アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
主人公の惚気が少し多目です。ご注意下さい。
「そういやよ、一つ気になったんだが」
「なんだ?」
バイトの合間の昼飯休憩中。2人してフードコートで飯食ってたら、友人がこう切り出してきた。
「あの2人との付き合いって、ガキの頃からって言ってたよな?」
「そうだな。小学入る前からだから……、もう14、5年位になるか」
「俺がお前と知り合ったのが高校だから、それでも5、6年か。そう考えるとずいぶん長いよな」
確かにそうだ。
「それがどうした?」
「いやさ、今更お前らの仲を疑うつもりはないんだが」
「おう」
「お前らって、喧嘩とかしねえの?」
ふむ。確かに、今まで聞かれたことなかったな。
「んー、喧嘩はあんまりしねえな。そりゃ揉めることもないことはないが、大抵俺が出してる折衷案で折れてるし」
「そうなのか?」
「ああ。そもそも、揉めるのは大抵あの2人だしな。俺が当事者になることはほとんど無いぞ」
俺がそう言うと、あいつは一瞬意外そうな顔をしたが、すぐに納得したみたいだ。
「お前、喧嘩しないのか……?って思ったが、そもそも強く言ったりしなさそうだな」
「そうだな。あんまりああしたい、こうしたいとか無いし。しかも、たまーに俺がなんか言った時はあの2人まじで全肯定しちゃうから揉めようがねえ」
「あー、それはなんか割と想像つくな」
「むしろ、俺の言ったことに対して要求以上のもの出そうとするから、それを止めるほうが大変だったりするぞ」
「……それもなんか想像ついたわ。変な所で苦労するもんだな、お前」
あの2人、加減ってものを割と簡単に放棄しやがるからな。出かけたいとかいえば、簡単に出先のホテルのスイート予約しようとした時は流石に怒ったりもしたが。
「ってことは、揉めるとしてもあの2人なんだな」
「そうだな」
「結構仲良さそうなもんだが、何で揉めるんだ?」
「聞いてる感じで一番多いのは、ライブの演出とかじゃねえかな。2人ともイメージを形にするのはめちゃくちゃ拘ってるから、特に合同ライブとかになると熱中してる」
「おー、それはなんか、分かりやすいというか」
「配信の方向性とかでもたまにぶつかってるぞ。これはホントにたまにだけどな」
あの2人、似ているようで譲れないものもあるらしいし。
「なるほどなー。なんか、お前も含めてらしいっちゃらしいか」
「言ってて俺もそう思う」
「でもよ、それならお前絡みで揉めたりはしねえのか?流石にドロドロしてるとは言わんが、それでも女同士ってなんかあったりしそうなもんだが」
……あえて言わなかったのに、こいつ察しがいいな。
「あー、まあ無いことは無いぞ。聞いてもつまらんとは思うが」
「おいおい、そういうのが欲しかったんだって。言えよ、勿体ぶらずにさ」
「お前な、こういうのって自分で言うのすげー恥ずかしいんだが……、仕方ねえな」
ここまで言って言わなかったら、怒りそうだしなあ。
「さっきも言ったが、そもそもあいつらが喧嘩をするのって凄い珍しいんだよな」
「そうだな」
「んで、ライブやら配信やらってのは俺が口出しできることじゃないだろ?分かるわけないし」
「そりゃあ素人が何言ってもなあって感じか」
「そうだ。じゃあ、俺が出してる折衷案ってなんなんだって話になるだろ」
「……そういやそうか。なんか普通に聞き流してたが」
ホント、理解が早くて助かる。
「まあよくあるのは、デートの行き先だな」
「海か山かみたいなもんか?」
「そこまで大げさじゃねえが、まあどこの飯屋いくかーみたいな感じだな。あいつら、なんだかんだ色々知る機会が多いから、そこに俺を連れて行きたがるんだが、提案した側がその後を好きにするみたいなルールみたいなのがあるみたいで」
「……つまり、1日のデート権みたいなもんか」
「バッサリ言えばそうだ」
俺がそう言うと、こいつもなるほどねーみたいな顔してる。
「基本的にはお互い譲り合いしてるみたいなんだが、仕事が立て込む前や後なんかだと、そうも言ってられんらしい」
「あー、会えなくなる期間が長いからか」
「小っ恥ずかしいから自分で言いたくはないが、そうらしい」
この辺は俺達3人の複雑な事情が原因だしな。
「なるほどな。折衷案ってそういう時はどうしてるんだ?」
「一番手っ取り早いのは、俺が数日予定空けて、そこで長めに付き合うようにしてる。1日しか無理でも昼飯と夕飯で分けたりして、それぞれの要望叶えたりとか」
「お前の負担凄くないか?」
「恩恵タダ飯だしな。それに、あの2人に付き合うのは俺も楽しいから別に苦でもないぞ」
「お前が惚気るのも珍しいな」
聞いておいて惚気ってなんだよ。
「じゃあ、基本的にお前が何とかしてるんだな」
「何とかってほどでも無いけどな。たまに俺が食べたいもの出した時の方が大変だし」
「あー、私が!ってなる感じか」
「そうそう。まあ前回こっちだったな?で大体折れるけど」
「その辺ちゃんと覚えてたり、聞いて折れたりするのはなんかお前らっぽいわ」
2人とも揉めたいわけじゃないしな。
「……ほら、こんな感じだ」
「……わーお。タイミングいいな。どっかで見てるんじゃねえの?」
「んなわけあるか。2人とも今日までロケとレッスン詰めだわ」
スマホ震えたんで確認したら、まさにすいせいとAZKiからの連絡だった。しかも、夕飯の提案とたった今話してた内容だな。
「今回は2人とも俺の飯が希望らしい」
「こっち来るのか!」
「つか、この感じだとそのまま泊まるんじゃねえかな」
「おうおう、見せつけてくれるぜ」
「たまたまだろ。家になんもねえな……。帰りに何か食材買って帰らねえと」
「付き合おうか?今日俺実家の車だし」
「あー……、次の飯奢りで」
「やりぃ。ここの下で買うのか?」
「そうだな。大層なもん作るつもりねえし、ここなら何でも見つかるだろ」
「了解。じゃあ、シフト終わったらそのまま行くか」
「サンキューな」
とりあえずそんな感じでこの後の予定も埋まったし、バイトに戻るとするか。
「……あ、そういやリキュール買っておかないと、そろそろ無くなるかもしれん」
「ん?お前わざわざ仕込んでんのか?」
「俺用じゃねえよ。あの2人がうちに来ると、スクリュードライバーとかカルーアミルク飲みたがるから、ストックしてるの。前にうち来て飲んだときに気に入ったらしくて」
「あー、なんかの配信で言ってた気がするな。外だと飲まねぇって言ってたが」
「まあ立場とか色々あるみたいだしな。ウチだと何があっても俺が面倒見れるから」
「なるほどな。まあデカい酒売り場あるし、その辺探せば見つかるだろ」
(……完全に2人とも誘ってるんだろうな、それ。年末以来、時折出てる色気が凄いことになってるって話題だったのはこれか)
(最近特に誘惑が凄いのは黙っておくか……。俺も堪えきれないことあるし)