アイドルに捕まってしまった青年の幸運で不幸な話 作:rideru
ご都合設定マシマシなので、気楽に読んでくれると幸いです。
2025/06/10
誤字修正しました。
見つけていただきありがとうございます。
「……てなわけでして」
「彼をそろそろ……してもいいかなって思うんですけど、どうですか?」
あいつの酷い風邪が治って、しばらくたった。
あたしもあずちゃんも、配信が終わるとすぐに連絡取って、無理してないかって監視してたけど、2人で泣いたのが割と効いてたのか、バイトのシフトも減らしてたし、連絡も前よりマメに返すようになってた。
「うーん、ネタとしてはかなり強いですけど、反発もそれなりに予想されますね……」
「この辺で、特に浮き上がりそうなのを滅ぼしたいなって」
「それに、一度ちゃんとはっきりさせておいて、こういう人だよって分かる方が、不安もないかなって」
「たしかに、ファン目線『どこの馬の骨』ってよりかは理解は得られるとは思いますが……」
あのとき、病院で『言うことをひとつなんでも聞く』と彼が言った時、あたしとあずちゃんはたぶん同じ事を考えたんだろう。一瞬で目があってニッコリしたのを覚えてる。それを実行に移すために、現在マネちゃんと会議中だ。
「彼用のアバターは?」
「お客さん用の黒子さんスタイルにしようかと」
「内容は何をメインで?」
「今のところはトークメインで。時間に余裕があるならゲームとかしてもいいかなって。すいちゃんが得意なゲームのお師匠様だし」
「ふむ……、彼の同意は」
「一回だけ押し切る権利があるので問題ないです」
「……なるほど。詳しくは聞きませんが、それが一番の難点なので、クリア出来るならいいです」
マネちゃんも以前とは違い、かなり話が分かる人になった。うちらもその辺信用してかなり色々相談してるし。社長もかなり仕事を任せているらしく、たまーに死んだ目をしてる。今回の事も、このマネちゃんじゃなきゃそもそも企画として聞けたかどうか。
「……日程の方は少し先になりますよ?」
「まだこの事彼に話してないので、むしろ都合がいいです」
「話が通せるなら言おうって決めてたので」
「……一応、男の立場として彼を擁護しますけど、あんまり無茶言わないであげてくださいね。あくまで一般人なんですから。立場は特殊ですけど」
うちらがあんまりにもニッコリしてるからか、マネちゃんから珍しく彼への心配の言葉が出た。
「大丈夫です。彼もダメならダメって言うタイプですし」
「すいちゃんが正面から無理って言われて従う数少ない人ですからね」
「それはあずちゃんもでしょ」
「……はいはい、御馳走さまです」
そんな事を言い合ってたら、マネちゃんが立ち上がった。
「スタジオの予定とか確認してまた連絡します。とりあえず企画は通ると思いますので。宿泊等の手配は?」
「うちらでやります」
「だと思いました。では、彼とのやり取りはよろしくお願いします」
マネちゃんがそのまま部屋を出ていった。
「……まさか通るとは」
「なんだかんだ濁されると思ったんだけどね」
2人して少し驚いた。けど、これで少し前進かな?
「それじゃあ、あとはあいつへの事後承諾だね」
「さっき連絡したから、このまま行こっか」
「お、ナイスゥ!」
少し先の行動とかになると、やっぱりあずちゃんは手早くていいなぁ。
「お昼何食べる?」
「そうだなあ……、あ、この前ちょっとおしゃれなカフェ出来てたよ?」
「じゃあそこに行こっか」
お昼食べたらいよいよご対面だ。反応が楽しみだな……。
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
「おう」
私が見つけたカフェでのお昼の後、私たちは予定通りに彼の家へと向かった。
「お昼は?」
「バイト帰りにハンバーグ食べてきた」
「ちゃんと食べてるならいいです」
ちなみに、お邪魔しますって言ってはいるものの、私たち2人とも合鍵貰ってますし、彼が居てもいなくても割とスタスタ入ってます。でも、いると分かってるときにはなんとなく彼の返事が嬉しくて声かけちゃうんですよね。
「これおみやげ。今日行ったカフェのサンドイッチだよ」
「お、ありがとう。腐ると怖いから冷蔵庫いれておいてくれ」
もちろんこの部屋の配置なんて今さら聞くまでもありません。2人とも暗記してますし、何なら私物が占める割合が徐々に増えてます。
「そうだ。2人とも、服を置いていくのは良いが、その、下着とか見えるところに置いておくのは止めてくれな?」
「あれ、こういうのって嬉しいんじゃないの?」
「ね。ありがちハプニングって聞いたけどなあ」
「あのなぁ……」
……まあそういうのもあったりします。もちろん恥ずかしいですけど、彼も良い反応してくれるので、たまーに、ね?
「……そんで?話があるってAZKiから言われて、詳しいことは会ってからって濁されてるんだが、何だ?」
「んー、何から話そっかな」
すいちゃんが凄く楽しそうにしてます。
「この間、貴方は風邪で倒れました」
「そうだな。その節は大変お世話になりました」
ぺこりと頭を下げる彼。かわいい。
「その時、泣かせた私たちに貴方が何を言ったか覚えてますか?」
「……ああ、なんでも聞くから許してくれって言ったやつか」
「だいせいかーい」
手をパチパチ叩く私達。
「ずっと保留になってたやつか。忘れてなかったけど、こっちから振るのもなって思ってたよ」
「忘れるわけないじゃーん。君が治ってから、このために2人で動いてたんだから。ねー?」
「うん。ちょっとそれを叶えて貰うために、動かす必要のある物が多くてね」
「え、そんなに大それた事をお願いするのか……?」
規模が大きいとわかったのか、少しだけ怯えた様子の彼。かわいい。
「んて、その目処が立ったんで、そろそろきちんと言わないとなって事で」
「ちなみに、私が連絡してるときに最後の用が済んだんだよ」
「ホントに今日決まったんか……」
呆れたように言う彼。
「それで?俺は何をしろと?」
「覚悟はいいかー?」
「無理なら無理って言うからいいよ。言えるのかは分からんけど」
彼は目を閉じた。私たちはそっと目配せすると、彼の手を取って。
「「私達の3D配信に、ゲストで出てください!」」
完璧にハモった。
「…………は?」
いつもより長い沈黙のあと、目が真ん丸になって驚く彼。かわいい。
「いやー、こんな機会じゃないと貴方を配信に出すなんて断られると思ったからさあ」
「なので、関係各所に今日までお願いしてきたんですよ?」
「いやいや、待て待て……」
ニコニコと話す私達を止める彼。さて、なんて言うかな?
「あの、まじで言ってるのか?」
「そりゃそうよ。こんなのエイプリルフールでも言わないよ?」
「むしろ嘘であってほしかったよ……」
「え、しかも声だけとかじゃなくて、3D?お前らもなかなか出来ないって言ってなかったか?」
「うん。スタジオ抑えたり、スタッフさん確保したりって大変だからね」
「……出来たのか?」
「もちろん。ちなみに予定はスタジオの収録関係でちょっと先だけど、スタッフさんはすぐに集まったよ。一般人出すのは初めてだから、楽しみって」
「うちのスタッフ、良い意味で変態多いからね。まあ変なことしすぎないようにあたしらでちゃんと止めるところは止めるから安心して?」
「ああ、そう……」
「……一応聞くが、マネージャーさんには?」
「今日通したんだよ。貴方の同意さえ取れるなら問題ないって」
「なんでそこが最後なんだよ……」
「逃げ場無くしたら、貴方は絶対受けるだろうなって思ったから、先に確保だけしちゃおっかって」
「それ、言い出したの絶対AZKiだろ」
「えへへ」
彼の質問を1つ1つ丁寧に説明します。
「他には?」
「いや……、もういいや」
諦めたように笑う彼。
「じゃあ、出てくれるって事でOK?」
「良くはねえよ。ねえけど、逃げ場ないだろ……」
「そんなに嫌なら別にいいんだよ。私達の3D配信にするだけだし」
「……いや、なんでもするって言ったしな」
彼は覚悟を決めたようにこっちを見た。
「まあ、お願い事はわかった。詳しいことは分からんから、よろしく頼むよ」
「「イエーイ!!」」
私達はハイタッチして喜びました。
「……楽しそうだな」
「そりゃそうでしょ?」
「貴方をちゃんと紹介出来るんですから」
「……俺、刺されないかな」
お腹を押さえる彼。
「んなことさせないわよ。というか、貴方は真っ黒くろすけのモデルだから、顔とかは映らないしね」
「動きと声だけは出ますよって形です」
「……ああ、何回か観たことあるな。あれ、ゲスト用なのか」
すいちゃんの言葉に何かを思い出すような雰囲気の彼。
「つーか、まあ出るのは百歩譲って良いとして。具体的に何するつもりなんだ?俺に踊れと?」
「それはある意味楽しそうだけど、いきなりそんなことさせたら、うちら鬼畜って言われちゃうよ」
「十分鬼畜なことしてるって言わなきゃダメか?」
「今のところはトークがメインで、時間があればゲームとかしようかって話になってるよ」
「トーク?人前で何を話せと……」
「そりゃー、うちらとの関係じゃない?」
「貴方の事もたくさん聞かれそうだけどね」
「一般人の事知って何になるんだか……」
会社とファン公認のアイドルの交際相手って、一般人の括りに入るんですかね?
「まあ、あとは虫除けが目的なんだよね」
「虫除け?」
「当たり前ですけど、アイドルが公然とお付き合いしてるというのは、反発も招きますから」
「ああ、まあそりゃそうだろうな」
「うちらは大掛かりなことして、秘密じゃなくしたけど、それはそれじゃない?」
「なので、ここで少し前進して、味方を増やそうってことです」
「少なくとも、会社公認を見せつけようかと」
「……言いたいことはわかるが」
彼は頭が良いので、理解も早いのは助かります。
「俺、まじで大学で刺されそう」
「あ、しばらくはうちのガードさんがそれとなく守ってくれるように手配してあるから大丈夫だよ」
「その辺りも抜かりなく計画済みです」
「……そりゃ手厚いこって」
彼の身に何かあったら困りますし、隠し撮りとかのせいで、私達はともかく彼の身元が割れてるのはこういう時不便です。
「詳しい話は貴方の同意が得られたら、マネちゃんも交えて詰める予定なんだよ」
「もちろん、貴方の予定が最優先って伝えてあるから」
「その辺は問題ねえよ。最近はバイトも減らしてるし、今日明日とかじゃなきゃ空けるのは出来るし」
「なら、後で伝えておくね」
用件が伝え終わったので、2人して伸びーっとだらけます。
「あー、よかった!」
「ここで頓挫したら頑張った意味ないもんね」
「……もういいや」
何か言いたげな彼でしたが、諦めたように首を振ってます。まあ予想はつきますが、元々は彼の言い出した事がきっかけなので、見なかったことにしちゃいましょう。
「……今日は泊まるのか?」
「いいのー?」
「俺は構わんぞ。予定もねえから家にいるつもりだったし。課題やらないといけないしな」
「お言葉に甘えちゃうよ?邪魔じゃない?」
「すいせいだけならともかく、AZKiもいるなら止めてくれるだろ」
「どーいう意味よ!」
「そのまんまだよ」
食って掛かるすいちゃんだけど、顔は笑顔。かわいいなあ。
「なら、ちょっと実家に顔だしてから戻ってくるね」
「ん、わかった。すいせいは?」
「んー、ゴロゴロしてるー。あ、後でシャワー借りて良い?ついでに洗濯してあげるから」
「いいぞ。服脱ぎ散らかさなきゃな。あ、AZKi?悪いんだがこっちに戻ってくるとき飲み物買ってきてほしい。たぶん冷蔵庫にお茶しかねえから。レシートくれたら金は払う」
「いいよいいよ。お世話になるんだし。おやつも買って良い?」
「そりゃ構わんがいいのか?」
「もちろん」
なんという生活感。でも、これがいいんだなーって。
「じゃあいってくるね」
「気を付けてな」
「いってらー」
2人に見送られて外へ。日差しが眩しいなあ。
「楽しみだなあ……」
よーし、とりあえずおうち帰ろっと!
ということで、次話にも持ち越されます。
タイトルの不幸感があんまり出せなくてこんなものか?と自分でも思ってますが、実際こんな夢のありそうな立場になってしまったらもっと大変そうですよね。
想像力がほしい今日この頃です。