アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
本年もよろしくお願いします。
「おー!すっごいきれい!」
「景色がいいって評判よかったけど、ホントだね」
「荷物ほっぽり出すなよー」
新たな年が明けてから少し経ち、2人が沢山の仕事を片付けて、ようやくまとまった休みが取れたから、去年の年末に予定していた旅行へ出掛けることにした。
「ご飯も美味しいってさ!」
「地元の海産物が自慢なんだって」
「それは楽しみだわ」
「お刺身好きだもんね」
「学生一人暮らしの財布だと安売りしてる時くらいしか食べられないからな」
「アタシらが結構食べさせてる気もするけど」
「そこはホントに感謝してる」
好物には勝てん。餌付けかなって思わなくもないけど、美味い物食べて悪いこともないだろ。
「運転疲れてない?」
「何度か休憩取ったから平気だ。ありがとな」
「すいちゃんが後でマッサージしてあげよっか?」
「なんか手が怪しいが」
「冗談だよ、やるなら真面目にやるって。今日は君の就活終わり祝いも兼ねてるんだからさ」
「……なら甘えるよ」
「ふふん、任せて!」
「すいちゃん、ちゃんとお勉強してたんだよ?私もいくつか覚えちゃったし」
「そうか、それは嬉しいな」
俺の想像してた以上に、2人のお祝いムードが本物だった。無論それは嬉しいことだし、今度何かの祝いのときには俺も返してあげたい。
「大浴場もあるけど、あずちゃんの希望通り家族風呂も露天がついてるからね。後で一緒に入ろ?」
「うん。ご飯ももう少し後だし、先に入っちゃおうか」
この2人が大浴場行っちゃうと、流石に騒ぎになるからな。
「貴方も一緒に行くんだよ?」
「なんで当然のように一緒なんだよ……」
「あずちゃんのお願いなら断れないの知ってるからね!」
「それはズルくないか?」
「恋する乙女はなんでも利用するって知らないの?」
「ああそうかい……」
ウッキウキで準備する2人に半ば引きずられていく俺。
「お風呂でもちゃんと癒してあげるからさ」
「身体が温かいほうが効果高いんだって」
「……わかったよ、よろしく頼むな」
「「はーい」」
別に役得とか思ってないからな。
「……ホントに癒されるだけとは」
「あのね、すいちゃんが毎回毎回同じような展開にするわけないでしょーが」
「そう言う割には時々視線が怪しかったが?」
「まあまあ、それはお互い様じゃない?貴方だってあんなに私たちの身体見てて、何も考えないとかあるの?」
「……それもそうか」
「素直でよろしいw」
マジで全身まるっと洗われて、湯船で2人がかりでまったりマッサージされただけだった。あまりに現実感無さすぎて、世が世なら王様みたいだなとかぼんやり考えたりもしたが、真横にいたのはいつもそばにいる美少女二人だったから、夢じゃなかったんだろう。視線は出来るだけ下げないようにしたんだが。
「ご飯もそろそろだし、いいタイミングじゃない?」
「そうだね。お布団はその後敷きに来てくれるって」
「至れり尽くせりだな」
「ね。毎日こんなんだったらだらけちゃいそう」
「貴族じゃあるまいし」
部屋に備え付けられた浴衣を着て、湯上がりの少し上気した顔でニコニコと笑いながら座ってる2人は、こう言っちゃなんだが流石に似合いすぎてる。この光景を見たいファンはきっと多いだろうな。特にすいせいは過度な色気を伴うプロモーションは断ってるらしいし。
「この旅行中食べ過ぎて太ったりしないかな?」
「いつもあれだけ動いてるならすぐに戻せそうだけどな」
「身体重くなると、その動くのが億劫になっちゃうのがねー。あと、いつものつもりで動くと怪我したりするかも知れないし」
「あー、ダンスはバランスが大事っていうし、そういうことか」
「貴方はなかなか太らないよね」
「太るぞ?体型には確かにあんまり出ないが、確実に重くなる」
「それ、女の子にはあんまり言わない方がいいよ?刺されちゃうかも」
「ちなみにあたしならもう刺してるよ♡」
「……そうか」
親の遺伝だとは思うが、昔から肉が付きにくいんだよな。脂肪が付かないのはまあいいが、筋肉もつきにくいのが悩みではある。それはそれとして、刺されたくはないが。
「でも、こうして触るとしっかり筋肉あるのいいよねー」
「ずっと人の肌ペタペタ触ってて飽きないのか?」
「んー、飽きるとかそういうんじゃないんだよね。自分とかあずちゃんのじゃあ触っても味わえない感触だからさ」
「すいちゃんがくっつくの好きなのもあるんじゃないの?」
「こんなに人肌恋しくなるとは思ってなかったけどw」
さっきから寄りかかられて、そのまま浴衣の襟元からすーっと撫でられてるから、妙な気を起こしそうになる。
「そういうAZKiも人の膝枕にして、寝づらくないか?」
「膝枕って別に寝るのを目的にしなくてもいいんだよ?」
「じゃあなんなんだ……?」
「私達の特等席ってこと」
なんとなく頭を撫でてやれば嬉しそうに笑う。
「……ご飯たのしみだなぁ」
「あ、現実逃避した」
「いいんじゃない?しばらくそっとしておこうよ」
「分かってるならツッコむなよ……」
全く……。
「美味しかったね!」
「ほんとにな」
「満足できた?」
「あれで満足出来なかったら料理に失礼だろ」
「私達もあんなに豪華なの中々ないからびっくりしちゃった」
語彙力ないけど、一つ一つがとんでもなく美味かったとしか言えん。あと期待してた新鮮な刺身はやっぱり美味かった……。
「ふふっ、眠い?」
「ん?まあ、お腹膨れたし少しはな」
「このあとちゃんとマッサージしてあげようと思ってたけど、やめとく?」
「来た時に言ってたやつだろ。ちょっと楽しみにしてたんだぞ」
「忘れたかと思ってたけど、そう言ってくれるのはうれしいね」
ちょっとぼーっとしてたら、2人に目敏く気づかれてしまった。確かに疲れと眠気もあるにはあるが、風呂の時の真面目っぷりからして、たぶんちゃんとやってくれるんだろうなって思ってたから、お預けは少し寂しいな。
「お布団引いてくれたし、じゃあ早速始めよっか」
「そのまま寝ちゃってもいいからね?」
「わかった」
食事を下げた際に一緒に布団の準備をしてくれたから、大人しく移動する。
「部屋暖かいし、折角だから浴衣脱いでくれる?」
「ちゃんとクリームとか用意したから、肌につけたいんだ」
「ん、わかった」
AZKiがカバンから出したのはいかにも高そうな瓶。はて……?
「いつも私たちが使ってるやつだから安心して?肌触りいいのは君が一番知ってるでしょ」
「……なるほど、それでか」
なんか見覚えあるなと思ったら、2人の家にあったのを見た事があったからか。まあとりあえず言われたままに浴衣を脱いで布団の横に置く。パンツ一丁になったから、恥ずいっちゃ恥ずい。
「んー、相変わらず引き締まってますなあ」
「何をしみじみと」
「ふふっ。はい、じゃあうつ伏せでね」
「わかった、よろしく」
ポンッと枕を叩くのに従ってうつ伏せに寝る。
「どうする?」
「私、首とか肩中心にやるよ。すいちゃん確か足とか腰をめっちゃ勉強してたでしょ?」
「OK、助かるわ。じゃあそうしよっか」
ゴソゴソと動く音がした。2人の声が若干離れたのはそれぞれ移動したのか。
「よし、じゃあ始めるよ」
「痛かったり、逆に弱かったりしたら遠慮なく言ってね」
「おう」
液体の音が微かに聞こえたと思った瞬間、足を触る感覚があった。そのままヌリヌリと何かを塗っている音。
「それじゃ私も触るからねー。クリームは冷たくないようにしたけど、ヒヤッとしたらゴメンね?」
「足の方は平気だし、問題ないと思うぞ」
AZKiに声をかけられ俺がそう答えたら、そのまま首元にそっと触れる感触。
「筋肉あるけど、やっぱり硬いよ。意外に凝ってるの気づいてなかったのね」
「自分じゃあんまり……っ、うっ」
「ここ痛い?」
「……少しな。でも耐えられない程じゃない」
「わかった。無理はしないでね」
膝裏にすいせいの指が入った時、少しピリッとした。どうやら想像以上に足を酷使していたようだ。
「首も硬いよー。普段からもう少し気を遣ってあげないと、慢性化したら大変だよ?」
「そ、そうか……?」
「うん。首がこれだと、繋がってる肩とか背中にも負担いっちゃうから、全身疲れやすくなっちゃう」
……そんなにか。
「気持ちよくなる前にピリピリしてるから、かえって目が覚めちゃうか」
「解れたら良くなると思うけどなあ」
「うっ……、いつつ……」
2人はそんな事を言ってるが、正直想像以上に痛気持ちいい。というか、俺の身体はどんだけ疲れてたんだ?
「ふふっ、反応で笑っちゃう」
「ね、なんか可愛い」
「か、可愛くても嬉しくない……、うおっ!?」
楽しげな2人に翻弄されているが、安心感から脱力してしまってるから動くに動けん……。たまにツボに入って悶えるだけだ。
「たまにビクッとするのわかりやすいね」
「でも繰り返したら少し指入るようになったし、思ったより重症ではなかったから良かったんじゃない?」
「そうか……」
「たまーに首とか回してたし、凝ってるとは思ってたけどね」
前から辛そうに思われてたのか。
「ありがとうな」
「いいえー」
「貴方にはお世話になってるし、この位は甘えちゃってよ」
「そうする……」
ぼーっとして聞く2人の声、ほんとにいいな……。
「寝ちゃっていいからね。お布団掛けておくから」
「隣で私達も寝ちゃうからさ」
「……わかった」
気持ちよさと心地よさで眠気が……。
「……んー、寝ちゃったね」
「ね。やっぱりだいぶ疲れてたんだろうね」
体力はあるし、気も張ってたんだろうけど、流石にやること終わってのんびりできれば緩むと思ってた。
「そもそも、お風呂とかであんまり抵抗しなかったのも珍しかったし」
「本人気づいてなさそうだったけどね」
最初よりだいぶ柔らかくなった足や腰を撫でても無反応。こっち向いてる顔は安心しきってる。
「暖房ついてるし、お布団で大丈夫だよね」
「平気だと思うよ。一応お水も置いてあるから、乾燥しても飲めるようにしてあるし」
「じゃあ、私達も寝ちゃおっか」
「そうだね。くっついちゃお」
あずちゃんと笑ってそのまま彼の両横へ潜り込む。大きめの敷き布団だから、3人でも十分寝れた。
「明日からも楽しみだね」
「そうだね、たくさん思い出作らないと」
彼を挟んでそんな相談、楽しいな。
「おやすみ、あずちゃん」
「うん。おやすみ、すいちゃん」
今日はいい夢見れそう。