ホタルとずっといっしょがいい   作:糖分ピーチ

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 プロローグ短め
 残酷な描写(?)あり

 (24/08/19)挿絵追加


さよなら、よかった (挿絵あり)

 

 「ご………めん……っ」

 

 友人が、私の大切な友人が目の前で『死』にその身を貫かれた。その骸を抱きしめるが、泡となり、実体も消えた。彼女と出会ってからはあまり時間は経っていない。たぶん、一週間も過ぎてない。だけど私にとって彼女は、本当に大切な、大好きな友人だった。

 

 一緒にピノコニーを回って、色々な物を教えてくれて、目覚めてばかりでまだ思い出の少ない私には、その経験は何か少し違っていた。

 

 胸が暖かくて、ぽかぽかで、甘かった。

 

 でも、もう冷たくなって、上手く思い出せない。

 

 「なんで、刀を抜かなかったの」

 

 黄泉に問う。無意識に、言葉の勢いが強くなってしまう。

 

 「どうしてって聞いてるよ。答えて」

 

 「すまない、『開拓者』私に選択の余地は……

 

 何か言っているが、聞こえない。それどころじゃない。どうでもいい。早く、帰りたい。

 

 ブラックスワンと黄泉が話している。何もせずに立っていた二人の反省会だろうか。馬鹿らしい。

 

 しばらく話をして、二人は歩き出した。ブラックスワンに手を引かれ、私もなんとか歩き出す。

 

 ブラックスワンは私のことを気遣って、遠回りで安全な道を選んでくれた。私たちはその後何事もなく、誰とも邂逅することもなく、忌々しい場所から脱出する。

 

 二人は、大事な用があるとかで、すこし姫子と話した後にどこかへと行ってしまった。

 

 あぁ……彼女がいなくなってからみんなが私を心配してる。なの、丹恒、姫子、ヴェルト、それにパムも。ひとまず事態が一段落して列車のみんなと合流しても、私の心の翳りは微塵も晴れなかった。

 

 姫子は言った。「ホタルさんのことは残念だった」

 

 ヴェルトは言った。「強く心を持て」

 

 なのは言った。「そばにいてあげられなくてごめん」

 

 みんな話を聞いただけなのに、どうしてそんなわかったようなことを言うの。何も知らないくせに。彼女と話したことも無いくせに。

 

 わかってる。みんなは悪くない。悪いのは、事件の黒幕。絶対に許さない。

 

 許さない………けど、ただそれだけ。

 

 なんか、もういいかな。

 

 自暴自棄になってるのはわかってる。だけど、辛くて本当に死んでしまいそう。本当に、文字通り。

 

 ガチャッ

 

 借りたホテルのベッドで寝転がっていると、なのがやってきた。私は壁を向いて寝て、なのに背中を向ける。今は少し、一人にして欲しいんだけどな。

 

 「星………大丈夫?ヨウおじちゃんが心の薬も必要だろうってこれ………」

 

 「あぁ、ありがとね」

 

 ヴェルトはあまり多くは語らないけど、私から話しかければちゃんと話してくれるし、しっかりと欲しい答えをくれる。こういうところは、素直にありがたい。今の心に、痛く染みる。

 

 「その、体調は平気?」

 

 「うん、まあ大体……………」

 

 首を回してなのの方をちらりと向くと、視界の端にはほとんど食べてない食事、乱雑に置かれたオークミールの袋やピザの箱。

 

 「ちょっと、全然大丈夫そうに見えないけど?!目の下の隈もすごいし………アンタ、この部屋の様子を見るにご飯もまともに食べてないでしょ?」

 

 「うるさいなぁ……」

 

 ただショッピングをしてただけの癖に。私みたいに、大変な思いをしてたわけじゃないくせに。

 

 「アンタのためを思って来てやってんでしょ……?まったく………ほら、早くベッドから起き……」

 

 「うるさい

 

 「えっ……?」

 

 なのの顔はわかりやすく引きつって、そしてすぐにとても悲しそうな表情になった。

 

 「やめて、余計なお世話」

 

 「あっ………ご…………ごめ………ん」

 

 目尻は下がり、いつもの活発ななのからは想像できないほど暗い口調で謝罪を繰り返す。

 

 「早く出てって」

 

 「ぁ………うん、ごめんね。星」

 

 最後に絞るように呟いたなのの言葉は、酷く弱いものだった。

 

 なのが部屋から出ていき、先程までと同じ音の無い空間へと戻った。

 

 「……ごめん。なの、また、謝るから」

 

 誰に向けるでもなく呟く。贖罪を求める言葉。数秒前にはひどく心から遠ざけて、もう既にそれが耐えられなくなっている。彼女とはまた違う、仲間をも傷つけてしまった。

 

 もう、今日は寝よう。

 

 さっきなのが持ってきてくれた薬、使ってみようかな。

 

 薬の袋を開け、処方箋と薬の説明を読む。処方箋の日付は、昨日のものだった。私がひどく落ち込んでいたから、急いで用意してくれたのだろう。「一回の服用で二粒飲む」そう書かれている通り、手のひらに一粒、二粒と錠剤をのせる。

 

 そこでふと、考えてしまった。楽になる方法を。

 

 三錠目

 

 四錠目

 

 五錠目六錠目、手のひらいっぱいに、全部出した。これで良い。これで楽になる。そして、口の中へと、流し込んだ。

 

 ………何も起こらない。即効性はないのかな。

 

 ゴミとなった薬の袋を床に置き、ベッドへとまた登る。こうすると、少し眠くなるかもしれない。心做しか、瞼も落ちてきた。手も上がらなくなってきた気がする。薬の回りが早くなってゆく。

 

 良かった。苦しい終わりではなさそうだ。

 

 遠のく意識の中で、私は過去の思い出を振り返る。

 

 これが走馬灯か。

 

 最初に目覚めた時はカフカと、銀狼がいて、何も分からない状況だったけど、それでも手を差し伸べてくれる人達がいて。

 

 今思えば恵まれた目覚めだったと思う。

 

 ベロブログでも、羅浮でも、一時はどうなるかと思う展開になっても誰かと出会い、仲を深め、困難を脱することができた。

 

 本当に、恵まれてる。

 

 彼女は………私の大切なあの子はどうなのだろう。

 

 ロストエントロピー症候群。彼女はあの場所で、そう言っていた。詳しいことまではは分からないけれど、周りの人との違いを感じ続ける人生は、難しく、苦しかったのではないだろうか。

 

 私は、彼女に幸せを与えることができただろうか。

 

 ぐるぐると思考は堂々巡りし、不安と、後悔が押し寄せてくる。たった一度の、たった一つの存在によって引き起こされた失敗が原因で、私の一生は終わる。

 

 大切に積み上げてきた石は、たった一度の強風で無惨に崩れ落ちる。

 

 後悔と、無念の残ってしまった私の一生。

 

 

 でも、救いはまだある。

 

 

 

 ふと、思いつく。

 

 

 痺れて、上手く動かない口角が、思わず上がる。

 

 

 先程までとは打って変わって心の底から湧き上がる歓喜。

 

 

 

 天国か、それとも地獄か、どっちでもいい。

 

 

 

 

 

 

 とにかく、大事なのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よかった これでホタルにあえる

 

 

 

 

 

 

ということ

 

 

 

 待ってて………今、ホタルのところに行くよ

 

 

 

 

【挿絵表示】

 




睡眠薬の過剰摂取は控えましょう。
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