オリジナルボンプ以外オリキャラ無し。
出演キャラはリンとアキラ、フェアリーだけ!
それはよくある都市伝説。ホロウの中に居るゴールドボンプ、それよりも更に目撃例の少ないプラチナボンプのような。噂だけが独り歩きする謎多きボンプ。
その名は『ハードボイルドボンプ』
「……ンナナ(やれやれだぜ)」
「声渋っ! ……え、えっと君がハードボイルドボンプ?」
「ンナナ、ンナナン(お初に、プロキシ)」
「こんにちは、パエトーンって呼んで」
「……ンナナーン。ンナンナ、ンナナンナナ(パエトーン。成る程、君が噂の)」
イアスと同期するリンの目には、そしてアキラにはその眼前のボンプに戸惑っていた。
確かに一見すると普通のボンプだ。スーツにシルクハット。しかし片目に眼帯を、本来無い口元辺りに電子煙草? らしき何かを当てている。
「ンナナーン。ンナナナ、ンナナンナンナ、ンナナン、ンナンナ、(パエトーン。お前に、頼みたいのは、ホロウに落とした仕事道具を探す手伝いだ)」
「ンナナ、ンナンナナ(それと、これは前金だ)」
『マスター。ボンプ語は圧縮言語ではいけないのでしょうか』
「(フェアリー後でね)……確かに受け取ったよ。じゃあ仕事に移ろうか。ふんふん、キャロットもあるとは言えまだ情報が足りない感じだね。気前よく前金も払って貰ったし、パエトーンに期待してくれて良いよ」
『何だか、僕らの知ってるボンプとは少し違うね。これもボンプの個性か』
「かもね」
「ンナナ(行くぞ)」
ポムポムと裂け目に向かい歩いていくハードボイルドボンプ。帽子のつばを持ち目深に被る姿は確かにハードボイルド、或いはキュートと言われるモノなのかもしれない。短い手で押さえた帽子で前が見えているのか心配になるけれど。
◆
そしてハードボイルドボンプの案内の下、ホロウを歩くこと少し。
「ンナ(ここだ)」
「ここら辺で落としたんだね。よーし、(フェアリーに)任せて」
『多数のエーテリアスを検知。その内特殊な金属反応がある複数箇所の近くに強力なエーテリアス反応があります』
「……ンナナ、ンナンナーナナ(それは、俺のターゲット)」
「な、なるほど。……変わったボンプだなぁ。ホロウでエーテリアスを倒すなんて。普段何してるの?」
「……ンナナン、ンナナンナンナナ、ンナンナンナナ(俺は普段、十四分街で、珈琲電流を浴びてるよ)」
(こ、珈琲電流ってなにフェアリー)
『(推定。カフェにあるボンプ用充電供給設備を検索。ヒットしました。十四分街でボンプが充電できるカフェ、その中で個体ハードボイルドボンプが話題になる珈琲ショップを発見しました)』
「な、何者なのそこのカフェの人は」
『お喋りはそこまでだよリン。フェアリー。そろそろエーテリアスが近いポイントだ。集中集中』
◆
耳を掠める投げられたエーテリアスの斧。
「イヤァァァァ助けてぇぇぇ!!」
「ンナナ! (こっちだ!)」
渋い電子音に誘導され、僅かに崩れたビルの隙間に入る。
「はぁっ、はぁ! ……多くない!?」
「ンナンナナ(だから、間引いていた)」
「この量はおかしいよ、普通なら協会が潰してる筈の規模だよ」
「……ンナナンナ(ホロウレイダーだ)」
「……なるほど。なんとなく分かってきたよ。その人達がここら辺を管理してるつもりなんだね。全然管理できてないけどさ」
「ンナンナ、ンナナ(奴等、手に負えなくなったのさ)」
『マスター、大勢の人間の痕跡を発見しています』
「エーテリアスの居ない絶好のスポットでもあったのかな」
「……ンナンナナン(その証拠を間抜けにも落としてしまった)」
「……あー、それはまた、なんと言えば、いいのか。あーでもほら! それもまたハードボイルド、だったりして」
「……ンナ、ンナナナ(ふ、慰めているのか?)」
リンは見た。そのボンプの諦めていない瞳を。
◆
そのボンプは素早く、身軽に駆け抜けた。同じ体を使っているはずなのにまるで効率が違うとでも言うようにイアスよりも速い。
「はぁ、はぁ! しつこかったね今の」
「ンナ、ンナーナナン(フン、エーテリアスめ)」
「……ふぅ、フェアリー、あとはどこ?」
裂け目を何度もくぐり抜け、エーテリアスにホロウレイダー、或いは侵食体とも出会った。それらを会っては執拗に追い掛けられ幾度と危ない所を切り抜けた。
今日だけでリンとイアス、そしてハードボイルドボンプの絆は深まった事だろう。映画にすれば二時間以上の見せ場だろう。だがまだメインディッシュか残っている。なんて濃いアクションなんだ。
「……ンナナ(ここか)」
『マスター。付近の状況は不安定です。離脱を提案します』
「依頼主、どうする?」
「……ンナナンナ(あれを見な)」
『マスター。依頼の品です。USB付き対エーテリアス用アサルトライフル。製品番号は』
「言わなくていいから」
『(フェアリー、こっそり僕に教えてくれるかい?)』
『個体ハードボイルドボンプが探していると言うのはゼロ号ホロウで紛失した番号のようです』
『(つまり、あのボンプはゼロ号ホロウに出入りしていた可能性があるのか)』
状況は過酷だ。イアスとリン、そしてハードボイルドボンプの二人はこの状況を楽しんでいた。
多くのエーテリアス。多くの危険。危険が彼等を駆り立てる。おお勇ましきボンプ達、危険に電子の心を燃やすボンプ達よ。その道行きは照らされるであろう。
『(映画の見すぎか変なナレーションを考えてしまった。)』
状況は動く。
「ンナナ! (行くぞ!)」
「オー!」
◆
「お、終わったぁ~!!」
「……ンナ。ンナナ(ああ、終わったさ)」
『凄かったよリン。迫り来るエーテリアスに漁夫の利の一網打尽を狙っていたホロウレイダーを相手にあっちこっちの立ち回り、見事だった。これがアクション映画なら百点だ』
『マスター。フェアリーからも称賛を。一つのホロウの通った裂け目が二十を越えました。アチーブメントお裂け目マスターを授与します』
「……はあ、フェアリーも冗談が上手くなってきたね」
仕事前には中天にあった太陽も、今ではオレンジに新エリー都を照らしている。
そしてその光はスポットライトとなって、今日のMVPを照らしている。
そう、二人のボンプだ。
「依頼主、今日はどうだった?」
「ンナ、ンナーナナ(ふ、パーフェクトだ)」
『マスター、提示額より多くの料金が振り込まれました。先月の電気代より少し多いです』
「……いいの?」
「ンナンナ、ンナナ(それほどの、仕事だった)」
「ンナナ、ンナナーン。ンナンナナ(ではな、パエトーン。また会おう)」
別れはあっさりと。けれど短くも濃密な時間を過ごしたリン達には分かる。
それが彼の流儀なのだろう。しみったれた別れよりもあっさりとした別れが彼を強くする。
煙に揺れる一人のボンプの背中をリン達は手を振って見ていた。
ただ一時とは言え背中を預け合った男の背中は大きかった。
まるで大長編映画を見終わった後のような満足感と脱力感。ほうっと吐いた息は今日の疲れを思い出させる。
『マスター、個体ハードボイルドボンプの所持していたUSBメモリから内容をコピーしました。見ますか?』
「……あー、まあ、見ようかな!」
ハードボイルドボンプはこれを匿名で提出するつもりだろうが、もし中身が壊れていたら私達が出そう。
「お兄ちゃん、帰りにティーミルク飲みたい!」
「はあ、リンにはあのボンプのようなハードボイルドな雰囲気は期待できそうな無いね」
「それはお兄ちゃんに任せるよ。二人人でパエトーンなんだから!」
「ンナナ!」
『訂正。フェアリーも居ます』
「おっとそうだった。四人でパエトーンなんだから!」
「ンナ!」
燃え尽きたぜ真っ白にな……