アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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第14話

「……お邪魔します」

「そんな固くならなくてもいいのに」

「いや、そりゃするだろうよ」

 

大学が冬休みに入った今、俺は都会に出てきている。前々からの約束を果たしにきたと言うべきなのかな。そんな格好いいことでもない気はするが。

 

「今日がうち、明日はあずきちのおうちで、明後日以降がホテル泊だよね?」

「ああ」

「てことは、明後日が勝負だね」

「……今さらとやかくは言わないよ」

 

なんでかそういうことになって、当初の予定より滞在予定が延びた。しかも、ホテルはスイートルームらしい。2人が勝手に予約取っちゃったと聞いたときは思わず天を仰いだぞ。

 

「冬休みの日程聞いたときからこっちに留めようって2人であれこれ計画立てたんだもん。期間が長いから、友達君にも協力してもらったんだよ?」

「出発前日にあいつから聞いたよ。シフトの調整とか全部スムーズだったから変だとは思ってたんだが」

 

なんというか、根回しが完璧すぎて俺が何かする余地はなかった。

 

「年越しも一緒に過ごせるようにしたかったんだ」

「それは嬉しいが、仕事があるんじゃないのか?」

「ライブはあるけど、すぐ戻ってくるよ。年末番組の収録は終わってるから基本的には配信たまにするくらいだし。なにより、君と過ごしたいって散々言っておいたから、マネちゃんも空けてくれたしね」

 

2人が配信でも予定を度々言っていたのは知ってたが、ここまで念入りにしてるとは思わなかった。

 

「それよりほら、引っ越し以来のうちを見た感想は?」

「なんというか、ぬいぐるみ多い……、というかだいぶ増えたな?」

「そりゃあ、時間も経てばねえ。ぬい好きだし」

 

部屋のいたるところにぬいぐるみが置いてある。すいせい自身の物もいくつかあるみたいだ。

 

「まああとはなんかいい匂いがするとか?俺の部屋とは大違いだな」

「あ、わかる?君が来るからってちょっと気合いいれて用意したんだよ」

 

女の子の部屋ってなんとなくいい匂いなイメージだが、ここもそうだったみたいだ。

 

「うーん、それにしてもやっぱりなんか体つき変わってるって。がっしりしすぎじゃない?」

「いつも通りのウォーキングとシフトの荷物運びだけなんだが。距離が延びたくらいか?」

今は3人で外でご飯を食べてきて、AZKiと別れてからすいせいの家でのんびりしていたわけだが、客だからと先に風呂を譲ってもらい、交代ですいせいが入って、出てからずっとこの調子だ。だいぶラフ、というか結構な薄着でペタペタと身体を触られているので、目のやり場に困るというか。

 

「あとはまあ、食生活を少し意識したか。野菜は多めにしてるな」

「筋肉はたんぱく質じゃないの?」

「だからなおさら理由がわかってないんだよな。背ももう伸びてないし。AZKiにも散々言われたが」

 

 

この間の酒飲み会から2人とも距離がさらに近くなったのは間違いない。すいせいは割と変わってない気もするが、それでもこんなに密着してはなかったように思う。

 

「ふふー、ドキドキしてますなあ」

「分かってるなら離れてくれるといいんだが」

「だめだよー。今日明日で私達が近いことに慣れてくれないと、明後日はこれどころじゃないんだからさ」

 

暗になにをするつもりなのかを語っているわけだが、あえて触れまい。

 

「……そういう割には顔赤いぞ」

「そりゃあ恥ずかしさはあるもん。でも、ここで引いたらダメだって覚悟はあるんだよ?」

 

……どこでそんな度胸を身につけたのやら。

 

「それに、なんだかんだ言っても離れないあたり、君もだいぶ緩くなってきてるじゃん」

「……男なんてそんなものだろ」

 

好きな相手が近づいてきて振り払える男なんかいるかよ。

 

「今日は一緒に寝るかんね」

「はいはい……」

 

嫌だと言っても離れなさそうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

「昨日はどうだったの?」

「すいせいが一生しがみついてて離れなかったぞ」

「わー、予想通り。私とおんなじだね」

「同じである必要は全くないが」

 

次の日。昼から再びAZKiと合流して買い物に付き合い、今度はすいせいと別れてAZKiの家へ。

 

「理由は聞いたんでしょ?」

「明後日……、いやもう明日か。こんなもんじゃないから慣れろって言われたな」

「そーいうこと。私達だってドキドキするんだから、君にも慣れてもらわないと困っちゃうよ?」

 

昨日と同じく、やること終えてからのAZKiの密着ぶりが凄い。すいせいと比べると大人しい性格してるはずなんだが、甘えられているとしてもやりすぎなんじゃないかと他人事みたいに考えたくもなる。

 

「ホントはね、おうちでひとりずつシようかって話もしてたんだ」

「……そういうことだよな?」

「そういうことだよ」

 

同じベッドで寝てて、腕に抱きつかれながらなんの話をしてるのやらという感じではあるが。

 

「だけど、皆初めてだし折角ならタイミング同じにしたいよねって」

「あー、そういうところは昔から変わらないんだな」

 

この2人、どちらかが選んだりする時は大体同じのにするのはそれこそ子供の頃から変わってない。俺と遊んだり買い物する時も、大抵揃いのものを選ぶ。もちろん好みは2人とも違うから、そういう時は全然別のになったりもするけどな。

 

「なら奮発して思い出作ろうってなったから、明日のホテルなんだよ」

「だからってスイートにする必要あったのか……?」

「たまたま空いてたからね。あ、もちろん2人で出しあったから問題ないよ」

「いやまあ、それに関しては俺はなにも言えないけど。出そうと思っても出せないし」

 

俺なんかが近寄るはずもない高級ホテルのスイート……。ちらっと調べたが、見なかったことにしたしな。

 

「ふふっ、暖かいね」

「そりゃどうも」

 

サワサワと腕を撫でながら嬉しそうにしないでくれ。比べるのは失礼だと分かってはいるが、AZKiの方が身体的に成長を実感できるので、色々と思うところはあるんだぞ。

 

「ねえねえ、有名なアイドルしてる彼女に手を出すのってどんな気持ちなの?」

「今さら聞くのか?」

「ちなみに出される側としては、ようやく叶ったなって感じかな。すごーく時間かかったし」

「ごめんって……」

 

チクチク刺してくるくせに笑顔なんだよな。

 

「……まあ、アイドルだからとかそういうのはないかな」

「そうなの?」

「まあな。俺が好きになったのはアイドルじゃなくて、ただのお前らだから。だから、手を出すってのは責任重大だなって思うだけだよ」

「……ふーん」

 

こっ恥ずかしいな、こういうの。

 

「聞いといてあれだけど、そういうのはもっと早く言って欲しかったな」

「言うわけないだろ」

「こんなにドキドキさせられたの、なんか悔しい」

 

抱きつく力が強くなったせいで、腕にAZKiの胸が押し付けられてる。鼓動が直で伝わってきた。

 

「明日、楽しみだね」

「……そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

「お風呂一緒じゃなくて良かったの?」

「ね、折角背中でも流してあげようかと思ってたのに」

「いきなりそこから始まるのおかしくないか?」

 

次の日。いよいよ2人に連れられる形で来たこともない豪華な部屋へ。とりあえず写真いくつか撮ったわ。

 

「まあ、これからしばらく居られるし、機会なんていくらでもあるよね」

「それもそうだね」

 

2人はすでにお風呂を満喫して、心なしか艶々としていた。先にいけと言われて俺も入ったが、3人どころか10人位なら泳げそうなでかさだったぞ。

 

「さてさて、お互いにさっぱりしたところで、まずは問題です」

「問題?」

「私達、今バスローブですね?」

「そうだな」

 

映画とかでしか見たことないが、タオル地の白いモコモコを着ている2人。たぶん、これも凄い値段なんだろうな。俺もまあ着てるけど、肌触りが今までにないものでなんかソワソワするし。

 

「この後脱ぐわけだけど、この下に何を着てるでしょうか?」

「はあ?」

 

ちらっと足元だけめくる2人。素足だって事しか分からんぞ。

 

「いきなり全裸はちょっとねえ」

「品がないかなって」

「この状況で品とかあるのか……?」

 

何か言わないと終わらんだろうし、とりあえず考えるか。

 

「仮に水着、とか言ったとしてどこまで答えるのがいいんだ?」

「色でいいんじゃない?」

「下着の場合も色でいいよ。種類とかまで詳しく知ってるとは思わないし」

 

女性ものの下着詳しいって、それはなんかなあ。

 

「ヒントはなしか」

「うーん、普段から着るものじゃないよね」

「見たことはあるかも?私達が着たかは……、どうだったかな?」

 

撮影であるなら下着は消せたんだが、そうではないと。ブラフまで考えだしたらキリないから嘘ではないと思う。

 

「普段ってのは日常で着るものでないってことか?」

「そうだね。これで歩いたらたら人目引くし」

「もしかしたら通報されるかも?」

 

通報……?私服だとして露出が多いだけならそうはならんよな?ってことは、やっぱり下着……?

 

「……時期か」

「お、するどい」

 

普段着ないってことは、着るタイミングがあるってことか。

 

「この時期だと、サンタクロースか」

「「せいかーい!」」

 

笑顔でバスローブの紐をほどく2人。そして、ばっと脱ぎ捨て……っ。

 

「なんで見ないのよ!」

「ね。折角揃えてきたのに」

「馬鹿野郎、いきなり面食らうわ!」

 

確かにサンタコスではあった。ただ、あまりにも肌面積が広すぎる。胸部や腰部などの一部が隠れてるだけで、肩やお腹などはほとんど丸見えだ。

 

「ほぼ水着みたいなもんじゃねえか!」

「そりゃこういう用途でつかうコスプレって書いてあったしね」

「サンタビキニって言うんだって。これは流石に撮影でも着れないかなあ」

「当たり前だろうが……」

 

惚けた顔しやがって、完全に確信犯じゃねえか。

 

「世界中で君しか見れない光景だよ?感想をどうぞ!」

「感想って……」

 

大きく息をついて、とりあえず逸らしていた目をちゃんと向ける。

 

「おー、視線感じるね」

「ふふっ、えっちー」

「お前らなあ……」

 

からかいの言葉が飛んでくるが、2人とも顔が赤い。まあそれは俺もだろうけど。

 

「……ま、まあ2人とも似合ってる、んじゃないか?」

「へー?」

「似合ってるってー」

 

実際勝ち気でスレンダー美人なすいせいと、清楚で女性らしさも併せ持つ美人なAZKi。タイプは違えど、物凄い美人なわけだから、そりゃ絵になるに決まってる。

 

「ほーら、固まってないでこっちきてよ」

「体冷えちゃうからさ」

「お、おい!」

 

そのままなにも言えずに立ち尽くしてたら、2人に腕を引っ張られて間に連れ込まれた。

 

「……うわー、今さらだけど緊張してきた」

「ここでか!?」

「だって、君もこの下は裸でしょ?今までとは全然違うんだなって」

 

俺のバスローブをペシペシ叩いて言われてもな……。

 

「君も体強ばってるね」

「……そりゃ緊張するわ」

「ふふっ、なんかお互いに固まってておかしいね」

 

そのまま俺に寄り掛かってくる2人。とりあえず肩に手を乗せて寄せるくらいしか出来ねえ。

 

「珍しいね。君から寄せるなんて」

「こ、こういう時くらい格好つけさせてくれ」

「そんなことしなくても格好いいけどね」

 

2人とも逆らわずに寄ってきた。

 

「……あのさ」

 

そのまましばらく沈黙していたが、せめてこれだけは言っておかないとと思った。

 

「なに?」

「お前らがこれだけ準備したんだ。今さらもう逃げたりしない」

「……うん」

「……一生、大事にするよ」

「……うん!」

「だから……、2人とも、これからもよろしくな」

「「……うん!!」」

 

2人が感極まって抱き付いてきたのを受け止めた。

 

 

ここから何があったかは、野暮だよな。

 

 

 




なんか最終回みたいな雰囲気出てますが、別にそんなつもりはないです。
まだ書いてみたいネタがいくつかあるので、お話は細々と続ける予定です。
ただ、もう1つの作品を進めるために、こちらは年内はこれで最後の更新だと思うので、また来年よろしくお願いいたします。
読者の皆様、良いお年をお迎えください。


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