アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
今更ですが、今回の話もあくまでフィクションとしてお楽しみください。
「……なに?」
「いや、言葉のまんまだって。最近お前を狙ってる隠し撮りが増えてるって話」
あまりに聞き慣れなさすぎて、思わずそれを言った友人に聞き返したが、どうやら聞き間違いでは無かったらしい。
「あの2人じゃなくてか?」
「おう。つーか、あの2人は隠し撮りに見せかけたアピールだろ。あんなに堂々と目線とピースかましてる隠し撮りがあってたまるか」
「たしかにそうだな」
冗談は置いておいて、前々から俺達の周りを嗅ぎ回ってる人達がいるのは知ってた。勿論その狙いはあの2人なんだろうが、あいつらも分かってて乗ってる節があったし、何より2人の居る会社が放置してるはずもないと思ってたんだが。
「なんで俺なんだ?」
「付き合ってるって事実はあれど、それ以外だとあまりにも表に出てる情報が少ないからじゃないか?一時期は治まってたが、少し前に2人の放送に出たろ?あれで一部の阿呆共が再燃したらしい」
「少しってか結構前の話じゃねえか」
今更また探りたがるもんかね?
「まあ、火のないところに煙は立つわけねえけど、煙を起こすために火種を撒きたがる輩が居るってことよ」
「なんだそれ、めんどくさいな……」
俺はあくまで、あの2人やその周辺に居る、俺達に余計な事をしない人が俺を話題にするのは良いって言ってるだけで、問題起こすやつにまで許した覚えはないんだが。
「だけどほら。現にこれなんかだいぶお前の顔出てるぞ。前までのは一応、モザイクとかあったろ?」
「……うわ。これ、見るやつが見たら俺って分かるじゃねえか」
こいつが持ってきた雑誌に載ってた写真は、全体のモザイクも粗いし、なんならすいせいやAZKiと被ってる周りの部分まで丸出しだったから、周辺の建物や俺も結構しっかり出てる物だった。いつものやつならそれこそ、2人以外全てにきっちりかかってるくらいなのに。というか、すいせいがカメラ見てないってことは、これガチだろ。
「……ちなみに、それが原因で最近大学でもちょくちょく話題になってるからな?お前。ここの学生なら場所も見覚えあるし、お前って分かるのも居るだろうし」
「あぁ、それで今日来た時から妙に視線を感じてたのか。なんか服につけてたか?と思ってた」
「それで済ませてるお前もどうかと思うがな」
目の前で苦笑されたが、普段そんなに見られることないんだし、きっかけ知らなきゃそんなものだろ。
「といってもな。俺から何かできることなんかねえしな。これ見てもそうだが、相手はプロだろ?」
「隠し撮りのプロって聞くと盗撮野郎みたいだがな。まあ、週刊誌とかの記者なら慣れてそうだよな」
「まあ特に隠すこともねえけど。向こうが飽きるのを待つしかねえよなあ」
「2人も知ってるのは思うけどな。一応撮られてるのは変わらない訳だし、こういうのは放っとけないだろ」
うーん、一応相談しておくくらいはするか。
「あ、貴方もそれ聞いたんだ。あたしらもマネちゃんから貰ってきたよ」
「ああ。あいつから教えてもらったよ」
あいつから教えてもらってから数日後。すいせいがデートのまま泊まりに来ていたタイミングでこの話を切り出してみたら、予想通りの反応が返ってきた。
「むー、折角楽しんでたのに」
「人の身体いじくり回して言うことがそれなのか」
ちなみに、今話してる場所はうちの狭い風呂場の湯船の中だ。俺が入ってる所に無理やり一緒に入ってきて、目の前に座ってるすいせいがそう言ってるってことで色々察してほしい。
「まあいいや。それねー、うちでもどうするって話出てるみたいでさ」
「あいつも、これは流石に見過ごせないんじゃないかって予想してたが」
「あたしらが撮られるなんてのは別に良いというか。まあ良いことではないけど、有名人の常だし、あたしらが外で変な事しなきゃいいわけでしょ?」
「そうだな。俺も特にお前たちとの関係で隠すことはないなってあいつに言ったけど」
すいせいがこう言うって事は、AZKiもたぶん同じなんだろうし、今までは会社もそう対応してたんだろうな。
「でも、貴方が狙われてるんなら話は別。そもそも、表に何かしら出てるわけではない一般人をわざと巻き込んだってのは、業界人が守るべきラインとしても駄目。何より、貴方を狙ってたのがあたしらは許せない」
「どっちかって言うと、後半が本音だろそれ」
ぐっと手を握って怒りを表してるが、その怒りの中身の比重がおかしいだろ。
「まあ、ウチとしても看過できないってんで色々やってるみたいよ?」
「なら、俺ができることは特に無いな」
「そうね。まあ、しばらく待っててとしか言えないかな。悪いようにはならないと思うし」
すいせいがそう言うのなら、信じるしか無いな。
「というか、そんなんなら今日ここに来たのは良かったのか?」
「今日は平気よ。いつものところしか後ろ来てなかったから。むしろ、今日来てたらそいつらにしょっ引かれると思うし。こういうヤバい奴らは同業者からも怒りを買うからね」
「来てはいたのかよ……」
また目線バリバリな写真が世に放たれるのかな。
「一応マネちゃんにはスケジュールで許可取ってあるし、問題ないよ」
「……まあ、それなら良いんだが。それより、そろそろ出ないとのぼせるぞ」
「ん、わかった」
なんの躊躇いもなく、すっと立ち上がるすいせい。一応目は逸らしたけど。
「ふふっ、こういう時にちゃんと紳士なんだなって思うよね」
「分かってるなら、お前はもう少し慎みを持て」
「えー?嬉しくないの?それにこんなの貴方にしかやらないから問題ないもんね」
「俺の方に問題あるんだが?あと、そのまま抱きついてこようとするなよ!」
俺の対応で嬉しそうに笑うのは結構だが、それはそれだし、どさくさに紛れて突っ込んで来ないでくれ……。
「あー、それ出してた会社にこっちから法的措置を取ろうとしてるみたいだよ」
「随分話がデカくなったな」
さらに数日後。今度はAZKiの家に呼ばれて、(半ば強制的に)泊まることになった俺。AZKiが作ってくれた夕飯を食べながら件の話をすることになったんだが。
「あ、すいちゃんから聞いたの?はい、あーん」
「最初は別だな。けど少し前にすいせいと話した時は、そこまで進んでなかったと思って……、ん」
さり気なく食べさせに来るAZKi。最初は勿論抵抗したんだが、その度にしょんぼりされるのも滅入るので、家の中だけって条件で受け入れるようにするしか無かった。
「あ、この前のデートの時かな。それなら、ホントにそのすぐ後に決まったんだよ」
「だとしたらまじで早くないか?俺が聞いたのそのホントに数日前だぞ」
思ってた数倍早いな。
「会社としては、私達をちゃんと守る前例ってアピールにもなるってマネさん言ってたよ。あとは、私達が徹底的に潰してほしいってお願いしたのもあるかも」
「……すいせいもそうだが、お前らなあ」
「だって貴方は一般人で、そして私達の大事な人だもん。すいちゃんも言ってたでしょ?業界の人が守らないといけないラインを越えたって。あと、私達の本気度合いも示せるし」
法とか詳しい事は分からんけど、この2人だしなあ。たぶん、俺の想像以上に強く言ったんじゃねえかな……。
「あと、いつも私達をスクープしてる出版社さんも協力してくれたのも大きいみたいだよ」
「ライバル潰しの一環か?」
「それもあるし、元々色々と悪い噂もあったみたい。最近だとSNSでの炎上騒ぎの火付け役みたいなのもやってたとか」
「たちが悪いな、それ」
「でもあくまで噂だったから。週刊誌なんて元々ゴシップネタ扱うから評判いいわけではないし。だからこれをイメージアップのきっかけにしたかったみたい。警察とかが踏み込みやすいように色々してくれたみたいだよ」
「なるほどな。でかい大掃除みたいなものか」
まあ何にせよ2人に何もないなら良かったけどな。
「また進展あったら教えるよ。私達も変なのに追い回されるのは疲れるから嫌だし。何より貴方に私達のせいで不自由なことにはさせたくないしね」
「元々そこまで気にしたことはないけど、ありがとな。というか、いつも撮られてるのはいいのか?」
「あの人たちは良い人だもん。うちのマネさんとも色々話してるくらいだし」
「やっぱり完全に繋がってるんじゃないか……」
まあそうだろうとは思ってたし、見てる人らも薄々勘付いてたとは思うが。
「……ごちそうさま。美味かったよ」
「いつもたくさん食べてくれて嬉しいよ。お粗末様でした」
会話中もどんどん食べ進めてたから、いつの間にか夕飯も食べ終わってたな。AZKiのご飯は昔から時々食べてたし美味かったと思うが、最近はさらに美味くなった気がする。
「この後は風呂か?」
「うん。貴方の着替えは部屋に置いてあるから。脱いだのも洗っておくから洗濯機に入れておいて」
「……いつも悪いな」
「好きでやってるんだからいいんだよー。私達だって貴方のお家に置いていってるんだから」
こんな感じでお互いの家にそれぞれの着替えがあるんだな。
「……ふと気になったんだが。俺が2人の服とか、その、下着とか洗ったりするの嫌だったりしないのか?」
「んー?嫌じゃないよ?ちゃんと洗い方とか調べてくれてるし、むしろケアが丁寧だから助かってるくらいだし」
全部が全部ではないけど、女性物ってなんであんなに洗うの面倒なんだろうか。
「あと下着に関しては、色々想像してもらうのも楽しいかなってすいちゃんと相談したりしてるからね」
「お前らなあ……」
「『えっ、すいせいがこんなの着てるのか!?』とか、『AZKiがこれ……///』とか。こっそり考えたこと、あるでしょ?」
「……ノーコメントで」
「えへへ。貴方の想像が正しいかどうか、今夜見せてあげるから楽しみにしててね」
……結果としてはある意味当たってたし、ある意味外れてた、か。