世界に名を響かせる。   作:白夜夕夜

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第6話 『奏でる音と響く音』

 二人が去ったポケモン爺さんの家。

 オーキドはどこか、遠くを眺めていた。

「オーキド博士。あの少年と、ヒビキ君をどこか……重ねてるんじゃないかな?」

 オーキドが眺めている先には、シロガネ山と呼ばれる、大きな山がある。

「確かに……ヒビキ君はレッドに、何処か似ているな……だから、図鑑を託したのかもしれない」

 3年前にロケット団を解散まで追い込んだ少年、レッド。

 その力は強大で、カントーのジムリーダーを全て倒し、四天王、チャンピオンをも倒した。

 誰の力も、彼の足元にも及ばない。

「彼なら━━」

 彼なら━━レッドを、倒してくれるかもしれない。

 

 ■ ■ ■

 

 博士の電話を受けてから、ずっと走り続けてるわけなのだが。

 いかんせん、たまごを抱えながら走るのはなかなかキツいモノある。

「なぁ、コトネ。そろそろ休まね?」

「ダーメだよ。先生が急いで帰って来いって言ってたんだから。それにもうすぐで29番道路だし」

「……ならちょっとたまご持ってくれよ」

「え、何言ってるかちょっとわからない」

「コノヤロウ……」

 頬を引きつらせながらも走るペースは落とさない。

 俺の肩に乗っていたヒノアラシも流石に肩からおりて、足元でせっせか走っている。うん……気を使ってくれるのはお前だけだよ、相棒(ヒノアラシ)

 ヨシノシティを突っ切り、29番道路に入ろうとした時だった。

 29番道路に入る、丁度少し手前。やけに不機嫌そうな顔をした赤髪の男が丁度俺たちを邪魔する様な形で佇んでいた。しかもソイツは━━ワニノコを連れている。

「……お前確かさっき、ウツギ博士にポケモンを貰ってたな」

 声をかけられたことで、思わず足を止める。

 お前、というのはたぶん、俺のことなんだろう。

「あぁ、そうだけど」

「お前みたいな弱い奴には、もったいないポケモンだな?」

 言いながら、不機嫌そうな顔に皮肉気な笑みを貼り付ける。

「テメェ……どういう意味だ」

「何を言われてるのかわからないのか? なら力づくで教えてやる。ほら、かかって来いよ」

 俺の中で、何かが切れる音がした。

「……おい、コトネ。少したまご持ってろ」

 自分でもわかるくらいに、トーンの低い声。コトネの表情は見えないが、たまごを受け取る手は震えていた様に見えた。

 ポケットからポケギアを取り出し、自分のヒノアラシと相手のワニノコにかざす。

「さっさと始めようぜ。こっちにはあまり時間はねぇんだ」

 ヒノアラシが重心を落とし、臨戦態勢に入る。

「ずいぶんとやる気じゃないか……いくぞ、ワニノコ!!」

 ワニノコも同様に臨戦態勢に入ると、周りの空気が張り詰めた。

 葉と葉がこすれる音と、コトネの静かな呼吸音だけが辺りに響く。

「ヒノアラシ━━『たいあたり』!!」

「ワニノコ━━『ひっかく』!!」

 ほぼ同時に両者のポケモンが地面を蹴り飛ばし、グングン距離を詰める。

 振り上げられたワニノコの手が一気に下ろされ、鋭い爪がヒノアラシに傷を生む。だがヒノアラシもそれごときで止まることはない。ワニノコの身体に突っ込み、ワニノコが後ろに吹き飛んだ。

「チッ……」

「おいおいどうした! 力づくでわからせてくれるんじゃなかったのかよ!」

 軽口を叩きつつ、ポケギアの体力ゲージに目をやる。両者とも体力が減っているが、明らかにワニノコの方が多く削れている。レベルが少しこちらのほうが高いようだ。

「ワニノコ、『にらみつける』!!」

「させるかよ! ヒノアラシ、『えんまく』!!」

 ヒノアラシの背中の炎が激しく燃え、同時にヒノアラシが口を膨らませる。ワニノコが体制を立て直したのと同時に、それを吐き出した。

 ヒノアラシの炎が燃えることで(しょう)じる、真っ黒な煙だ。それはワニノコを包み込み、視界を(さえぎ)る。

「続けて『たいあたり』!!」

 ヒノアラシが煙幕の中に飛び込んで行く。鈍い音が辺りに走り、煙からワニノコが飛び出した。

「なかなかやるじゃないか……ワニノコ、『ひっかく』!!」

「同じ手は何度も喰らわねぇよ!」

 ワニノコがたたらを踏み、体制を立て直すと腕を振り上げ、地面を蹴り再び突っ込んで来きた。

 ━━が、ヒノアラシは身体を少し横にずらし、ワニノコの背後をとる。同じ手をなん度も喰らうほど、ウチのヒノアラシは弱くない。

 ワニノコの顔に、驚愕の表情が浮かんだ。

「よくやったヒノアラシ━━『たいあたり』!!」

 背後からの、重い一撃。

 まともに喰らったワニノコは地面に激突し、同時にポケギアの体力ゲージもゼロとなった。

「……偉そうなクチ叩いてたくせにあまり強くねぇじゃねぇか」

 戻ってきたヒノアラシの頭を撫でながら、笑ってやる。よくやってくれたな、ヒノアラシ。

「チッ……まだまだレベルが足りないか。勝ててそんなに嬉しいかよ?」

 戦闘不能になったワニノコをボールに戻しつつ、赤髪の男が顔をしかめた。

「あぁ……嬉しいよ。勝利の味は、サイコーに美味いからな」

「勝利の味、か……フン。くだらない」

 俺とコトネの横を通り去ろうとする赤髪の男。その背中に向かって、言葉を投げかける。

「……おい。お前、名前はなんて言うんだよ。俺の名前はヒビキだ」

「俺? 俺は━━」

 首だけで振り返ると、肩越しに俺を睨みつけた。

「━━俺は、カナデ。俺の奏でる強い音で弱者をねじ伏せ、世界で一番強いポケモントレーナーになる男だ」

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