アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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ちょっとだけ、彼の周りの人間関係が出ます。
まあ、あまり深く考える必要はないです。


第9話 友人視点

「冬に都会にいくんだったか?」

「ああ。2人にいい加減、たまにはこっちに来いって催促されたから、予定立ててるよ」

「地元こっちだとあんまり動く気にならんよな」

 

今日も今日とてバイト。だけど、こいつがこんな頻度で入るのはホントに珍しい。まあ理由は聞いてるけどな。

 

「有名人って自覚があるのかないのか……」

「まあそんなことよりお前に会いたいってんだろ?幸せ者め」

「そりゃ否定しねえけどよ」

 

高校からの付き合いだから、もう5,6年になるのか。

いつのまにやら本人も注目の的なんだから、人生分からねえものだと思う。

 

「つっても、また無理すんなよ?これで倒れたりしたらどうなるか……」

「あいつらからも念押しされてるよ。倒れたら向こうに強制連行だそうだ」

「……それ、学校とかどうするつもりなんだ?」

「さあ?そういう意味でも無理は出来ねえよ」

 

我が友であるこいつは、幼馴染みのアイドル2人に迫られて、押しきられる形で付き合うことになった。まあ端から見ててもあの2人の攻勢は凄まじかったし、なんで気づかねえのかなとは思ってたが。高校時代の他の知り合いの奴らに聞いても、口を揃えて『やっとかバカヤロウ』って言われてた辺り、流石というかなんというか。

 

「まあ、2人以外にも予定があったから、元々行くつもりではあったんだが」

「お?予定?」

「ああ。あの2人のマネージャーから呼び出し受けててな。なんでも、またゲストとして番組にでないかって」

「おいおい。それ、あの2人は知ってるのか?」

「いや?ドッキリの仕掛人としてらしい。詳しいことはわからんが、楽しそうだから話だけでも聞いてみようかと」

 

……それ、逆ドッキリな気がするけどな。マネージャーからの声かけな時点でだいぶ怪しいし。まあいいか。観てる分にはどっちでも楽しそうだ。

 

「なるほどな。それで、そのまま向こうにか」

「そう。ホテルにでも泊まろうと思ってたんだが、そこであいつらからの催促が被ったんだよ」

「まー、お前の顔は割れてるしなあ。あんまり良いもんじゃないが」

 

あの二人を追っ掛けてる週刊紙の格好の的になったこいつは、裏では大分顔がバレてるわけで。仮にこいつがいるってバレれば、尾行してれば2人の家やら何やらも芋づる式に出てきちまう。こいつはそれが嫌だから、あんまり向こうに行こうとはしてなかったらしい。

 

「あの2人がその辺分かってないはずはないと思うがな」

「いっそ見せつけてやるって息巻いてた。なんであんなに強気なのか意味分からん」

 

……どっちが言ってるかはなんとなく分かるが、それにしても度胸あるな。

 

「どっちにしても、今は稼ぎ時か」

「ああ。幸い、今期はそこまで授業重くないから、こうやって出れるのは助かってる」

「お前のお陰で俺も助かってるから、こうして同じシフトなのは助かる。カバーしやすいしな」

 

こいつは昔から頭が良いというか、要領がいい。あんまり得意ではねえ俺からすれば羨ましい限りだし、レポートにしろテストにしろめちゃくちゃ頼りになる。何にも返せてねえんだが、やつ曰く「友達付き合いしてくれるやつ少ないから、普段は俺の方が助かってる」んだそうだ。あんまり喜んで良いのかはよく分からん。

「それは俺もそうだよ。お前の方が人当たりがいいから、客対応投げてもなんとかなるってのは」

「客商売のバイトでそれはどうなんだ」

 

こういうところはよく分からねえんだよなあ。

 

「明日は、残念ながら俺じゃねえからな。何とかしろよ?」

「そこまでガキじゃねえよ。つーか、予定あったんだな」

「ま、たまにはな。元々はなかったんだが、外せないからしょうがねえ」

「ふーん。何があるかは知らんが、まあ気をつけてな」

 

……お前に関係があるって言ったらどういう顔するんかな。

 

 

 

 

「あ、来た来た。おーい」

「お久しぶりです」

 

次の日、俺がいたのは地元の小さな喫茶店。バイト先とは真反対に位置する場所だから、あいつが来ることはない。

 

「片方ではなく、お二人揃って呼び出しなんて怖いっすね」

「ごめんね。ちょっと彼のことについて知りたいことあって、本人には聞きにくいからさあ」

「あ、別に都合が悪いことではないので、身構えないで下さいね」

 

何を隠そう、AS_tarのお2人に呼び出されたとあっては、流石に全部の用事を投げざるをえなかった。あ、間違っても不倫とかそういうのではないからな。単純にあいつのことを調べるときに俺が呼ばれてるってだけで、これ自体初めてのことじゃないしな。つっても、2人に呼ばれるのは中々レアだけど。

 

「まあ一応友人なんでね。あんまり深いことまでは言えないっすけど」

「うん。それでいいんだ。それでも私達じゃ踏み込めないこともあるしね」

 

ここの店のマスターは昔からこの2人のファンだから、ここを会議の会場にされて喜んでるし、誰かに漏らすこともない。2人もツアーチケットを渡したりしてるらしいし、win-winなんだろう。

 

「それで、今日はなんのご用件ですか」

「ちょーっと、下世話な話になりそうなんだけど、平気?」

「それはまた。2人揃って似合わなそうな議題っすね……。別に良いですけど」

 

前置きなんて珍しいから、少しだけ身構えることにした。

 

「あのさ、今度の冬に彼がうちに来るって聞いてる?」

「ああ、昨日その話しましたよ。バイトめっちゃ入ってるから、理由聞いたらそう言ってましたね」

 

タイムリーな話だったな。

 

「この間、あずきちが彼を押しきってくれて、そういう約束したんだけどさ」

「あ、そうだったんすね」

 

まあ、あいつの言い分が確かなら、こっちから行きたがるはずはないか。

 

「まあ、なんか予定が元々あったらしいから、そこにくっつけるって言ってたんだ」

「何があるかは知らないんですけど」

「へー、そこまでは聞いてなかったっす。とりあえずそっちに遊びに行くってだけは聞きましたけど」

 

この2人の様子からするに、あいつが言ってたのはどうやらマジのドッキリらしいな。俺の顔に出てなきゃ良いが。

 

「そうなんだ。まあ、それはいいんだけど。大事なのはここからなんだ」

「というと?」

「……オフレコにしてくださいね?」

「そりゃもちろん」

 

少し声量を落とす2人。

 

「「私達、そこで彼に抱いて貰おうと思ってて」」

「ブフッ!?ゴホッ……」

 

コーヒー吹き出しちまった。カップの中で良かった。

 

「大丈夫?」

「は、はあ……。いきなりすぎて、めちゃくちゃビックリしましたけど」

「ごめんね?でも大事なんだ」

 

この2人、とくにAZKiさんの方は頭良いはずなんだが、あいつが絡むと割とぶっこんでくるんだよな。

 

「そ、それで?俺がそんなの聞いてもどうしようもないと思うんすけど」

「それなんだけどさ。あいつのそういう好み、今まで調べたことなかったなって」

「彼の家はもう何度も行ってますけど、ベッドの下みたいなお約束が何にもなかったので」

 

なるほどな。

 

「俺なら知ってるかもってことですか」

「そういうこと。まあ女の私達に言えないようなことだってあるかもしれないよねって」

「何でも良いんです。何か知りませんか?それこそ高校の頃とかでも良いんですけど」

 

……ふむ。ちょっと思い返してみるか。ついでだ。知り合いに聞いてみよう。

 

「ちょい連絡しても良いっすか?内容は秘密にするんで」

「うん」

 

断りをいれて、高校の知り合いどもの連絡ツールを開いた。

 

『緊急議題。星の性癖って知ってるやついるか?』

 

あいつは割とネタに困らないから、コードネーム『星』として扱われてるのは秘密だ。

 

『どした、急に』

『とりま知りたいって言われてよ。相手は聞くな』

『おk把握』

 

話のわかる奴らで良かった。まあ、あいつの事情を知ってるやつらだしな。

 

「とりあえず高校の知り合いに聞いてます。俺はあんまり知らないっすけど」

「そうなの?」

「まー、あいつにそういう欲がないとは言わないっすけど、ガキの頃からそういうの開けっ広げに話すようなヤツではないっすから」

「ふーん」

 

『つーか、あの二人が隣にいて性癖とかあるんか』

『身長は割と同じくらい、どっちもスレンダー美人だよな』

『水着写真は正直クるものあったよな』

『わかる』

 

バカ共の会話履歴はとりあえず2人の目に触れないようにしておく。気持ちは分かるが。

 

「私達が薄着とか肌見せたりすると、チラッと見ては来るんだけどね」

「視線外そうとしてるのわかるから、それは可愛いんですけど」

「……あんまり苛めないでやってくれっす。男は皆そんなもんっすよ」

 

少しだけ優しくしてやろうと思った。

 

『でも街中で巨乳の女とかいたら目は向けてなかったか?』

『俺達ほど騒いではなかったと思う』

『学祭でも候補に対して感想無かったらしいし、星の目が肥えてたって言ってたろ』

『ますますもってわからんな』

『単なる美人だと、隣が強すぎるだろ』

 

うーん、あいつらをもってしても把握しきれんか。

 

「基本的にどういう姿であっても私達の事を誉めてくれるから、何が好きとか分かりにくいんだよね」

「言葉は少ないけど、真面目に考えてるのは分かるから嬉しいんです。ただ、あまりに変わらないから、好みを見抜くのが難しくて」

「あー、なるほど。たしかにそういう言葉が少ないのは想像つきますね」

 

お世辞とか苦手って言ってた気もするし、本音だとしてもそういうのは言えないタイプだろうな。

 

『結局分からずじまいか』

『分かりやすいので水泳の授業とか思い出してみたけど、あいつ女子の水着見ても何にも言ってなかった気がするな』

『つーか泳ぐのに必死になってた気がするわ。カナヅチではなかったと思うが』

『どうでもいいけど、一個下の奴らはあの2人のスク水見れたんだよなぁ』

『羨ましいな!』

 

こいつらがたまに大バカになるのは……、まあいいか。

 

「スタイルとかも特にはないみたいっすね」

「そうなのか……」

「よかったね、すいちゃん?」

「それ、どういう意味かなあずきち?」

 

目の前で圧出さないでください。怖いっす。

 

『あ、でもあの2人が前に出たりすると、しっかり観てたよな』

『そういやそうだな。まあだれでも目は奪われてはいたが』

『でも、あいつがそういうのに乗るのってあの2人だけだったよ』

『つーことは、性癖ってか2人がそのまま急所なのでは?』

『恐らく』

 

……まあ、そうだよなあ。

 

「一応結論出たんすけど」

「おっ、どうだった?」

 

少し身を乗り出してくるすいせいさん。AZKiさんの方も何かを期待した目付きだ。うーん、期待外れかもしれんがなあ……。

 

「とりあえず、性癖とかそういうのは誰も知らないそうです。俺も思い出そうとしましたけど、そういうのなかった気がしますし」

「そっかあ……」

 

残念そうな2人。

 

「ただ、1つだけ全員一致したものがありまして」

「なに?」

 

不思議そうにこっちを見る。

 

「たぶん、お二方があいつの好みだってことっす」

「「……はい?」」

 

2人してポカンとする表情。珍しいもの見たわ。

 

「いや、昔を思い出してみても、2人が出てるイベントとかはしっかり観てたよなって全員が言うもんで。俺もそう思いましたし。いわゆる美人とかスタイル抜群みたいな人を見ても、へーみたいな反応でしたし」

「「…………」」

「2人が何を着てても褒めるってのもたぶんそういうことじゃないっすかね。本気で、2人の事を可愛いって言ってると思うっす」

 

徐々に実感がわいたのか、顔が少し赤くなった。

 

「う、うーん。そういわれると困るね……」

「逆にどうしたらいいんだろう……」

「別に特別なことしなくても、いつも通りで良いんじゃないすかね。むしろ、変に身構える方があいつも引く気がします」

「そうかな?」

「たぶん。深く突っ込む気はないすけど。よっぽど変な事でなければ、あいつは受け入れる気もしますし」

 

そう言うと、なんか力が抜けたみたいだった。

 

「そっか。なら、私達もそのつもりで動いてみるよ」

「ごめんなさい、ご迷惑をおかけして」

「いつもの事っす。といっても、今日はちょっと面食らいましたけど」

「アハハ。ま、今日の事は秘密でね」

「もちろんっす」

「ここは私達が出します。それと今度、公開収録の時に招待しますから。皆さんにも声かけてあげてください」

「いいんすか?あいつらも喜びますよ」

 

あとで教えてやるか。絶対予定空けろって言ってやらないと。

 

 

 

 

「お前、性癖とかねえの?」

「何だ急に」

 

後日、飯食いに行った帰りに聞いてみた。

 

「いや、この間別のやつとそんな話してよ。そういやお前はねえのかなって」

「なんだそりゃ……」

「いくら両手に花とはいえ、そういうのがねえ訳じゃねえだろ?」

「うーん、あいつらにそういうの考えたことねえからなあ……」

「そんなもんか」

「そもそも現状で手一杯だよ。そういうのは、身の回りが安定したときに考えるもんだ」

「ふーん」

 

こいつはやっぱりそう言うと思った。

 

「……まあ、あの2人なら」

「ん?」

「強いて言えば、あの2人がそのまま好みなんだろうなって。なんて言えば良いのかわかんねえけど」

「……そっか」

「悪いな、答えになってなくて」

「いや、急に聞いたのにむしろよく浮かんだな」

「こんなんしか浮かばなかったよ」

 

……あの2人がベタ惚れなのも分かる気がしたぜ。

 

 

 

 

 

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