「イッーー!!」
読者の皆さんはこの言葉を一度でも聞いたことがあるはずだ。
そう、あの伝説的な特撮番組、「仮面ライダー」に出てくる雑魚戦闘員の…なんだろう?叫び声?掛け声?的な声だ。
「イッーー!!」
まぁ雑魚戦闘員の声自体は時代を重ねる毎に変わり続けているが、一番有名な声はと聞かれたらこの
「イッーー!!」だろう。
そして雑魚戦闘員とは特撮番組においては欠かせない存在だ。それは仮面ライダーでもスーパー戦隊でもそれ以外のものであったとしても変わることは無い。雑魚戦闘員は言わば主役のヒーローを活躍させるため、はたまたヒーローを絶望させ物語を進めるために必要な歯車のような存在なのだ。
「イッーー!!」
え?なんでこんな話をしているのって?それは私も雑魚戦闘員の1人だから。
「イッーー!!」
それはそうと………。
「イッー「皆うるっさぁーーい!!!」えぇーセンも一緒に乗ってくれよー」
セン、とは私の名前だ。由来についてはまた今度。
「別にイッーー!!って叫ぶ練習するのは分かるよ、でもなんで転送装置の中で大合唱してんのって話!あと5分もすれば戦闘になるってのに何呑気にイーイー言ってるの!?」
「「「だって暇だし…」」」
「お黙りッ!!!ちょっとハンチョー、皆が戦闘前なのにふざけ倒してるんですけどどうにかしてくれませんか?」
私はこのカオス極まりない事態を収拾するために雑魚戦闘員歴30年にもなる大ベテランのハンチョー(本名は知ってるが皆ハンチョーと呼んでる)に声をかけた。
「……」
「ハンチョー?どうしたんですか?」
どうしたのだろう?ハンチョーは黙ったまま皆のことを眺める。そして…。
「お前ら………イッーー!!」
「「「イッーー!!」」」
ビシッ!と右腕を斜めに伸ばし切り雑魚戦闘員のポーズをとるハンチョー。そしてハンチョーに追随するようにポーズを決める皆。そしてハンチョーお前もかと思いつつ思いっきりズッコケる私。
「くっ…そうだ、ハンチョーはこの道30年の大ベテラン。つまりこの組織の中で1番多くイッーー!!をしてきたということ。イッーー!!が日常レベルで染み付いてるんだ」
そんなこんなしているうちに転送装置が起動し、私たちを戦場へと転送した。
「あーもう!パッとしないなぁ!!」
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「「「イッーー!!(セン、何をしている!ヒーローの前ではイーオンリーだイー!)」」」
「いー(はいはい分かってますよ)」
「イー!(全員よく聞け!今日の敵は仮面ライダードロウ。奴は絵の具とかインクとかの塗料を武器にしてくるのだがこれが頑固でな!業務用の石鹸では落ちないんだ。よってスーツの洗い直しがめんどくさくなる。と言うか買い換えた方が安いくらいになる。最近ここらの戦闘を任されている若い奴らからどうにかして欲しいという意見が来たのでと俺たちの班が対応することになった!)」
「いー(なるほど)、いーーいー(それはそうとイーだけでよくそんな長文を話せますね)」
「イー!(30年も戦闘員をしていればこれくらい出来るようになるさ!それよりも今回の戦闘はお前の腕にかかっているからな、気合い入れろよ?)」
「いー?(私の腕?)」
「イッー!(ワルアーク随一の雑魚シーフ(盗人のような雑魚戦闘員)として有名なお前の窃盗スキルで奴の変身アイテムを奪ってやれと言ってるんだ)」
「いー!(雑魚シーフってもう少しマシな名前にできなかったんですか!?)いー!(せめて戦闘員シーフ見たいな二つ名っぽいのにできなかったんですか!?)」
「イッー!(ちなみに雑魚シーフは正式に二つ名として受理されているそ!総帥が一番疲れているであろうタイミングでイー語で書いた書類に紛れさして提出した甲斐があったもんだ。ちなみに1ヶ月は変更出来ないからな、気をつけろよ)」
「いー!?(はぁ!?何勝手に人の二つ名決めて申請してるんですか!?しかも総ちゃんに対して不敬!)」
「イッー!(いいんだよ別に、て言うかお前も失礼だろ。実を言うとあいつがオムツしてる時に面倒見てたの俺だしな)」
「いー?(マジですかその話?普通にすごいんですけど…)いー(て言うかイー語って何?)」
「イッーー(俺みたいな古参の奴らが使ってた暗号を改良したものだ。ちなみに文字で表す時は筆圧と伸ばし棒の長さで判断しなければならないから覚えるのはちと難しいぞ)」
「いー(難しいってもんじゃないんですけどそれ…)」
ちなみに読者の皆に言っておくが私たちは戦闘中である。今も仮面ライダードロウから放たれた右ストレートを咄嗟に避けたところだ。
「悪の組織ワルアーク!お前たちはこの俺、仮面ライダードロウが倒してみせる!!」
「イッーー!(お前のような若造に負けるか!負けるとしたらセンの方だ!)」
「いぃぃ?(はぁ!?なら私はハンチョーを盾にしてでも最後まで立ってやりますよ!?)」
「イー!(そんなことはいいから早く奴の変身アイテムその他もろもろを盗れ!俺はお前と違って腰に特大の時限爆弾抱えてんだ!しかも今日は湿布を貼り忘ちまった!)」
「いー!(何やってんですかハンチョー!)いーいーー!(湿布くらい後で貼ってあげますからさっさと装備の使用許可下さいよ!)」
「イー?(装備の使用許可?なにそれ?)」
「いー?(えっ?)」
「イー?(えっ?)」
えっ………。
もしかしてハンチョー今回私が持ってきた装備とそれらの使用許可を申請したことを知らない?
「いー?(えっハンチョー、今回私が申請してた装備とか確認しました?)」
「イー!(いや、していない。お前の二つ名の申請で忙しかったからな!)」
「いっー!?(キレますよ!?)」
「イッー!(ええい、後で何でも奢ってやる!とにかく装備の使用を許可する!さっさと終わらせて帰るぞ!)
「いっいっいーー!(さーいえっさー!)」
ハンチョーの許可ももらい、私はこの日のために用意していた秘密兵器を懐から取り出す。
「何をコソコソと話しているかは知らんが、お前たちはここで終わりだ!赤き猛牛よ、俺と共に敵を打ち破れ!レッドブルライダーキィーーク!!!」
仮面ライダードロウが赤のインクを空中に撒き散らす。そのインクはひとりでに動き出して牛の姿をとりドロウと共に私たちに向けて必殺技。《レッドブルライダーキック》を放った。
「いーー!(この時を待っていた!)いー!(喰らえ!)いぃーーーーー!!!(悪の組織ワルアーク特性アルティメットインクリムーバー!!!)」
説明しよう!アルティメットインクリムーバーとは仮面ライダードロウによって毎度毎度衣服を汚される戦闘員たちと余計な出費に苦しむ財政を担う幹部と新しいアイデアが浮かばずブランク気味だった化学班、そしてたまたま通りかかって助言をした雑魚戦闘員(セン)によって共同開発された対仮面ライダードロウ用の秘密兵器なのだ!
ちなみに強力すぎて人の肌にかかるものなら骨まで見えてしまうくらいに強力な代物だ。取り扱いには最大限の注意を払えよ!
要するに、人にかけては行けませんということだ。
私が放り投げたアルティメットインクリムーバーが弾丸のように真っ直ぐ仮面ライダードロウへと向かっていく。それに対してドロウは既に必殺技を放っている。それにより避けられることなくアルティメットインクリムーバーは仮面ライダードロウに直撃した。
「ギャァァア!?」
アルティメットインクリムーバーの威力は想像を超えていた。まず必殺技を発動した時に現れた赤い猛牛は一瞬で溶けた。その後、仮面ライダードロウの全身にリムーバーがかかったかと思えばドロウがいきなり苦しみ始め変身が解除された。どうやら変身に必要な体の中の成分まで破壊してしまったようだ。せっかくのイケメンが台無しになるくらい泣き叫んでいるが仕方ない。彼は普段温厚な戦闘員の人達や財政担当の幹部を怒らせてしまった、その報いだ。
「……私の窃盗スキル関係なくないですか?」
「…それもそうだな。とりあえず変身アイテムを回収しといてくれ、俺は周りでのびてるアイツらを回収してくる。はぁ帰ったら鍛え直させないとな」
「そういえば皆序盤にぶっ飛ばされて気絶しちゃったんでしたっけ、これベルト部分いらないですよね?」
「あぁ、変身機構のところさえあれば良いらしい」
了解と返事をして仮面ライダードロウの変身アイテムを剥ぎ取る。ついでに財布の中身も有効活用するからと言って頂戴する。これで総ちゃんにお土産でも買って戻ろう。
「変身アイテムは回収出来たな?よし、なら帰るぞ」
「あっ、総ちゃんへのお土産だけ買わせてくれません?」
「……はぁ、15分で戻ってこいよ?」
「ありがとうハンチョー!じゃあ行ってきます!」
「おい待てセン!その格好のまま行くやつがあるか!?せめてコートなり来ていけバカッ!!」
ハンチョーが何か言っているが気にせずに私は街中へと消えていく。
これは特撮の世界で悪の組織の一員として生きる少女の生き様を描いた物語。
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簡単な登場人物紹介
セン 性別 女 年齢 16歳
小さい頃に火事で家族全員を亡くし、燃え尽きた家の前にいたところを戦闘帰りのハンチョーに保護される。それ以来恩を感じており、悪の組織ワルアークに所属していてワルアークの皆を家族のように思っている。本名は別にあるがまだ幼なかったセンは本名を伝えることができなかったこともあり、「戦」闘員からとってセンと名付けられた。セン自身はこの名前をとても気に入っている。
実は転生者だが火事のショックで前世のことをほとんど覚えていない。自分は2度目の人生を歩んでるらしいくらいの感覚。
ハンチョー 性別 男 年齢49
今年で戦闘員歴30年の大ベテラン。若い頃に前の総帥(同じ高校だった)に誘われて悪の組織の一員になった。本人曰く若気の至り。でも後悔はしていないらしい。十数年前にセンを拾った。センの父親代わりでもある。あの後センに湿布を貼ってもらった。それから焼肉を奢って財布が寂しくなった。
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