魔石生物 ーMagic Stone Creature-   作:御坂まさき

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夏休み②

 嵐達との約束の時間が迫ったと同時に、その部屋から生徒が溢れ出て行った。

 

 嵐達に気付くと一部は軽く会釈を、大部分は怪訝そうに嵐達を見ながら去って行った。

 

 そして最後に出て来たのが陽太だ。嵐達を見ると呆然としている嵐たちに話しかける。

 

「待たせた?…てかどうした?」

 

 まるで化け物かのように自分を見つめる3人に、陽太は不思議そうに問う。

 

「いや、どうかしてんのはお前だ」

 

 嵐は呆れたように言う。

 

「クロカワってオレらと同じコッチ側の人間だったじゃん!完全にガッコウで浮いてる存在だったじゃん!いつの間にあんなに深くて広い川飛び越えて皆んなで仲良くBBQしてんの!?」

「してない。あと、それ大部分でお前らのせいなんだけど?」

「裏切ったんだな……?俺らのこと、遊びだったんだな?」

「よーしわかった。らいまる、どうやら皆まだ寝ぼけているらしい。電撃波(スタン)だ。皆の目を覚まさせてやれ」

「「「あばばばば!!」」」

 

 基本素直ならいまるは、陽太の言う通りに確かに様子がおかしいなぁと思っていたので、容赦なく主人達に電撃を放った。

 

「ら、らいまる」

「しゃあ?」

 

 鳴矢がビリビリと痙攣しているのを気にもせずに、顔までペタペタと張り付いて登り、治った?と言わんばかりに顔を覗き込む。

 

 その愛らしさに、鳴矢の頬は弛む。自分の相棒(パトクリ)は何と可愛いんだと。

 

「ふひひ、オマエの可愛さでオレはいつも狂わされてるよ」

「はい、らいまるもう一回」

「ちょ!まっででデデデ!!」

 

 流石に2回連続はキツかったのか、鳴矢は痙攣して白目を向いて倒れた。

 

「で、なんなの?コミュニケーション能力が意志を持って動き出した存在がオマエなの?」

「いやまず何で俺責められてんの?あと、そいつ誰?」

 

 何故か呆れたように言う鳴矢に、陽太も呆れたように言い返す。

 

「別に責めてはないな?ただ、黒河はコミュ力の妖怪。そうだな?」

「断定するな。そうじゃない」

「いいや!騙されねぇぞ!お前はコミュニケート星から来たコミュ星人だ!地球は俺が守る!」

「待て待て収拾つかないぞ!それぞれ訳わかんないこと言い出すな!」

 

 陽太が机をバンと叩いた。

 

 そんな4人の周りを、クロがサスケとらいまるを乗せてクルクルと回って遊んでいる。

 その隣ではマッスルポーズを決めたクレスの肩の上で、シロがうとうとと船を漕いでいた。

 

 

 狭い部屋の中はカオスと化していた。

 

 

 言いたいことは想像つくので、陽太は自分から切り出すことにした。これ以上珍獣扱いはたまらない。

 

「さっきの会合のこと?」

「あいつら、全員俺らと同級生(タメ)だろ?」

「そうだけど?」

「……なんであんな疎遠にされてたのに急に仲良くなってんだ?」

 

 本当に訳がわからなそうな顔で、嵐は言った。

 

「あぁ、そういうことね」

 

 陽太が納得したように言う。

 

「いや、この前話しかけられたんだよ。お前らがお祭り行った日に」

「あの日か」

「そう。俺を置いてお祭りに行った日」

「言い方キモいな。せっかくのマツリに男同士で行きたくねぇわ、ムサ苦しい」

 

 陽太は心に深いダメージを負った。

 

「はいはい!俺がワルかった!ワルかった!謝るからそんな泣きそうな顔すんな!」

「泣いてないし!別になんとも思ってないし!」

 

 これは陽太が面倒くさいモードにはいったなと確信した銀河が先を促す。

 

「それで、何であんな会合になったのか気になるな?」

「あ、あぁそれは色々話しが広がったっていうか、輪が広がったっていうか、な」

 

 陽太はその時のことを思い返して言う。

 

 ♦︎♢♦︎♢

 

「すいません、黒河くん…ですよね?」

 

 話しかけられた相手は、陽太の知らない男の顔だった。

 

 見かけたことがあるような、その程度の認識だった。

 

「そうですが、何か御用でしょうか?」

 

 なので陽太は他人行儀に聞く。

 

「…こんなこと頼める義理がないのは分かってます。ですが、最近シンボルエリアに入ったばかりの人の見解を聞きたいんです……!初心者目線の話が」

 

 気まずそうに男は続ける。

 

「今まで馬鹿にしてきた奴がと、俺なら思います。非難や謗りは甘んじて受けます。いやむしろ言ってください!さぁ、さぁ!」

「さぁって言われても…。この短時間でどこに声をかけた目的置き忘れてきたんですか?」

「あぁ!すみません!この脳無しがっ、と思ってますよね。特待生でもない分際でっ、と」

「もしかして、謝ってるふりして逆に俺のこと貶めてますか?」

「あぁ!くそ!……いやそうか!こういう時はこうすればいいんだ!!」

 

 そう言って男は地面に頭を擦り付けて土下座を敢行した。

 

「何を心得たの!?お願いやめて!…そっちがその気なら俺も土下座するぞ!?」

「フッ、俺の土下座に叶うのかな?特待生さんよぉ」

「いやほんと、あんた何しに来たんだ!?」

「この通り、お願いがあってきました!」

「どこがだよ!?あーもう!わかったから!話聞くからどこへでも付き合うから!」

 

 そうして連れて行かれた先には、同学年の学生が何人かいた。

 

 恐らく同じチームか仲の良い人達だろうと陽太はあたりをつける。

 

 集まっていた同級生もそれぞれ気まずそうな顔をして陽太を見た後、頭を下げてきた。

 

 都合の良い頭だな、と皮肉でも言いたいこともなかったが、それは少々大人気ない。いや、本当に大人気ないか?と、しばらく葛藤した結果、陽太はそれをグッと堪えた。その謝罪を受け入れ、陽太は質問に答える。

 

 元々コミュニケーション能力の高い陽太は、問われた内容に答えた。

 人を仕切るのも上手いし慣れていた陽太はテキパキと対応し、いつの間にか人数が増え続け、気付いた時には周囲の人数が20人くらいになっていた。

 

 そしてまた別日に今日聞いてないない人も交えて話を聞きたいと言う話になり、それが先程の会合に繋がったと言う訳だった。

 

「「「化け物」」」

 

 話を聴いた3人は声をそろえて言う。

 

「結局結論はそこにいくのかよ」

 

 今度は逆に陽太が呆れたように言う。

 

 遊び疲れたのか、いつの間にかクロが部屋モードの赤子状態で陽太の膝の上に乗り、撫でて撫でてとくぉんと甘えた声を上げる。

 腕には冷房の効いた部屋は寒かったのか、魔石生物でも変温動物という変わらない特性を持つらいまるが陽太の腕にピタリと張り付き、暖をとっていた。

 

 サスケは陽太の頭の上で尻尾を丸めて昼寝をしている。

 

 3人が化け物と断じたのはそこも含めてである。

 

 陽太は魔石生物に対しても、コミュ力が高かった。

 

「で、お前は良いのかよ?」

「何が?」

 

 頭で寝ているサスケを起こさないように、背筋を真っ直ぐ動かさないようにしながら、陽太は言う。

 

「俺らが言えた義理じゃねぇが、アイツらはお前を陰で嘲笑ってた奴らだろ」

「許すのか、って話か?」

「イヤ、アラシが言いたいのはそんな奴らに程よく使われてハラ立たないのかってハナシ。それに目立つのキライなんだろ?」

「普通にムカつくよな?」

「…いや、まぁ。本当、どの口で言ってるんだと思わずにはいられないけど」

「「「うぐっ」」」

 

 3人は揃えて胸を抑えた。

 

「ムカつくかムカつかないかで言えば、普通にイラってするよ。最初は皮肉でも言ってやろうかと思ったくらいだし」

 

 でも、と陽太は続ける。

 

「普通、そんな態度をとった人に対してわざわざ謝るなんてことしないだろ?馬鹿にしてた奴が自分の知らないことを知っていたとしても。俺なら距離を置くよ。離れて関わらないようにする。俺に聞きたかった話なんて先生達なら誰でも答えられるようなことだったし。無駄に目立つのも本当に嫌だし」

 

 うとうと船を漕いでいたシロが、コテンと倒れてその身を中空に投げ出した。

 

 が、銀太の相棒、無機物種のクレスが咄嗟に手を出してその身を受け止める。

 ビックリして目をパチクリさせながらも、シロはほぅと鳴いてお礼を言い、クレスは銀色に輝く歯を見せつけるように笑ってサムズアップする。

 

 その様子を見ていた陽太は笑顔で言う。

 

「だから本当に本気だったってことだと思うんだよ。その謝罪も、魔石狩りになる為のやる気も。そんな本気の相手を断るほど、俺は狭量じゃないよ。そんな相手なら多少の無駄に目立つくらい飲み込むさ」

 

 3人とも、声は出さずに思う。

 

――お人好しめ。

 

 そしてそんなお人好しに自分達も救われたのだから、とやかと言う権利はない。

 

「…そうか。ま、お前が良いんなら良いんだ。さて、そんじゃあ勉強するか!」

 

 気分を変えるように、声を出して言う。

 

「それはいいんだけど、この子たちどうする?」

 

 陽太は自分に乗った子たちを目線で促す。

 

 クロも含め、3体とも寝息を立て初めており、陽太はどうにも身動きが取れなかった。

 

「う、うぅ。らいまる、そいつがそんなに良いのか?――このムネが裂けそう狂おしい暗い感情。しかしその中に差し込む得難い感情…!そうか、コレが…NTR(寝取られ)――か」

「いい台詞っぽく新たな性癖に目覚めんな。永眠させておけ」

 

 そう言いながらも、サスケが気持ちよさそうに寝てるのに若干の嫉妬する嵐だった。




マジクリ・パトクリ

魔石生物、って長くない?
マジクリで良くない?
という若者から派生した言葉で、Magic stone creature略してマジクリという派閥がある。
レアな魔石生物をレアクリとか、自分のパートナーの魔石生物をパトクリやラブクリと呼んだりする。
いや、マジクリとか恥ずかしいし、普通に魔石生物でもいいし。普通にパートナーとか、相棒とか、そういう言い方でも良くない?派の方が主流で主に30代以降に多い。
若者は若者で、歳上には正式名称で、同年代には略語で対応する柔軟性があり、現状どちらが主流派かと言えば、後者が主流であると言える。

参考文献
マジクリって言うのは、大人はちょっと恥ずかしい
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