部屋を漁っていたら出てきたポケットモンスターハートゴールド。なぜか気まぐれでデータを消して最初からプレイ。現在バッチは5個なのですが、『これ、小説で書いたら面白くね?』なんて雑念がよぎり、やっちゃいました。
文章力、更新ペースにはあまり期待しないでくださいはい。
床から体に冷たさが伝染し、体から暖かさが床に押し返される。床が徐々に暖かくなって来たと感じ、横に寝返りを打つと腹に冷たさが襲って来た。
「うぁぁぁあああ………」
情けない声が漏れ、頬もとろける。もうこのままずっとゴロゴロしていたい。
「ヒビキー? 準備できたのー?」
下の階からよく通る、母親の声が響いた。
準備、ねぇ……。
「まだぁー」
「早く準備しなさーい! 足元暗くなるとつらいよー!」
「わかってんよー、っせーなババァ……」
ババァと言い終えたのと同時。
ドスドスドスドスとものすごいスピードで近づいてくる足音。流石に危機を察知し立ち上がり、重心を落とした。
「……誰がババァだって?」
部屋の扉越しにひしひしと伝わってくる殺気。おい母ちゃん……その殺気だけで人殺せるんじゃねぇの?
「……ナンデモナイデス、お母様」
流石に旅に出る前に殺されるのは勘弁していただきたいので、大人しく準備を始めた。
■ ■ ■
夏の残り香が香る九月一日。今日俺は、このジョウト地方を周る旅に出る。
俺の住んでいる小さな町、ワカバタウンではとある決まりがある。
十歳を迎えた子供は、旅にでなければならないというものだ。誠にめんどくさい。
俺、ヒビキはつい昨日十歳の誕生日を迎え、旅に出ることになったわけで。本当は昨日にでも出発してしまえば良かったのだが、これにはちょっとした理由がある。
と、自分の経緯やらなにやらを話し終えたところで準備が終わり、一週間分の食料やらが入ったバックを引っさげ下の階に降りる。
「ほら母ちゃん、準備終わった」
リビングの扉を軽く開き、顔を覗かせる。
洗濯物をたたんでいた母ちゃんは作業を中止し、優しい笑みを浮かべながら近づいて来た。
「ん……よろしい。すっかり大人になったわねぇ……」
言いながら、俺の格好を足先から頭まで舐め上げるように見つめた。少し恥ずかしいからあんま見ないで欲しいのだが、今日からしばらく別れるわけだし強く言えない。
「そりゃ十歳だからな。体もそれなりにデカくなったし、力だってついたよ」
「どこか抜けてるところは変わってないけどね……帽子、忘れてる」
「あ、あれ? おっかしいな……」
頭に手を当てると、帽子の感覚ではなく髪の毛の感触が手に返ってきた。
母ちゃんが帽子を俺の頭に乗せ微笑む。さっきの殺気なんて全く感じない、優しい笑みだ。
「洗濯、しておいたから」
「おぉ、サンキュ……汚れてたからなぁ」
二年程前の誕生日に貰った帽子。黒の生地に太い黄色い線が入った、何処にでもあるものだ。
「………」
「………」
二人の間で、沈黙が流れた。
少し寂しいけども、もう出発しなくちゃならない。
「行って来るわ。そろそろ」
「うん、気をつけてね」
帽子を深くかぶり、玄関の扉をゆっくり、ゆっくりと押し開ける。
扉の隙間から秋の匂いと夏の匂いを乗せた、心地の良い風が吹き、鼻孔をくすぐる。
この風をずっと覚えていよう。この風は、俺の始まりの風だ。
長いようで短いような、