世界に名を響かせる。   作:白夜夕夜

5 / 7
第5話 『図鑑とたまご』

 途中出てきたポケモンをコトネのマリルとポッポ(ポッポを出す度にコトネが俺にドヤ顔を向けていた)、俺のヒノアラシで倒しつつ進むと、一件の民家が見えてきた。

「……あれ? 博士が言ってたおじいさんの家ってもう少し奥だよね?」

「確か、な」

 博士からは30番道路を二十分近く歩いた所にあると聞かされている。現在30番道路に入って三十分近く経過してるが、途中ポケモンと戦って時間をロスしてるし、三十分じゃつかないだろう。

「奥に行く道はまだあるし、スルーして進むか。こっからはなるべく草むらは避けて行こうぜ。あんま時間、余裕ないし」

「ん、そーだね」

 と話しながら家の前を通過し道に入ろうとすると、ものすごい音を立てて(くだり)の家のドアが開いた。

「待て待て! こんなに目立つおじさんちを鮮やかにスルーしようとしているそこのカップル待ちたまえ!」

「いやカップルじゃねーし目立たない普通の家だろ」

 思わずツッコミ。

「そんなことはどうでもいい!!」

 どうでもいいのかよ。

「ここの道を来たに歩いて行けばポケモン爺さんの家はある。だがその前におじさんの話を聞いていけ……!」

「い、いや構わないスけど……長くなるようなら断りたいっつーか」

「いや、そんなに長くならないし君らの役にもたつはずだ」

 ここまでグイグイ来られると断りづらい。ヨシノシティの爺さんみたく。

 頬を引きつらせ微妙な顔をしていると、コトネが顔を俺の耳に近づけてくる。女の子の甘い香りが鼻孔をくすぐり、思わず頬に熱が走った。

「なんだよ……」

「あのさ。ここら辺の人って親切っていうか……変わり者が多いのかな?」

「……じゃねーの? とりあえず話しくらい聞いてやるべ」

 コトネに応えつつ、手だけで話の続きを促す。

「君たちはぼんぐりというものを知ってるかな?」

 ぼんぐり……名前ならテレビで聞いたことはあるが、よく知らない。素直に首を横に振るとおじさんは満足気に笑った。

「そうじゃろうそうじゃろう。ぼんぐりというのは、ボールの材料に使えたり色々する木の実のことじゃ。これも何かの縁だ……駆け出しトレーナーの君たちにぼんぐりケースを授けてやろう」

 おい、誰がポケモンも捕まえられない駆け出しトレーナーだ。

 ……とはもう言うわけもなく、素直にケースを受け取る。

「これで君も立派なぼんぐらーだな!」

 とだけ言って、家の中に帰っていく。

「……なんだったんだろうね。あのおじさん」

「わからん。嵐のようなおじさんだったことは確かだ」

 ま、良い人だったことは確かだろう。

 

 ■ ■ ■

 

 ぼんぐりおじさん(俺命名)の家から北に進むと、すぐに目的地のポケモン爺さんの家が見えてきた。

「割とすぐだったな……」

「そだね。ささ、早く届け物もらっておつかいすませちゃお」

 俺の背中をバック越しに押して来るコトネに急かされ、ドアの前に立つ。呼鈴がないし、ドアを軽く叩きノックした。

「はいはーい、鍵はあいてるぞ」

 扉越しに聞こえた爺さんの声は、元気そうな印象を受けた。

 ドアノブを捻り、扉を押す。玄関には二足靴が置いてあり、俺たち以外にも誰かが来てることがわかった。

 玄関からは廊下が続いていて、右側と左側に部屋が一つずつと、奥に部屋が一つ。話し声が置くから聞こえるし、俺たちもそこに行けばいいんだろう。

 二人で靴を脱ぎ、廊下を進んで行き、奥の部屋のドアを開けると、机を挟んで二人の爺さんが談笑していた。片方は白衣に身を包んだ、としの割りには若く見える男性。もう片方は、茶色のスーツと、スーツと同じ色の帽子をかぶった男性。

「お、君たちがコトネちゃんとヒビキ君かな。ウツギ博士にメールをしたのは私だよ」

 扉側から見て奥のイスに腰をかけていた、帽子をかぶった男性が子供っぽい笑みを浮かべた。どうやらこの人がポケモン爺さんらしい。

「ささ、そっちの椅子に座っておいて。今例のものを持って来るから」

 机の横に設けられている2人がけのソファを指差しつつ、ポケモン爺さんが部屋を出て行った。

 俺たちはお言葉に甘えてソファに腰を下ろすと、ポケモンバトルの疲労からか小さな溜息が漏れた。

「随分とお疲れのようじゃな、お二人さん」

 白衣に身を包んだ男性が、苦笑を浮かべつつ言う。

「はぁ、まぁ。俺はあまり家から出なかったもんで」

 突然話しかけられた事で少し戸惑ったが、同じように苦笑しつつ応える。この人、どっかで見たことあるんだよな……。

「ヒビキには引きこもりくせがあるからねー?」

「っるせーな……」

「うるさくないですぅ」

 ……コトネはまだまだ全然疲れていないようだ。まぁコイツは普段からマリルと追いかけっこやらしてるし、体力だけはあるんだろう。

 なんていつも通りの会話をしていると、なにやら大きな球体を持ってポケモン爺さんが帰ってきた。

「……たまご?」

「そう、これはポケモンのたまご。エンジュの友人から譲り受けたものでねー……どうだい? この卵。ジョウトでは見ないものだろう?」

 ポケモンのたまごに関しても全くの無知なのだが。コトネが頷いてるからとりあえず頷いておく。

「これが一体なんなのか……ウツギ博士ならわかるんじゃないかって思ってさ。ポケモンの進化の研究ならウツギ博士が一番だって、そこの有名なオーキド博士も言ってるからね」

 言いながら、白衣の男を指差す。

 ……オーキド、博士………

「あー! 何処かで見たことあると思ったらテレビで!」

「ははは、どうも。ポケモン研究家のオーキドじゃよ」

 そっか、テレビか。有名人なんだなぁ……やっぱり。

 オーキド博士が、俺にまっすぐと視線を向けて来る。

「君がヒビキ君か。……ふむ、彼が君にそのポケモンを託したのも、わかる気がする。君ならポケモンを大事に育ててくれそうだからな」

 不意に褒められて、なんだか照れ臭くて。だけど謙遜(けんそん)する気にもなれない。オーキド博士の言葉は、まっすぐな視線のせいか嘘偽りのない、本心で言ってるのだと思えた。

「そんな君に、わしからも頼み事をしようかの」

 君、ということは俺個人なんだろうか。

 コトネに目配せすると、首を傾げて疑問符を浮かべた。ダメだ通じてない。

 オーキド博士はなにやら白衣のポケットから取り出し、机の上に静かに置いた。

「これは最新型のポケモン図鑑。見つけたポケモンが自動的に書き込まれてページが増えていくというハイテクなものじゃ。これを、君に預けようかと思っての」

「え、いいんスか。こんな高価なもの」

「旅にでるんだろう? ならたくさんのポケモンとも出会う。この図鑑を完成させるのは君が適任だと思うんだが……どうかな?」

 たくさんのポケモンと出会い、この真っ白な図鑑を埋めていく。

 どうかな? って……そんなの、断れるわけないじゃないか。

 

 スッゲー、ワクワクする!

 

 この小さな図鑑に、俺の冒険の全てが刻み込まれるのだ。想像しただけで、ワクワクする。

「わかりました。引き受けますよ」

「助かるよ。いつか完璧な図鑑を、わしに見せてくれ」

 図鑑をパーカーのポケットにしまい、ポケモン爺さんからたまごを受け取り席を立つ。

「じゃあ、オーキド博士の図鑑とポケモンのたまご、頼んだよ」

「「はい!」」

 二人で元気良く返事をして、ポケモン爺さんの家をでた。

 

 

「ポケモン爺さんもオーキド博士も、良い人だったね」

 家をでたところで、コトネが満面の笑みで言う。

「そうだなぁ。ウツギ博士の知り合いなんだし、悪い人はいねーだろうよ」

「確かに」

 笑ながら、コトネがたまごを撫でる。たまごが少し動いたような気がしたが、気のせいだろう。

 突然、コトネのポケギアが鳴る。これは確か、電話の着信音だったか。

「ウツギ博士からだ……どうしたんだろう」

 ポケギアを操作して耳に当てる。

「はい、コトネです……え、大変ってなにが……はい、はい。わかりました」

「どした?」

「何か大変だって……急いで帰ってこいって」

 電話越しに聞こえてきた博士の声は、何を言ってるのかは聞き取れなかったが焦ってるようだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。