世界に名を響かせる。   作:白夜夕夜

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第4話 『初戦』

 少し歩くとヨシノシティが見えてきた。

 ワカバタウンとあまり変わらない大きさの、静かな街だ。町の奥には海も有り、海目当てで住んでいる人もなかなかに多いと母ちゃんが話していた。

 遠目に見る限りでも花壇など花が多く、街を華やかに飾っている。何度か見たことある光景だが、見る度に感動を与えてくれる。

「やっぱりすごいねぇ……ヨシノシティの花」

 俺の隣を歩くコトネが目を輝かせる。

「ああ……綺麗だよな。手入れが大変そうだ」

 この大量の花がヨシノシティの売りだとは言え、この量を管理して手入れするのは、かなり大変なことだろう。

『お疲れ様ッス』と、口の中で花の手入れに関わったであろう沢山の人に呟いた。

「おいおいそこのお二人さーん!」

 突然、前方から声をかけられる。声の主は猛スピードで走ってくるあの爺さんだろうか。

「うわ、(はや)っ……」

 と、コトネが頬を引きつらせる。

 まぁ無理もない。こっちに走ってくる爺さんはものすんごく速く、結構あった俺たちとの距離をグングン詰めてくる。

 その爺さんは俺達の数メートル前で止まり、ウツギ博士のような人懐っこい笑みを浮かべた。白い髭を蓄えた、結構年のいっている爺さんだ。だがさっきの走りっぷりとしっかりと伸びた背筋のせいか、歳を感じさせない。

「二人はまだ駆け出しトレーナーってところかな?」

 駆け出し、という言葉に少しばかりカチンときたが、素直に頷いておく。誰がまだポケモンも捕まえられない駆け出しトレーナーだ、クソ。

「そうかそうか、ワカバタウンの子供は十歳を迎えれば旅に出す、という決まりがあったな」

「そうッスね。何か大人の階段を登るだかなんだかーって……」

「ふむ、ならワシは大人の階段を登る手助けをしてあげよう……二人とも、ポケギアは持ってるかな?」

「まぁ……」「持ってます、けど……」

 爺さんの饒舌(じょうぜつ)に圧倒されつつ、ポケギアを渡す。

 ポケギアを受け取ると爺さんは何やらカードを取り出し、ポケギアに読み込ませ俺たちに返した。

「それでジョウト地方の地図が見れるようになったぞい。これで大人の階段、楽に登れるといいな?」

「わぁ! ありがとうございます!」

「ど、どもッス……」

 うわ、すげぇこの爺さん親切。地図でもあればなぁとか思ってたところなんだよな。

 俺達のお礼を受けて、爺さんは豪快に笑い飛ばすと走り去ってしまった。なんか、アレだ。フレンドリーショップよりフレンドリーな爺さんだったな……。

「すごい、すごいよヒビキ! 地図が見れるよ!!」

 ポケギアで地図を表示させつつはしゃぐコトネ。地図一つでここまで喜べるのはコトネの長所だろう。

「はしゃいでる場合じゃねぇな。そろそろ出発するぞ。ヨシノシティを北から出れば30番道路だからな」

「あー……そうだった。うん、行こっか」

 二人でもう一度あのフレンドリーな爺さんにお礼をしつつ、ヨシノシティを出た。

 

 ■ ■ ■

 

 30番道路。駆け出しトレーナー達がポケモンバトルを繰り広げる、駆け出し道路、といったところだろうか。

 実際30番道路には初めて来たのだが、なかなか賑やかな場所で、あちこちでトレーナーがバトルを繰り広げている。

「うわ……すっげ」

「うん、すごいねぇ……」

 思わず二人揃って呆気にとられる。何処のトレーナーも勝負慣れをしていて、俺たちとは何処か違う雰囲気を醸し出していた。

「おっ、駆け出しトレーナー発見」

「おい、誰がポケモンも捕まえられない駆け出しトレーナーだオイ」

 精一杯眉間にしわを寄せつつ声のした方に振り向くと、短パンを履き、帽子をかぶった少年がややビビった様子で立っていた。

「……何か、ごめんな。そこまで駆け出しだとは思わなかった」

「やめろ(あわ)れむな虚しくなるから!!」

 半泣きで訴えると隣でコトネが吹き出した。クソ……ッ!絶対捕まえてやる!

「まぁそんな駆け出しの中の駆け出しトレーナーだとしても、立派なトレーナーの一人。トレーナー同士が会ったなら、やることは一つ……バトルだよな!」

 言いながら、ベルトにはめてあったモンスターボールを外し、構える。

「よぉしこの駆け出しの中の駆け出しトレーナーヒビキが相手になってやる!」

 半ばヤケクソで、俺の初トレーナー戦は幕を開けた。

 短パンを履いた少年が構えたボールを放り投げる。

「行け!コラッタ!!」

 ボールは空中で光を吐き出し、光が小さなネズミをかたどっていく。

 コラッタなら、ここに来る前に二度倒した。問題ない。不幸中の幸いというやつである。

「よし━━いくぞ、ヒノアラシ!!」

 叫ぶと、肩に乗っていたヒノアラシが地面に飛び降り、吠える。気合は充分だ。

 ヒノアラシとコラッタを遠目にポケギアでかざし、体力を表示させた。

「コラッタ━━『たいあたり』!!」

 相手の方がバトル慣れしてることもあってか、動き出しが早い。

 指示を受けたコラッタは猛スピードで動き、ヒノアラシに向かって突っ込んでくる。

「ッ………ヒノアラシ! こっちも『たいあたり』だ!」

 迎え撃つようにヒノアラシがコラッタに体当たり。辺りに衝撃音が走り、二匹とも吹き飛んだ。ポケギアに表示された二匹の体力ゲージが少量削れる。

「コラッタ!『しっぽをふる』!」

 コラッタが体勢を立て直し、尻尾を8の字に回し出す。

「気をつけてヒビキ! しっぽをふるは相手の防御を下げる技だよ!」

「あんな尻尾で防御下げられるのかよウチのヒノアラシ?!」

 引っ張れば簡単に抜けそうな尻尾してんのにクソ!

 奥歯を噛み締めつつヒノアラシに目をやる。

 ヒノアラシはどうやら尻尾に目をとられてしまったようで、軽く目を回している。効き目大きいなオイ……!

「続けてもう一度『たいあたり』!!」

 尻尾を振っていたコラッタは地面を蹴り、ヒノアラシの腹部に体当たり。今度はヒノアラシだけが吹き飛び、体力ゲージが大幅に削れた。

「ヒノアラシ!!」

 思わずヒノアラシに駆け寄り叫ぶ。

 が、ヒノアラシは立ち上がり、大丈夫だと言わんばかりに俺をまっすぐ見つめた。

「……よし、まだやれるな。ヒノアラシ! 『にらみつける』!!」

 やられたなら同じことをやり返してやる━━!!

 にらみつけるもしっぽをふると同様に、相手の防御力を下げる技だ。

 ヒノアラシに睨まれたコラッタは軽く跳ね上がり、足を震わせつつ後退する。

「今だ! ヒノアラシ『たいあたり』!!」

 指示を受けたヒノアラシが地面を思いっきり蹴り飛ばし、コラッタの小さい体に飛び込んでいく。

 ヒノアラシの体当たりをコラッタは小さな体でまともに受け、短パンの少年の足元に転がっていく。

 ポケギアのコラッタの体力ゲージに目をやると、みるみるうちに体力は減っていき━━

 

 ━━ピッという機械音と共に、ゼロになった。

 

「やったじゃんヒビキ! 勝ったよ!! 初勝利!!」

 コトネが自分の事のように喜びながら、俺の肩を叩いてくる。

「か、勝った……」

 そっか、俺……勝ったのか。初勝利か!

「何だこれ……嬉しいな。ゾクゾクする」

「お、おい待て今……初勝利って言ったか? 初めてポケモンバトルする相手に負けたのか、俺?」

 俺が初戦だったことがかなりショックなのか、何やらブツブツ言いつつコラッタをボールに戻し、走り去ってしまった。

 そっか……初勝利か。

 勝利の味は、かなり美味かった。もう一度味わいたいと……思う程度に。

 

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