東方青透園~the Blue Sky of Myth Archive 作:架空柿
大きく揺れる執務室。徹夜明けでダウンしていたその部屋の主、"先生"でさえも目覚めた。
"何事!?"
周囲を見渡す先生。しかし、かつての爆発のようなことは起こっておらず、疑問だけが残る。そこで、先生は頼れる秘書に何が発生したのかを聞くことにした。
"アロナ、今何が起こったか分かる?"
「は、はい……ですがこれは信じられません……!」
"どうしたの?"
かつて無い程に焦りを見せるアロナ。それと対照的に、プラナは冷静沈着に淡々と起こった出来事を話す。
「このビルの屋上に神社が落ちてきました」
"何て?"
「神社です。見に行った方が早いかと」
"そうするよ"
先生はシッテムの箱とカードを持ち、駆け込むようにして扉を出る。余談だが、先生が去った後、積み重なった書類が倒れ、終わったものと終わってないものが混ざり、地獄を見ることは蛇足である。
とてつもない速度で屋上に出ると、確かにそこには緑色の屋根を持った古風な神社が存在していた。そして屋上の一部が破壊されている。
"なんてことだ……"
先生は神社に近づこうとした。しかしその瞬間、弾丸ではないエネルギー弾のようなものが先生の真横を通りすぎていった。そして、声が先生の耳に響いてくる。
「……誰? 私の弾幕を避けるなんて」
神社の中から赤い服を着た少女が現れる。少女はやけに鬱陶しそうな顔をしていたが、先生は露出されている脇を見るので精一杯だった。
「…………成る程。どうせ紫ね?」
「あら、心外ね」
突然、空間が裂ける。裂けた空間の中には大量の目玉が浮かんでいる。そんな中から一人の少女……否、一人の女性が現れる。
"君達は……?"
「あら、原住民の方? 初めまして。私は八雲紫。とある僻地で賢者をさせてもらってるわ」
「……で、あんたの仕業じゃないの? 紫」
「こらこら霊夢、初対面の人には挨拶しなさい?」
霊夢と呼ばれた少女は髪を手で乱し、嫌悪を顔に表して荒々しく口を開いた。
「博麗靈夢。巫女よ。これで満足?」
"自己紹介ありがとう。私は███。先生とでも読んでくれたら嬉しいな"
「善処するわ」
紫は閉じられていた扇子を開き、口を隠した。隠されると、胡散臭さが存分に醸し出される。しかし、先生はそんなことは気にも止めず、目の前にいる二人の人物を信じているようだった。
「紫、あんたの仕業よね?」
「違うわよ」
「じゃあ誰が私の神社をこんなところに移動できるのよ!」
"えっと、取り敢えず落ち着いて……"
紫の胸倉を掴む霊夢。そしてその間に割り込み必死に取り押さえる先生。紫は余裕の表情を崩すことなく扇子で自らを扇いでいる。
「それに、あなたの神社だけじゃないそうよ」
「はぁ?」
"……あれとか?"
先生はある一点に指を差した。二人がその指の先を視線で追うと、一際目立つ聖堂の上が、これまた大きな洋館に押し潰されていた。
"あそこはトリニティという場所で、あの聖堂はその中でもかなり重要なやつなんだけど……"
「良いことを教えてあげる。上にあるのは紅魔館。吸血鬼の館よ。まさに天敵ね」
"……行かないと"
「そうね」
霊夢は唐突に走り出し、屋上から飛び降りた。先生は驚き、屋上から霊夢を見下ろそうと頭を建物から出したが、霊夢の姿を視界に捉えることはできなかった。
「ここよ」
その見下ろそうとした人物は目の前で空中を飛行していた。何の種も仕掛けもなく、ただ立つように。
"凄いね"
「そう? まあ良いわ、掴まりなさい」
霊夢は先生に向けて手を向けると、先生がそれを掴む。そして、霊夢はトリニティに向けて飛行を始めた。
先生は感心と関心を持ち合わせていた。自分のような、ヘイローのない普通の人がこのように飛んでいるのだから。しかもエンジンや推進力も無しに。
"ねえ、聞いていいかな?"
「何?」
"どうやって空飛んでいるの?"
「……そのようじゃ、到底理解はできないわ」
"そっか……"
余談だが、現在先生は霊夢の手を掴み、まるでモノレールかの如くぶら下がっている。そしてこの先生は自身の体を持ち上げることができるぐらいには筋トレはしている。つまりどういうことか。
先生は唐突に、掴まれている腕を軸にして、下半身を持ち上げる。そして霊夢の足を自身の足で掴むと、掴まれていた腕を放させ、霊夢の足を抱く。そして、先生は全力で足を舐め始める。
「ちょ……何すんのよ! 落とすわよ!?」
"私はその秘密を聞くまでこの手を離さない!"
「分かった! 話す! 話すから!」
その言葉を聞いた先生は、霊夢の手を掴み直し、再びぶら下がりとなった。
「全く…………私は重力から解放されているの」
"重力……"
「ええ、私は何にも縛られることがない。重力にも威圧にも何にも。まあ、こうして主に空中飛行に利用しているのだけど」
"……攻撃にも当たらなかったり?"
「鋭いわね」
そうして話しているうちに、目的地に辿り着いた。
分かっているんです! 先生は足舐め星人でないこと! でも……霊夢に無理矢理にでも話させるにはこうするしかないと思ったんです……!