アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
2025/06/10
誤字修正しました。
見つけていただきありがとうございます。
「あ″ー……、これは、やったなあ……」
起きて早々に身体に物凄い怠さ。おまけに身体起こしたら節々が痛いし、視界もグラグラ。
「体温計、どこやった……?」
何とか布団から起き上がり、冷蔵庫で常備してる本来ならあいつら用のゼリーを食べてから、薬と体温計を探す。
「あった……」
それだけで疲労困憊だったが何とか見つけ、とりあえず椅子に座って体温を測ってみれば、
「……39.4度」
本当に風邪です、ありがとうございました。
「どこで貰った……?いや、とりあえずあいつに休みの連絡を……。あと、あいつらに来るなって言っとかないと、忙しいのに移したらやべえ」
こういう時、一人暮らしって辛いなって思う。特に久しぶりだったりすると尚更だ。
「あとは、病院……、近いのは……?」
ここで、俺の意識は途絶えた。
「……?」
最初に感じたのは違和感だった。
「なんだ、この匂い……」
うちはもちろん、今まで嗅いだことがない謎の匂いに混乱する。
「……知らない天井」
目を開けてみれば、視界に入ったのは見たことない場所。腕が動かないからチラリと見れば、いくつもの管が繋がっており、どうやら点滴を受けていたようだ。
「点滴……?そういや、俺は病院を……」
「失礼しますねー、あら!お目覚めですか?」
記憶を思い出して唸っていたら、ドアのノック音としばらくしてベッドを囲っていたカーテンの一部が開いて、看護師さんが来た。
「え、ええ。たった今ですが」
「それは良かった。体調はどうですか?痛みとかありますか?」
「痛み……、喉が少し?位ですかね」
「なるほど、では運ばれたときよりも快方に向かっているようですねー。後程お医者様つれて診察していただきますので、しばらくお待ち下さい」
「はい」
慣れた手付きで何かを弄ると、そのまま出ていく。
「……はぁ」
徐々に思い出してきた。
「そんなに疲れてたかな、俺」
意識不明になるほどとは。
「…………」
特にすることもなく、天井を眺めること暫し。
「失礼しますよ」
「あ、はい」
先程の看護師と一緒に年配の方が来た。たぶんこの人が医者か。
「……うん、顔色も戻ってますな。喉が痛いとか」
「はい」
「怠さとかはないですか?」
「……少し?」
「まあ寝起きということもあるでしょう。あとは発熱で体力を奪われていたのも」
聴診器で心音を聞かれたり、よくある診察を経て。
「幸い、流行り病等ではないです。一応今日明日様子を見て、平気なようなら明後日には退院出来ます」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げる。
「それと、面会が来ておりますが、お会いしますか?診察が終わったあとに同意を得られたらという条件でお待たせしてますが」
「あー、ではお願いします」
「はい、御礼を言っておいてくださいな。彼女達が連絡して救急車を呼んでくださったようですし」
ではお大事に、といって2人が出ていった。
誰が来てるかは大体想像つくが、さて何を言われるか……。
「大丈夫!?」
「すいちゃん、静かにって言われたでしょ」
騒々しく突っ込んできたすいせいを諌めるAZKi。
「ああ、お陰様で凄く楽になったよ」
「良かった……。連絡貰ったあとにこっちから返しても返事ないから、2人でおうち入ったら、リビングで倒れてたから……」
胸元にすがり付いてくるすいせい。肩が震えてるのはたぶん気のせいじゃない。
「救急車呼んで、すぐに運んでもらったんだよ。私たちも付いていきたかったけど、荷物とかまとめてからの方がいいかって」
AZKiが指し示した先には、鞄が置いてあった。たぶん、着替えとかその辺だろう。
「すまん、ホントに助かった」
「もう、無茶しないでって言ってるのに……。死んじゃったらどうしようって、ホントに不安だったんだからね……」
そこで、AZKiもすいせいの反対側で俺にもたれ掛かってきた。振動が2倍になったが、何も言わずに肩を抱くしかなかった。
「ごめん。でも、最近はホントに無理なんかしてなかったんだ。たぶん、どこかで貰った風邪が拗れたんだとは思うが……」
「馬鹿」
「おたんこなす」
「シンプル悪口は結構堪えるからやめてくれ」
2人は顔もあげず。
「……あの、なんでもするから許してもらえませんかね?」
あんまりにも沈黙が続くので、こう言うしかなかった。
「……なんでも?」
「……するって言った?」
「あ、ああ」
ぐりんっと顔が上がった2人。怖いよ。
「……」
「……」
急に離れたかと思ったら、こそこそと何かを相談する2人。よく聞こえないが……。
「……わかった。なら、今日のところは許してあげる」
「でも、次こんなことになったら許さないから」
「肝に銘じます」
再び戻ってきて抱きつきながら、耳許で怖いこと言わないで欲しい。言われることした自覚はあるからしょうがないけどさ。
「それで、俺は何をしたらいいんだ?何か相談してたみたいだが」
「後で教えるよ」
「マネちゃんにも相談しないといけないし」
「ん?なんでマネージャーさんが関係あるんだ?」
「内緒♪」
2人でクスクス笑ってるが、はっきり言って不安しかない。
「とりあえず、何もなければ明後日には出れるらしいから」
「そうなんだ。明日は無理だけど、明後日ならお迎えこれるよ」
「いや、わざわざ来なくても」
「なーに?」
「いえ、とても嬉しいです」
だから怖いって。最近AZKiの芸風がヤンデレに寄ってるのは気のせいじゃないだろ。ハイライト簡単に消すんじゃねえ。
「今日はもう少し居られるから」
「……そっか」
そういうと、またしても抱きつかれる。なんでか、いつもより嬉しく感じたのは、たぶん何だかんだで俺も不安だったのか。