アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話   作:rideru

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第二十四話の内容を含みます。
先にそちらを読んでくれると筆者も嬉しいです。


第二十六話

 「えっと、ここか?」

 

 すいせいから送られてきた待ち合わせ場所に来たが、どう考えても俺には場違いな喫茶店だな……。

 

 「時間も合ってるし、ここだよな……」

 

 入口でウロウロしててもあれだし、覚悟決めるか。

 

 「いらっしゃいませー」

 「あー、『ときの』って名前で予約してるって聞いてるんですけど、もう来てますか?」

 「はい、お待ち下さい」

 

 とりあえず聞いている予約名で店員さんに確認してもらう。向こうは先に来てるって話だったが……。

 

 「はい、2名様が先に来ておりますので、ご案内致します」

 「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 どうやら聞いていた通り、来ていたらしい。店員さんに誘導されて向かった先は個室か。

 

 「失礼いたします。お連れ様が来られました。開けてもよろしいでしょうか?」

 「はーい、どうぞー」

 

 ドアの前で確認すると、中から女性の声が聞こえた。

 

 「ありがとうございます、ではこちらです」

 「はい」

 

 店員さんが頭を下げて入り口へと戻っていったので、俺は深呼吸を一つ。そして、

 

 「失礼します」

 「お、こんにちはー!」

 

 ドアを開けると、見覚えのある2人がニコニコと挨拶してきた。

 

 「やあやあ、あの2人の彼氏くんだよね。ボクの事、覚えてる?」

 「ロボ子さんですよね。会社のロビーで会った」

 「うん!ひさしぶりだねー!」

 

 特に人懐っこそうな笑みを浮かべている女性、ロボ子さん。

 

 「はじめまして、だよね。ときのそらって言います。よろしくね?」

 「こちらこそ、はじめまして。いつもすいせいとAZKiがお世話になってます」

 

 しっかり頭を下げて挨拶してくる女性、ときのそらさん。俺も居住いを正してしっかり返す。

 

 「とりあえず座ってよ。君も結構歩いたでしょ?」

 「そうですね。ありがとうございます」

 

 ロボ子さんが席を指すので、大人しく従う。対面に大人気アイドルが2人って、改めて考えるとなかなか壮観だ。

 

 「ここ、コーヒーが美味しいんだよ。折角だから飲んでみてよ。あ、サンドイッチも美味しいよ?」

 「ここは私たちで出すから。呼んだの私達だから遠慮しないで、ね?」

 「あー……はい、それなら甘えさせてもらいます」

 

 ちらっとメニュー見たが、まあ思った通りの価格だったし、正直結構助かる。

 

 「えー、俺に会いたいってあいつらから聞いたんですけど」

 「うん。ありがとね、お願い聞いてくれて」

 「そういえば2人はー?」

 「2人ともレッスンだそうです。貴女方なら変なことにはならなそうって言ってましたよ」

 「へ、変な事って……」

 

 そらさんの顔が少し赤くなった。こういうのに不慣れってホントだったみたいだな。

 

 「んー、ボクの方は全然かまわないけどなぁ。君かなりいい人そうだし。ほら、ボク人間じゃなくてロボットだしワンチャン無い?」

 「勘弁してください。2人に何言われるか分からないです。あとロボットだしってどういう理由ですか」

 「えへへ、それは怖いかもねー」

 

 ロボ子さんの方はニコニコととんでもないこと言ってるが、本気なのかイマイチ分かりにくいな……。

 

 「えっと、それで何か目的があるんでしょうか……?」 

 「んー、強いていえば会ってみたかったのが目的?」

 「えっ?」

 「私今までアイドル活動に夢中で、学生時代も全部その為に色々邁進してたから、所謂恋愛とか全く関わった事なくて」

 「あぁ、すいせいから聞いてます」

 「あ、そう?」

 

 そらさんはニコッと微笑んでいた。

 

 「昔はアイドルが男なんて!って言われてたけど、今はそんな事ないんだって思ったら、身近にそれを本気で叶えてる人がいたからさ」

 「あー、なるほど……」

 「要するに羨ましかったんだよねぇ」

 

 ロボ子さんもウンウンと頷いた。

 

 「ボクは別にそこまでアイドルの恋愛について思う事はないけどねー。でも、それはそれとして同じ境遇の友達の彼氏さんだし、機会があるなら会ってみたいなぁって」

 「ロボ子さんは結構マイペースだから……」

 

 多分俺がなんとも言えない顔をしてたからか、そらさんも微笑みが苦笑に変わってた。

 

 「それにこれは別件だけど、貴方も色々あったのが解決したでしょ?」

 「週刊誌の件ですか?」

 「そうそう。だから、このタイミングで誰かに見られたとしても、貴方の身は十分保証されてるから都合が良かったのもあるの」

 

 概ね2人から聞いていた通りだな……。

 

 「だから、貴方に会えた時点で目的は達成されてるというか」

 「わかりました。でしたら、この後はどうしますか?」

 「それなら、実際の感じを聞いてみたいな!」

 

 ロボ子さんがわざわざ手を挙げてそんな事を言うが、

 

 「実際の感じ、とは?」

 「アイドルと付き合ってるってどうなのかなーとか?」

 「……なるほど」

 

 彼女らもアイドルだし、重ねて見てる感じか?

 

 「あんまりアイドルだからって感じは無いですね」

 「そうなの?」

 「はい。2人を昔から知ってるってのも大きいとは思いますけど」

 「「へぇ~」」

 

 感心してる2人。

 

 「そもそもなんですけど、アイドルだったから好きってわけでもないです。あいつら2人だからこうして付き合ってますから」

 「おぉー……」

 

 そらさんが何やら感動した感じに見える。

 

 「でも、それこそこの間までの問題とかはさ、2人がアイドルだから起きたことじゃん。そういうのは嫌じゃないのー?」

 

 ロボ子さんが不思議そうに聞いてきた。

 

 「そうですね……。確かに面倒なことはあります」 

 

 そこは否定できないしな。

 

 「でも、その辺は俺より2人のほうが詳しいですから。正直任せっきりなんですよね」

 「そうだねー、何にもない私達でも色々あるから。運営さんも対策してくれてはいるけど……」

 「人気者は辛いってやつですかね」

 「あんまり知りたくなかった辛さだけどねー」

 

 ロボ子さんも流石に苦笑に変わったな。

 

 「それにしても、君は強いねぇ」

 「強い、ですか?」

 「うん。ホントに一般人か疑わしいくらい」

 「紛れもなく一般人ですよ」

 「でも前にあずきちも言ってたよねー。『心強すぎてむしろ心配になるくらい』って」

 

 なんでだよ。

 

 「こっちに後ろめたいことないですし。それこそ、お二人の会社が放置するはずないって信頼してますから」

 「それはそうだけど、生活を誰かに見られてるって嫌なプレッシャーじゃない?」

 「……あんまり意識したことないっすね」

 「ほら、だから強いんだって」

 

 2人が真顔で言ってくる。確かに言われてみればそうか。

 

 「無理してないなら良いんだけどねー。ちゃんとあの2人にも頼るんだよ?」

 「それはもう。2人にも死ぬほど言われてますから。むしろ頼りすぎないように自立しようとしてるのに、少しずつ折りに来てるのを止めてくれませんか?」

 「あー、ごめんね。それはちょっと難しいかなぁ」

 「こんないい人捕まえたら、そりゃ女なら必死にもなるよねぇ。ボクでもそうしちゃうかもー」

 

 2人が手を振って諦めろってしてくる、どうしてだ……。

 

 「ねえねえ、それよりさぁ」

 「それよりって、結構真面目なお願いなんですけど」

 「まぁまぁ。私達そんなに歳離れてないんだし、敬語やめようよー」

 「折角こうして知り合えたんだし、私たちも気楽に話せる外部の男性は貴重だから、ね?おねがい!」

 

 軽く流された上に、結構重いお願いなんだが。

 

 「……これでも結構緊張してるんですけど」

 「ヘーキヘーキ!もう君も慣れたでしょ!あ、折角だし連絡先交換しよ?こっちはプライベート用だから問題ないよ?」

 「あ、なら私も……」

 「そらさん、そこは止める立場じゃないんですか……?」

 

 やっぱりノリノリな女性が複数いる場ってのは、男にはどうしようもないよなあ……。

 

 

 

 

 おまけ

 

 「それで?」

 「えへへー、今度配信に呼んでもいいかって聞いちゃった。ごめーん」

 「そらちゃん、そこは止めようよ」

 「ロボ子さんグイグイいくんだもん。私じゃ無理だよ」

 「おい、ならみこだって呼びたいんだが!?」

 「みこちはだめだよ」

 「ぁんでだよぉ!」

 「いや、そもそも彼なんて言ってたの?」

 「『出来れば遠慮したいです』ってー」

 「だよねぇ……」

 「だから、2人からもお願いしようよぉ」

 「あんまり気乗りしないなぁ……」

 「連絡先交換は止めなかったんだから、その辺で勘弁してあげてよ」

 

 




 これからもちょくちょく出てもらう予定(かもしれない)の0期生さん達でした。
 ロボ子さんのコミュ力の高さは書きやすいのでこちらも非常に助かっています。
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