【消耗品軍団】に育てられたものは日本に帰って喫茶店に努める。 作:ライダーGX
「はいはい~皆さん注目! 今回の依頼内容を説明しよう!とっても楽しいお仕事ですよ~!」
営業が終えてその日の夜、リコリコのホールで千束が何故かウキウキ状態な感じでタブレット端末を持って俺達に向かって叫んでいた。
おいおい…一体なんだよ? こいつやたら張り切ってるな?
「おかしな物でも食べた?」
「食べてませーん! 変な事聞かないでよ一輝君」
一輝の言葉に訂正を求める千束、なんだよ、しっかりいつも通りの千束じゃないか。
「一体なんだって言うんだよ?」
「ミズキさんが説明しないのですか? 私…もう読みましたけど」
「今回やたら乗り気なのよ…」
お座敷に座っているたきなとミズキは既に内容を読んでいて、ミズキはつまらなそうにしている。
その様子を見た千束が俺達に声を掛ける。
「ちょいちょいちょい!ちょい!! そこ!私語はしない!そしてそこのリス! 熊ちゃんとゲームしてない?」
「聞いてるよー…」
「こっちも聞いてるどす」
二階の方ではクルミと熊朗がVRゲーム対戦をしていたが、ちゃんと聞いている様だ。
「そして~浩平君!信三君! 時間あったらフルーツパフェ作って?」
「どうしてそうなる?」
「無理だ。今から皆にちゃんこ鍋を作るんだ」
「ええ~~~?」
信三がちゃんこ鍋を作るのを見て千束は少しばかり愕然とする。
その様子に若干呆れながらもミカは言う。
「…千束、説明の時にそれを頼むのは駄目ぞ」
「は~い…」
ミカに注意され、少し気が抜けるも小さく咳払いをした。
「えーと、依頼人は72歳男性日本人、名前は松下さん。過去に妻子を何者かに殺害され、自分も命を狙われた為に、長らくアメリカに避難していた。現在は…筋…き、き…筋」
「筋萎縮性側索硬化症」
千束が読みずらそうにしている所をクルミが変わりに言って、それに俺は頷きながら言う。
「筋萎縮性側索硬化症…ALSか、筋肉が瘦せていく病気…、治療法が無いから大変だな」
「いつの時代も病には勝てないな」
俺が言ったのを斗真が言い、それに釣られる様に千束が言う。
「そう!去年余命宣告を受けた事で、最後に故郷の日本、それも東京を見て回りたいって!」
「観光…ですか?」
たきながそれを聞いて呟く。
「泣ける話でしょう~? それで~まだ命を狙われている可能性がある為、BodyGuardします!」
「発音がカッコつけすぎ」
「いいじゃん!! それと浩平君達にとってリコリコ初のお仕事なの!しっかりと頑張ってね!」
一輝の言葉に千束は反論する中、たきなは気になる事を問う。
「何故狙われているのですか?」
「それがさっぱりなのよ…、大企業の重役だって敵が多すぎるのよ…。その分報酬がたっぷりだから」
「おいおい、狙いはそっちかよ」
力也はミズキの言葉を聞いて呆れていた、実はと言うと俺も呆れている。ミズキの男好きと金の付け目は流石に行き過ぎる…。ちょっとは男の内側をよく見た方が良いと思うな、男はお前が考えてるほどそんなもんじゃないから。
俺が思ってると千束が俺達に言う。
「日本に来てすぐ狙われるとは思えないけどね、行く場所はこっち任せるらしいから、私がバッチリ!プランを考えるから!」
「プランを考える? …逆に不安だ」
「俺もそう思う」
斗真の言葉に俺も頷きながら言う、なんせ千束の考えだからな。
「旅のしおりでも作ろうか?」
「それだ!」
千束がフィンガースナップをしながらクルミのアイデアをすぐに採用する。
その様子に俺は薄ら笑みを浮かばせる。
ちょっとは楽しみかも…。
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そして翌日、リコリコの前に一台の車が止まり、後部ドアから車椅子に乗った男性【松下さん】が降りて来る。
その間に黒服の男性がリコリコのドアを開ける。
「お待ちしてました~。あっ」
千束が挨拶をした際に黒服の男性だった為、間違えたのか言葉が止まる。まあそれは無理ないな。
そして車椅子に乗った松下さんが入って来て、俺達は松下さんの身体を見る。
スーツを着た感じとゴーグルをした状態、更に命を繋げる為の生命維持装置も付いてあることから、松下さんは相当ALSが進行している…。
ただ何でゴーグルをする必要が…?
俺がそう思っていると、ミカが松下さんに言う。
「遠路はるばる来ていただきありがとうございます」
『少し早かったですかね? 楽しみだったもので。後はこの方たちにお任せしますので』
松下さんの一声に黒服の男性はその場を去って行った。
その際千束がしおりを松下さんの方に持っていこうとした時、俺が松下さんの状態に気付いて千束を止める。
「千束、ストップ。データで渡した方がいい」
「え?どうして?」
「あれを見てみな」
斗真の一言に千束は松下さんの状態を見て気づいた。
松下さんはALSが進行している影響で手が動かす事が出来ないんだ、だからゴーグルをしているのだと思う。
「あ…、すいません」
『いえいえ、お気になさらず』
「クルミ。しおりをデータ化に出来るか?」
「待ってろ~」
信三がクルミに言って、クルミがPCを使ってしおりの状態をデータ化している中、松下さんは千束と話していた。
『今じゃ機械で生かされてまして。おかしいでしょう?』
「いえいえ、そんな事無いですよ。私も同じですから、ここに」
っと千束は自分の胸辺りにハートの形をさせて松下さんに見せる。ん…?何だ?
それには俺達も千束の方を見る。
『ピースメーカーですか?』
「いえ、
「は?」
「え?」
「「「「「ん?」」」」」
その言葉を聞いた俺とたきな、斗真達は驚く表情をしてしまう。当然ながらクルミもそれに反応した。
おいおい…どういう事だよ、まさかあいつ…まだ隠していた事が?
『人工心臓ですか』
「あんたのは毛でも生えてんだろうね」
「機械に毛は生えねぇっての!」
千束はミズキの言葉に怒鳴る一方、俺達はお互い顔を見ながら小声で言う。
「おい…これどう言う事だよ?」
「分からない。ただ…千束が言わなかっただけかも知れない」
「隠し事は無しって言わなかったっけ?」
「まだ隠すなんて悲しいどす…」
俺達が話し合ってる中で、一方全く知らないたきなはそれを聞こうとした。
「あの!一体どう言う」
「よし、出来たぞ」
クルミがデータを松下さんのゴーグル内に送信し、それを見て松下さんは感心する。
『おお、これは素晴らしい』
「では東京観光!出発!」
そして出発の時間が来て、千束が松下さんの車椅子を押してリコリコの外に出る。
残された俺達はミカの方を向く。
「あの…さっきの話は?」
「たきなー!行くよー!」
「あっ!はい!」
千束に呼ばれた事にたきなは慌てて追いかける、そんな中で俺達はミカに問うかける。
「おいミカ…」
「浩平はまだいいとして、たきなにも言ってなかったのか?」
「…すまない、私は千束の判断に任せる側なんだ」
おいおいミカ、何でもかんでも千束任せにはよくねぇよ。それじゃあ誤解も生じるぞ?
「おいオッサン」
「後でボクにも教えろよ?」
ミズキはそれに呆れかえり、クルミはその説明を問うのだった。
全く…、ミカも困ったものだ。