◆ 13、ハルモニアー、いきどおる ◆
「──というわけで、『大いなる災い』のあいだ、こちらは港に避難しておりました。
みな、無事。遠征団は、被害なし。
航海、順調ですえ」
美女。
灰色の髪した、ハイエルフっぽい美女。
絹ぐものローブもあでやかなる、スカルド(弾唱詩人)の出で立ちにて、ひざまずき、祈っておる。
「父上。
今回のお祈り、いかがでしたかに?
それでは、次回、お楽しみにー・・・。
はぁ・・・」
お祈りにしては、芝居がかった感じ。
この美女のお祈りは、いつもこんな。
美女。
ハルモニアー。
鬼神と月神の次女。
髪は灰色、くっきりと濃い瞳は金色。肌は白く、もやもやと霞がかった(かすみがかった)ように輝いておる。
耳長く、身体はほっそり。「ハイエルフです」と言われれば「なるほどそうですか」という見た目。だがハイエルフではない。神々の娘である。
亡き姉のルシーナと、遠目には似ておる。だが、やっぱりちがう。ルシーナが冴え冴えとした(さえざえとした)美女なのに対し、ハルモニアーはもやーっとしておる。やわらかい。
・・・その、やわらかい美女が、
「父上の、あほう!」
キレた。
「なにえ。毎日祈っておるに。
私のこと、全然、無視をして。見にも来てくださらぬ」
お祈りしておった相手。
赤銅の六腕人形に。
愚痴(ぐち)言うてから・・・
がっくり。肩落とし、('A`)こーんな顔して、立ち上がる。
「そないにイリスが大事かに? はぁ・・・」
ぎーこ、ぎーこ、みし、みし・・・。
木造の小さな部屋。
ゆーっくり、揺れておる。きしんでおる。
ふつうならば「地震か?」っちゅうところであるが・・・
こん、こん。ノックの音。
「はい」ハルモニアー、顔なおす。
「団長閣下。トリフェーラです」
「あ、トリ。どうぞ」
「失礼します」
ダークエルフの美女が入って来た。
こちらも絹ぐものローブ。ただし、スカルドではなく、巫女の。
月の巫女トリフェーラ。『湖の神殿』の巫女長名代である。
「今日は、波も穏やかですね」
「ほんまに。いつもこんな航海やったらええに」
そう。
ハルモニアー。いま、船の中。
ぎーこぎーこ揺れとるのは、波の揺れだったっちゅうわけである。
「それで、船長が『お湯沸かしてもええよ』おっしゃってまして。
前の港で買うたお茶、ご一緒に、いかがです?」
「わあ、うれしいえ。ありがとう」
ハルモニアー。
六腕人形に、綺麗な布、かぶせた。
「あ、お祈り中でしたか」
「ううん。ちょうど終わったとこ」
ハルモニアー、大きな革袋を持ち上げ、胸に抱える。
「聞いてたもう、トリ」
「なんです?」
「うちの父上、お祈りしても、顔も出してくれぬのえ。ひどないかに?」
「まあ・・・」
「絶対! 父上、イリスにべったりやえ」
◆ 14、鬼神、娘のことをおもいだす ◆
「・・・なあ、イリスや」
「なに? おっ父」
「ハルは元気かのう?」
「たぶん」
鬼神と、三女のイリス。
2人とも、喪服である。鬼神は、いま、上着を脱いだところであった。
「たぶんか」
「このまえ、『もう船酔いもせえへんのえ。嵐来ても大丈夫!』て言うておった。
・・・ていうか、うちに訊かれてもわからへん。妙雅に訊かな」
「そうなんじゃが」
鬼神。テーブルを見る。
台座にちょこんと置いてある、小っちゃい妙雅みたいなやつ(オクトラ!)。
いまは無反応である。
「さっき国葬でしゃべって、『それでは』と別れたばっかりだからのう」
「あー。妙雅、いま修理中で忙しい言うておったに」
「うむ。昨日もな。
しょうもないことで呼ぶんじゃないわ! ・・・と、怒られたばっかりじゃ」
「しょうもないことで呼ぶからやえ」
「しょうもなくないわ! ちょっと呼んでみたら、怒られたのだ」
「それがしょうもないのえ」
2人がしゃべっておると。
ぎい。突然、ドア開く。
鬼神とイリス。戦士の顔となり、身構える。
「イーリス~♪」
ばさばさ。
青いつばさ、ばさばさして、鳥娘が入って来た。
「あ、ポタージュ」
「おお、お嬢さん。ひさしぶりだのう」
ノックもせんと入って来たのは、ポタージュであった。
「めーみっつあんね~ん♪」
「ちがうっちゅうのにから」鬼神笑う。「元気か?」
「元気。お葬式。欠席。ごめん」
「ええのえ。空警居るもんに」
「うん。くーけい、きらーい。お花すき」
ポタージュ。
いったんドアの外出て、ひょいと屈む。
口で花束咥えて、イリスに見せてきた。
「わあ! ありがとう」
「んむ」
「姉者、よろこぶえ」
ポタージュ。イリスが花束受け取って、瓶に差すのを見守るうちに・・・
笑顔消える。
しゅんとする。
「カバリオたいちょー、ルシーナ」目ぱちぱちする。「かわいそう・・・」ぽろぽろ。涙こぼす。
「ポタ」
イリス、親友を抱き寄せる。
鬼神は部屋を出た。左下の手で、オクトラ引っ掴んで。
<・・・私が居らんと思うて、乱暴な掴み方したじゃろ。いま>
オクトラが小さい声で文句言い出した。
「なんじゃ。妙雅、居ったのか」
<居ったのかじゃないわ! ・・・修理班が休憩に入りましてね>
「すまんすまん」
春の日差し。ぱあっと照りつける。
冷えた喪服があたたまる。
空青く、風は少し雪の湿気を含み、胸にさわやか。
『丘の街』郊外。『新生アルス』の仮庁舎近くの、広場である。
かつては森だったが、神竜が迫ったときに暴風で木がなぎ倒され、開墾中(かいこんちゅう)みたいになった。あちこちに、切り株。
向こうの方には、兵舎と3つの巨岩が見える。鬼神が嵐から兵舎守ったときの、風よけの岩である。鬼神に感謝する看板が立てられ、そのままにされておる。
ダークエルフの家族が、兵舎から荷物を運び出し、荷馬車に積んでおる。
「あ、鬼神さま」父親があいさつしてきた。
「やあ。引っ越しかのう?」
「そうなんですわ。ようやっと洞窟マンションの順番が回って来まして」
「それは良かったのう」
「これも、ルシーナお嬢さまのおかげですわ・・・」
鬼神。
切り株のそばへ。
日当たりは背中をあたためてくれるが、足元は残り雪で冷たい。そんな場所へ。
「妙雅よ。ちょっとええかのう? ハルの様子を聞きたいのだが」
<時間は大丈夫。ですが、私からお伝えすることはできません>
「なんでじゃ」
<勝手にしゃべったら、情報どろぼうになる。
それは、私のような立場の者が絶対にやってはならんことです>
「むむ! なるほど」
鬼神、ちょっと背筋伸ばす。
「では、えーとだな・・・」
<伝言なら預かりますよ>
「ああ、そうだな。それがよい。『元気か?』と伝えてくれ」
<・・・はあ>
「なんでため息をつく」
<あのですね? おじちゃん。それ、たぶん、けんかになりますよ>
「は? なんでじゃ」
<それは・・・うーん。これは言うてもええんかのう?
──あ、ちょうどいいとこに>
「うん?」
ざっく、ざっく。
雪踏む音が、近付いて来た。
ダークエルフの、すらりとした軍人。
男装──だが、ひと目で女とわかる、若き美人剣士。
白銀の髪。茶色の肌。お月さんみたいな、淡い金色の瞳。
「鬼神さま」
「やあ。ルーン司令官」
◆ 15、ルーン、ルシーナのみことなる ◆
ルーン司令官。ルシーナの親友。新生アルスのリーダー。
深々と、おじぎ。
手には、なんかごっつい、木の杖。
腰に長剣差しとるのに、手には杖。ちょっと変な取り合わせである。
「鬼神さま。お邪魔しても、よろしいでしょうか?」
「うむ。ええぞ」
<いいところへいらっしゃいました>
「ええとこって?」
<はい。鬼神さまが、ハルモニアーさまと連絡を取りたいとおっしゃってまして>
「あー! すみません。団長のこと、お父上にお伝えもせえへんで・・・」
「いやいや」
<それがですね、聞いてくださいよ、司令官閣下>
「はいな。空飛ぶ女王陛下」
<このおっさん、『元気か?』って伝えてくれ。──とか言うんですよ>
「なんじゃ。何がアカンのじゃ」
<ほらこれ! どう思います?>
「あー・・・」ルーン司令官、苦笑い。
「おいおい。なんじゃなんじゃ。
2人だけわかっとらんと、私にも教えてくれ」
「はい」
ルーン司令官。ほほえんだ。
「ハルモニアー団長は、毎日、お父上とお母上に、お祈りしてるって言うてます」
「おいのり」
「お祈り」
「はてな?」鬼神、首をひねる。「全然、聞いとらんぞ」
「団長もそう言うてました。父上、全然聞いてくださらぬのえ・・・て」
「なんと?」
「お祈りしてもお祈りしても、見にも来てくださらぬ・・・て。
だいぶ怒ってる思いますよ。めったに文句言わん人やのに」
「いや、しかし、ふつうに聞こえるもんでもないし」
<以前は聞いてたのでは?>
「ああ。前に聞いたことはある」
<なんでいまは聞こえないのです?>
「なんでといって・・・あ、」
鬼神。
ここで、気が付いた。
「そうか! このところ、昼寝しとらんわ」
<は?>「ひるね?」
「そうなのだ。ルーンお嬢さんよ。あいや失礼、司令官」
「なつかしー!」ルーン司令官、にっこり。「その呼び方されると、昔のこと、思い出します」
「いや、すまんすまん。つい」鬼神も笑うた。「この呼び方すると、ルシーナにめっちゃ怒られるのだ」
「あはは」
「それで、そう、昼寝じゃ」
<なんで昼寝の話になるんじゃ>
「いや、私はあれだ。
わけみたま。へたくそなのでな。
ゆったりした気分で、こう、どてーんと転がって。
すやーっ・・・と、眠っとるときでないと、お祈りが聞こえんのだ」
<なんじゃそりゃ>
「ま、私も、ふつうではなかったということだ。ルシーナのことでな」
「・・・。」
「ありがとう。司令官。私のほうは、解決しそうじゃ。
それで、そなたの用事は、なにかな?」
「あ、はい。ルシーナさまのことで」
「なんじゃ。他人行儀な。ルシーナが嫌がるぞ」
「あはは。はい。ルシーナとの、約束のことで」
「ああ。出撃のときのだな?
『勝って帰って来たら女神扱いしろ』っちゅうやつ」
「ええ。
ルシーナは初めから女神さまですから、問題は、私のほうですけど。
──お父上」
ルーン司令官。ぴしっとした姿勢して、頭下げた。
「お嬢さまとの約束を守るため、不肖(ふしょう)、この私、アルスのキノコ農家の娘。
新生アルス司令官 兼 グレイスさまの司祭見習い 兼 ルシーナさまの巫女。
──このように名乗ろう思います。お認め頂けますでしょうか?」
「む、む? ちと、待ってもらいたい」
「はい」
「司祭に、巫女だと?」
・・・このお話の時代。
太陽神殿では、『司祭』と『巫女』は、明確にちがう存在でした。
『司祭』は、神殿管理人。神殿を預かり、信者を導き、儀式を司る(つかさどる)。そういう権限を持つ。
『巫女』は、女神の侍女。女神さまに祈りや供え物を捧げたりする。しかし、神殿の管理人にはなれぬ。
ところが、月の神殿は話がちがう。
月の神殿には『巫女』しか居らぬ。
神殿の管理人も巫女。女神の侍女も巫女。修行始めたばかりのぺーぺーの娘も、巫女である。
なので、月の巫女というだけでは、何をする巫女なのか、わかりゃせぬ。
「ルシーナの巫女っちゅうのは、月の神殿のほうの巫女か?」
「はい」
「・・・。」
鬼神、半目になる。
「つまり、なんだ。
ルシーナのほうは、名前だけで勘弁してくださいということか。
おまえさん、あつかましい女になったな? おい。ルーンよ」
鬼神。
ルーン司令官にのしかかり、睨みつけるみたいになる。
が、そのとき。視界の端っこに、びっくりしておるダークエルフの一家が見えた。
「おっと。いかんいかん」
鬼神は睨むのをやめて、切り株に座った。尻が冷たい。
「妙雅よ。おまえの意見を聞きたい」
<なんで私>
「追い払わずに聞かせてやったろうが。侍女扱いじゃ。助言ぐらいせよ」
<ちっ。このじじいめ。たまにかしこくなりよる>
「ごちゃごちゃ言わんと、助言だけせよ」
<はーい。そうですね。名誉職という意味じゃないですか?>
「めいよしょく」
<給料なし。日常業務なし。拘束時間なし。でも、現場にいるときは、その職としての権限を持つ>
「はい」ルーン司令官、うなずく。「そういうことになりますね」
「ほう? ふだんは司令官で忙しいので、ルシーナの前でだけ巫女ヅラしますよ、と、こうか」
<イライラしすぎじゃろ>
「うるさい!」
鬼神怒鳴る。ダークエルフ一家、飛び上がる。子供、泣き出す。
「私だってわかっとるわ。ルシーナが、わがまま言うとるのは」
「・・・え?」
「ルシーナは、ルーンに甘えすぎじゃ。
司令官に、あっちの神の司祭に、こっちの神の司祭だと? ばかめ! できるわけあるか」
<わかっとるじゃないか>
「わかっとるけれども、腹は立つのだ!
世界で一番可愛い私の娘がだ! 三番目だ! 後回しだ!
それもこんなときにだ。あいまいな言い方で、だますみたいにだ。
ルーンめ! おまえは、お月さんか!」
「いえいえいえいえ! そんな、とんでもない」
在りし日(ありしひ)ならば。
ガンメタ鬼神台が『ぶわっさ、ぶわっさ』と、割って入ったタイミングであろう。
鬼神も、ルーンも、あの羽ばたきの声、聞こえたような気がした。それで、ちょっとうつむいた。
<まあまあ>
代わりに入る妙雅の声は、いつものごとく、明るい。妙なる響きである。
<それで、ルーンさま。ルシーナさまの神殿建設の予定などは?>
「いえ、神殿建てる予定はあらへんのです。
アルスの守護神は、ひと柱しか居られませんから、その神殿に──」
「なんじゃ! 神殿もなしか!」
鬼神またちょっと怒る。
怒られたルーン。
なんと、笑いだした。「く・・・くくく、うふふ」
「なに笑うとる!」
「ふふふ。怒るタイミングが、ルシーナそっくりで」
「そうか?」
<そうですねえ>
「そうか」
「ごめんなさい」
ルーン、潤んだ(うるんだ)目ぬぐいながら、鬼神見上げる。
「お月さまの神殿は、必ず、建設することになります。
そん中に、ルシーナさまの礼拝所も造ってもらう、いう形にしたい思うてます。
──どんな形になっても、お祈りは、ちゃんとします」
「む・・・」
<ひるむんじゃないわ>
「ひるんどらんわ」
<世界で一番可愛い娘の祈りも聞いとらんかった、てんぱりジジイめが>
「う、うるさいわ!」
「ほな・・・」
ルーン司令官。
一歩離れて。手に持っとった、ごっつい木の杖。捧げ持つ。
こつん。おでこ、くっつける。
「お父上にも、言うたからね。ルシーナ。
あんたのほうは、巫女な。・・・アカンアカン。もう決めたっちゅうねん」
「ん?」
「あ、すみません。これ、ルシーナのんです」
ルーン司令官、杖を鬼神に手渡した。
「旅するとき、いっつも使うてたやつですわ」
ルーン司令官が持って来た杖。
ルシーナの遺品だったのである。
「そうか。それで、わざわざ持って来てくれたのか・・・」
鬼神は、いったんその杖を受け取り、よしよしと撫でてみた。
するとなんか「子供あつかいすな!」という、ルシーナの声が聞こえた気がした。
びくっとする。
ルーンに返す。
「持ってゆけ」
「よろしいんですか?」
「うむ。そのほうが、ルシーナがよろこぶ」
鬼神は話を終えた。
「ではな。司令官閣下。私は、ちょっと急いで昼寝をせねばならん身じゃ」
「あ、はい」ルーン、笑ってうなずく。「ハル姉のことは、私もお祈りしときます」
こうして、ルーンはルシーナの巫女となった。
・・・ちなみに、この会談で、ルーンの名はさらに高まった。
『あの鬼神に怒鳴られて。
にっこり笑って、一歩も退かぬ(ひかぬ)!
さすが我らの三日月姫!』
とね。
◆ 16、ハルモニアー、嵐にみまわれる ◆
それから、数日して。
「父上!」
「おお、ハルモニアー! やっとつながったわい」
鬼神。
やっとこさ、ハルモニアーのお祈りを聞くことができた。
妙雅に頼んで時間を伝え、毎日その時間に、ごろんと横になり、昼寝をしたんである。
しかし、『さあお祈りを聞くぞ』と思いすぎたためか、全然だめ。
数日かかって、やっとつながった。
ところが。
この日、ハルモニアーは、お祈りどころではなかったんである。
「時間がありませぬ。手短に言いますえ」
なんか、ハルモニアー。
ずぶ濡れ。
大きな革袋を胸に抱え、血相変えて(けっそうかえて)、早口でしゃべっておる。
「緊急なのか?」
「はい。我が船団、いま現在、海賊に追われておりまする」
「なんだと!?」
「さらに、春の嵐により、海荒れ、波高く」
ばしゃあ!
ハルモニアーの顔が、白い飛沫(しぶき)に叩かれた。
「げほっ。
・・・味方の船、風に流され、散り散りばらばら。
海賊ども、私の船が船団の長と気付いたか、あるいは初めから知っておったか。
私の船だけに集中し、」
「お、おい! ハル。それは本当なのか? だったら、妙雅に──」
「だまって。時間ないに!」
「はい」
「このこと、妙雅の定時報告の後に起きたことゆえ、妙雅はまだ知りませぬ。
いま修理で忙しいこともあり、こちらを『見て』おらぬのですえ。
定時報告後、海が時化(しけ)、海賊と遭遇。
船長によれば、私の船は岩礁(がんしょう)へ追い込まれておるとのことで、──あなや!」
ハルモニアー。
転倒した!
「ハル!」
「ち、父上」
「おお、なんということじゃ! 私はどうすればええのだ?」
「以上ですえ! ルーンに・・・司令官に、伝えてください!」
「わかった!」
「ハルモニアー!!!」
「うわ。なにえ」イリス、びっくりする。
「ハルがあぶない! 司令官はどこじゃ!?」
イリスの案内で、新生アルスの仮庁舎へ走る鬼神。
いまや父娘ともに『力』のルーンの使い手。走る速度、馬よりも速し!
・・・が、衛兵に止められた。
「うわあ! ちょ、ちょ、待ってください! 許可! 許可はおありですか!?」
「きょかだと! そんなこと言うとる場合ではないのだ」
「父上、うち呼んでくるから、そこで待っとって」
「一刻を争うのにから!」
「ええから。いらんことしたら、文官がうるさいねん。絶対、暴れたらアカンえ!」
イリスが中に入る。
鬼神、衛兵を睨みながら待つ。衛兵かわいそうに、すくみ上がる。
もうこの仮庁舎とかいうの、ぶっ壊してやろうか! ぐらいに焦ったところで、ルーン司令官が走って来た。
「司令官!」
「移動しながら聞きます」
「どこへ。イリスは」
「ルシーナの祭壇! 妙雅に報告中!」
鬼神、走るルーン司令官に報告する。
ただ・・・説明してどうなるのだ? と、疑問にも思う。
ルーン司令官、ただの人間なのに。なんかできることあるんか?
兵舎の一室に。生前、ルシーナが使っておった部屋らしい。
どたどたどた。2人、駆け込む。
「ルーン。そなた、何するつもりじゃ」
「お祈りして、呼ぶ!」
「ルシーナは死んだのだ。祈って何になる」
「あほなこと言わんといてください」
「あほだと!」
「ルシーナは神さまです。
それも、ルーン魔術や月の祝詞をこっそり勉強しとった神さまですやんか!
・・・あ、しもた。これ秘密。秘密です」
「お、おう」
「そやから、あの手この手でなんとかしてくれる思います。
とにかく祈りましょう。鬼神さまも祈ってください」
「い、祈ると言われてもな。どうすればええのだ?」
「知らんがな!」ルーン司令官、ついにキレる。「お祈り聞くときみたいにしたらええんちゃいます!」
「お、おう」
鬼神。
どてーんと、寝た。
膝ついて祈るルーン司令官のお尻の後ろで、床に寝る鬼神である。なんちゅう図か。しかし2人とも真剣である。
ルーンはお祈りを唱え、鬼神はなんとかゆったり昼寝をしようと、必死にがんばる。
「──寝れるか! 娘が危ないのにから!」
「ええから静かにしとって!」
「ぬぐぅ!」
鬼神。
ルーンに一喝されて。
もうしょうがないので、とにかく横になって、目閉じた。
すると・・・
「一度に呼びなえ! どっち出たらええかわからぬ!」
「ル、ルシーナ!?」
淡い金色の髪した女。
白銀の輝きに包まれ、怒鳴りながらの登場である。
「召喚せよとルーンに言うてくだされ。
どうも言葉が通じておらぬようやに。
父上は、ルーンにマナを」
「まな?」
「父上、神さま。そのマナ、人間の比でなし。
ルーン、いつの間にか知らぬが、降霊のわざ持っておる。
合わせれば、私がそっちに出れまする」
「こうれい」
「とにかく! 『ルシーナを召喚せよ』と!」
「わ、わかった」
「ほなこれで」
「ルシーナを召喚せよ!」鬼神飛び起きる。
「うるさい!」ルーンキレる。
「いや、ちがうのだ」
鬼神は説明した。
「・・・わかりました。やりましょう」
「わかったのか。私はどうすればええのだ?」
「よくはわかってませんけど、やります。
私が呼びますから、鬼神さまはそばに居ってください。
マナ引っこ抜かれそうになったら、抵抗せず、渡してください」
「まなひっこぬかれるとは」
「ええから、座りぃな!」
「はい」座る鬼神。
そこにイリスが飛び込んできた。胸にオクトラ抱えておる。
<私の判断で、救助要請をしました。疾風犬隊と肆・伍の兄弟、まもなく出ます>
「おお、すまぬ」
<ただ正確な場所がわかりません。嵐でオクトラが飛べないのです。間に合うかどうかは、不明>
「ぬう!」
「うちはどないしたらええ?」
「うちら、ルシーナさま召喚する。イリスは、できればポタージュ卿の助け呼んで」
「は? しょうかん?」
◆ 17、ハルモニアー、死をうたう ◆
白い泡。
倒れたハルモニアーに、叩きつける。
「団長! 大丈夫かァ!?」
ごっつい筋肉したおっさん、倒れたハルモニアーのベルトを掴み、怒鳴る。
「げほげほ・・・まだ、大丈夫です」
「柱に掴まっていなされ! 助かるかも知れねえしよォ!」
「ほ、ほんまですか・・・?」
「いやあ、無理だとァ、思うけどよ! わっはっは!」
ハルモニアー。いま、船の上。
その船。いま、岩の上。
──時化に押し流されたハルモニアーの船。岩礁にぶつかり、乗り上げてしもうたんである。
猛烈な風! 叩きつける波しぶき!
ついさっきまで、船は上下にジャンプをくり返しておった。
高波に乗り上げ・・・落っこちる! また波に乗り上げ・・・落っこちる! というジャンプである。
そのジャンプの果てに──
ごがあああん!!!
と、岩礁に船底をぶっつけてしもうたのであった。
いまはもう、岩の上で、叩きつける波に洗われるがまま。
嵐が過ぎたとしても、この船はもう、航海はできまい。
さらに、沖合には。
横に並んでこちらをうかがう、海賊船が──2隻? 3隻か?
帆をたたみ、ごうごう吹く風の中で、じーっと機会を待っておる。
「あー、ちくしょうめ!」
筋肉おっさん、黒々した髭もびしょびしょにしながら、怒鳴る。
「こんな時化でなけりゃ、わしが皆殺しにしてやったんだがよォ!」
「船長は・・・お強いんですかに?」
「うわっはっは! 強くなけりゃァ、航海なんざできゃしませんぜ! 海でも、アルフェロンでも!」
と、2人が飛沫まみれでしゃべっておると。
「船長ォ!」船内につづく階段から、水夫が上がって来た。「ダメだァ、どてっぱらに大穴開いてらァ! 半刻も持ちませんぜ」
「しょうがねえ! 全員カタナ差して上がってこい! お嬢さん守んぞァ」
「うおっしゃあ!」
水夫が消え、すぐにゾロゾロ仲間連れて上がって来た。
全員、ヒューマンの若い男である。全員、髭もじゃ。全員、筋肉ムキムキ。
彼らは、滅亡した『猿の神の湖の帝国』の水兵どもである。国が滅びたので、海に出て仕事しとるらしい。
「みなさん、頼りにしておりますえ」
ハルモニアーが、波の中でもよく通る、綺麗な声で言うた。
「おうよ! 団長!」水夫ども、飛沫の中で、こぶし突き上げる。「俺らが生きてるうちァ、あんたにゃ指一本触れさせませんぜ!」
「その意気よ!」船長うなずく。「おめぇら、こんな上客になんかあったら、俺らァおしめぇだぞ。わかってんなァ!?」
「わかってまさァ」「海賊なんぞ、ブッ殺してやらァ」
こうして意気上げるうち、時化は徐々に静まっていった。
風が和らぎ、波が少しずつ穏やかになる。
そして、海賊の船が、岩礁に近付いて来た。
その数、3隻。
こちらとほぼ同格の貿易船である。
そして、乗っておるのは全員、海賊である。
──ということは、戦闘員はこちらの3倍を超えること、確実であった。
「ハルモニアーさま。お下がりください」
月の巫女トリフェーラ。
帯にショートソード差して、ハルモニアーの前に立つ。
なんと彼女、頭に鉢巻きし、身体にたすき、手首にも布しっかり巻き付けて、戦闘の態勢である。
「巫女として、最後までお守り奉ります。どうぞ、船内に」
「・・・ああン? まァ、そのほうが、少しァ、安全ですなァ?」
「いいえ」
ハルモナニアーは首を振って、はっきりと言うた。
「みなさんの雄姿、見届けさせて頂きます。母に、お伝えいたしまする」
「おう・・・!」
船長、感動。
月の女神は、潮の満ち引きを起こす御方。船乗りが敬う(うやまう)神々に含まれておる。
「聞いたな? 月のお嬢さんが、お月さんに俺らのこと報告してくれるってよ!」
「おおう!」水夫も盛り上がった。
海賊どもの姿が、1人1人、はっきり見えるようになってきた。
装備は、こちらの水夫と似たようなもんである。上半身は裸か薄いチョッキ一枚。下半身は半ズボンかふんどし一丁。武器は短刀。それと、鉤つきの縄ばしごを何人かが抱えておる。
「宝を出しゃがれ」「女を渡しゃがれ」「さもなきゃ魚の餌にしてやんぞ」
「うるせえ! 海賊どもがァ!」
船長、怒鳴り返す。
「俺らァ、偉大なるアルフェロンは、猿の神に仕えた、まっとうな船乗りよ!
躾(しつけ)もなってねぇ海の犬ッコロなんぞにァ、びびりゃしねえぞァ!」
「かかれ!」
海賊ども、攻撃開始。
鉤つき縄ばしごを、こっちへ投げて来る。
がこっ!
舷側に鉤が引っ掛かった。──この縄ばしごで、こちらへ乗り込んで来るわけである。
スリング(投石紐)を持っとる海賊も居ったが、使おうとして海賊の頭にぶん殴られた。
「馬鹿野郎! 女に当たるだろうが!」
というわけで、射撃戦はなし。
がこっ! がこっ! 縄ばしごの鉤が、こちらの船に食らいつく。
「縄を切れ! 乗り込ませんじゃねえ!」こちらの船長が叫ぶ。「賊どもを、叩き落とせ!」
「男を殺せ! 女は捕らえろ!」海賊の頭が叫ぶ。「お宝奪って、大金持ちだ!」
「うおおお!」
激突。
こちら、短刀を振りかざして縄ばしごを切ろうとし、櫂(かい)を突き出して侵入を防ぐ。
あちら、縄ばしごを身軽に飛び渡り、斬り込んで来る。
・・・こちらの手勢が、足りぬ。
船長が「んじゃ」とあいさつして、乱戦に加わる。
ダークエルフの護衛も、敬礼して、船長と共に突入した。
ハルモニアーは。
胸に抱えておった革袋を、ほどいた。
出て来たのは、竪琴。母なる月神から授けられた、大切な竪琴である。
その竪琴、かき鳴らした!
♪アルフェロン! アルフェロン! われらの母の 生まれたうみよ
エルフにヒューマン 巨人にコボルド! われらの父の 守った国よ
勇士があらそい しのぎをけずる 英雄の国よ アルフェロン!
「うおおお」「アルフェロン!」「アルフェロン!」
水夫ども、ダークエルフ兵、3倍を超える海賊どもと、渡り合う。
だが。
いかに勇敢に戦おうと、生きとる人間は無敵にはなれぬ。
刃を突き立てられれば血が流れ、網を引っ掛けられれば転んでしまう。戦い続ければ疲労する。
1人また1人と、立っておる味方が減ってゆく。
舷側から甲板中央へ、じりじりと戦場が下がってくる。
「あの女を捕まえろ! 金になるぞ!」
指を差されたハルモニアー。
船尾へ、移動した。
岩礁に乗り上げたこちらの船は、その船尾がいちばん高くなっておる。
海面(と岩)まで、優に3尋は高さがある。──落ちれば、生命はないであろう。
「ハルモニアーさま」トリフェーラが追いかける。
「トリ。私は、海賊どもを、この身に触れさせるつもりはないえ」
「・・・私も、ご一緒に」
「うん。心強いえ」
2人の様子を見た海賊頭。焦る。「おい、女を死なせるな!」
「来るなら来てみい!」トリフェーラがショートソードに手をやる。「月の剣技、思い知らせたる!」
ハルモニアーは。
おだやかに、竪琴を爪弾いた。
♪やあ、こんにちは ともだち
人間みんなが 知り合うきみよ
今日はこちらに おでましかい
やれ、それなら しょうがない
人間みんなが いきつくさだめよ
今日がわたしの 順番ならば!
ゆくとしようか 冥界に
『死』という名前の ともだちよ
「だ・・・団長・・・!」船長が振り向いた。その額には血が流れておる。
「くそっ! 死ぬ気か!?」海賊の頭が怒鳴った。「捕まえろォ!」
「やらすかい!」ハルモニアーの決意を見たダークエルフ兵、狂戦士となる。「道連れにしたる!」
まさに死に物狂いの抵抗。
金目当て、女目当ての海賊ども、腰ひける。
「てめぇら、戻って来んじゃねえ! 蹴り落とすぞ!」
怒鳴り散らす海賊の頭。
言葉だけでなく、見せしめに1人蹴り落とそうと、縄ばしごの側まで走ってゆく。
そのとき。
「落ちるんはおまえや」
「は?」
海賊の頭。
尻蹴飛ばされ、自分が落っこちる。
まっさかさま! 白い飛沫の中へ、どっぽーん!
「一丁上がりじゃ」
◆ 18、湖の魔女、けんげんす ◆
「だ、誰じゃ!? おまえ!」「ダ・・・ダークエルフ! ダークエルフがこっちに!」「いつの間に乗ったァ!?」
「いま出たとこや」
ダークエルフの小柄な男。
海賊の頭を蹴り落として。
ニヤリと笑って、剣を抜く。
「おまえら、うちの若いもん(者)を寄ってたかって・・・許さんぞコラァ!」
海賊船、甲板上。
たった1人、忽然と(こつぜんと)現われた、ダークエルフの戦士。
剣振り回し、ばっさばっさと、海賊なぎ倒す!
海賊群がって、斬り付ける!
・・・あれ?
ダークエルフ殿、そんなに・・・強くなかった。
ビシバシ攻撃喰らっとる。
──のだが、平気である!
「わぁっはっは! 殺せるもんなら、殺してみい!」
「な、なんだァ、こいつ」「か・・・カタナァ、当たってんのによォ!」「くそっ! くそっ! 死ねっ、死ねっ」
「うはははは! 誰が死ぬか阿呆ゥ!」
斬られ、突かれ、ぶん殴られて──平気である!
哄笑し(こうしょうし)、剣振り、群がる海賊どもを仕留めてゆく!
「1回死んだら、もう死なんのじゃ! わはは! 戦功、立て放題!」
絶好調のダークエルフ戦士であったが。
「調子乗りなえ!」
隣の海賊船から、女に怒鳴られた。
「ハルが飛び降りそうになっておる! 落ちたら、そなた死なすえ!」
隣の海賊船。
船上には、1人の美女の姿あり。ハイエルフっぽい美女。淡い金色の髪。光り輝く美貌。
海賊どもは「誰じゃこいつ?」っちゅう感じで、遠巻きにしておる。
「おっと! ほんまや。こらアカン。了解!」
ダークエルフ戦士。手を挙げて『了解』の合図をし、縄ばしごに飛び移る。
ふわ~~~ん。その身のこなし、人間のものとは思えぬ!
空飛んでおるがごとし! 軽々と、揺れる縄ばしごを渡ってゆく!
「オラァ! どけどけい、海賊ども! 小馬隊長のお通りじゃ!」
海賊どもを、蹴散らしながら!
ハルモニアーの船の舷側まで、突っ走る!
混乱する海賊を後ろからぶった斬り、船に飛び移ると、縄ばしご切り落とす!
その姿を見た、ダークエルフの護衛ども。
「・・・カバリオ隊長?」
「おう」戦死したはずの、カバリオ隊長。「よう頑張ったのう」
「なんでここに?」
「召喚されてん。──邪魔じゃ、どけい!」
海賊蹴り落とし、縄ばしごもう一本切り落とし、水夫を助け起こす。
指示飛ばす。
「怪我人はトリフェーラさまんとこ行け! 巫女さまや。治してもらえる。
あ、ついでに、ハルモニアーさまに早まるな言うといてくれ」
「は、はい」
「動ける奴は来い! 蹴散らすぞ!」
「おう!」
「う・・・うおお!」血まみれの船長、立ち上がる。「おめぇら! ダークエルフ殿につづけ!」
「あ、コラ。おっさん。おまえはアカン」
「おっさんじゃねぇ、俺ァ、船長だァ! こ、この程度・・・どうってこたァねえ!」
「阿呆ゥ。出血舐めんな。止血してもらえ。いますぐにや」
カバリオ隊長。
生き残りをまとめ、負傷者を下げ、まだ残る縄ばしごに向かう。
「行くぞォ! 逆襲じゃ!
海賊蹴り落として、船ぶんどったれ!」
「おおお!」
・・・眼下の戦いを、ハルモニアーは無言で見た。
すぐ隣で、月の巫女トリフェーラが治療を始めておるのに、それにも気付かぬほど。
どう見ても。
カバリオ隊長である。
妹のイリスによくしてくれた、身体小っちゃいが心たくましい、あの隊長である。
さらに。
敵の船の1隻で、また別な混乱が起こっておった。
「ひぃぃ、魔女!」「海の魔女だァ」「今度はこっちに出たァ」
泣き叫ぶ海賊。
その中心に立つのは、白く輝く美女である。
淡い金色の髪。光を放つ、白い肌。
海賊ども。すっかりびびりつつも、捕まえようと、網投げる。
パッ!
女、宙に散って、粉々となって、消える。網、甲板に落ちただけ。
・・・ゆらゆらゆら。別の地点に、女の姿が現われる。
「うわあ、また消えた」「ひぃぃ、なんだおまえ」「不死身か」
「いかにも」
美女。ツンと澄ました目で海賊どもを睨み、宣言した。
「湖の魔女、顕現す」
◆ 19、英雄たち、しょうかんさる ◆
「生命惜しくば、とっとと去ね(いね)──『魔弾』!」
紫に輝く魔術の玉、飛ぶ!
ボカン! 爆発! 海賊吹っ飛ぶ!
「おお・・・」撃った本人が、感慨にひたっておる。「マナあれば、私でも撃てるに」
「うわああ! 死んでくれよぉ!」
海賊がパニックになったまま短刀振り回す。
魔女、避けるが、全部は避けきれん。当たる。
パッ! また消滅して、ゆらゆらゆら・・・別な地点に現われる。
「な・・・なんで!?」
「くっくっく。湖の魔術、そなたらにはわかるまい」
「水鏡(みかがみ)やん」
ハルモニアー、やっと一言、口に出せた。
その袖を、トリフェーラがそっと掴む。「座りましょう」
「トリ。あれ。水鏡の術」
「そうですねえ。お味方が優勢になっとるみたいですわ。
そやから、座りましょう」
「あ・・・うん・・・」
ぼうっとしたまま。
ハルモニアー、その場に座る。
自分では気付いとらんが、フラフラして、落っこちそうになっとったんである。トリフェーラの、ナイスセーブ。
座って、見ておるうちに──
カバリオ率いる突撃班、湖の魔女(?)の船に合流。
すでに恐慌状態の海賊を、追い落とす。船内に逃げた奴も、あぶり出す。全員、海に叩き込む!
海賊船、1隻丸ごと、ぶんどった!
残る2隻の海賊船、その船を挟もうとするが──
ここで、空飛ぶコボルド戦士、到着である!
「けむりだま、用意! かまえ! ・・・・・・・・・攻撃開始!」
ぼっふぁーーーん!!!
落雷隊のお得意戦法、急降下けむりだま! 甲板真っ白。なんも見えぬ!
そこに、肆号伍号のかぶとがに兄弟、接近。
ド!!! パァァァン・・・! ド!!! パァァァン・・・!
神竜戦の装備であった、散弾砲で!
2隻の帆柱、どっちも一発! へし折った!
海賊船は、逃げ出した!
帆を上げることもできんようになり、櫂取り出し、泣きながら手漕ぎで逃げてゆく!
はたして陸まで漕げるのやら? ──知ったことではないんである!
湖の魔女(?)、うなずく。
こっち見る。手振って来た。
「姉者?」ハルモニアー、きょとんとする。「ルシ姉」
ハルモニアーの声に、応えるように。
こちらへ迫り来る海賊船。その船上にて。
ルシーナと、カバリオ隊長!
肩組んで、ハルモニアーに、親指立てて見せるのであった!
「──こうして海賊しりぞけた、新生アルスの一団は。
海賊船に帆をかかげ、ふたたび海へと、漕ぎだした!」
ポロローン・・・!
竪琴鳴らして、ハルモニアー。
「『英雄たち、召喚さる!』の巻、これにて、おしまい。
今回のお祈り、いかがでしたかに?
次回も、お楽しみに~」