クソガキが征くブルーアーカイブ   作:POTROT

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契約、あるいは保険。

 自動ドアから外に出ると、道路にはいつの間にか何台かの軍用車のような、厳しい見た目の車が停まっており、その周囲には結構な数の生徒達が居た。

 制服から判断するに、連邦生徒会とヴァルキューレ警察学校の子達のようだ。

 何やら互いに真剣な顔で話し合っている。

 

「……ふむ」

 

 ……って言うかあそこにいる生徒、公安局長の尾刃(おがた)カンナか。遠目から見てもわかりやすいな。

 原作だとカルバノグの兎編からの登場だが、ゲームが現実となった今では、そんなことは関係ないらしい。

 となると、もしかしたら、カルバノグ2章以降のストーリーの重要キャラクターと、意図せず遭遇する事があったりするのだろうか。

 その事を、少しは意識に留めておく必要がありそうだ。

 

「あ、先生!」

「おう、待たせたな」

 

 そんな事を考えていると、横合いから声がかかった。

 鎮圧を手伝ってくれた四人は、自動ドアの真隣で談笑していたらしい。

 俺が出て来たのを認めると、パタパタと駆け足でこちらの方へやって来る。

 

「先程、リン行政官が何も言わずに帰っていってしまいましたが……タワーの制御権は確保できましたか?」

「ああ、問題ない。バッチリだ」

「そうですか! それはよかったです! これで治安も改善しますね!」

 

 スズミが嬉しさからか俺の手を握り、ブンブンと振る。

 一応これでもかなり鍛えているはずなのだが、肩が持っていかれそうだ。

 流石キヴォトス人、パワーが違うぜ。

 

「……ええ、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻した事を、こちらで確認したわ。最初はどうなることかと思ったけど、何とかなったわね」

「ワカモの足取りが掴めていないことに、一抹の不安は残りますが……私たちの役目ではありませんしね。後は担当者に任せましょう」

「ああ、そうだな」

 

 まぁ、ウチの地下室に居るんですけどね、そのワカモ。

 内心でそんな事を思うが、当然ながら外面にはおくびにも出さない。

 

「お疲れ様でした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

「ああ、お疲れ様だ……と、言いたいところなんだがな」

「おや? 何かありましたか?」

 

 チナツがこてん、と首を傾げる。

 

「いや何。折角の縁だからな。お前らにはシャーレに入部してもらう。つっても名義だけで、特に何をしてもらうってわけでもねぇんだが……こっちの方が都合が良いだろ? 互いにな」

「…………まぁ」

「そう、ですね……」

「……否定は、しません」

 

 俺の問いかけに、生徒達は互いに横目で他校出身の生徒の方を見る。

 彼女らが所属している、ミレニアムサイエンススクール、ゲヘナ学園、トリニティ総合学園は、三大校と呼ばれる、キヴォトス内に数千とある学園の中で特に広い学園自治区を持ち、特に多くの生徒が在籍し、特に強い力を持つ学校だ。

 

 だからこそ、と言うか。悲しい事に、その三つの学校の仲は、決して良いとは言えない。

 特にゲヘナとトリニティなど、何十年、何百年にも渡る、長い抗争の歴史を持っており、その仲は正しく険悪。

 自治区が隣り合っていると言うこともあり、何か一つでもきっかけがあれば、直ぐにでも戦争が起きてしまいそうなくらいである。

 

 さて、そんな中で突如設立された、非常に強い権限を持つ連邦組織。

 そこへ、特定の三大校に所属している生徒だけが入部している、と言う構図は、実際の事情はどうあれ、その他2校の所属生徒達には面白くない。

 思わぬ暴走、思わぬ事態を引き起こす可能性も、考えられなくはないのだ。

 それを防止するために、形だけでも3校それぞれの生徒が入部したと言う事実が欲しい。

 

 幸いな事に、今この場にいるのは風紀委員に、ほぼ風紀委員。そして生徒会役員と来た。

 誰もが各学園に置いて、かなりのネームバリューと程々の権力を持つ生徒であり、スズミはまぁ、特殊な立ち位置だが……彼女もかなりのネームバリューがある事に変わりは無い。

 申し分の無い人材、と言うものだろう。

 

「俺としては今日この場で入部届を書いてもらいたいところだが……まぁ、どうしてもって言うんなら郵送でも構わない。どうする?」

 

 俺がそう聞けば、満場一致でこの場で入部していく、と言う事になった。

 と言っても、多少のサインを書いたり印を押したりするくらいで、あとは学生証をシッテムの箱でピッとすれば直ぐに手続きは完了した。

 ゲームで見たような生徒一覧の画面に、四人の顔写真と名前が表示される。

 

「よし、それじゃあお疲れ様だ。解散して構わないぞ」

 

 シャーレの入り口で、生徒達を見送る。

 

「では、私達はこれで。近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください」

「トリニティに着いた時に連絡してくだされば、いつでもすぐに駆けつけますので!」

「私も、風紀委員長に今回の件を報告に戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ私を訪ねてくださいね」

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかもです。先生、ではまた!」

 

 そう言って、次々と立ち去って行く生徒達。

 彼女達の背中が曲がり角の向こう側に消えて行くのを見届けて、俺は再びシャーレ内部へ戻る。

 

「……さて」

 

 カツン、カツン、と階段を下り、彼女の待つ地下室へ。

 念の為に、地下室に唯一の扉を閉めて、ロックする。

 

「もういいぞ」

 

 未だに毛がはみ出ている掃除ロッカーをノックしながらそう言うと、ロッカーがガタン、と大きく揺れる。

 俺がロッカーから一歩離れると、中からおずおずとワカモが出て来た。

 

「すまん、待たせたか」

「……いえ、滅相もありませんわ。おかげで、幾分か落ち着く事もできました」

 

 ロッカーから出て来たワカモは、既に狐の仮面を外していた。

 美しく整った相貌をほんのりと朱色に染めて、熱の籠った視線をこちらへと向けている。

 

「あー、そうか? それなら良いんだが……」

 

 ほんの一瞬、もしかしたら冷静になって俺への熱が冷めていたらどうするか、なんて不安が脳裏を過ぎったが、しかしその視線を真正面から受け止めて、それはないと断ずる。

 何なら瞳の形がハートに見えるくらいだ。これで冷めていたら詐欺である。

 

「まずは……何だ。有難うワカモ。俺の話を────」

「嗚呼!!」

「ッ!?」

 

 聞こうとしてくれてありがとう。と。

 挨拶がわりにそんな事を言おうとすると、ワカモがいきなり大きな声を上げたので、俺は思わず後退りしてしまう。

 しかし、ワカモの様子を見るに、怒ったわけではなさそうだ。

 それどころか、何とも嬉しそうに頬に手を当ててくねくねしている。

 

「私めに『有難う』などと! 何と勿体ないお言葉を……!」

「あー、うん。喜ぶのは良いんだが……話して良いか……?」

「……ああ、申し訳ありません。嬉しさのあまり、お話の邪魔をしてしまいました……どうぞ、続きをお願いします」

 

 ……成程、これは面倒だな……

 原作の時点で既に分かっていた事だったが、やはり実際にこうして話してみるとよく分かる。

 しかし、こうして好意を表に出してくれる分には、かなり助かる。

 多少ではあるが、話しやすくなった。

 

「その……何だ、単刀直入に言うとだな。お前に俺の護衛……もとい、付き人を頼みたいんだが……どうだ?」

 

 何度も言うが、彼女は優秀である。

 彼女はキヴォトス内でも最高峰の個人戦闘力を誇るのみならず、知略に優れ、隠密性に長け、我の強い不良達を纏め上げるカリスマと指揮能力を持ち、裏方でのサポートにも優れる。

 そんな彼女を確保するためなら、俺はどんな対価をも惜しまないつもりだ。

 

「きちんと報酬は払うし、休日だって設ける。お前が望むのなら億単位の報酬だって……あ?」

 

 ふと、そこまで言って、俺はワカモの様子が変わっている事に気付いた。

 何やら俯いて、プルプルと震えているのだ。表情は前髪で隠れていてよく見えない。

 怒ってはいない、と信じたいが……

 

「……嫌、だったか?」

「めめめ滅相もありませんっ!!」

 

 俺がそう聞くと、慌てたようにワカモが叫んだ。

 

「是非! 是非ともこの私めをあなた様の御側付きに!! 報酬も休暇も要りません!! 24時間365日四六時中! この私があなた様をお守り致します! ですので是非! 是非!!」

 

 そして、俺の足に縋り付くようにしてそう懇願してくる。

 本来なら多分、嬉しい事なのだろうが、正直俺はドン引きしていた。いくら一目惚れとは言え、初対面の────出会って、と言うか、会話してまだ数分も経っていない相手に、ここまでするか? と。

 

 しかし、これでワカモの意思は確認できた事は喜ばしい。

 ワカモは俺に心の底から本気で仕えたがっていて、報酬などいらないと。

 ……ふむ。その気概は買うが……しかし流石に年中無休かつ報酬無しは……前者は歓迎したいが後者はマズい。

 さて、どうしたものか。取り敢えず詳細な契約内容は後で決めるとして……

 

「あー……うん、元よりそうするつもりだったし……まぁ、末長くよろしくと言う事で」

「っ!! ……はい、これからよろしくお願いいたしますわ、あなた様♡」

 

 がっしりと、俺達は手を繋いだ。

 

「嗚呼!! あなた様に手を握っていただけるなど!! 何と言う幸せ!! このワカモ、今後一切この手を洗わないと誓います!!」

「いや普通に洗ってくれ。手くらいいつでも握ってやるから……」

「そんな!! 身に余る幸甚でございます!! このようにお優しくされてしまってはこのワカモ、感涙に咽び泣いてしまいそうです!!」

 

 ……や、喧しい……が、まぁ、取り敢えずこれで確約は取れた。

 彼女を味方に引き入れられたとなれば、色々と話が変わって来る場面が幾つもある。

 たとえ俺がやらかしたとしても、彼女がカバーしてくれるようにすれば、普通にメインストーリーを走るより、圧倒的に楽になるはずだ。

 取り敢えず、すぐにでも正式に契約を結んで、その後は近いうちに起こるであろうアビドス編に向けて彼女と擦り合わせを……ああ、しかし俺にメインストーリーの知識があることはバレないように…………────

 

「さぁ! あなた様! どうぞ! どうぞこの身をご自由にお使い下さい! たとえいかなる命令であってもこのワカモ、全身全霊をかけ、命に変えてでも果たして見せるとお約束いたしましょう!!」

 

 いや本当にうるせぇなマジで。

 やはり画面越しに見るのと、こうして実際に会って話すのとでは大違いだ。

 原作先生もワカモ相手には何だか微妙な対応をしていたが、こうして話してみると先生の気持ちがよくわかる。

 

「……おい、落ち着け」

「はい♡」

「えぇ……?」

 

 俺がワカモを何とか落ち着かせようとすると、まるでパッと画面が切り替わるかの如くワカモは落ち着いた。

 作法的にはここで「うわぁ! 急に落ち着くな!」とでも叫ぶべきだったのだろうが、しかしいざこうしてあまりにも急すぎる落ち着きを見せられると、困惑の声しか出ない。

 何だかコイツとメインストーリーを走る自信が無くなってきた……が、しかしそんなものは今更と言うものである。

 

「あー……まぁ、何だ。今から契約書作るのにちょっと準備するから。ちょっと待ってろよ?」

「はい。畏まりました、あなた様」

 

 そう言って、ワカモは部屋の隅に移動すると、俺の背中へと熱烈な視線を送る。

 ……クソ、本当にコイツの勝手が分からん。

 まぁいい。さっさと準備を進めよう。幸いな事に情報の授業で契約書を作ったことはある。

 PCの設定はまだしていないが、ネットが繋がっていてプリンターもあるので、きっと何とかなるだろう。

 

 と、殆ど何もわかっていない状態から準備を始める。

 しかし、シャーレ地下の設備が思っていた五倍くらい整っていたと言うこともあり、準備自体は1時間とかからずに終わった。

 …………背後からの熱視線がずっと気になりはしたが。

 

「さて」

「はい」

 

 手元のパソコンがプリンターと接続した事を確認して椅子を回し、壁際のワカモの方を見る。

 すると、まるで漫画のようにハートマークが浮かんでいるように見える瞳と目が合った。

 顔は真っ赤で薄らと汗が滲んでおり、その背後では尻尾がバタバタと荒ぶっている。

 少し落ち着いたかと思っていたが、全然そんなことはなかったらしい。滅茶苦茶興奮していた。

 

「…………」

 

 まぁ、理由に関しては見当が付く。

 一目惚れをした相手と、鍵が閉め切られ、窓のひとつもない密室に、2人きり。

 そんなシチュエーションに、彼女は自らの高揚を抑える事が出来ないのだろう。

 ……うん、もう、これでいいや。これに関してはもうどうしようもない。

 諦めよう。

 

「……まぁ、何だ。これから、俺とお前で正式な契約を結ぶ事になるわけだが……何かそちらに要望はあるか。その……どんくらい報酬が欲しいとか、どんくらい休みたいとか」

「そんな! 要望などと!」

 

 俺が取り敢えずと言った風に質問すると、突然ビクリと反応し、頰に手を当ててくねくねと体を捩り始めるワカモ。

 

「このような私の要望を聞いて頂けるなど……嗚呼、なんとお優しいのでしょう! このワカモ、嬉しさの余り昇天してしまいそうです……♡」

「そ、そうか……そりゃあ、良かった…………」

 

 曖昧に頷いて、湯呑みに注いでおいたお茶を啜る。

 ……うーん、何だろう。

 喜んでもらえる分には全然良いし、むしろ好都合でしかないのだが、この微妙に思えてしまう感じは。

 何かこう……様子見のつもりで放ったジャブがものの見事にクリーンヒットしてダウン取っちゃった、と言うか……呆気なさすぎて、素直に喜んで良いものか分からない、と言う感じか。

 しかしまぁ、それでも好都合である事には変わりない……はず。

 

「あー……で? あるのか? 無いのか?」

「……ああ、申し訳ございません。少々取り乱してしまいました。それで、私からの要望でございますが……」

「っ……」

 

 ワカモは少し目を閉じると、そのハート型になった瞳を真っ直ぐに俺へと向けた。

 その目に込められた意志のあまりの強さに、俺は気圧されてしまう。

 

()()()()()。それ以外には何一つとしてございませんわ」

 

 内心で冷や汗をかく俺に、はっきりと、力強く彼女はそう断言した。

 

「……あー、その、心は?」

「私にとって、あなた様のお側にいる事こそが至上の喜び。それ以上の報酬など無く、あなた様のお側に居られない時間など、私にとっては苦痛でしかありません。それ故に、でございます」

「…………そうか」

 

 纏わり付き、絡め取ろうとするような甘ったるい声で語られたそれに、俺はこくりと頷く。

 まぁ、ありがたい話ではあるからだ。

 先生として活動するのなら、このような労働基準法に中指を立てるが如き労働条件など、労働者側から求められたとしても突っぱねて然るべきではあるのだが、しかしここで気をつけねばならないのが『俺に何かがあったら、その時点でキヴォトスが詰む』と言う点である。

 

 ブルーアーカイブの物語は、極めて細い綱渡り。

 ほんの少しのズレが、世界の崩壊に直結する。

 しかし既に、俺は先程の戦いで、生徒達には不信感を抱かれているはずだ。

 となれば、どこかで修正が必要になる。そのために手段は選べない。

 ……まぁ、その中にも絶対に選んではいけない手段もあるが、これは選んでもいい手段だ。

 

「じゃあ、そうだな。年中無休で行こう」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 心底嬉しそうな笑顔でそう言うワカモ。

 本当に心の底から喜んでいると言うのが伝わって来る。

 年中無休を通告されて大喜びって、教育の行き届いた社畜でもしないぞ、普通。

 ……まぁいい。

 

「で? 賃金はどれくらい欲しい?」

「全く必要ありませんわ」

「ん?」

「全く必要ありませんわ」

 

 んー、まぁ、そう来るだろうな、分かってたよ。と、俺は内心で頷く。

 実際、彼女は先程もそんなことを言っていた。

 さて、どうするか……彼女が望んでいなくとも、正当な報酬は払われるべきだ。

 しかし、とは言っても彼女が金なんか要るのか、と言う話でもあるのだよな。

 ふぅむ……ここは……

 

「じゃあ、最低賃金ってことで」

「……もっと少なくしていただいても構わないのですよ?」

「俺の体面的に難しい。一応こんなんでも先生って事になってるからな……いや、先生だからこそ生徒に金を払うってのはあんまり良く無い事なのか……?」

 

 顎に指を当て、首を傾げる()()をする。

 やはり、彼女は最低賃金であっても受け取ろうとしないか。

 ……まぁ、本人がそれを望んでいるならそれでいいだろ、もう。

 

「んー……じゃあ、賃金なしの代わり、俺がお前の望むものを出来る限り提供するって形でどうだ。金が欲しければ金を、武器が欲しければ武器を、権限が欲しければ権限を。何ならずっと俺の側に居たいってんならシャーレに住み込みで働いてm」

「それに致しましょう! ええ、それしかありません!」

 

 仕方が無いと言わんばかりに、俺がワカモにとって都合の良い、と見せかけてあまりに滅茶苦茶な代案を出せば、ワカモは気持ち良いくらいに勢い良く食い付いた。

 

「それであれば例えお食事の時であろうとお休みの時であろうと、片時も離れずあなた様のお側に侍る事が叶いますし、虫を排除するのにも最適でしょう。ええ、まさに最適解というものです。それに、もしご要望でしたらお食事の用意から……と、伽まで! 私にお申し付けくだされば何にでも────」

「あー、OKOK。わかった、わかったから。そうする事にするから。だから落ち着け」

 

 とんでも無い事を言い始めたワカモを宥める。

 ってか伽て。そんな事はさせんよ。いやまぁそれ以外の無茶振りは散々させる事になるんだろうが。

 

「一応確認するが、本当にいいんだよな?」

「はい! 是非!!」

 

 ずい、とワカモがこちらに顔を寄せ、元気に肯定した。

 あまりにも強い想いのこもったその目を見て、ああ、本当に恋って盲目なんだな、とふと思う。

 

 ……しかし、こうも順調に行って改めて思うが、やはり原作知識とは偉大だな。

 知っている、と言うだけで、それは計り知れないアドバンテージになる。

 今回だって、俺が彼女の人物像を知り、彼女の活躍を知っているからこそ、この場が成り立っているのだ。

 まぁ、原作知識があるからと言って実際原作通りに動かせるか、と言われれば首を捻らざるを得ないんだが……っといかんいかん。今はこちらに集中しなくては。

 

「えーっと、じゃあ……年中無休で、シャーレに住み込みで、欲しい物があったら俺がお前に与える。大まかな雇用形態はこんな感じでOK?」

 

 現代社会で言ったらブラックもブラック、超が3つは付くレベルでブラックである。

 しかし、ワカモにとってそんな事はどうでも良いらしい。

 

「……えぇ、異存はありません……あぁ……何と言う幸せ……」

 

 蕩けたようにそう言ったワカモは、もはや完全にトリップしていた。

 頬に手を当て、恍惚とした表情で明後日の方を向いている。

 呼べばすぐにでもこちらへと戻ってくるのだろうが、まぁ、まだこのまま浸らせておこう。

 

「…………それじゃあ、これをベースにして、細かいところ詰めていくかァ……」

 

 と、そうして契約書を作成し、トリップから戻って来たワカモと互いに契約書に調印をすれば、正式に契約成立である。

 

「……さ、これが控えだ。持っておけ」

「……はい」

 

 ワカモに契約書の控えを手渡す。

 彼女はそれを、酷く丁寧に両手で受け取った。

 

「…………………………………これから」

「?」

 

 キョトンとするワカモの目をじぃ、と見つめ、俺は口を開く。

 

「これから、お前には相当な無茶振りをする事もあれば、死ねと命令する事すらあるかもしれない」

「…………」

「それでも決して俺を離れず、裏切らず、ついて来てくれるな?」

 

 ワカモの目から一切目を離す事なく、俺はワカモに問う。

 

「はい、勿論でございます。このワカモ、既にあなた様にこの身の全てを捧げると誓った身。……どうぞ、なんなりと。何の心配も、遠慮もする事無く」

「…………良し」

 

 一先ずは、アビドス。

 そこからだ。




 はい。
 ウチのメインストーリーは基本このワカモと二人で進めて行きます。
 いい感じにオリジナル展開とか交えながら出来るといいなーとか、こう言うのやりたいなーとか思ってますので、続いて欲しいと思ったら是非評価と感想ください。
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