魔石生物 ーMagic Stone Creature- 作:御坂まさき
「さて、ね。ただ超常を可能とさせる力を持っている。何故魔石生物は火を吐き、水を生成し、雷を操ることが出来る?そのエネルギーは一体何を持ってどこから生み出している?現在、魔石生物は“情報生命体”というカテゴリーに仮定で属している。しかしその定義も未だ定まってはいない。そして彼らは生命と名乗るにはあまりにも致命的な欠陥を持っている」
「生殖機能を有していない、ですね」
「そう、人類の生命と言う定義からは大きく逸脱する。しかし、彼らは
完全に沈黙した場に霧島は続ける。
「人類は間引きされた、というのが僕の持論だ。あの“死の十日間”では多数の犠牲者が出たが、その多くは50代以上の高齢者だった」
「高齢だったから逃げるのが遅れたというのが定説ですよね?」
「しかし政治関係者は軒並み亡くなった。国会議事堂が
「先生、それはよくある陰謀論の一つでは?」
陽太が霧島の考えを諌める。
当時から現代まで、陰謀論や都市伝説は後を絶たない。
「ではこれはどうだろう?魔物はペットや家畜などの生物を積極的に
真面目な顔をして語る霧島に、陽太はとりあえず黙り聞く姿勢に入った。
「見方を変えると、これは邪魔なものを排除しているという風にも見える。政治家や権力者を排除することにより新しい法律や法令が通り安くなった」
陽太はこれに頷く。
実際に事実だからだ。
頭も硬く、コネと癒着ばかりの政治が一新されたのは間違いない。
「何よりもペットや家畜が殆ど殺されてしまったと言う事実。これが何のためだったかわかるかい?」
死の十日間で人も動物の多くも死んでいった。
それはある意味当たり前で、陽太はその理由を考えたことがなかった。
「僕はこれに答えを出した。それは――
霧島の言ったことに最初は意味がわからなかった陽太は、その真意に思い至り身体中に鳥肌が立った。
「ペットを飼っている家庭の魔石生物のアプリの普及率は低かった。もう既にいるのだから新しいペットは必要ない。家畜は人類の食事事情を支える大切な存在だった。だからこそ、“魔食”を流行らせるには邪魔な存在だった」
「邪魔だったから、皆殺しにした……?」
「僕はそうだと思っている。全ては魔石生物と共依存の環境を作る為に」
全員言葉を失う。
人類の運命は何者かに握られている。
これほどの恐怖はない。
「だからこそ解き明かす」
霧島は拳を握る。
「あの日の理不尽を解き明かしていけば、きっと人類の為にもなる。私的な理由だけど、これがきっと世界の為にもなると僕は信じている。是非、皆んなも協力して欲しい」
「「「「「はい!!」」」」」
声を揃えて言われた返事に、霧島は満足気に頷く。
「とても頼もしい。今年は陽太くんを含め4人も魔石狩りの資格を先んじて取った子がいる。有望な子達が沢山いるんだ、未来が明るいよ。勿論、君たちを含めてね」
霧島が嵐たちに微笑みかける。
「それじゃあうちのゼミ員になった彼らに改めて言うことがあるんじゃないですか?」
恭介がニヤニヤしながら霧島を見る。
「いやぁ、改めて言うのは恥ずかしいんだが、僕のゼミの研究生となった子達には全員に伝えているからいうけど」
恥ずかしそうにはにかんで言う。
「一応僕は“ナナシ”の英雄と呼ばれている人間なんだ」
「「「エエエエエェェエ!!??」」」
嵐たちが目を広げて驚いた。
しかし、
「あんなぁ、あんなどでかい学校みたいな孤児院寄付しててるくらい金持ちで、しかもそれを僕の力じゃなくて色んな人の力のおかげだよって本心で言ってるくらいの善人だぜ?」
「パートナーはアーマー種でありながら唯一種のドラゴンだしな?」
「そんな聖人“ナナシ”以外にいんの?孤児院のコドモから大人まで全員察しがついてるわ」
ということらしい。
知らぬは本人ばかりとはこの事である。
そりゃそうだ、と陽太も聞いて納得した。
そんな偉大な人物が滅多にいるはずもない。
だが、3人の喜びは本物だった。
自分の実力が認められて、本人から自分の正体を明かしてもらったのだ。
これが嬉しくないはずがない。
そんな微笑ましい光景が、落ち着きを見せた頃、手を上げて発言する。
ずっとずっと、疑問に思っていたことだ。
「先生、“ナナシ”は多くのエリアを解放しました」
霧島がコクンと頷くのを見ると陽太はさらに続ける。
「しかし、レグは属性は炎です。苦手なエリアはあったはずです。しかしほとんどのエリアをソロで攻略しています。なぜそんなことが可能だったんですか?」
これは陽太の今後に関わる話だった。
当時シンボルエリア攻略最前線にいた霧島なら、何か攻略のヒントになることを知っているのではないかと。
霧島はチラッと陽太の左耳を見た。
そこには真新しいピアスを開け、新しい相棒の雷刃の魔石があった。
「さすが陽太くん、鋭い質問だ。では逆に問おう。何故だと思う?」
嬉しそうに霧島は質問を質問で返してきた。
なので陽太は予め用意していた答えを言う。
「先生には複数の
「半分正解だ。僕には確かにもう一体パートナーがいた」
霧島は胸に手を当てた。
惜別の想いも、優しい思い出もあったのだろう。霧島はなんとも言えない表情をした。
そして恐らくそのパートナーは亡くなったのだろう。
陽太が謝罪をしようとする前に、霧島が口を開く。
「これは別に公表していないのだけど、僕が倒したレイドボスの数は合計5体」
「「「「!?」」」」
衝撃的な事実に全員固まる。
陽太も謝罪の言葉が頭から吹き飛んだ。
「アーマー種をパートナーにしている人間は世界中にいるが、そのほとんどに共通している項目がある」
「2体持ちが
恭介は知っていたのか、霧島の衝撃発言をものともしていない。
「そう、この子達はなんせ
霧島はレグを、恭介はシンラを撫でる。
愛おしそうに。
「独占欲が強いんだ。テイムなんてさせてくれない。仮に願いの石で新しい子が召喚されてもいがみ合うことになる」
その言葉に陽太は首を捻る。
シンラとかぐやは少なくとも仲良くやっているからだ。
「緊急性を帯びていた場合のみ、願いの石は新しい
霧島はレグを見て指をパチンと鳴らす
「
パチンと音が鳴りレグがカッと光ると、赤色だった彼の身体は紫色に染まっていた。
「アーマー種持ちが願いの石を使った場合、アーマー種が新たな能力を授かる。これが答えだ。僕が多くのエリアを解放できた理由だ」
霧島は珍しく挑戦的に笑う。
「これから君達にはシンボルエリアを生きる術を、攻略する能力をここでつけてもらう。手加減は一切しない。覚悟はいいかい?」
陽太達は顔を見合わせて、そして不敵に笑って見せた。
「ならばよろしい。では改めて」
コホンと一息吐き
「ようこそ、霧島ゼミへ」
黒炎狼
黒狼の赤い魔石の食わず嫌いが進化した姿。
火を纏い、炎を吐くその姿は炎狼の名に恥じぬ姿。
単騎で駆ければ炎の鱗粉を纏い、その炎熱で相手を圧倒することも可能。
その高い身体能力から、背中に人を乗せることも出来る為、移動を速やかに行うことが出来る。
ブレることない体幹は、例え人を乗せても快適に走ることが出来、一昔前の自動車を軽く超えるスピードで走る。
犬ではなく、狼タイプの割に珍しく大きな身体に進化したのは、その背に主人を乗せて走りたい欲望があったのだろうと考えられる。
また、鋭い嗅覚は危険や罠の匂いすらも嗅ぎ分ける高いシックスセンスを持つ。
狼タイプにしては従順で、真っ直ぐな性格。
いやこの子、本当は犬なのでは?
参考文献
淡墨恭介の手記