アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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第十六話 その2

 「私が来た!」

 「おう」

 

 どこぞのヒーローみたいな声とともにAZKiが家に来た。まあ来るって言ってたし、驚くことでもないが。

 

 「一応聞くが、泊まるんだろ?」

 「うん!」

 「はいよ、まあ寛いでくれ」 

 「はーい、お邪魔します」

 

 とはいっても、やはり礼儀正しいのは相変わらずだな。どんなに来ることに慣れてもちゃんとお辞儀するあたりはさすがだと思う。

 

 「すいせいは?」

 「一昨日くらいから収録詰めだって。昨日少し発狂してたよ」

 「……あんまり想像したくねえな」

 「私もたまーにギッチギチなスケジュールでクラクラするときあるし、気持ちはわかるけどね」

 「まあそういうこともあるか」

 「貴方はないの?」

 「一応学生だしな。定期テストと実験とレポートが被ってる時期はお前らとは別な意味で壊れてると思うぞ」

 「うわー、テストとかもう思い出したくないよ……」

 

 顔をしかめるAZKiだが、こいつはかなり成績良かったと思うがな。すいせいのほうがたぶん切羽詰まっていたと思う。その度に俺の所に駆け込んで来てたから何となく覚えてるわ。

 

 「でも大学は順調なんだよね?」

 「一応な。今年は卒業研究以外に授業取らなくて済みそうだし」

 「そういえば、就職はどうするの?」

 「この辺りの会社にする予定だぞ」

 「そうなの?こっち(都会)出てこないの?」

 「一応考えはしたが、地元の方が何かと合っててな。皆そっち行きたがるから人手が足りてなさそうだし、就職には困らなそうだから、就活サッサと終わらせたいってのもある。なにより教授のツテがいくつかあるしな」

 「ふーん」

 

 俺の担当教授がこの辺の会社の上役と結構繋がりあるのはかなり助かってるんだよな。面接とかの日程もかなり調整効くし。色々助言してくれるから俺の印象も良いみたいだ。

 

 「うち受ければいいのにー。きっと受かるよ?社長も貴方のこと知ってるし」

 「冗談キツイな。俺にそんなキラキラした世界は合わないよ。裏方の人達が大変なのも何度かお邪魔させてもらったから知ってるし」

 「えへへ、半分冗談だよ?」

 「半分は本気じゃねえか」

 

 たまーに怖いこと言うんだよなぁ。マジなのかが判断つかないのも恐ろしい。

 

 「AZKiとしては、貴方にはこのまま普通に過ごして欲しいかなって思うよ」

 「そうなのか?」

 「うん。なんていうか、こっちの世界に関わりのないままの味方って意外に難しいって色々知ったからさ」

 「……なるほど?」

 

 俺には分からないが、色々あるんだろうな。

 

 「まあ俺がどうなるにしろ、これから先も2人の味方なのは変わらないからな。そのあたりは気にしなくてもいいぞ」

 「うん。知ってるよ」

 「だからって抱きつかなくてもいいだろう……」

 「あれ?すいちゃんが一生抱きついてたって自慢してきたけど、違った?」

 「……違わねえけど、何いってんだあいつ」

 「だから私もー」

 

 こいつら……。

 

 「ねーねー、ご飯はどうする?」 

 「2人ともなんで器用に動けるんだよ」

 「愛かな」

 「真面目に聞いた俺が馬鹿だった」

 

 くだらないこと言いつつ、夕飯を考える。

 

 「すいせいとは食いに行ったぞ。たしか……、あぁここだ」

 「あ、この間すいちゃんに聞いて、向こうの本店行ってきたよ!美味しかった!」

 「ああ、やっぱり行ったのか。すいせいもこっちで気に入ってたからな」

 「うーん、まだ時間あるし、折角なら貴方の料理がいいな!」

 「俺の?無難なものしか作れんぞ?材料ないし」

 「今から買いに行って考えよ?こう、スーパーによく居る夫婦みたいにさ」

 「……それ、すいせいに絶対言うなよ?同じことやりに来るから。絶対だぞ?」 

 「……えへへ?」

 「……あぁ(察し」

 

 

 

 「……わざわざ指輪つけてきやがって。しかも左手薬指とか」

 「気付いた店員さんがびっくりしてたね!」

 「この辺皆顔なじみばかりだって、知っててやってるくせによく言うわ。あいつも高校同級だろうが」

 「楽しかった!」

 「子供かよ」

 

 

 「すいちゃんが『私も次やる!』って」

 「結局言ったのか」 

 「私だけが指輪してたらおかしいもん。すいちゃんだって持ってるんだからさ」

 「また俺が冷やかされるだろうが」

 「がんばって!」

 「他人事みたいに言うなよ……」

 

 

 

 

 「あー、地元っていいなあ」

 「嵐巻き起こしておいてよく言うよ」

 

 一通り終わり、後は寝るだけ。

 

 「そういえばさっきの話だけど、就職決まったらここは引っ越すの?」

 「勤務場所にもよるが、たぶんな。ここ一応学生推奨の借家って言われてるし、次の人のために空けたほうが良いと思う」

 

 生協管理ではないから必ずしも出ていく必要はないけど、不動産の人曰く学生向けって紹介されたしな。

 

 「ならさ、その時は私たちも呼んでよ」

 「なんで?」

 「あ、別に家賃負担してあげようとかじゃないよ?そうしていいなら勿論するけど」

 「勘弁してくれな?」

 「私たちも気軽に遊びに来れるようにとか、色々考えたいじゃん」

 「……ああ、部屋割とか」

 「そうそう!」

 

 この時点で家賃が今より上がるのは確定してるわけだが、まあ何も言うまい。

 

 「ほら、私たちも貴方の第二の家だよってうちを開放してるし、逆もいいじゃんってすいちゃんと前に言ってたんだ。今は駄目だけど、社会人になるなら半同棲みたいにしたいねって」

 「俺、そんなにそっち行ってねえけどな」 

 「これからは来るよね?」

 「……ハイ」

 

 物凄い圧を感じた。

 

 「まあ、まだ先の話だけどな」

 「うんうん。でも、楽しみにしてるね?」

 「はいはい」

 

 人の引っ越しが楽しみってのも不思議な話だな。

 

 「そろそろ寝るか?」

 「うーん、こんな薄着の彼女さん放っといて、もう寝ちゃうの?」

 「触れないようにしてたのに……!」

 

 ニヤニヤ笑いながら抱きついてきやがって!

 

 「こんな姿、君にしか見せないのになー」

 「わ、わかったから手をモゾモゾと動かすな!」

 「えへへ、まだまだ夜は長いんだよ?」

 

 それ、たぶん言うの逆だと思うんだけどな……。

 

 




さっくり続き物でした。
主人公君も大変だなあ(棒)
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