「イオナは、もう3階級だし
実力もちゃんとついてきた。
もっと自信を持っていいんだから」
イオナ「はい、先輩っ♪」
私の名前は、イオナ=リハート。
神族であり現在3階級。
ごく普通の家庭で生まれて、子供のころからいつも一緒だった
先輩に憧れて、先輩を追って戦士を目指した。
フォースの入学試験は、想像以上に厳しいものだったが
それでも入学して、私は先輩と同じ学園に通えるようになった。
階級が違うため、学園内では休み時間ぐらいしか一緒に居れないが
それでも寮の部屋は、同じだ。
私の全ては、先輩と共にあると言ってもいいほどである。
闘技場の方で歓声が大きな歓声が聞こえたかと思えば
その直後に、控え室の外から声が掛かった。
レア「じゃあ、いこうか」
イオナ「はいっ!」
そして私達は、闘技場に向かう。
第6章 激戦の闘技大会 ―後編―
闘技場では、歓声が上がる。
他のチームは既に開始位置におり、自分達が最後のようだ。
闘技大会チーム戦。
この戦いは、ペア戦を申請した生徒のみが
先に行われた個人戦の代わりとして戦うものだ。
同時に5チームが戦闘する乱戦で、3チームが脱落すれば終了となる。
注意しなければならないのは、自分と相棒のどちらかが
戦闘不能になった時点でチームとして失格になってしまうという点だ。
チームワークはもちろん、乱戦をどう立ち回るかというのも
重要になってくると言える。
セオラ「それでは、ペア戦の試合を開始します」
竜族のセオラ先生が開始の宣言をしようとしている。
私は、さっと周囲の相手を見る。
やはり注意すべきは、5階級の神族ペアと
同じく5階級の魔族ペアだ。
正面からぶつかることは避けたい。
セオラ「では、はじめっ!!」
開始宣言と共に再び沸き起こる歓声。
レア「あらら。
いきなり狙われたわね」
儀式兵装を手にしながら先輩は、後ろに居る私に
聞こえるように声を出す。
先輩の儀式兵装は、片手で扱えるほど少し短い槍だ。
魔力が錬りこまれ通常より硬い、小型の盾も装備している。
私も慌てて武器を出す。
弓タイプの儀式兵装だ。
先輩の言葉に、私は前を見る。
魔族男生徒A「もらったっ!」
いつの間にか接近していた男は
そう叫びながら剣を振り落としてくる。
狙いは、私だ。
しかし―――
ガンッ!
硬い金属音と共に私の前に現れたのは、先輩だった。
レア「アタシを無視しないで欲しいんだけど?」
盾で軽く防ぎながら、先輩は余裕の笑みを浮かべる。
その瞬間、私は反射的にバックステップを踏みながら弓を構える。
そして魔力により生成された矢を一瞬で放つ。
まるでレアを避けるようにレアの横を抜けた瞬間
矢は、急激に曲がって男生徒を狙う。
魔族男生徒「ちっ」
後ろに軽く下がって矢を避けるが
今度は、レアの槍が迫る。
ガキィン!
レアの一撃を防いだのは、魔族の女生徒だった。
魔族女生徒「無茶しないでくれる?
アンタがやられたら、負けになるって言ったでしょ」
受け止めた一撃を弾くと、男生徒と共に後ろへ跳躍して距離を取る。
相手は、5階級魔族で何かと話題になる2人。
レイス=ジャハル
ファナ=リドルド
男女の魔族コンビだ。
どうも子供のころからの幼馴染らしく
何かと一緒に居ることも多いのだが
よく痴話喧嘩の絶えない2人だそうだ。
そのわりには、何だかんだで一緒に居るので
『恋人同士では?』という噂が、定期的に出るが
それを毎回2人が否定しているという
関係の良く解からない2人。
レイス「うるさいなぁ。
わかってるって」
ファナ「わかってるなら、どうして勝手に行くのよ」
レイス「様子見だよ、様子見。
ちょっと仕掛けてみただけじゃないか」
ファナ「ホント、昔からバカなんだから」
レイス「へいへい、悪かったですよ」
戦闘中だと言うのに、口論を始める2人。
レア「・・・はいはい。
夫婦喧嘩は、違う所でやってくれない?」
レイス「誰が夫婦だっ!」
ファナ「誰が夫婦よっ!」
見事にハモる2人に思わずレアとイオナは、笑い出す。
ファナ「ああ、もう。
思いっきり恥ずかしいじゃない」
そう言いながら後退していく女生徒。
レイス「おいおい、俺のせいか?」
何だか不満そうにしながら、男生徒も後退する。
イオナ「さすがに、退却判断も素早いですね。」
レア「まあ、あの2人も5階級だからね」
このチーム戦は、一気に攻めかかることが有効とはかぎらない。
他チームの動向にも注意しなければ、横槍もありうる。
目の前のチームを撃破した瞬間に後ろから何てことも想定しなければ
勝ち残れないのだ。
レア「それにしても、さっきの2人。
いつも仲良さそうなんだよねぇ。
・・・恋人なのかな?」
イオナ「どうなんでしょう?
そんな雰囲気は無かったような気しますけど」
レア「いいなぁ、恋人。
私も頼れる人が欲しいかなぁ」
イオナ「せ、先輩っ!
それなら・・・わ、私がっ!」
レア「・・・イオナは、可愛いなぁもう」
顔を真っ赤にして、こちらに好意を向けてくれる後輩が
たまらなく可愛く思え、思わず抱きしめる。
レアがイオナに抱きついているころ、反対側でも
既に戦いは、始まっていた。
竜族生徒A「はぁぁぁっ!!」
渾身の一撃が神族生徒に迫る。
神族男生徒1「くぅっ!!」
水盾に儀式兵装の剣で防ぐも、竜族の一撃に耐え切れず
後ろに大きく吹き飛ばされる。
神族男生徒2「くそ、援護するぞ」
竜族生徒B「そう簡単には、行かせないよ!」
竜族生徒に上手く立ち回られ、分断されてしまう神族生徒。
自分達は5階級であり、相手は1階級の生徒だと侮ったため
不意を突かれた彼らは、完全にペースを竜族ペアに握られてしまう。
神族男生徒2「邪魔をするなっ!
ウォーター・アローッ!」
竜族生徒B「そんな攻撃当たらないよっ!」
撃ち出される際に強力に圧縮され、その水圧で相手を切り裂く水の刃だが
その刃となっている部分にさえ当たらなければ、ただの水である。
特徴を理解していた竜族生徒は、刃の部分を綺麗に避けた。
神族男生徒1「くっそっ!
調子に乗るなよっ!」
一方、吹き飛ばされた神族生徒も立ち上がり反撃を行う。
神族男生徒1「くらえっ!
アイス・アローッ!!」
氷矢を3本連続で撃ち出す。
竜族生徒A「こんなの楽勝っ!!」
そう宣言する通り、相手に向かって走りながら
飛んでくる氷矢を全て避ける竜族生徒。
神族男生徒1「ちくしょうっ!
こいつら本当に1階級なのかよっ!」
そう言いながらも水の強化魔法を剣にかける神族生徒。
竜族生徒A「せいやっ!!」
ガキンッ!!
儀式兵装同士がぶつかり、軽く火花が散る。
神族生徒は何とか受け止めるも、よろけながら後ろに下がる。
距離が空くことを嫌った竜族生徒は、更に相手に迫ろうと前に出る。
しかし―――
神族男生徒1「待ってたぜっ!
アイス・ウォールッ!!」
魔法により、竜族生徒を囲むように氷の壁が出来上がる。
竜族生徒A「あっ、まず・・・」
神族男生徒1「砕けろぉぉぉぉ!!!」
叫び声と共に爆発する氷の壁。
爆発した煙から逃げるように飛び出してきたのは
防ぎきれなかった魔力ダメージと氷の欠片による
物理的なダメージにより身体中に切り傷を負った
竜族生徒だった。
竜族生徒A「いったぁ~ぃ・・・」
竜族生徒B「ちょっと、大丈夫!?」
竜族生徒A「・・・まあ、何とか」
神族男生徒1「俺達5階級を舐めるなよっ!」
神族男生徒2「フォースで俺達は、必死に努力してきたんだっ!
入ったばかりの奴らに負けるかよっ!!」
フォースは、その入学・進級の難しさもあり
上の階級になればなるほど、その自信からか
プライドの高い者が多くなる傾向が強い。
まして下の階級に負けるなど、本来はありえないのだ。
竜族生徒B「一旦退くわよ」
竜族生徒A「りょ~か~ぃ」
形勢が不利だと判断した竜族ペアは、撤退を開始する。
神族男生徒1「黙って逃がすと思うのか?」
神族男生徒2「このまま仕留めてやるぜっ!」
逆転して攻勢に転じている神族ペアは、この流れを維持したい。
そのため追撃を仕掛けようとする。
逃げる竜族ペアを追いかけ、距離を詰めたその瞬間だった。
?「フレイム・ピラーッ!!」
神族・竜族ペア両方を巻き込むような位置に
突如発生する巨大な炎の柱。
竜族生徒B「くっ!」
神族男生徒2「くっそっ!!」
咄嗟に回避行動を取った4人だったが、2人が逃げ遅れ
炎柱に巻き込まれ、ダメージを受けながらも外へ飛び出す。
?「逃がすかっ!
ファイア・アローッ!!」
3本の火矢が、一番ダメージを受けた神族男生徒に向かって飛ぶ。
神族男生徒1「させるかっ!
ウォーターシールドッ!」
水盾により火矢は、消されてしまう。
そして神族・竜族ペアは、攻撃魔法が飛んできた方角を向くと・・・
魔族男生徒α「ちぃ、惜しかったか」
魔族男生徒β「まあ、ダメージは与えたんだ。
これからが勝負だぜ」
今まで隠れていた3階級の魔族チームが姿を現す。
神族男生徒1「ふんっ、これだから魔族は・・・」
竜族生徒A「卑怯・・・とは言えないけど、邪魔だよねぇ」
想定内とはいえ、実際に三つ巴になると
どんな流れになるか、誰も予想出来ない。
どうすれば上手く立ち回れるのか。
生き残るためには、勝つためにはどうすればいいのか。
それぞれのペアが互いにけん制しながら必死に考えている時だった。
風を切る音と共に迫る高速の矢。
地面スレスレの位置を飛んでいたため、発見されずに飛び続ける。
そして矢は目標の手前で急激に上昇した。
魔族男生徒β「―――なッ」
自分達が優位だと慢心していたからか。
それとも自分達が奇襲をかけた側という気持ちからか。
足元から急激に迫る高速の魔力矢に対処出来ず
その一撃をまともに喰らった魔族生徒は、その場に倒れこむ。
判定ネックレスが砕けて回復効果が発動する。
セオラ「判定ネックレスの発動を確認っ!
チームの脱落としますっ!!」
一瞬の出来事に静まり返っていた会場がドッと騒ぎ出す。
神族・竜族ペアは咄嗟に互いに距離を取ると
矢の飛んできた方角を確認する。
レア「さっすがイオナ。
アタシの自慢の後輩だわ」
イオナ「いえ、先輩の指示通りに撃っただけです」
儀式兵装の弓を構えたままで、イオナはそう応える。
魔族男生徒α「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!」
相棒がやられ、自身も敗退してしまった悔しさからか
叫び声をあげる魔族生徒。
そう、これは5チームによるサバイバルだ。
一瞬でも気を抜けば、それは致命的な隙となってしまう。
神族男生徒1「くそ、先を越されたか」
神族男生徒2「だが、まだまだこれからだ」
?「それはどうかしら?」
神族生徒達「!?」
自分達の後ろから声が響く。
突如飛来するファイア・アローに2人は
二手に分かれるように跳躍して回避する。
そこへ更に―――
レイス「もらったっ!!」
いつの間にか回り込んでいた、初めにレア達と戦っていた
レイスが神族生徒に攻撃を仕掛ける。
神族男生徒2「ぐあっ!」
咄嗟に剣を受け止めるも、相手の儀式兵装には
強化魔法がかかっていたため、受け止めきれず
押し負けて吹き飛ばされる。
神族男生徒1「くそっ!
不意打ちしか出来ないのか、魔族はっ!!」
ファナ「そうやって自分の無能を他人のせいにしてなさいっ!」
5連続で発射されるファイア・アローに
水盾を張るタイミングが取れず、逃げ回る神族生徒。
レイス「そらそらっ!
同じ5階級なら、もっと反撃してみろよっ!」
接近戦に持ち込まれ、儀式兵装の剣で撃ち合うも
今までのダメージが蓄積された身体が、思うように動いてくれず
防戦一方になる神族生徒。
もう片方も、魔法による援護射撃に重点を置いた攻撃に
相棒を助けに行くことが出来ない。
邪魔をするファナを倒そうとするも
魔法による攻撃が的確で、接近することが
なかなか出来ない。
結局魔法の撃ち合いになってしまい
時間を稼がれてしまっている。
こうなると、もはや神族男生徒2がどこまで耐え切るかが
勝負の分かれ目となりそうだった。
イオナ「さて、先輩。
次はどうしますか?」
レア「ん~。
まあ相手から来てくれてるし
竜族の子の相手かな」
レアのその言葉で自分達が気づかれていると察して
物陰から一気に飛び出す竜族ペア。
左右から同時に来る儀式兵装の手甲による打撃。
ガシャンッ!!
少し鈍い金属音が混ざった音が響く。
レア「残念ながら、イオナの方には行かせない」
竜族2人の一撃を、儀式兵装の槍と小型の盾で
防いでしまうレア。
上手く相手の力を逸らして綺麗に受け止めたレアを見て
竜族ペアは、驚きの顔を浮かべる。
竜族生徒B「ま、まだまだっ!」
接近状態から蹴りを放とうとする竜族生徒だったが・・・
イオナ「させないっ!」
イオナの放つ魔力矢が竜族生徒に迫る。
竜族ペアは、何とかそれを回避すると後ろに下がろうとする。
レア「そう簡単に下がらせないっ!」
蹴りを放つ前に攻撃を回避し、バランスが崩れていた竜族生徒に向けて
レアが槍による連続突きを繰り出す。
しかしさすが竜族というべきか。
器用にすべての攻撃を回避する。
その動きの良さにレアは関心しながらも
竜族生徒の左側面に回り込むために左に移動する。
その瞬間、竜族生徒は眼を見開いて驚いた。
レアが退いたスペースから魔力矢が飛んできたのだ。
それは、ほんの少しでもレアが横に移動するのが遅ければ
レアに当たっていたであろうタイミングで。
竜族生徒B「ちょ、嘘ッ!」
魔力矢を反射的に回避するも、同時にレアからの
槍による横薙ぎを防ぎきれずに吹き飛ばされる。
レアとイオナの互いを信頼しているがゆえの
コンビネーション攻撃と言える。
常に一緒に居て、互いを熟知しているからこそ
このような見事な連携が可能なのだ。
更に追撃を仕掛けるために吹き飛んだ竜族生徒に向かって
走ろうとしたレアだったが・・・
竜族生徒A「行かせないっ!!」
割り込んできた竜族生徒の一撃を防御するも
後ろに後退させられてしまう。
竜族生徒は、更に追撃をかけようとするも
魔力矢が飛んできて思わず後ろに下がる。
すると体勢を立て直したレアが、攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃を回避してレアの右側に回り込もうとした瞬間だった。
竜族生徒A「ちょっ!?」
まるでそこに来ることが解っていたというように
魔力矢が飛んでくる。
それを何とか回避すると、目の前から槍の連続突きが来る。
槍を手甲で弾くと、急にレアが下にしゃがむ。
その動きに思わず視線が下に行きそうになって気づく。
まるで後ろから矢が飛んできているのを知っていたかのような
タイミングでしゃがんだのだ。
咄嗟に矢を避ける。
体勢が崩れた所に、レアの立ち上がりながらの槍による
振り上げ攻撃が迫る。
手甲で受け止めるも弾かれて後ろに下げられてしまう。
その瞬間、槍を回して逆に持ったレアが石突で
竜族生徒の腹を突く。
バチッ!
魔力の乗っていない一撃だったため、気麟によって弾かれるも
物理的な勢いに押されて竜族生徒は、たまらず後ろに下がる。
下がる竜族生徒にレアが不気味に追いすがる。
本来、接近戦の得意な竜族相手は
距離を取って戦うのがセオリーだ。
なのにあえて距離を詰めてくるレアを警戒して
竜族生徒は、防御の構えのまま様子見を決め込む。
だが、それこそレアの狙いだったと
気づいた時には既に遅かった。
竜族生徒B「いったぁ~」
ようやく、よろよろと立ち上がる竜族生徒。
彼女が、ふらつきながらも前を見た瞬間だった。
目の前から魔力矢が3本飛んでくる。
何とか身体を動かして、回避しながら後ろに下がる。
そんな竜族生徒に対して
更に5本の魔力矢が飛んでくる。
咄嗟に身構えるも、5本とも竜族生徒に向かって飛んでおらず
彼女の周囲の地面に刺さるだけだった。
焦った追撃で、狙いが悪かったのか?
そんな考えが頭を過ぎった瞬間だった。
竜族生徒B「!?」
足元が突如、魔力によって光りを発する。
よく見ると地面に刺さった矢は、自分を中心として
綺麗に五芒星の形をしていた。
イオナ「迂闊だったわね。
これで終わりよっ!」
イオナの足ともに魔法陣が出現する。
二翼を広げ、弾装を使用した全力の魔力チャージで
魔法を発動する。
イオナ「マジック・ペンタグラムッ!
フルバーストッ!!」
イオナの叫び声と共に五芒星は、大爆発を起こす。
そして煙が消えると
竜族生徒B「・・・」
倒れこんで気絶している竜族生徒の姿が出てきた。
判定ネックレスも砕け、彼女に回復魔法がかかっている。
竜族生徒A「あっちゃ~」
セオラ「判定ネックレスの発動を確認っ!
チームの脱落としますっ!!」
場内に湧き上がる歓声。
竜族ペアも頑張ってはいたものの
連戦によるダメージの蓄積と、戦闘経験の差が
明確に出てしまったといえる試合展開だった。
一方そのころ、5階級同士の戦いにも
決着の時が近づく。
神族男生徒2「くっそ・・・」
ひたすら障害物を利用して逃げ回っていたが
体力的にそろそろ限界だった。
思ったよりフレイム・ピラーの一撃が効いていたようで
足取りが重い。
何とかレイスを振り切ったが、まだ周囲に居るようだ。
ここで見つかれば一気に勝負を決められてしまうため
だたひたすらに身を隠すしかない状態に、悔しさからか
儀式兵装を握る手に力が入る。
神族男生徒1「なんてしつこいんだっ!」
徹底的にファナにマークされ、邪魔され続けていた
神族生徒は、完全に孤立して相棒の援護に行けない状態だった。
しかしこのままでは負けてしまう。
そう判断した神族生徒は、必勝の魔法に全てを賭ける。
神族男生徒1「ウォーター・アローッ!!」
自身が出せる最大数である5本の矢を用意すると
全てファナに向けて発射する。
ファナ「何度同じ攻撃をしても無駄よっ!
ファイアシールドッ!!」
神族生徒の攻撃は、ウォーター・アローと
アイス・アローばかりだった。
そもそも魔族と比べると攻撃魔法に種類が無い
神族では、むしろそれが普通のレベルだ。
だからこそ、何の違和感も持たなかった。
しかし今回は、矢の数の多さに対抗するため
弾装を使用した全力で炎盾を展開する。
弾装による底上げもあり、全ての水の刃を防ぎきる。
攻撃を防がれたはずの神族生徒だったが
その口元には笑みがあった。
そう、全て予定通りなのだ。
神族男生徒1「かかったなっ!
アイス・ウォールッ!!」
ファナ「しまっ―――」
何度も同じような攻撃だったために一瞬の油断が生まれ
それを正確に突かれてしまう。
正面からの攻撃に気を取られ、足元からの変則的な攻撃にまで
注意が行かず、氷の壁に囲まれ退路を絶たれる。
神族男生徒1「これで終わりだっ!」
これで終わりだ。
これで決まった。
これで勝った。
神族生徒は、既に勝利しか頭になかった。
必勝の魔法が決まり、完全に油断してしまっていた。
?「ああ、確かにそうだな」
神族男生徒1「なっ!?」
それは勝利を確信していた心を鷲掴みにするような
鋭く殺気立った声だった。
ブシュ!!
神族男生徒1「な・・・なんでこっちに・・・」
振り向くよりも早く、背中を大きく斬られて
その場に倒れる神族生徒。
術者が居なくなり、氷の壁は何もなかったように綺麗に無くなる。
一対一だと思い込んでいた神族生徒にとって
後ろからの奇襲は、まさに想定外だった。
セオラ「判定ネックレスの発動を確認っ!
これにより、3チームの敗退となり
試合の終了としますっ!!」
試合終了宣言に盛り上がる会場。
突然の試合終了に、何事かと神族生徒2は
物陰から飛び出して状況を確認する。
そして負けたことを知り、その場で膝から崩れ落ちた。
ファナ「・・・ちょっと。
遅かったじゃない」
レイス「ちょうど良いタイミングだったじゃないか」
ファナ「さっさとアンタがあっちを倒してれば問題なかったでしょ」
レイス「意外とアイツ逃げるのが上手くてさ。
だからこっちに切り替えたんだよ」
ファナ「昔から自由気ままなんだから・・・」
レイス「結果オーライだろ。
それに助けてやったのに、感謝ぐらいしてほしいもんだな」
ファナ「はいはい。
アンタが予定通りにあっちを倒してくれないおかげで
ピンチになったところを助けてくれて
あ・り・が・とっ!」
レイス「・・・可愛げのない奴」
ファナ「うっさいわね、バカッ!」
レイス「いってっ!
傷口を叩くなよっ!!」
ファナ「知らないわよ、バカッ!
鈍感ッ! 朴念仁ッ!」
レイス「今、それ関係ないだろっ!」
ファナ「関係あるわよッ!!」
レア「・・・やっぱり夫婦喧嘩じゃない」
レイス「誰が夫婦だっ!」
ファナ「誰が夫婦よっ!」
誰がどう見てもそうにしか見えない夫婦喧嘩をしながら
2人は帰っていった。
レア「いや~。
恋人って羨ましいなぁ~」
イオナ「な、何でいきなり抱きつくんですかぁ・・・」
レア「イオナって抱き心地がいいんだよねぇ~」
イオナ「まあ、せ、先輩ならいいですけど」
まんざらでもない顔をしながら大人しく抱きしめられるイオナ。
こうしてまた試合が1つ終了するが
この数分後には、次の試合が行われるだろう。
個人戦と違い、勝った喜びも
負けた悔しさもペアを組んだ相手と共に分かち合う。
闘技大会は、こうしてペア戦も終了し
その幕を閉じることになった。
そしてこの闘技大会をきっかけとして
それぞれに動き出した者達が居たことを
和也達は、まだ知らなかった。
第6章 激戦の闘技大会 ―後編― 完
闘技大会編が終了となります。
いかがでしたでしょうか?
これで一応戦闘回は、一旦お休みして
日常回に戻る予定です。
今回のペア戦は、予想外に書く時間がかかってしまい
皆様には申し訳ありませんでした。
そもそも本来、和也がペア戦に出場する予定でした。
しかし和也の強さをある程度表現しておくには
ペア戦では不十分だと考え、その結果として
今回のペア戦そのものを再度考え直さなければならず
もっと後半で登場予定だったレアとイオナの登場回と
することになった経緯があります。
ペア戦の中身についても対戦チームに
フィーネやリピスを入れる案や
神族王女姉妹ペアなども候補にあったりしたのですが
全体的なバランスを考えてボツにしたりと
色々苦労させられました。
また仕事の都合でシナリオにあてる時間が
減ってしまっているのも原因の1つでは
ありますが、まあこれに関しては
今後、配信の予定などを含めて
活動報告にて詳細を発表させて頂く予定です。