アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

22 / 35
第十七話

 「久しぶりにいい天気だな!」

 「そうだな」

 

 最近ずっと天気が悪かったからな。バイトに行くのも大変だった。

 

 「だが、こういう日は混むもんだろ」

 「昼からヤバそうって店長も言ってたしなあ」

 「在庫多めに運んでおいたけど、足りるかね?」

 「最悪途中で運搬だろうな」

 

 学生も休み期間だし、この辺りで一番でかいショッピングモールなだけに、そもそも全体的な客数が多い。家族連れなんかも多いみたいだし、アイス売ってるこの店が暇になる事はまあないよな。

 

 「そういや、お前就職決まったか?」

 「いや、まだだが。お前は?」

 

 そういえばみたいな感じで聞かれた。

 

 「まだなんだよなあー。ただ、この店続けようかなって考えてるけど」

 「正社員でか?」

 「おう。店長も割と乗り気らしいし。この間声掛けてもらったわ」

 

 なんというか、ここまで入れ込んでるのは意外だったな。まあ普通のサラリーマンやってるこいつもイマイチ想像出来ないから、案外向いてるのかもしれんが。

 

 「お前にもどうかって聞いておいてくれって言われたわ」

 「俺も?」

 「長い事勤めてるから気に入ってくれてるらしい。今更研修とかいらないし、正社ってなると流石に仕事は少し増えるけど、ここだけのハナシ、将来は店舗数増やしたいらしいぞ」

 「店長候補ってか?」

 「なんじゃねえかなあ?奥さんの方がその辺は上手いから任せてるらしい。まあその辺はまだ本決まりじゃないからなんともって」

 

 思わぬ話に驚いたが、同時に少しだけ興味がわいたな。

 

 「まあ今すぐじゃなくていいらしいぞ。俺等が辞めてもいいように新人も取ってるらしいし」

 「なるほどな。まあ考えてみるわ」

 

 今度具体的に話だけでも聞いてみるかな。

 

 

 

 

 

 「就職かあ」

 「私たちはある意味ズルしてるみたいなものだよね」

 「本人の努力がなきゃ続かないんだからズルではないだろ」

 

 2人に連れられてご飯食べてる最中に、この間の話をしたらそんなことを言い出した。

 

 「そうは言っても、私達の始まりはスカウトだったしね」

 「社長直々だったもんね。町中で声掛けられたし」

 「まあその辺は運もある……か?」

 

 スタートはそうかもだけど、ここまで人気が出たのは2人の努力だしな。

 

 「でも確かに、最近都市中でスーツ着てる君と同い年の人達多いよ」

 「スタジオとかにも見たことない人多いよね」

 「就活とかだろうな。スタジオに居るってのは、すでに内定決まってて先に経験積んでる人も居るかもしれんが」

 「うちにも新人来るのかなあ」

 「だんだんとデビューは増えてるんだし、アイドルだけでなく裏方も増やさないとヤバいだろ」

 

 アイドルを表舞台で光らせるために、裏で頑張ってる人達も大変だろうしな。

 

 

 

 

 

 「てか、ここのご飯美味いな。2人で見つけたのか?」

 「おっ、わかる?でも違うんだなあ」

 「同僚の方と食べに来て、『ここ美味しかったので是非!』ってマネージャーさんが」

 「なるほどな」

 

 今日は2人に呼ばれて都市に出てきたんだが、美味しいところだな。また来たいかもしれん。

 

 「折角のお休みなのに出てきてくれてありがとね。たまにはこっちでデートしたいなって」

 「バイトも無かったし問題ねえよ。俺らも春休みだしな」

 「あ、そっか。だから平日に都合ついたんだね。なんかあまりにも普通に来たから何で?って2人で言ってたんだ」

 

 一足先に社会人やってる2人には、もはや春休みなんて無縁の言葉だろうし、存在を忘れててもしょうがないよな。

 

 「そういうこと。就活も今は詰めてなかったから、ちょうどよかったくらいだ」

 「そっか。なら、今日は羽伸ばしてってよ」

 「今日は帰るの?泊まるならどっちでもいけるけど」

 

 少しワクワクした目で聞いてくる2人に、スケジュール確認してみる。

 

 「次のシフトは3日後だし、それ以外に予定はないから明後日までに帰ればいいけど……。いきなりお部屋訪問は不味いんじゃないか?」

 「あー、すいちゃん不味いかも……。最近ライブやら収録で掃除終わってない!」

 「私は平気だよ?元々そんなに汚してないし。この間ちょっとメンバーが遊びに来たから、曜日でまだ出せてないそのゴミが少しあるくらい」

 

 ふむ……。

 

 「なら今日はAZKiの家にお邪魔してもいいか?」

 「いいよー。すいちゃんも来る?」

 「いいの!?」

 「うん。あ、着替えだけないから後で持ってきてね?それで、明日おうちお掃除しよ?貴方もよければ付き合ってね?」 

 「それは別に構わないが。来年の俺の引っ越しの時には手を貸してくれると助かるし」

 「うん!ありがとあずきち!貴方もね!」

 

 抱きついて喜んでるすいせいを見て笑うAZKi。この2人は同い年のはずなんだけどな。こうしてみると、なんというか……。

 

 「なんか変なこと考えてない?」

 「なにも?」

 「ふふっ」

 

 鋭い目で見てくるすいせいに首を横に振っておく。こういう時のこいつは怖い。あとわかってますよ〜みたいに笑うAZKiはなんなんだ。

 

 「それじゃあ、とりあえず出よっか。折角貴方が居るならこの後の荷物持ち、お願いしーちゃお!」

 「はいはい、喜んでお供させていただきます」

 「じゃあ、いこ?」

 

 

 

 

 ここだけの話だが、当たり前に飯奢られて、デートの度に部屋まで提供されてるのは、既にヒモと呼ばれるに値するんじゃないかって最近マジで悩んでる。社会人になったらもっと頑張らないと、この状況はあまり他人に誇れないよな……。

 

 「へへへ、この調子で馴染んでもらわないと」

 「計画は順調、だね?」

 

 ……マジで不味いかもしれん。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。