アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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少しだけ男女の関係ネタを含みます。
まあそういうことです。
寛大な心でご覧下さい。


第8話

ある日の出来事。

 

「…………」

 

俺は家で、すいせいの配信を観ている。今やってるのは3Dの日以降頻度が増えたパズルゲームの連戦だ。マジの顔でやりこんでる。

 

『だーっ!!あと少しだったのに!!』

 

世界中の相手と100人同時に戦えるモードで残り5人まで行ったものの、そこで力尽きてしまった。

 

『……は?世界ランカーの人いたの!?まじかよー』

 

どうやらとんでもない人が参加していたらしい。まあ対戦相手を選んだり出来ないからそういうこともあるとは思う。

 

「……どう?すいちゃん」

「どうもなにも、観た通りだな」

 

隣でお茶を飲みながらのんびりしているAZKi。

 

「熱くなってるねえ……」

「よかったのか?今日休みなんだろ?」

「ん?ここが1番落ち着くから良いんだよ」

 

朝から俺の部屋を訪れて、一通りの掃除をしたあとは俺のベッドを占領している。

 

「彼氏の部屋を占領するって案外いい気分だね」

「……そうなのか?」

 

なにがいいのか解らんが、嬉しそうに笑うAZKiに相槌を打っておく。

 

「というか、貴方は私達の部屋来ないよねえ。たまには行きたいとか思わないの?」

「用もないのに行ってもな。実家の方は何度も顔出しさせられてるが」

「そりゃあ、お付き合いしている相手はちゃんと紹介しないとね」

 

2人の両親とも、もはや俺の第2第3の親といっても差し支えない位には長い付き合いだ。うちの両親とも仲良くしていただいているし、何かあるとお互いに連絡がくるレベルだ。

 

「改まって挨拶に行った日なんか、大笑いされた気もするが」

「皆あのライブ観に来てくれてたからね。それに言っとくけど、君以外はみんな気づいてたんだからね?それこそ学生の頃から」

 

どうやらそうらしい。今となっては心当たりもあるが、当時はそんなの分からなかった。

 

「ここからスタジオとかレッスン通うのは流石に遠いからね。私もすいちゃんもちゃんとお部屋借りてるんだから、遊びに来て良いのに」

「荷物運び手伝ったんだから知ってるよ。引っ越しの日引っ張り回されただろ」

 

2人とも近い位置に部屋を借りてるもんだから、日をずらして手伝いに行ったんだ。バイト代と称して飯を奢ってくれるって話だったから、ホイホイつられたらエライ目にあったが。

 

「機材運ぶ羽目になるとはな」

「あれは正直やりすぎたよね。ごめんね?」

「今さらだろ。良い飯食わせてくれたし気にしてねえよ」

 

都会ってのはすごいな。あんなに良い肉食べたの初めてだったわ。当たり前のように2人は出してたが、果たして幾らしたのかは考えたくもない。

 

「話を戻すけど。私達だって用がなくても来てるんだよ?それこそ会いに来るっていうのが用になってるんだし」

「そりゃ、この辺は地元なんだからいいだろ。皆知り合いみたいなもんだし。お前らがいるの都会なんだから、身バレとかしたら不味いだろうが」

「そんなの気にしないよ。まあ、流石に家バレは駄目だけど、住所は知ってるんだから連絡くれたらいつでも開けるよ?」

「そうは言うがな」

「むー」

 

どこか不満げなAZKi。俺にどうしろってんだ。

 

「……わかったわかった。今度そっちに行く予定立てて連絡するから、その時な?」

「約束だよ?お泊まりさせるから、ちゃんと準備してきてね?」

「待て、それは話が違う」

 

俺がそう言った瞬間、待ってましたとばかりに何処かに連絡するAZKi。というか、すいせいだろそれ!

 

『んー?あずきちから連絡……?』

 

ほら!配信から答え聞こえてるじゃねーか!

 

『おっ!んふふ……、良いこと知っちゃったー!』

 

めちゃくちゃ嬉しそうにしやがって。視聴者にバレてるぞ!

 

「良い反応だねえ。今日貴方から言質とるよって言っておいたから、待ってたんじゃないかな」

「お前なあ……」

 

悪びれもしないAZKi。

 

「ちなみに分かってる?女の子がお付き合いしてる男の子を自宅に招くのは、色んな覚悟を決めてるってことだよ」

「は?覚悟?」

「そもそも女の子が男の子の家に上がり込んでる時点でそうじゃないかと思うけど。この辺は個人差あるから関係性次第かな」

「何の話だ」

「だーかーらー」

 

急ににじり寄って何を。

 

「……こういうこと」

「……は?」

 

頬に湿った感触。そのまま耳許で囁く声が、酷くはっきり聞こえる。

 

「私達2人とも、もう子供じゃないんだよ?貴方がそういうことになんとなくラインを引いてるのは知ってるけど」

「……いや、別にそういう訳じゃ」

「その割にはたまーに薄着すると、ちゃんと見てるのに。女の子は視線に敏感なんだからね?」

「それはごめん」

 

いやまあ、今日だってAZKiにしてはやや短いスカートなのに、ベッドの上でバタついたりしてるから、少し目を引っ張られてたが。

 

「あまりにも進展しないから、2人で色々作戦立てて色々してたんだけど。思った通りに釣られるから反応可愛いねって言ってたよ」

「自分からバラすのかよ」

「それだけOKだったんだよってこと。自覚してね?」

 

う、うーん。難しい……。

 

「まあ、今すぐじゃなくて良いんだ。急に言ってもビックリするのは分かってたし」

「……そりゃどうも」

「けど、あんまり待たせ過ぎると……」

 

にっこりと笑ってるが、目がマジすぎる。

 

「私達、なにするか分からないからね?」

「……はい」

 

なんか、いつもより圧が強かったな……。

 

 

 

 

少し後のある日のこと。

 

「ねえねえ、いつ泊まりにくるのさー」

「そんなに催促されなきゃいけないことなのか?」

 

今度はすいせいが家に来てた。ずいぶんラフな格好でこれまた俺のベッドを占領している。この日はAZKiが自身の配信のためにロケに出てた。

 

「あずきちとずっと楽しみにしてるのに」

「予定を立てようにも、俺がそっちに行く時間がそんなにねえよ。そりゃお前らに会えるのは楽しいけど、学生である以上は授業もあればバイトもあるし。行くにしたってそこそこ金かかるんだからな?」

「お金なんか言ってくれたら幾らでも出すのに。長期休みは?」

「この間終わったばかりだろうが。だから配信に出れたんだろ。あと、費用頼り出したら沼な気がするから自力にさせてくれ」

「ぶー、もう少し早くけしかけるべきだったか……」

「あのなあ……」

 

この前のAZKiの話から、何のことを言ってるかは理解してるが、それにしても明け透けすぎでは?彼女ってのは皆こうなんだろうか。

 

「あ、勘違いしないで欲しいけど、私達あんた以外にこんなこと言わないからね?痴女じゃあるまいし」

「お、おう」

 

人の心読むな。

 

「……一応冬の休みにはそっちに行くつもりでいるよ。バイトのシフトも空けてもらったし」

「ホント?」

「こんな嘘つくかよ。そのために今頑張ってるの。シフト増やしてるの知ってるだろ」

「ふーん、そっか」

 

ニヤニヤとしやがってこのやろう。

 

「最近、身体がっしりしてきてるのは?」

「よく見てるな……。といっても、特になにか変えた訳じゃないぞ。バイトの荷物運びが多くなったから自然とついただけで」

 

こいつらが仕事でバイト先にきた収録が、この間テレビで放映されたんだが、その日以来観光がてらうちの店に来る客が全国各地から増えた。サイン書いたって言ったのを見に来るのが目的なんだが、その時にアイスがよく売れる。当然売り上げも上がるわけだが、そのために補充で運ぶ商品の数が馬鹿にならん。

 

「あー、あずきちも言ってたね。ネット注文も予約待ちらしいって」

「元々店長家族の個人経営だぞ?人足りてねえし、そもそも売れる数にも限界あるわ」

「そうだよねえ。高校の時からだから、結構長いよね。あの時は外でワゴン販売なんてしてなかったけど」

 

ちなみに店長は結婚してるし、お子さんも2人いる。アイスは奥さんと共同製作らしい。奥さんの方が牧場に伝があるとかなんとか言ってた気がするけど、詳しくは覚えてない。

 

「それにしても、冬かー」

「悪いな、もう少し先で」

「ううん。むしろ時間あるなら、今からなにか出来ることないかなーって」

「出来ること?」

 

何の話だ?

 

「ん?どうせなら、恥ずかしくないパーフェクトな私を見せたいじゃん。だから、どうしよっかなーって」

「…………」

 

なんでそんなに乗り気なのか。いや、それよりもだ。

 

「……あのな?」

「なに?」

こっ恥ずかしいが、言うべきだと思った。

 

「俺は、ありのままの2人が好きだ。だから、今も十分完璧だよ。それは心配しないでくれ」

「…………」

 

そう言って頭を撫でると、こっちを見て固まるすいせい。凄い珍しいなって他人事みたいに感じた。

 

「……なんか言ってくれ」

「いや、貴方から直球で好意を伝えられたの、凄い珍しくてビックリしちゃった」

「……そうかも」

 

思い返せば、確かにあんまり言ってなかったかもしれん。2人の方が言い過ぎな気もするが。

 

「すまん。でも2人の事は大切に思ってるから」

「……おお、なんかめちゃくちゃ嬉しい。体がソワソワする。抑えてくれないとジタバタしそう。ね、もう一回言って?」

「埃立つから止めてくれ。あと、恥ずかしいからまた今度な」

 

早口で捲し立てつつ、顔真っ赤なのにニヤニヤしながら迫ってくるすいせいを捌きながら、この後絶対AZKiにも弄られるんだろうなって確信して少し落ち込んだ。

 

 

 

 

 

「私にも直接好きって言ってよー」

「私もほっぺにキスしたい!ね、こっちきてよ!」

「ホントにお前らは分かりやすいな……」

 

後日、揃って家にきた2人に予想通り弄られた。

 

 

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