もしも鬼殺隊の中に良心ゼロのいかれポンチがいたら   作:ハッピーセット2人前

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第二話に入りきらなかった補足みたいなもんです。
今回は短めです。

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第ニ話——-裏

『拝啓

  紅葉の折、浦澤殿に置かれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

  この度は、山守正一という白髪の少年を推薦さしていただきたく、文を起こした次第で御座います。

  少年は身内を鬼に殺され、鬼に復讐する道を進むことを決意したようです。

  しかし決意を私に語った少年の心の内は歓喜で満たされていました。

  哀れな少年は人の身でありながら、その心に鬼を宿しています。

  そこで浦澤殿にはどうかこの“鬼”を宿す子を人の道に戻すべく育て上げて頂きたく存じます。

  手前勝手な頼みとは承知しておりますが、何卒ご容赦ください。

  御自愛専一にて精励くださいますよう、お願い申し上げます。

 

 敬具                             

                          悲鳴嶼行冥』

 

 

 

 

 

 

 

 あの泣き虫坊主の悲鳴嶼がガキを遣すと言ってきた。

 しかもたいそうな肩書を持っているらしく、なんでも心のうちに鬼を宿すらしい。

 

 

(コイツはたいそうな奴が来るぞ〜!鍛え甲斐がありそうじゃねえか!)

 

 

 一体どれほどの修羅を宿すのか。

 久方ぶりに弟子を取ることもあって、毎日屋敷の門の前に立って待つほど、いつになく胸を躍らせながら少年の到着を十数日待っていると、ついに少年が現れた。

 

 

『それじゃあ…お言葉に甘えさせていただきます…』

 

 

 飛んだ拍子抜けだった。

 鬼を宿すとまで称された少年は、伝えられた十四の齢よりも幼く見え、人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべる礼儀正しい少年だった。

 老いとは無縁の透き通るような白髪。

 眉上ほどの前髪を額の真ん中より少し右側寄りで分けている。

 

 悲鳴嶼は生まれつき盲目だが、常人が持たぬ心を見透かす『目』を持っている。

 それゆえに悲鳴嶼の言っていることが間違っているとは思わない。

 人を見抜く審美眼だけは誰よりも一級品だからだ。

 

 だが目の前の、山を越え疲れ果て、今にも倒れそうなこの少年が、人の道から外れているとは到底思えなかった。

 

 

 

 …悲鳴嶼の『目』は間違っていなかった。

 彼は—————山守正一の本性を正確に見抜いていた。

 

 目の前で嗚咽することなく大粒の涙を静かに流す彼。

 

 通例である鬼殺隊の目指す理由を聞くという通過儀礼で、彼は最初に嘘を以ってこたえた。

 

 だがわかる。人のふりをするこの擬態するような、空っぽの演技には見覚えがある。

 

 正一に嘘であることを指摘すると、彼は焦り、その後しばらくどうしようかどうこう考えていたようだったが、ついには堪忍して、本音を漏らす。

 

 曰く、その生命の裡の神秘に目を焼かれたのだと、

 曰く、生命の限界、またその全貌を明らかにしたいのだと、

 

 その鬼ですら悍ましいと思えるような血塗られた欲望を漸く気兼ねなくぶつけられる相手がいる、だから鬼殺隊に入りたいのだと。

 

 少年の本性はどこまでも自分身勝手なものだった。

 それこそ、鬼のように。

 悲鳴嶼が『哀れ』と称したのもうなづける。

 彼はその欲望をひたすら隠し続けていたのだ。

 

 だが否定はしない。

 もちろん肯定することもない、が彼の本音を受容する。

 

『——————今からお前は俺の弟子だ、正一』

 

『…え?今…なんて…』

 

 

 正一は合格を言い渡したことに驚き、こちらの正気を疑いながらも、こちらによろしくと言った。

 

 大丈夫だ、正一。

 お前の心は“鬼”にまで堕ちているが、身まで堕としたわけじゃねえ。

 お前は人に戻れる。安心してくれ。

 

 かつて俺がそうだったように、お館様が俺を変えてくれたように。

 お前を“人”に戻してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  

 

 

  

 

  

 

 

 




ネタバレしますけど、この後浦澤さんは正一くんによって“鬼”に戻らされます。
もしかしたらわからせなのかもしれません。
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