アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

20 / 35
第十六話 その1

 「これ、お土産な」

 「おっ!これ美味いんだよな!サンキュ!」

 

 年が明けて諸々が終わり、俺も地元に戻ってきた。

 

 「連休ありがとな。おかげで楽しめたよ」

 「まあ色々借りがあるからな。こんなんでよければいいってことよ。そもそも客少ないから立ってるだけでいいしな」

 

 今日は久しぶりのシフトってことでいつもの友人にお土産。ついでに店長にも渡しておいた。

 

 「どうだったよ。お二人に会ってきたんだろ?」

 「ああ。まあいつも通りだったよ。相変わらず向こうはキラキラし過ぎててどうも合わん」

 「あー、この辺にはない娯楽も多そうだしな」

 「コンビニ以外に24時間やってる店多くて、ふらっと夜中に買い物できるのは便利だと思うが」

 「視点が主夫すぎる」

 

 ホントに色々ありすぎたが、言えんこともあるから当たり障りのない事にしておく。

 

 「そういや計画してたドッキリはどうなったんだ?」

 「ほんとにやったぞ。今度編集して公式番組のコーナーで配信されるらしい」

 「まじかよ。ぜってえ観るわ」

 「俺は声だけだけどな。反応良かったから楽しみにしててくれ」

 「お前がそう言うってことはかなり期待して良さそうだな」

 「その後色々詰められたが、後悔はしてない」

 

 実際、マネージャーさんが間に立ってくれなかったら締め上げられてたかもしれないが。

 

 「後で色々聞かせてくれな!向こうで何があったとかよ!」

 「まあ話せる範囲でな」

 「うし!ならまずは仕事じゃあ!」

 「テンションたっか……」

 

 ……まあ、でもたまには付き合うのも悪くないか。

 

 

 

 

 「ただいまー……って、誰もいないんだった」

 

 2人とそれなりに長く居たから、帰宅時に挨拶するのが習慣化していたようだ。誰も居ないのに。

 

 「あ、おかえりー!」

 「……なんでお前がいるんだ?」

 「今日お仕事と配信お休みだったから、荷物取りに実家に帰ったついで!」

 

 なぜか聞こえた返事に胡乱な目を向ければ、外行の服を着たすいせいがいた。どうやらほんの少し前に来たみたいだな。

 

 「……そうかい。なんも出せんぞ」

 「あっ、ほんとに貴方がいるかなって寄ってみただけだし、別にいいよ」

 

 バイト先から貰った荷物を整理しつつ声をかければ、ぷらぷらと手を振ってきた。

 

 「あー、でも折角帰ってきたなら泊まっちゃおうかなー」

 「別に構わんぞ」

 「いいの!?」

 「今さらだろう。AZKiもそうだが、2人ともスケジュール管理はしっかりしてるだろうし、そう言うってことは問題ないってことだろ」

 「うわー、よく見てるなあ……」

 「何年の付き合いだと思ってる」

 「それもそっか。えへへ、お泊り〜」

 

 満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。

 

 「こういうの嫌がらなくなったねえ」

 「……まあ、な」

 「むふふ、いい傾向だ」

 「どこぞの研究者みたいな口調しやがって」

 

 美人は顔赤らめてても美人ってずるいよな。

 

 「飯どうする?帰ったばかりで何もないぞ。一人ならカップラーメンとかで済まそうかと思ってたが」

 「んー、なら近場に食べに行こうよ。奢ったげるよ?」

 「……まあ、素直に甘えるか」

 「うんうん。じゃあ、どこにするか決めよ?」

 

 俺に抱きついたまま器用にスマホをいじるすいせい。時折顔を擦り付けるのをやめてほしい。嬉しそうなのはいいが、正直恥ずかしくなるわ。

 

 「おみやげはどうだったの?」

 「めちゃくちゃ喜んでた。あいつ元々好きだったらしい。店長も喜んでくれてたぞ」

 「そうなんだ!まあ、お土産としてはオーソドックスだし、どこかしらで食べたのかな?」

 

 「あ、この店知らないなあ。出来たの最近?」

 「んー?……あぁ、これそっちに本店ある店だろ。一時期話題になってたな」

 「えー?聞いたことないけど……。ご飯ここにする?」

 「いってみるか。それなりにするはずだけど」

 「すいちゃんに任せなさい!」

 

 

 

 諸々の後。

 

 

 

 「今度、こっち来たら連れてってあげるお店が増えたね」

 「それは嬉しいんだが、なんで当たり前にまたこの体勢なんだ?」

 「え?折角お泊りなんだから、思う存分くっついておかないと。成分補充は大切よ?」

 「……もういいや」

 「嫌じゃないくせに〜」

 

 風呂も(別々に)入って、いよいよ寝るってなったら、何を言うまでもなく隣に入ってきてそのまま抱きつかれた。もはや巻きついてるに近いだろ、この体勢。

 

 「なんで薄着なんだよ……。寒くないのか?」

 「実家に置いてあったやつだからね。たまたま持ってきてたんだ。部屋暖かいし、貴方にくっつけば寒くないよ」

 「あー、そうかい……」

 「えへへ、我慢できずに手を出したくなったら、いつでもいいんだよ?」

 「……考えておくよ」

 「前なら怒ったのに。お互いに、『大人』になると変わるもんだねー?」

 

 手玉に取られてる感が凄いが、悪くないと思ってるあたり、俺もなかなか重症なんだろうな……。

 

 「あ、今度あずきちも泊まりに来るって言ってたよ?」

 「なに?」

 「だって、偶々とはいえ私だけ抜け駆けシちゃったみたいになってるのはよくないじゃん?だから、今日のこと伝えたら『次は私の番!』って」

 「……せめて、来る日は先に教えてくれって言っておいてくれ」

 「はーい」

 

 俺の返事を聞いたすいせいは、なぜかさっきよりも身体の密着度合いを強めてきた。何故だ。

 

 「次にあずきちも来るなら、私も今遠慮するのやーめよって思ってさ」

 「さっきまで遠慮してたのか?」

 「うん。でも、あずきちならこうするかなって」

 「あー……」

 

 こういうところの度胸は確かにあいつの方がありそうだな。

 

 「ね?だから、こうして……」

 「わかった、わかったから!足絡めるのやめろ!身を捩るな!」

 「えへへ、きこえませーん!」

 

 だーっ!こんなんじゃ寝れんってば!




距離感近くなった感じがなかなか出せなくて大変でした。
次回の内容は今回からなんとなく察せるかと思います。お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。