魔石生物 ーMagic Stone Creature-   作:御坂まさき

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VSドラゴン

 制限時間は5分間。

 

 しかし陽太は、耐え切るのではなく、ドラゴンを倒すつもりでここにいる。

 

 そのため、パートナーの選択肢を迫られた時、選んだのはシロだった。

 

 色は赤。

 

 つまりタイプは炎系だろう。

 

 クロで炎に対して相性が悪いというか、相性が同じ。しかしシロなら相性が良い。

 

 迫り来るドラゴンに対して、陽太はそのまま正面から向かい合う。

 

 それは攻撃を真っ向から受けるつもりではなく、

 

「“流水(ストリーム)”」

 

 迎撃の為である。

 陽太の頭上を旋回していたシロは、陽太の“流水(ストリーム)”の呟きと共にホバリングの体勢に移る。

 

 するとシロの羽が青く輝き、シロが羽ばたく度に空中にはいくつもの水の玉が生み出されていく。

 

「ホォウ!」

 

 シロが一鳴(ひとな)きすると、それは水鉄砲のように発射され、ドラゴンに命中する。

 

 が、たかだか水である。

 

 その水の勢いではドラゴンを倒すどころが、勢いを殺すこともできない。

 

 ドラゴンはその攻撃を一切気にも止めず、陽太に真っ直ぐ直進する。

 

 しかし陽太はそのドラゴンの前進を気にも止めずに、その場を動かず盾を構えたまま向かい合った。

 

 陽太に手が届きそうな位置に入り、ドラゴンはその鋭い鉤爪を振り上げるが

 

「“氷結(フリーズ)”」

 

 陽太の一言により、その動きが鈍くなり、そして止まった。

 

 いや、止められたというのが正しい。

 

 ドラゴンの身体は、瞬く間に凍っていった。

 

 ドラゴンは動かぬ身体で、目線を陽太の頭上のシロに送る。

 

「ホォ」

 

 シロのいる周りは空気中の水蒸気が冷やされ、白い霧を発生させていた。つまり、それだけそこが寒いと言うことを現している。

 

 これが陽太の逃げなかった理由。

 

 シロの能力を確認し、訓練し、得た成果の一つ。

 

 相手を“流水(ストリーム)”で牽制し、そうして濡れた相手を“氷結(フリーズ)”で凍らせて動きを止める。

 

 初見殺しの必殺技である。

 

「おぉ……!水系を操るのは予測していたけど、液体に固体まで操るのか…しかもこの一瞬で。凄まじい進化を遂げたんだね、シロくんは」

 

 霧島は感動で心震えたように、声も震わしながら言った。

 

 シロの進化は体格的な成長はほぼない。クロのように進化と呼べるように姿を変えることはなかった。

 

 シロの進化の真価はその能力にある。

 

 能力一点特化進化、と言っても過言ではないその進化はしかし、驚異的な能力を誇る。

 

 青系の能力は水や氷の能力が多い。そして基本はそのどちらかで、シロのように両方使える魔石生物は滅多にいない。それくらい、稀有な才能であった。

 

 陽太の肩に降り立ったシロは、ホホゥと胸を膨らませて誇らしげだ。

 

 陽太も目の前の脅威に緊張していたのだろう。大きめのため息をつく。

 

――が

「けど、僕のパートナーを舐めてもらっては困るなぁ」

 

 振りかぶったその腕は、パキリと氷が砕ける音共に振り下ろされる――!

 

 それを陽太はバックステップを取ることで難なく躱す。

 

「ま、そんなうまくいきっこないよなー」

「ほー」

 

 陽太は半ば本気でこれで白星を貰うつもりだったが、そう簡単にことが運ぶほど甘くはない。しかし、ダメだとは思いつつも期待していたのは事実だ。

 

「グォォォォ!!」

 

 ドラゴンが叫ぶ。

 

 陽太はシロと苦笑いを交わし、陽太は盾を構え、シロは羽を広げて飛び出す準備をする。

 

 本来の霧島の授業目的に戻るだけだ。盾術を使い、攻撃をいなし続ける。パートナーと協力しながら。

 

 これが、“魔石狩り”のスタンダードな戦闘方法である。

 

「好きに動け、シロ。フォローは任せる」

「ホッ!」

 

 シロが肩から飛び出すように羽ばたくと同時に、ドラゴンからの攻撃が来る。

 

 陽太の視界の前方は、盾で見えない。

 

 本来であれば。

 

 しかし、陽太の視界にはNWの補正により盾が透明になって見えていて、ドラゴンをその目にしっかりと捉えている。

 

 斜めから振り下ろされる鉤爪を、陽太はいなす様に(はじ)く。

 

 右斜めから、上から、正面から。

 

 立て続けに振るわれる鉤爪を、陽太は衝撃を和らげるように上手に盾を使って弾く。

 弾く。

 弾く。

 

 しかしその攻撃は、少しずつ力を増して行く。陽太の力量を測るかのように。

 

 ガキン!

 

 少しズレた位置で攻撃を受けてしまい、陽太の腕は軽い痺れを感じた。

 

 もし今の攻撃を真正面からいなす事もなく受け止めたら、盾ごと吹き飛ばされるだろう。

 

 その恐怖に陽太の足が一瞬すくむ。

 

 その弱気を隙を見てとられたか、ドラゴンは大きく振りかぶりもう一本の腕を真横から繰り出してきた。

 

「――!!」

 

 反射的に盾を真横に構え、AIのアシストでその衝撃が来るジャストタイミングで盾を若干後ろに引くと共に陽太も後方にジャンプをする。

 

――バギィン!

 

 盾が重い音を出すと同時に、陽太はそのまま数メートル以上も真横に吹き飛ばされる。

ズザーッと地面を擦りながら、なんとかうまく着地が出来た陽太だが、しかし体勢を崩して膝を突いてしまう。

 

 その隙をドラゴンは許してくれない。

 

 ドラゴンの口の中に炎がバチバチと弾ける。

 

 炎の攻撃が来る――!

 

 咄嗟に陽太は盾を構えるが、ドラゴンのその一瞬の隙を、シロも見逃さない。

 

「ホォォ!」

 

 巨大な水柱が、ドラゴンを襲う。

 

 陽太に攻撃が集中している中、シロはその能力を研ぎ澄まし巨大な水の柱を創り出した。陽太はその“タメ”の時間稼ぎをしていただけである。

 

「ゴァァァア!!」

 

 ここに来て初めて、ドラゴンが苛立たしいように声をあげる。

 

 先ほどとは比べ物にならない圧倒的なその水圧は、ドラゴンの巨体をも押し戻す程の力を持っていた。

 

 ガガガと、地面に爪を立てながらも後退りを迫られるドラゴンはしかし、目をギラつかせると、咆哮をあげた。

 

「ガァァァァアアアア!!!」

 

 その口から圧倒的な熱気共に、炎が吐き出される。

 

 水に弱い火という性質を持ちながら、その炎はドラゴンに降り注ぐ水の柱を一瞬で蒸発させた所か、シロのいる空中にまで炎が襲いかかる。

 

「ほぁ!?」

 

 慢心故か、その攻撃はシロにとって予想外で、驚きの悲鳴をあげる。

 

 なんとか寸前でその炎を躱したシロは、しかしその水蒸気によりドラゴンが見えないことに気付き、慌てた。

 

 首を回して辺りを見回すが、水蒸気に隠れその姿は見えない。

 

「“氷結(フリーズ)”!!」

 

 そこにパートナーからの声が響く。

 

 シロはその言葉で我に返り、迷いもせず己の能力を発動する。

 

 青白く光った翼は、羽ばたきながら風を起こす。その風が水蒸気に触れた瞬間、瞬く間に凍結していく。

 

 その現象は自然界では起こりうるが、状況が揃わないと起こらない稀有な現象。

 

 その名も『ダイヤモンドダスト』。

 

 シロは、それを屋内でいとも簡単に起こして見せた。

 

 そしてその氷は、シロの支配下にある。

 

 再び羽を青白く光らせると、その小さな氷は先ほどまで姿が見えなかったドラゴンに殺到する――!

 

 だがそれは、とても小さな氷だ。ドラゴンの硬い鱗を突き破るには至らない。かすり傷すらつけることができない。

 

 だが、鋭く尖った氷が目に入ればどうか。

 呼吸器に侵入したらどうなるか。

 

 一見美しいその攻撃は、その見た目に反して毒のように相手を蝕むいやらしい攻撃だった。

 

 腐っても英雄“ナナシ”のパートナーのドラゴン。

 

 歴戦の猛者である。その攻撃の意図を明確に理解し、身体とその翼を丸めてその攻撃が止むのを待った。

 

 陽太は防御姿勢を取ったドラゴンに、ここが好機と瞬時に判断し、シロに追撃の指令を出そうとし――しかし一歩間に合わない。

 

「ガァッッッ!!」

 

 ボウっと、一瞬で火が燃え上がる。

 

 ドラゴンの身体が揺めきながら、燃え上がる。

 

 一瞬で氷は溶け、そして一瞬で蒸発した。

 

 ジリジリと周囲を炙りながら、ドラゴンは防御姿勢を解いた。

 

 いや違う。あれは防御姿勢ではなく、この状態を起こす“タメ”の動作だったか――!

 陽太は自分の判断が間違っていたことを悟る。

 

 燃え盛るドラゴンを改めて見る。

 

 その鱗は燃え上がり赤銅色に変化し、その熱気で大気をゆらゆらと歪ませる。

 

 鋭い鉤爪は赤黒く変色し、その熱さを物語っている。

 身体は炎を(まと)っている。地面すら(こが)すほどの熱は、上昇気流を発生させ纏う炎を妖しく揺らす。

 

 目の前に太陽が顕現したかのような錯覚。

 目の前に絶望が体現したかのような戦慄。

 

 3メートルを優に超える巨大なその生物は、陽太たちを圧倒するように君臨していた。

 

 10メートル以上も離れているのに、その熱気はチリチリと陽太の肌を焼く。

 

 熱いが故の汗か、それとも悪寒からくる冷や汗か。

 

 陽太は背中にじんわりと汗をかいてくるのを感じていた。

 

 その圧倒的な力の前に、陽太の顔は引き攣つる。

 

――こんなん防げるか!無理だろ!

 

 弱音を吐きたい自分を押し殺し、自分と同じようにビビっているシロを撫でてあやした。

 

 プルプルと震えるシロは珍しく可愛らしかったが、そう楽しんでもいられる状況じゃない。

 

 これから、どうする?

 

 あの圧倒的な力の前に、自分はどうすればいい。何を選択すればいい。

 

 ギブアップを宣言するのか。

 

 それは出来ない。寝る間を惜しんで協力してくれた友人が見ている。そんな情けない姿を見せられない。

 

 では立ち向かうのか。

 

 それは恐ろしい。

 

 シロがいても、心強いパートナーがいても。陽太にとってそれは、偽らざる本音だった。

 

 これは霧島の出した試練である。

 

 (いささ)か過剰な演出だとも感じるが、これを乗り切った時、周囲の反応も大きく変化するだろう。

 

 そのために霧島が用意してくれた場でもある。

 

 しかし()()()()()()()()、協力してくれた友人達に、誇れる結果を残したい。

 

 胸張って帰りたい。

 

 これは、霧島が乗り越えられると信じて出してもらった課題である。

 

 その期待に陽太は応えたかった。

 

 あなたのおかげで強くなったと言うことを知って欲しかった。

 

 ならば、全力で挑まなければならない。

 

 燃えるドラゴンを見る。

 

 恐ろしいがしかし、これは授業であり、訓練だ。

 

 一応念のためにと、服の内側にはプロテクターが仕込んであるし、万一に備えて医療系の魔石生物も来ている。

 

 練習で出来ない奴が、本番で出来るわけがない――!

 

 陽太は心に叱咤(しった)する。

 

 震える足に力を込める。

 

 シロの背を撫で勇気づける。

 

 改めて気合いを入れ直して盾を構え直して――

 

 

「レグ!やり過ぎだ!焼き殺す気かっ!」

「いや想定外かよふざけんなっ!」

 

 

 

 ――盾を地面に叩きつけた。




『魔石』

魔石生物にとって魔石は食べ物です。
小粒の物から大粒の物までたくさんあります。
大きいものは10キロくらいのサイズもあるんです。
魔石生物達はこれが大好物ですが、残念ながら私たち人間は食べることができません。
なぜなら私たち人間には固い石だからです。
しかし魔石生物はそれを食べてしまいます。
顎が強いのでしょうか?
いいえ。それは違います。
魔石生物が魔石を食べる時のみ、魔石は脆くなります。
私たちで言えば硬めのポテトチップスくらいの硬さになると言われています。
そう言われると美味しそうですよね。
でも私たちの歯ではかみくだくことはできませんし、飲み込んでも消化することができないのです。
なので、絶対に魔石を食べてはいけません!
それに食べ物をとったらかわいそうです。
みんなも自分の大好きなハンバーグが取られたら悲しいですよね?
そして、人間の食事も同じように魔石生物は食べることができません。
同じく消化ができないんです。
それぞれの食べ物を正しく理解して一緒に食事を楽しみましょう!

参考文献
魔石生物のご飯と人間のご飯
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