銀髪ロシアン美少女に転生した元おっさんの話   作:カエモミ

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07.夏休み。姉妹で水着を買いに行く話

 

 

「──わぁ〜、あの服可愛い!」

 

「おっ、ほんとだねぇ〜。──でもねマーシャ? 今日は別の物を買いに来たんでしょ? ほら、水着屋さんはこっちだよ〜」

 

「えぇ〜、ちょっとだけ、ちょっと見るだけだから〜!」

 

「そう言ってマーシャのちょっとはいつも全然ちょっとじゃ終わらないじゃない。少しは付き合う方の身にもなって」

 

「むぅ〜! リーナちゃんもアーリャちゃんも冷たい〜!」

 

 

 ──一学期の終業式も終わり、夏休みに入ってしばらくが経ったある日のこと。

 

 今日は姉二人に誘われ、姉妹三人で水着を買いに来ていた。

 

 場所は普段からよく利用している、家の最寄り駅から十五分ほど移動したところにある大型商業施設。

 

 その中でも女性向けのファッションブランドショップが数多く並んでいるフロアーまで上がると、早速マリヤが目移りし始めたので、アリサと二人、そんな姉の暴走を慣れた動作で制止する。

 

「……にしてもほんとに良かったのかな〜? 今度の生徒会の合宿……だっけ? それに部外者の私まで参加させて貰うことになっちゃって」

 

「大丈夫よ〜。合宿って言っても実際はただの親睦旅行みたいなものだし、他のみんなもリーナちゃんなら良いよ〜って言ってくれたんだから」

 

「まあ、今の生徒会メンバーは会長と副会長以外はみんなリーナとは顔見知りだものね。それに、合宿の立案者である会長も快く承諾してくださったのだし、特に問題はないんじゃないかしら」

 

「ええ〜と、たしか場所は会長のお祖父(じい)さんの持ち家で、プライベートビーチ付きの別荘って話だっけ」

 

 ……この夏休みシーズン真っ只中に人混みも気にせず海水浴が楽しめるだなんて、なんとも贅沢な話だ。

 

 ほんと、今回俺の同行を提案してくれたマリヤや、それを受け入れてくれた生徒会の面々に感謝しないとな。

 

 夏休みにプライベートビーチ付きの別荘でみんなで合宿とか、なんだか部活ものの青春アニメの海回みたいでとてもわくわくする。

 

 ──で。今日はそんな合宿を前に、着ていく水着が無い! というアリサの提案でこうして三人で新しい水着を買いにやってきたわけだが……さっきからマリヤが目についた店に片っ端から興味を示すせいで一向に先へ進まない。

 

 それでもなんとかマリヤの手をアリサと二人がかりでぐいぐい引っ張りながら、俺たちはようやく目当ての水着専門店の前へと辿り着く。

 

 ……ふぅ。まったく、長い道のりだったぜ。  

 

「わぁ〜! 可愛い水着がいっぱいね〜。二人ともどんなのにするの?」

 

「ん〜、私はやっぱりとにかくウケが狙えるのがいいかな。せっかくのプライベートビーチなんだし、ある程度公序良俗に反した格好でも許されると思うんだよね。ちなみにマーシャは牛耳カチューシャにホルスタイン柄の眼帯ビキニとか似合いそう。アーリャはシンプルに腰エプロン付きの黒メイドビキニかな〜」

 

「ごめんねリーナちゃん? お姉ちゃんリーナちゃんが何を言っているのか全然わからなくて……」

 

「聞かなくていいわよマーシャ。どうせまたバカなことを口走っているだけだから」

 

 ……フッ。さすがはアリサ、俺の扱いをよくわかっているじゃないか。

 

 まあ今言ったような水着を揃えるならこういう普通の水着屋じゃなくて、ちゃんとしたコスプレ専門店とかに行かないとそもそも置いてすらないんだけどね。

 

「仕方ない……。おとなしく普通の水着探すかぁ」

 

「むしろ普通じゃないものを選択肢に入れないで欲しいんだけど」

 

「あ、これなんてどうかしら? アーリャちゃんならこういう大人っぽいのもきっと似合うと思うの」

 

 そう言ってマリヤが手に取ったのはやや布面積の少ない、シンプルなデザインの黒ビキニだった。奇しくも発想がちょっとだけ俺と被っていた。まさかこんなところでマリヤと姉妹を感じる日が来ようとは……。

 

「……これは、少し露出度が高過ぎない?」

 

「え〜、そうかしら? だいたいこんなものだと思うけど。気になるなら、ああいうワンピースタイプのもあるわよ?」

 

「……あれも、脚が見えちゃうじゃない」

 

「…………脚?」

 

 アリサの返答にマリヤが一瞬なにを言われたのかわからない、といった様子で目を丸くする。

 

 逆に脚が見えない水着とはいったい……。そんなのウエットスーツぐらいしか無くないか……?

 

「……あのね、アーリャちゃん? 水着で脚が見えるのは普通のことだと思うの」

 

「ダメよ。学校のプールと違って男子もいるのだから、普段見えないような場所は当然隠すべきだわ。胸やお腹はもちろん、脚も太ももあたりまでは見えないようにしないと」

 

「アーリャちゃんは海女(あま)さんになりたいの……?」

 

「……うん、私もさすがにそれは気にしすぎだと思う。せっかくだし普通に可愛いの着なよ」

 

「…………で、でも」

 

 マリヤから手渡された黒ビキニをじっと睨むように見つめながら、一向に納得がいかない様子のアリサ。

 

 ……う〜む、これは。とても一筋縄ではいきそうにないな。

 

「アーリャちゃん……お姉ちゃん、アーリャちゃんの身持ちが固いのはとてもいいことだと思うけど、それにしたって限度があると思うの」

 

「……けど、プライベートビーチとはいえ政近君や会長の目もあるんだし」

 

「大丈夫よ、会長は茅咲ちゃん以外に興味ないし、他の子には一切見向きもしないから。それに、久世君になら見られても平気でしょう?」

 

「べ、別に平気って訳じゃ……」

 

「……まあ、アーリャがそこまで言うんなら止めないけどさ。でも、合宿にはゆきりんやあやのんだって来るわけでしょ? いいの? きっと二人ともすっごい可愛い水着とか着てくるよ? そうなったらまさちーの視線も二人に取られちゃうんじゃない?」

 

「…………っ!」

 

 俺が挑発的な笑みを浮かべながらそう言うと、アリサはそこで初めて対抗意識に火が点いたように真剣な表情を見せる。

 

 ……よし。どうやら少しは乗り気になったようだな。きっと色んな意味でライバルである有希の名前を出したのが効いたのだろう。

 

「……とりあえずこれ、着てみようかしら」

 

「──お客様。失礼ながらそちらの水着はお客様には少々サイズが小さいかと。よろしければ、こちらのもうワンサイズ上のものをオススメ致します」

 

「……ッ!?」

 

 アリサがぽつりとそんな決意を固めながら言葉を漏らしたと同時、まるでタイミングでも見計らっていたかのようにスッとどこからともなく、黒髪眼鏡でやたらときっちりしてそうな印象を受ける一人の女性店員が姿を見せた。

 

 そして店員さんのその言葉に、マリヤは「え?」と驚いたようにアリサの胸元を見やる。

 

「アーリャちゃん……もしかして、また大きくなったの? ということはリーナちゃんも?」

 

「……あー、うん。まあ多少は」

 

 多少と言いつつ実はアリサも俺もバストサイズがワンカップほどアップしていたりするのだが……これも母由来の巨乳遺伝子が()せる(わざ)か……。

 

「な、なによ……マーシャだって、人のこと言えないでしょ?」

 

「ええっと、うん……それはそうなんだけど、やっぱりお母さんの料理が原因なのかしら。全然成長が止まらないのよね〜」

 

 言いながらマリヤは自分の胸元に視線を落とし、困ったように笑う。

 

「二人も、覚悟しておいたほうがいいわよ?」

 

「何をよ……というか、こんなところでする話じゃないでしょ!」

 

 うん。それはそう。

 

 ……というか、マリヤですらまだ成長途中とかほんとどうなってんだようちの家系。

 

「お客様。よろしければあちらでご試着を」

 

 そして何事もなかったかのように淡々と自らの業務をこなす女性店員さん。さすがはプロである。

 

 そのまま、有無を言わさぬ迫力でゴリ押ししてくる店員さんの圧に抗えず、アリサは半ば強引に試着室へと連行されていく。

 

「どうする? アーリャが着替えてる間、私たちも水着選んどく?」

 

「そうねぇ〜。あ、この水着可愛い! わたしこれにしようかしら〜!」

 

「へぇ、良いんじゃない? マーシャに似合いそう」

 

 マリヤが手に取ったのは胸元の中央が網目状の紐で繋がっているだけの、所謂(いわゆる)フロントレースアップと呼ばれるタイプの白ビキニだった。

 

 二の腕のあたりにフリルのあしらわれた短い袖なんかも付いていてとても可愛らしい。

 

 ……ただ、胸の真ん中がすっぽり開いていることもあって、これをマリヤが着るとなると視覚的な刺激がもの凄いことになりそうだな。上から下まで谷間が丸見えじゃねぇか……。

 

「リーナちゃんはどういうのにするの?」

 

「ん〜、私は──」

 

 ──と、そんな風にきゃっきゃうふふとマリヤとの水着選びに興じること数分。

 

「お客様。お連れ様のご試着が終わりましたので、よければ感想を頂けますでしょうか?」

 

「あ、は〜い」

 

 店員さんに呼ばれたので、マリヤと共に試着室の前へと移動する。

 

 さて、どんな仕上がりになったかな、っと……。

 

「おーいアーリャ〜、開けるよ〜?」

 

「え、ええ……」

 

 本人の了承も得たのでシャッ、と試着室のカーテンを開け放つ。

 

 すると、そこには──。

 

「……どうかしら? やっぱりちょっと肌の露出が激しい気が……」

 

 布地面積の少ないシンプルな黒ビキニを纏ったアリサが、もじもじと居心地悪そうに体を揺らしながらじっとこちらの反応を窺っていた。

 

 お、おう……これは。中々の破壊力だな……。

 

「わぁ〜! アーリャちゃん可愛い!」

 

「うん。普通に似合ってるんじゃないかな」

 

「……そ、そう? でも、やっぱりこんなの下着より肌が出てるし……」

 

「でしたらお客様。こちらなどいかがでしょう? 」

 

「ん、これなら、まあ……いいかも」

 

 アリサがあまり乗り気ではないと見るや、すかさず新しい水着を手渡す女性店員。

 

 新しく差し出されたのは青地に白の水玉模様の入った可愛らしいデザインのフリルビキニで、今アリサが身に着けているものより布面積も少しだけ増えていた。

 

 ここにきて初めての好感触を見せたアリサに、マリヤもここが攻め時だと言わんばかりに後押しする。

 

「うんうん、お姉ちゃんもその水着すっごく良いと思うなぁ」

 

「でも、脚が……」

 

「でしたら、こちらのパレオで隠すというのはいかがでしょう。こちら今セットでご購入頂きますと、特別にここまでサービスさせていただきますが」

 

「えっ、こんなに安く……!?」

 

 と、まるで深夜によくやっているテレビの通販番組みたいなノリで割引金額を提示され、アリサがこれまた百点の反応で驚愕に目を見開く。いやピュアすぎなんよ……。

 

「──どう、かしら……?」

 

 店員さんに言われるがまま新しい水着に着替え直したアリサが、訊きながらも若干照れたようにぎこちない動作で小首を傾げる。

 

 ……なるほど。パレオがあるとスリットのところから太ももがチラっと見えて逆に良いな。可愛らしいデザインの割にちょっと大人っぽさも出るし。

 

「と〜っても可愛いわよ! アーリャちゃん!」

 

「うん、良いね。やっぱりアーリャにはこれぐらいおとなしめのほうが合ってるかも」

 

「そ、そう。じゃあこれにするわ」

 

 マリヤと俺のお墨付きも得られたことで、割とすんなりと購入を決めたアリサ。

 

 ……これであと水着が決まっていないのは俺だけか。

 

「あの、これ同じサイズで色違いとかあります?」

 

「はい。カラーバリエーションとして青と白の比率が反転したものがございますが、そちらもパレオとセットでよろしいですか?」

 

「そうですね、じゃあそれでお願いします」

 

「かしこまりました。すぐに裏からお持ち致しますので少々お待ちくださいませ」

 

 言い終わるや、店員さんはその場でペコリと一礼するときびきびと足早に奥のバックヤードへと消えていった。

 

 その背中を見送りながらアリサが怪訝そうな顔つきで俺に訊ねる。

 

「いいの? 随分と適当に決めたみたいだけど」

 

「ま、私は別になんでもいいからね〜。それにアーリャがそんだけ似合ってるんだから、たぶん私にも似合うでしょ」

 

「……ふ〜ん。そ」

 

 ぶっきらぼうな口調でそう応じ、アリサは試着室のカーテンを閉めて元の服に着替え直す。

 

 そんなアリサの様子を見て、マリヤが隣でくすりと笑みを漏らした。

 

「ふふっ。アーリャちゃん嬉しそう」

 

「だねぇ〜。なんだかんだ、アーリャも結構シスコンだから」

 

 ──と、このように。

 

 無事に水着選びも終わり、来週の生徒会合宿に向け着々と準備を進めていく俺たちなのだった。

 

 

 

 

 

 

 






……というわけでまた大変お待たせ致しました、7話でした。
これで完全にアニメの範囲を超えてしまったわけですが、アニメ勢の方はこれ以降の話はぜひ、原作をご一読の上、読み進めて頂くことをおすすめ致します。

では、また次回もよろしくお願い致します。
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