銀髪ロシアン美少女に転生した元おっさんの話   作:カエモミ

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……すみません。
サブタイでお察しの方もいらっしゃるとは思いますが、今回有希とのデート回ではありません。
中々納得のいくものが書き上げられず、そちらについてはまた完成次第、番外編としてひっそり載せることに致します。
では、少し話は飛びますが5話です。どうぞ


05.政近の好みと谷山さん

 

 

「──なあなあ、これ見ろよ。今週号のグラビア、“ぶるー♡みんぐ”全員集合だぜ」

 

「最近結構テレビでも見るよね。清楚路線なのかと思ってたけど、水着グラビアとかやるんだ?」

 

「メンバー全員揃ってやるのは今回が初みたいだな。お、マジかよ。この子結構着痩せするタイプだったんだな……。──なあ、政近は誰推し?」

 

「いや、正直俺アイドルは全然わからんし……」

 

「そんなおっさんみたいなこと言うなよ……」

 

「ん〜、私は断然この子かな〜。大きさでは一歩劣るけど形が良いよね、形が。ちなみにまさちーはおっぱいは大きさ派? 形派?」

 

「…………いや待て。なんでいるの、お前?」

 

「へ?」

 

 ──昼休み。

 

 隣のクラスである一年B組の教室にて、何やら漫画雑誌のグラビアページを広げながら談笑している政近、坊主くん、爽やかイケメンくんの三人の姿を発見したので自然に混じってみたら、政近にジト目を向けられた。

 

 なんだよぅ……、俺も仲間に入れてくれたっていいじゃんかよぅ。

 

「なんか猥談の気配がしたから私も混ぜてもらおうかなって思って」

 

「痴女なのか?」

 

「あはは、冗談冗談。実は次の授業の教科書忘れちゃってさ〜、アーリャに借りに来たんよ。どこにいるか知らん?」

 

「あ、アーリャ姫ならついさっき弁当食い終わってどこか行きましたけど……」

 

 ……む、そうか。入れ違いだったか。

 

 だが有希は教室にいたし、おそらく生徒会関係の用事というわけではあるまい。

 

 となるとたぶんトイレだな。それか人知れず糖分補給に行ったかのどちらかだ。

 

「そっか〜。じゃ、しばらくここで待たせて貰うね〜。ほら、まるやん。続き続き。早よページ(めく)って?」

 

「あ、はい……!」

 

「どんだけ見たいんだよ……」

 

 と、半眼のまま冷静にツッコむ政近。

 

 フッ、分かってないな。男友達とあーだこーだ駄弁りながら見る水着グラビアは一人で見るのとはまた違った趣深さがあるのだよ。

 

「ほらほら、まさちーもそんな斜に構えてないで、どの子が好きか言ってみ? 性癖晒してみ〜? ん〜?」

 

「……んー。まあ、この中だったらこの子……かな」

 

「へぇ〜、ゆるふわお姉さんタイプか〜。いいねぇ、もしかして異性に対しては結構甘えたいタイプ〜?」

 

「うっせ! そんなんじゃねぇわ!」

 

「──でも政近が選んだ子、どことなく九条先輩に似てない?」

 

「あー、ほんとだ。言われてみれば似てるな」

 

 不意に飛んできた爽やかイケメンくんからのそんな指摘に坊主くんが同意を示す。

 

 ……うーん、まあたしかに、雰囲気だけを見れば似てなくもない、のか?

 

 しかし政近はどこか納得がいかないらしく、まじまじと雑誌の表紙を眺めながら首を傾げていた。

 

「そうかぁ……?」

 

「政近ってああいうタイプが好みだったのか?」

 

「いや別にそういうわけじゃ……。そもそもマーシャさん彼氏持ちだし」

 

「つまり彼氏持ちじゃなかったら狙うんだ?」

 

「なんでそうなる……。だいたい、マーシャさんをそんな目で見たことなんか一度も…………まあ、うん。……付き合いたいとかは一回も思ったことない」

 

【──ケダモノ】

 

「……っ!?」

 

 背後から唐突に浴びせかけられたロシア語に政近がビクンッ!と体を震わせる。

 

 どうやら、話しているうちにいつの間にか戻ってきていたらしい。

 

 見ると、俺と政近のすぐ後ろには極寒の冷気を纏ったアリサが、これ以上ないほどに侮蔑に満ちた表情を浮かべながら仁王立ちしており、政近のことをじっと、まるでゴミでも見るような目で見下ろしていた。

 

 そのあまりの迫力に、政近だけでなく坊主くんや爽やかイケメンくんまでも気圧されたように縮こまっている。

 

「……久世君? 仮にも生徒会役員ともあろう者が、学園にこんなものを持ち込んでいいと思っているの? というか、人の妹になんてもの見せているのよ」

 

「いや、厳密には持ち込んだのは(たけし)で、ですね……。リーナのほうも勝手に見てきただけというか……」

 

「なら注意なさい。それとリーナは用がないならさっさと自分のクラスに帰りなさい」

 

「え〜、せっかく遊びに来たのにアーリャ冷た〜い」

 

 バッサリとそう言い捨てて、アリサはムスッとした表情のまま自らの席へと腰を下ろす。

 

 ……きっと政近が他の女のことを話していたのがよっぽど気に食わなかったのだろうな。

 

 相変わらず乙女な姉である。

 

「……じゃ、じゃあアレだ政近。周防さんとは付き合いたいとか思わんの?」

 

「……は? 有希と?」

 

 瞬間、ピクッとアリサの肩が震えた。

 

 おっとこれは……完全に聞き耳を立てているご様子ですね。……まあ、そりゃ気になるか。

 

 よし。面白そうだしここはちょっと煽ってみるとしよう。

 

「あ〜、それ私も気になってたんだよね〜。実際ゆきりんとはどんな感じなん? ちゅーぐらいしてんの?」

 

「いやする訳ねーだろ。……あのなあ、何を誤解してるのか知らんが、俺と有希がそんな関係になるとか絶対にあり得ないからな?」

 

「へぇ〜? なんで?」

 

「なんでって……。とにかく、付き合うとしたらもっと気安い感じで、友達感覚で付き合える子がいいっていうか……」

 

「ふんふん、それで〜?」

 

「あとはそうだな、やっぱり笑顔が可愛い女の子が良いな」

 

 ──ピシッ……。

 

 何やら隣のほうで空気の凍る音がした。

 

 ……いや、大丈夫だから。君の笑顔も充分可愛いからね? 甘い物を幸せそうに頬張ってる時の顔とか天使そのものだから。……ってなんで心の中でこんな必死にフォローしてるんだ、俺?

 

「……なるほどね〜。友達感覚で付き合える気安い子で〜、笑顔が可愛い女の子かぁ。──え、私じゃん」

 

「チガウヨ?」

 

「も〜、なんだよまさちー、そういうことなら早く言えよ〜。──ま、普通に振るんだけどね?」

 

「告ってもないのに振られたんだが!?」

 

「ま、まあでも。たしかに笑顔は大事だよね。目が笑わない人ってやっぱりどこか親しみにくく感じるし」

 

「それな! やっぱ普段の態度って大事だよな!」

 

「……………………」

 

 政近フレンズが続けざまに放った容赦のない言葉に、アリサの背中がみるみる縮んでいく。

 

 ……やべ、なんか段々可哀想に思えてきたんだけど。

 

 ちょっとだけフォローしとくか? ──と、俺がそんな風に考えていたところで。

 

「(おいお前ら、少しは気を遣え……! アーリャが傷つくだろうが……!)」

 

 どうやら政近もしっかりアリサのほうに気を配ってくれていたらしく、友人二人に小声で詰め寄りながら、何とかフォローするように促していた。

 

 よしいいぞ政近。そういえば君、今度の選挙戦でアリサとペア組むことになったらしいもんな。

 

 相方のメンタルケアは怠らない、パートナーの鑑である。

 

【いいもん……友達いるから、別にいいもん】

 

 そしてお隣のアリサさんは完全に拗ねていた。

 

 おい早くなんとかしろ男ども。

 

「(とにかくフォローすればいいんだな?)」

 

「(毅……出来るのか?)」

 

「(任せろ)」

 

 ……おっ、そうこうしているうちにどうやらこちらも作戦会議が終わったらしい。

 

 何やら自信満々な様子の坊主くんがその場にガタッと立ち上がりながら、得意げに胸を張る。

 

 そして高らかに声を上げながら──。

 

「──まあでも、アーリャ姫ぐらい美少女ならそんなこと気になんないけどな!!」

 

「「下手くそか!!」」

 

 ──下手くそか!!

 

 思わず心の中で、俺まで一緒になって叫んでいた。

 

 駄目だこいつ、デリカシーの欠片も()ぇ……。

 

「──ふぅん、そう……私のことそんな風に見てたの? ごめんなさいね? 顔しか取り柄のない無愛想で可愛げのない女で」

 

「あ、いや、そこまでは……」

 

「やっぱりこれ、没収しておこうかしら」

 

「え!? いや、それは……」

 

「出しなさい」

 

「ハイ……」

 

 研ぎ澄まされた抜き身の刃のようなアリサの眼光に負け、坊主くんは渋々雑誌を差し出した。

 

 うん……何というか、ドンマイ、坊主くん。

 

 ……というか、とてもアリサに教科書貸してとか言い出せる雰囲気じゃなくなってしまったんだが、どうしたものか。

 

 はぁ……。こうなったら仕方がない。

 

「じゃ、まるやん、没収ついでに現国の教科書借りていい?」

 

「あ、え? は、はい……俺なんかのでよければどぞっす」

 

「ん。ありがとね〜」

 

 ──こうして、何となく居た堪れなくなった俺は、さっさと坊主くんに教科書だけ借りると、逃げるように1−Bの教室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢♢♢

 

 

 ……翌日の昼休み。

 

「──九条アリサさん。少しよろしいでしょうか」

 

「ん〜?」

 

 一人で廊下を歩いていたら不意に背後からそんな風に声をかけられ、反射的に振り返る。

 

 見ると、そこに立っていたのは見るからに堅物委員長キャラといった雰囲気の黒髪眼鏡女子だった。

 

 ……たぶんこれが初対面だろう。少なくとも俺のほうには全く見覚えがない。

 

 というかつい振り返ってしまったが、この子いま俺のことアリサって呼んでたよな? てことはアリサの知り合いなのか……?

 

「はじめまして。わたしはF組の谷山(たにやま)沙也加(さやか)と申します。少し、お時間を頂けますか?」

 

 その言葉自体はとても礼儀正しく、丁寧なものだったが、けれど──。

 

「─────」

 

 ……彼女の瞳の奥には、こちらに対する明確な敵意が宿っていた。

 

 それに“はじめまして”ってことは、別にアリサの知り合いという訳でもないんだよな……?

 

 だったらどうしてこんな目を……。いや、谷山沙也加って名前はどこかで聞いた覚えが……。

 

「……あ〜、ごめん。私、アリサじゃなくて妹のアリナのほうなんだけど」

 

「え……? あ、すみません。見た目の特徴が似ていたものでてっきり……。そういえば双子という話でしたね」

 

「ん。そうそう〜。で、うちの姉になんか用事〜? もし良かったら私のほうから伝えとくけど〜?」

 

「いえ。これは本人に直接話さなければ意味がない事ですので。人違いをしてしまったことについては謝罪いたします。──では、わたしはこれで」

 

「──ちょっと待った」

 

 くるりと(きびす)を返して立ち去ろうとする沙也加の肩に、軽く手を置きながら呼び止める。

 

 振り返った沙也加は、「何か?」と困惑気味な表情を浮かべていた。

 

 そこに先程の敵意はなく、やはりアレがアリサ個人に向けられたものであったことを改めて確信する。

 

「……さすがにさ、あんな敵意剥き出しの目を向けてくるような人を、大事な姉の元に送り出す訳にはいかないんだよね〜。──なにか事情があるんなら話してもらえないかな?」

 

「あなたには関係のないことかと思いますが?」

 

「それを決めるのは私。……ま、いいから話してみなよ。もしかしたら何か誤解があるのかもしれないしさ」

 

「誤解……ですか。──いいでしょう。姉を想うその気持ちに免じて話してさしあげます。あなたにわたしのこの心情が理解できるかはわかりませんが」

 

 ……そうして沙也加は語った。

 

 自らの思いの丈を淡々と、時に感情も交えながらつらつらと俺に語り聞かせた。

 

 ……で、そんな彼女の主張を要約するとこうだ。

 

 

 ──“久世政近のペアは周防有希以外にあり得ない”。

 

 

 ……うん。さすがにこれは少し端折(はしょ)りすぎたかもしれない。

 

 だけど彼女の言い分をまとめると本当にこんな感じなのだ。

 

 沙也加は中等部の頃に生徒会に所属しており、政近や有希とはその頃から同じ生徒会メンバーとして時に協力し、また選挙戦の際には最後まで生徒会長の座を懸けて熾烈な争いを繰り広げた、()わば戦友にしてライバルの関係にあった。

 

 最終的に沙也加は二人に敗れてしまったが、それでも周防有希と久世政近の唯一無二の信頼関係を目の当たりにした彼女は、その敗北も素直に受け止めることができた。

 

 ……けれど、次の生徒会長選挙で久世政近が組むのは周防有希ではなく、ぽっと出の外部編入生の九条アリサだという。

 

 そんなもの到底許せるものではない。自分は周防有希と久世政近のペアしか認めない。

 

 一言文句を言ってやらなければ気がすまない。

 

 ……と。

 

 どうやらそういう事情であるらしいのだ。

 

 ……うん。ハッキリと言おう。

 

 

 ──コイツただの政近×有希推しの強火カプ厨じゃねぇか……!!

 

 

 ……要は政近が有希以外の相手とペアを組むのは解釈違い、その逆もまた然り、というやつで。

 

 うーん、これは……どうしたもんかなぁ……。

 

「ええっとまず、私も二人がペアを組んで次の生徒会長選に挑むってことは知ってるよ? 私、ゆきり──有希さんとも仲良いし、本人からも直接聞いたんだけど、政近くんも有希さんも今回のペアの件に関してはお互いに既に納得済みらしいんだよね。それについてはわかってもらえる?」

 

「仮にそうだとしても、そんなの公式が勝手に言っているだけでしょう?」

 

「公式とか言っちゃったよこの人……」

 

 そのワードが出てきたらもうオタク確定なんだよなぁ……。

 

 ……なるほど。これはまたアリサも、面倒くさそうなのに目を付けられたもんだ。

 

「……わかった。そこまで意思が固いんなら仕方ない。同じオタクとして、たしかに公式の解釈違いは由々しき問題ではあるもんね」

 

「いえ、わたしは別にオタクというわけでは……」

 

「なら攻めの対義語は?」

 

「受け。……はっ!」

 

「条件反射でそれが出てくる時点でもうオタクなんよ……」

 

 ちなみに攻めの対義語は一般人は普通は“守り”と答える。これはオタク──主に腐女子をあぶり出す有名なコピペなのだが、まさかこうも簡単に引っかかるとは……。

 

「……ま、これもアーリャにとっては試練の一つなのかもだし、いいよ、そういうことなら存分に白黒つけてきな。──ただし、陰湿なやり方には頼らず、あくまで正々堂々とね?」

 

「そんなこと、あなたに言われるまでもありません」

 

 くいっ、と指で眼鏡を押し上げながら沙也加は、話は終わりだ、と言わんばかりにそう言い切ると、その場で一礼しつつ俺に背を向けて歩き出した。

 

 …………。

 

 ……一応、こっそり後を追ってみるか。万が一喧嘩みたいなことになったら仲裁に入らないとだし。

 

 

 

 

 

 …………そしてこの後、予告した通りに沙也加はアリサへと喧嘩を売り、政近も巻き込んで学生議会による直接対決にまで発展したのだが、見事アリサ&政近ペアは沙也加陣営を降し、学生議会における初の勝ち星を飾る結果となったのだった。

 

 

 ……うん。

 

 とりあえず愚痴ぐらいなら聞くから、谷山さんは泣いていい。

 

 

 

 

 

 

 

 






……というわけで五話でした。
たいへんお待たせしてしまって申し訳ないです。
生徒会、選挙戦関係の話は基本的にスキップ予定になりますので、なんか一気に話が飛んだ感はありますが、一応時系列的にはまだ原作本編開始してから数日の間に起こった出来事なんですよね。

……本当は有希とのデート回も書き上げたかったのですが、何度書き直してもうまくいかず、このまま更新を止めてエタるよりは先に進めたほうがいいかな……?と判断しましたので今回はこの形になりました。
今後は変に期待させてしまうのも申し訳ないので、あとがきで次回のことについてはなるべく触れないようにしたほうがいいかもしれませんね……。

……では、次回どうなるかはわかりませんが、今後とも何卒よろしくお願い致します。
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