魔石生物 ーMagic Stone Creature-   作:御坂まさき

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また、何度か感想で頂いていた“ポストアポカリプス”という誤用表記の訂正が反映されていないことに遅まきながら気付きました。
訂正ご指摘頂いた方改めてありがとうございました。


文章間隔元に戻しました。


VS袁鬼

「キ!ケキャァ!?」

 おら!さっきの威勢はどうしたぁ!?

 袁鬼は陽太を煽るように挑発する。

 

「くっ!」

 

 袁鬼の止まらぬ剣戟に陽太は防戦一辺倒だった。

 挑発に乗る余裕すらない。

 

 

 早く鋭い攻撃は容易く陽太を翻弄する。

 

 

「キキャ!!」

 

 

 その上、袁鬼は剣だけでなく()も攻撃に使う。

 

 振り回せられる盾は防御の道具に収まらず、攻撃として効果を遺憾なく発揮していた。

 

 

 刀で下手な攻撃をすれば激しい盾の攻撃で弾かれてしまう。

 危うく雷刃を吹き飛ばされるところだった。

 

 

 刀は攻撃で盾は防御。

 

 

 そんなあまりにも当たり前の思考を、袁鬼は否定するように盾を縦横無尽に使う。

 刀を囮にして盾を本命の攻撃にしたり、盾を命を守る防具としてではなく鈍器のような武器として機能させている。

 

 

 その戦い方はあまりにも変幻自在だった。

 

 

 防戦を強いられている陽太だが、その実心は踊っていた。

 

 

――なんだその戦い方は!?

 

 

 今の今までどれだけ自分が偏った戦い方をしていたか理解させられる。

 

 

 陽太の固定概念を覆していく。

 

 

 かと思えばしっかり盾を盾として使い、刀を華麗に振るう様を見せつける。

 陽太の理想とする動きを明確に再現していた。

 

 

 華麗な花のように魅了される剣技は、陽太の目に強く焼きついていく。

 

 

 負けていられるかと陽太は奮起し、攻め手に出ようとするが

 

 

「キィ!」

 甘い!と袁鬼が叫ぶと、陽太は想定外の攻撃を受けていた。

 いつの間にか鳩尾に()()を喰らっていた。

 

――蹴り技まで混ぜてくんのかよ!

 

「カッ」

 

 慮外からの急所への一撃で、陽太は肺の中の息を吐き切ってしまい膝から崩れ落ちる。

 

 

 その隙を見逃してくれるほど、袁鬼は甘い王ではなかった。

 一瞬で距離を詰めもう一度蹴りをくれてやろうとすると、瞬間陽太がニヤッと笑ったように袁鬼には見えた。

 

 その時には既に遅く

 

「“山茶花(さざんか)”!」

 

 

 雷刃が紫電を纏い、陽太を中心に電流を流した。

 

 

 寸前の所で後方に大ジャンプしたことで難を逃れた袁鬼は訝し気に陽太を睨む。

 

 

 確実に鳩尾に入った。 

 本来なら呼吸もままならないはずだ。

 

 なんなら遠慮なく強めに蹴ったので、内蔵にダメージを負ってもおかしくない。

 それくらいの威力で容赦なく放った蹴りだった。

 

 

 袁鬼の疑念はさらに深まる。

 

 今の技、自分も喰らっていたはずだ。

 自分を中心に電撃を展開したのではなく、自分含めて電撃を放っていた()()()()()だった。

 

 

 なのに目の前の陽太は何事もなかったかのように立ち上がる。

 

 疑念が深く水底に沈む前に、袁鬼は気付いた。

 いや、思い出した。

 

 

 こんな奴が昔いたことを。

 

 

 

 そいつはアーマー種を纏って大剣を持っていた。

 好戦的で、ことある度に戦いを挑んで来て楽しそうに戦う男だった。

 

 袁鬼自身も楽しく戦える相手で、ケンカ友達と言える相手だ。

 

 

 一度だけアーマーを纏わず挑んで来たことがあり、陽太と同じように膝を屈した所を追撃し、電撃を喰らって驚いたことがあった。

 

 

 痺れが全身に周り危うい戦いを強いられることになるかと思いきや、その男は急にやる気をなくして「止めだ止めだ!」と戦いをやめた。

 

 

「かー!やっぱ騙し討ちで勝つのは性に合わねーや。一対一(タイマン)に小細工は無粋だったわ。悪りぃな袁鬼」

 

――また今度遊ぼう(戦ろう)ぜ!

 

 

 とケラケラと笑いながらに去っていき、そしてそれ以来結局会うことはなかった。

 

 

 男は死んだと聞いていたし、形も違うから気付かなかったが――

 

 

「キキャ!キーキ!」

 お前かぁ!雷刃!

 

 

 何かに気づいた袁鬼が楽しそうに陽太の手元を見て言う。

 

 雷刃は電撃を収めてピカピカと抗議するように光る。

 

 

『気付くの遅くない?』

 

 と言いたそうだ。

 

 

「キィキッキキ!」

 その戦闘服もアイツのものか!

 

 袁鬼は懐かしむように笑う。

 

「受け継ぎました。宝の持ち腐れにならないよう精進しているところです」

 

 

 うむうむと腕を組み目を結んで頷く袁鬼は人間らしく、そしてどこか陽太に温かい目を送る。

 

「キャキャ!キキーキ」

 よく言った!その信念突き通せ。

 

 

「はい!」

 

 陽太は再度突貫する。

 

 

 袁鬼は陽太の攻撃を優しく、そして手荒く受け止めた。

 

 

 

♦︎♢♦︎♢

 

 

 

「参りました」

 

 首筋に剣を突きつけられた陽太が両手を挙げて降参する。

 

 

 

「キッキキキ!」

 また出直してきな!

 

 袁鬼は楽しそうに嬉しそうに陽太に言う。

 

 

「はい。ありがとうございました」

 

 陽太は苦笑を浮かべつつ袁鬼に礼を述べる。

 

 

 ほんと変わったエリアキングだ、と陽太は思う。

 

 

 人間味があり、そして人類の味方寄りのエリアキング。

 その癖、自分が倒されるのも許容している節がある。

 

 

 何を考えているのかわからないが、陽太にとっての貴重な剣の師匠だ。

 子供のような無邪気さと、老成した老獪さを併せ持つ稀有な存在でもある。

 

 勉強になることが多い。

 

 これからももっと頼りにさせてもらおう。

 

 

 さて、それはそれとして――

 

 

「今回は俺の成長を見てもらいたかったのと、もう1人見てもらいたい人がいまして」

「キ?」

 

 あの子?と袁鬼は陽太の後ろの一条を呼び指す。

 

「はい、是非一度手合わ」

「待て待て待って!!待ちなさい!」

 

 一条が凄いスピードでやって来てあっという間に陽太の胸ぐらを掴んだ。

 

 

「勝手なこと抜かしてんじゃないわよ」

 

 

 額に青筋を浮かべた一条がドスの効いた声で陽太にガン飛ばしてくる。

 

 

 いつもの上品な言葉遣いは鳴りを顰め、凍った視線は絶対零度に達し低温火傷(やけど)しそうだ。

 

 

 

「落ち着いてください」

 

 

 恐怖を前に思わず敬語になる陽太である。

 

 

「今すぐごめんなさいと謝れば一発で済ますわ」

「一撃前提?一条さんの一発はタダじゃ済まないから考え直そう」

「そうして欲しいなら態度で示しなさい。これ以上抵抗するなら二発目が確定するわよ」

「こっわ。チンピラかよ」

「三発目が確定したわ」

「ニ発飛び越えたけど!?待って本当に落ち着いて。戦って欲しいわけじゃないんだ」

「じゃあ何をさせる気よ」

 

 

 陽太はふふんと笑うと少し楽しそうに言う。

 

 

「鬼ごっこ」

 

 

♦︎♢♦︎♢

 

 

「じゃあ1分逃げ切ったら勝ち。範囲は境内の中のみ。王も一条さんもそれでいいですか?」

「ウキ!」

「えぇ。わかったわよ」

 

 楽しそうな袁鬼と、腹を括ったのか匙を投げたのか少し投げやりな一条が返事をする。

 

「“この身は風のように(ビバーチェ)”」

「こん!」

 

 先に付与(バフ)を展開した一条が軽く膝を曲げて陽太の合図を待つ。

 

 袁鬼はキキキと楽し気に笑い、両腕を頭の後ろに回している。気楽な風体で負ける気は微塵もなさそうだった。

 

 

 これは正真正銘のただの鬼ごっこ。

 

 本物の鬼と鬼ごっこなんて洒落が効いているが、まぁ一種の遊びだ。

 

 

 一条には付与の効果もない癖に尋常じゃない俊敏性を体感出来るし、そして王はなかなかき珍しい付与種のスピードを経験出来る。

 

 どちらにとってもwin-winな結果だ。

 

 

 しかし、と陽太は思う。

 

 

――本気でやらなきゃ負けるぞ王よ。

 

「始め!」

 

 

 陽太が口火を切った瞬間一条がトップスピードで駆け出した。

 

 

「キキ!?」

 早っ!?

 

 

 驚く袁鬼を置いてけぼりに一条は境内を走り回る。

 

 その姿は本当に風のように軽やかで、空を自由に跳んでいる。いや、()()()いるようにすら見える。

 

 

「ケキャキャ!!」

 面白い!

 

 

 袁鬼は楽しそうにすると、足をグッと曲げて数メートルを軽々ジャンプしてみせる。

 

 なんの能力もなく、なんの力も働いていないシンプルな身体能力。

 人間には到底辿り着けない極致のそれだ。

 

 

 しかし。

 相手は風を纏う。

 

 

 袁鬼の猛追を一条は難なく躱していく。

 

 躍び跳ねて、壁を走り、大仏すらも飛び越える。

 

 

 開始20秒の間は一条の独壇場だった。

 

 しかしそこは百戦錬磨の武芸百般。

 袁鬼は追いかけながら注意深く一条の動きを観察する。

 

 目線。

 足の向き。

 筋肉の動き。

 今の地点。

 次に飛ぶであろう方角。

 

 

 全てを思考して

 

 

「キキ!!」

 ここだ!!

 

「!?」

 

 袁鬼は一条が飛び立つ所を見極めてジャンプした。

 

 

 その予測は完璧で、タイミングもジャスト。

 一条は袁鬼がこれから届くであろうジャンプした到達地点に飛んでいた。

 

 飛んだ手前、もう軌道修正は出来ない。

 なす術はない。

 

 

 

 現に一条は驚き目を見開いている。

 

 

 が、そこで一条は意地悪く笑った。

 

「“この身に降りかかるのは重き呪い(ラルゴ)”!」

「こーん!!」

 

 

 暗い呪いの光は袁鬼に、ではなく一条の身に降り注いだ。

 

「キキ!?」

 はぁ!?と袁鬼は驚く。

 

 一条の身体の動きは早送りからまるでスローモーションのように遅くなり、袁鬼の手は空を掠めることになった。

 

 

 

「“この身は風のように(ビバーチェ)”!」

 

 

 すかさず一条はまた風を纏いスピードを上げた。

 

 さながらそれは動画の倍速と減速。

 

 この緩急の鋭さを捉えるのは武芸百班のエリアキングとは言え一筋縄にはいかなかった。

 

実際袁鬼は

 

「キキャ」

 マジかよ。

 

 目を丸くして呆気に取られていた。

 

 

 一条の、というよりたまもの付与能力(バッファー)としての能力は力の増幅や、防御力アップよりも俊敏性に秀でていた。

 

 それは能力低下(デバフ)にも同じことが言える。

 

 緩急を自在に使いこなす一条を捕まえることは、こと袁鬼でも手に余る状態だった。

 

 

 そして1分という時間。

 一条がたまもの能力を十全に発揮して全開(フルスロットル)を保てる限界の時間だ。

 

 

 本当に勝てるかもしれない。

 

 

 

 明らかに一条有利の条件だったが、了承したのは袁鬼だ。

 別に倒すわけじゃないが、勝利というのは意味を持つ。

 

 

 一条の自信にも繋がるし、袁鬼はこれで一条に一目を置くことになる。

 

 

 

 一条は能力的にもポジションは前衛(アタッカー)だ。

 腕を岩のように硬くすることもできるし、戦闘服を用意すれば前衛で活躍することが出来るだろう。

 

 

 その為白兵戦能力は必須スキルとなる。

 

 

 その師匠として袁鬼はあまりにも適任だった。

 自分と同じように、袁鬼に一条の師匠をやってもらうのが陽太の本当の狙いだった。

 

 

 

 陽太はワクワクとした期待を胸に残り時間を告げる。

 

 

「残り20秒!」

「きき!?」

 嘘!?

 と驚く袁鬼は未だ一条を捉えることが出来ず後塵を拝している。

 

 

 一条は息切れをしているが後20秒くらいなら持つだろう。

 

 

 一条は残り時間を言われても予断なく、袁鬼と境内の中に視線と頭脳を巡らせている。

 次にどこへ逃げるか。

 袁鬼はどこを狙ってくるのか。

 

 

 そこに慢心は無く、油断もない。

 

 

――この勝負貰った!

 

 

 陽太は心の中でガッツポーズを決めていると、袁鬼は追うことを止めて頭をポリポリとかいている。

 

 

 すると袁鬼は陽太を申し訳なさそうに見る。

 

 

 両手を合わせて片目を瞑っている。

 

 その姿は、悪いなちょっとズルするぜと言っているように見えた。

 

 袁鬼はさらに一条にも同じようなポーズを取る。

 

 ゆっくりな動作はわざと時間を無駄にしているようにも見える。

 

 

 この時点で残り10秒。

 

 

――何をする気だ?

――何をする気?

 

 

 陽太と一条が同じことを考えた時、袁鬼は自分の頭の毛を千切るように何本も抜く。

 少し痛そうにした袁鬼だがすぐにその毛を吹くと、毛は風に吹かれて形を成していく。

 

 その姿は大きく袁鬼と同じくらいに膨張し、そして袁鬼と全く同じ姿になった。

 

 

「は?」

 

 陽太が驚き固まっていると、全部で合計10体の袁鬼がそこにはいた。

 

 袁鬼達は視線を軽く合わせた後頷き合い、息の揃った動きで一条を追い詰める。

 

 

「西遊記の孫悟空かよ」

 

 分身なんて技があるなんて思いもしなかった陽太は愚痴をこぼした。

 

 時間は迫るが、それ以上の速さで袁鬼が一条に迫る。

 

 

――10秒。

 

 目を見開いて驚き固まった一条は、思考が真っ白になったのか口を半開きで瞬きをしていた。

 

 

――9秒。

 

「動きを止めるな!!」

 

 陽太声にハッとなり我に返った一条だが、あっという間に劣勢に追いやられたことに気づく。

 

 

――8秒。

 

 

 袁鬼は包囲網を敷くように広がっている。

 一気に逃げ場を失った一条は視線を辺りに巡らせ思考を回す。

 

 

――7秒。

 

 

 たまもに呪いを――ダメ。この大人数をかけるのは無理。

 違う能力を使う?――ダメ。この状況で使う手札は私にはない。

 本気で飛び出す――ダメ。ここはそんなに広くない。境内から出てしまう可能性が高い。それは反則。

 

 

 状況を打破する手立てが浮かばず一条の心に焦りが生まれる。

 

 

――6秒。

 

 

――とにかく動くしかない!

 

 そう判断した一条は走り出した。

 

 2歩目でトップスピードに乗った一条のスピードは到底人間に追いつくスピードではない。

 

 しかし。

 10対1はあまりにも部が悪すぎた。

 

 

 3歩目で追いつかれそうになり、急転回して袁鬼から逃れる。

 

 

 5歩目で方向転換。その先は袋小路であるのは気付きつつ打開策はそこにしかなかった。

 

 

 7歩目に辿り着く頃にはもう囲まれていて逃げる先を無くした。

 

 

 そして足は9歩目を踏むことなく、袁鬼にタッチされた。

 

 

 残り3秒。

 一条は僅かに届かずお縄となった。

 

 

「――ッ」

 

 

 一条は悔しそうに袁鬼を睨む。

 しかし文句を言うことはない。

 

 

 別に分身(ぶんしん)は禁じられていないからだ。

 ルール違反にはならない。

 

 

 それを知っているからこそ一条は何も言わないし、だからこそ袁鬼は少しバツの悪そうな顔をする。

 

「キッキキキ」

 

 袁鬼は両手をあげて(おど)けて見せて、そして見事だと一条に拍手を送る。

 

 

 袁鬼が使った手は奥の手だ。

 こんな所で切る手札じゃない。

 

 

 それを切らした時点でお前の勝ちだと袁鬼は視線で語る。その眼は賞賛と感嘆に満ちていて、一条に対する敬意すら感じる。

 

 

「――キキ」

 

 しかし、と袁鬼は人差し指を一本上に上げる。

 

 

 しばらく意図が読めず首を傾げて一条は袁鬼を見つめていると、袁鬼はさらにその手をあげて空を指差した。

 

 

 思案顔の一条はあることに思い至り

 

「――あ」

 

 と思わず声を漏らした。

 

 

 真上にジャンプしていれば時間が稼げた、ということに。

 

 真上の袁鬼が届かない所まで跳んで、遅い呪い(ラルゴ)を自分にかければ勝ちは確定していた。

 

「――そう、勝てた勝負だったってことね。悔しいけど思い至らなかったわ。最後の10秒まで手を出さなかったのは私に勝てる余地を残したってことかしら」

「キーキキキ」

 

 さーてな、と歯を剥き出しにして腕を後ろ手に組んで、袁鬼は陽気に笑う。

 

 

 そして袁鬼は笑顔のまま言う。

 

「キッキキキ!!」

 

 

 楽しそうに言う袁鬼の言葉は陽太に投げられた言葉と同じものだと気付き、一条は挑戦的に笑う。

 

「ふん!次はこうはいかないわよ。覚悟なさい」

 

 

♦♢♦♢

 

 

「これはこれでまぁ予定通りかな」

 

 そんな2人を見ながら陽太は思う。

 

 

 袁鬼は予想通り一条を気に入ったし、一条も袁鬼を認めただろう。

 エリアキングを敵ではない相手として認識することができたはずだ。

 

 

 意外と一条は魔物への敵意が強い。

 それは殺意と言っても過言ではないと陽太は思っている。

 

 エリア内で敵と会ったら殲滅を優先するし、そこに情けはない。

 

 陽太など未だに魔物を倒したら魔石を握り御祈りをするルーティンから抜けられず、一条に

 

 

「甘いわね、先輩。そんなことをしなきゃ心の整理も出来ないの?」

 

 

 なんて痛くない本音を当てられてしまった。

 先輩として恥ずかしい話ではあるが、止めることもまた難しい。

 

 

 それはさておき、一条はこれで更なる成長が見込めるだろう。

 

 

 陽太自身も成長を実感できた良い一日だった。

 

 

 思い付きの割には良い着地点についたとホクホク顔の陽太だったが。

 

 

『ピカピカ』

 と雷刃が光出したのが目に入った。

 

「あ、うん。わかったよ」

 

 陽太と雷刃は長い付き合いではないが、雷刃の行動は読めている。

 言いたいのは『お腹空いた』だろう。

 

 

 鞄から黄色い魔石を数個取り出すと、雷刃の刀に押し当てる。

 

 魔石は刀に溶けるように同化していく。

 

 

 これが無機物種刀型である雷刃の食事の仕方だった。

 

『ピカピカ(もっと)』

「え、足りない?」

 

 さらにもう数個取りだし

 

『ピカピカ(まだまだ)』

「家に帰ってからにしない?」

『カッ(むり)』

「……」

 

 

 さらに取り出し

 

『ピカピカ、ピカ(大将、もう一丁)』

 

 

 雷刃は中々満足する様子はない。

 

「もう……今はないです」

『ピカーン、ピカリ(えー。じゃあ帰ってからな)』

「……はい」

 

 陽太は泣きそうになりながら頷く。

 

 何せ今の魔石はかなりデカ目の黄色い魔石。

 緊急時の雷刃のエネルギー補給用。

 

 今の分だけでも軽く20万円を超える。

 予想外の散財だ。

 

 たったあれだけのエネルギー放出なのに、恭介の宣言通り雷刃のコスパは非常に悪いらしい。

 

『ピカピカピカ(今日はいっぱい食べるぞ♪)』

「腹八分目で頼むよ……」

 

 

 結局帰ってからも雷刃の暴食は収まることはなく、値段にして今日一日で50万円以上の金額が陽太の財布から飛んでいったのだった。




ショートストーリー
『雷刃の戦闘服』

「そう言えばゆりさんに服貰ってたんだ。受け取ってよ、陽太」
「恭介からじゃなくてゆりさんから服?なんで俺に?」
「雷刃を使うのには必須アイテムだよ。雷刃の火力、というか電力舐めちゃいけないよ。誤って自分に放電したらワンチャン死ぬよ?」
「とんでもねぇ諸刃の剣じゃん!」
「雷刃は結構大雑把だから対処しないと割としょっちゅう感電するよ?」
『ピカピカピー(ごめんね♪)』
「呪いの剣じゃん!やっぱ返す!」
「残念、刀はもう装備から外せない」
『ピッカリ(末長くよろしく♡)』
「絶句」
「そんで服の話なんだけど」
「この流れで話進める気か!?」
「この服が耐電性に非常に優れてて、シンボルエリアで戦闘服としても非凡な性能を持ってるって話をしたかったんだけど…陽太には必要ないか」
「恭介は俺の味方だって信じてた」
「掌返し凄いな。まぁそこまでいうならどうぞ」
「ありがとう!ってこれ真っ赤で金色でダボダボじゃん…ダッサ…くないです。ありがとうございます」
「本音ダダ漏れじゃん。冗談だよ。サイズの調整とかするから一回着てもらう為に持ってきたんだよ。色も変更可能だから安心して」
「優しい世界」
「ちなみにそれあらゆる性能と技術が詰まってるからそれ一着で軽く数百万円するよ」
「そんなもん軽々しく貰えるか!!てかそれだけの高級品こんなセンスない仕上げにするとか千野洸狂ってんのか!?」
「そう?これ着てゴテゴテのアクセサリーとかしてると意外と似合うんだけどなぁ」
「あ、やっぱり恭介のセンスってしっかりずれてるんだね」
「……」
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