アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
特に意味はないですが、前回で流れがスッキリしたので、タイトルの数字が漢数字になりました。
あっという間の連休だったなあ……。今までもたくさんの大切な日はあったけど、これは人生の中で最も待ち望んだ日だったと胸を張って言えると思う。私達と彼がお互いを知り尽くすために過ごした日々。今まで遠慮してて埋められなかった最後の距離を精一杯埋めるためとはいえ、全部を曝け出すのは恥ずかしかったけど……。
「すいちゃん、大丈夫?」
「ん?何が?」
年末年始の連休も終わってしばらく経ち、久しぶりに事務所でマネちゃんとの挨拶と会議があった。今日は私だけで、あずちゃんは別日だけどね。
「なんかぼーっとしてるというか、雰囲気違うから気になったにぇ」
「そう?別に何も変わらないけど」
そんでもって、会議も終わってマネちゃんからの連絡待ちの間に、別室で収録してたみこちが休憩室に来たんだけど。
「そうかなぁ?なんかふんわりしてるにぇ」
「何よそれ」
「言葉にし辛いんだよぉ!」
開口一番に変なこと言われたわ。何よふんわりって。
「ぽぅぽぅもそう思わん!?」
「止めてよ……、こっちに振らないで……」
一緒に来たポルカに話をふるけど嫌そうにするわな、そりゃ。
「まあ、なんとなく柔らかい雰囲気ではあるんじゃない?いつものピシッとした感じではないかな」
「そう!その通り!」
「なんでみこちがドヤるのよ……」
言いたいことはわかるけど、言ったのみこちじゃないじゃん。
「あ、もしかして例の彼氏さんといいことでもあったの?」
「ンブッ!?」
……どうしてこういう時だけ鋭いんだこのPON巫女め。
「べ、別にそんなんじゃ」
「わかりやすくて草だにぇ」
「あー、年末年始連休とってたもんねえ」
くそー、そんなに分かりやすかったか……?
「それ、彼氏さんがくれたの?その首元のやつ」
「ネックレスかにぇ?」
思わず触れてしまったけど、気づくの早いわ。二人とも目敏いなあ。
「指輪だよ。私とあずきちにってくれたんだ。身につけておきたいけど、流石に指に嵌めるのはあれだから、お揃いのチェーン通してシンプルにネックレスにしたんだけど。バイト頑張ったからって言われたから嬉しかったなあ」
「指輪……?」
「バイト代で……、あっ。なるほど、そういうことか」
ポルカは気づいたみたい。
「それってそういうことだよね?」
「……うん。ほら」
こっそり聞いてくるポルカに輪の中を見せてあげた。
「『S&A』……。なるほどね」
「センスいいよね。貰った時少し泣いたもん」
私達2人のイニシャルを彫り込んでもらったらしい。頼んだお店の人も、まさか女性2人の名前だとは思わなかったろうなって彼は言ってた。
「なんか、すいちゃん可愛くなったにぇ」
「は?何よ急に」
私達2人の様子を眺めていたみこちにまたしても変なことを言われた。
「すいちゃんは前から可愛いですけど?」
「そうじゃなくて。なんか恋する女の子って感じが全開に出てるにぇ。今まではそんなにあからさまじゃなかった気がするもん」
「……あー、それに関してはみこちに賛成かな。気をつけないと、今も結構フワフワしてるから聡い人にはバレちゃうよ」
「マジか」
思わずポルカに視線を向けたけど、そう言われては何も言えなかった。自覚してなかったけど。
「今度いい加減紹介してよ!友達としてちゃんと見極めてあげるにぇ!」
「何様なのよ」
「あ、でもポルカも会ってみたいかも!すいちゃんブロック凄かったけど、もう安心なんじゃない?」
「あんたもかい……」
今更あの人が他の女にうつつを抜かすとは思わないし、これもいい機会かな。
「まあいいけど。別に普通の人よ?」
「すいちゃんと付き合える人が普通なわけないにぇ」
「……それはどういう意味かなぁ?みこち?」
「あっ、仕事に戻らなきゃー!じゃあねー!」
「今終わったばっかりなのに……。ポルカも行くよ、じゃあねー」
「全く……。また今度ね」
逃げるように去るみこちと、彼女を追うポルカを見送って椅子に座り直す。
「……ふふっ」
そしてネックレスに再度触れて、私は少しだけ頬を緩めた。
彼のことを好きになったのは、ずっと前からでした。でも、私達がアーティスト兼アイドルとしての道を歩み始めた時から、様々な理由からこの恋が簡単には成就することはないと理解してもいました。だからこそ、この年末年始に彼が約束を果たしてくれたこと、そして、彼が私達に言ってくれたことは、たぶん彼が思っているよりもずっと、ずーっと嬉しいことでした。
「あけましておめでとー!かんぱーい!」
今日は私AZKi、ロボ子さん、クロヱちゃん、かなたんの4人でかなたんの家で新年会です。元々はかなけんの3人の予定だったのが、収録の関係でクロヱちゃんがロボ子さんの家に泊まったらしく、お礼も兼ねて誘ったとのことでした。
「あずきちも飲むんだねえ。なんか意外だなあ」
「最近少しずつ機会を増やしてるんだ。といってもメンバーのお家位でしか飲んだりしないけどね」
彼のお部屋で初めての飲み会をしてから、仲の良いホロメン相手には飲む機会が少し増えました。あの日、意図もあったし飲んだ後も意識ははっきりしていましたが、それでもかなり酔っていた自覚があったので、次の日起きた時に彼に何をどのくらい飲んでいたのかをきちんと聞いておきました。すいちゃんも聞いてましたし、おそらく自分の限界を測ろうとしていたのだと思います。
「そうなんだ。あれ、前に配信で言ってた彼のおうちで飲んだっていうのは?」
「一番最初は彼のお家がいいなってすいちゃんと話してて、それで押しかけちゃおうってしたやつですね」
「なんか、人の恋バナって聞いてると面白いけど、2人共結構グイグイいってるんだね」
「んー、まあ彼が結構控えめなのもあって、私達が押すことが多いかも?」
実際はかなり押してますけどね。
「でも、最近なんかあずきち明るくなったよね」
「あ、わかるー!前よりニコニコしてること増えてるよね!」
「へー、そうなの?」
かなたんとクロヱちゃんが何やら盛り上がってますが、そんなに変わってたかなあ?
「んー、あんまり自覚してなかったかも。そんなに違うかな?」
「今年に入ってからだからまだそこまで比べてはないけど、なんかオン会議とかでもカメラでニコニコしてること増えたなって」
「今も、なんか視線がいつもより優しい感じがするもん!」
「確かに、まあ元々優しいけどねえ」
目がキラキラしているかなたんとクロヱちゃん。それにのんびり飲みながら同意するロボ子さん。
「たしかー……、年末年始の連休って確か彼氏さんとデートだったんだっけ?」
「うん。予定入れてますって言って、マネちゃんと調整したんだ」
「ってことはぁ、そこで何か『イイコト』でもあったんじゃないですかぁ?」
ロボ子さんの質問に答えたら、何故かニヤニヤと笑うクロヱちゃん。そんな表情も似合ってて可愛いけど鋭いなあ。
「イイコトってなんだ?」
「んー、何か嬉しいプレゼント貰うとかー、もしかしたらー、まとめて『女』にしてもらっちゃったり、とかぁ?」
「お、女!?」
「あー、なるほどねー。数日の間に楽しんじゃったってことかー」
「ちょ、ちょっと何を言ってるの!?」
あまりにドンピシャ過ぎて、声が少し裏返ってしまいました。
「あれ、その慌てぶり、もしかして……、当たり?」
「え……、まじ?」
まじまじと見つめてくるかな建の2人と、何故かワクワクしてるロボ子さんに少しだけ気まずくなりました。
「……(コクリ」
「わあ!おめでとう!」
「おめでとう、なのかなぁ……?」
「いいんじゃない?お熱い関係だったのは分かってたんだし。良かったねぇ」
「あ、あんまり周りに言わないでね?遊びに行った以外のことは一応秘密にしてるから」
「もちろん!」
「そもそも言いふらしていいことじゃないわな」
とっても喜んでくれる3人に少しホッとしました。
「なーるーほーどー?だから、幸せオーラがこんなに出てるんだねー」
「ろ、ロボ子さん?」
「これは後学のために、色々と聞かないといけませんなー?」
「な、何を聞くつもりか、聞いてもいいかな?」
目の輝きが増してるロボ子さんがジリジリと寄ってきてます。
「そりゃあもちろん、あんなことやこんなことだよねぇ?いつか私達もいい人見つけるかもしれないしー?」
「ちょ、ちょっと!?酔ってるよね!?」
「いいですねぇ!こんな機会なかなかないですもんね!AZKi先輩こういうのあんまり触れないし、今がチャンス!」
「わかってるねぇ、さかまた。さあ、洗いざらい吐いて貰おっかなあ?」
「さかまたまで!?しゃ、社長!助けて!」
「……ごめん、ボクもちょっと興味あるかも」
「そんなー!?」
……ごめん、すいちゃん。ちょっと誤魔化しきれるかわからないです。
今年も細々と続けようかなと思っていますので、よろしくお願いします。