インフィニット・ストラトスinアイアン…マン?   作:高橋ヒナタ

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クラス対抗戦編、後編です。



第14話

 

 

 

「一夏!死なない程度に殺してやるわよ!」

 

「望むところだ!全力で来い!」

 

 

『──3、2、1、試合開始!!』

 

 

 

「はあっ!!」

 

試合開始のゴングと共に、鈴が駆け出した。

 

鮮やかなワインレッドに彩られた自身の専用機

甲龍(シェンロン)」に、巨大な青龍刀「双天牙月(そうてんがげつ)」を握らせ

一夏が動き出すよりも早く攻撃を仕掛けたのだ。

 

 

ガキィンッ!!!

 

「ぐっ…!」

 

「初撃を防ぐなんて…流石一夏ね!」

 

だが一夏とて近接戦闘は得意分野。

雪片弐型を使って鍔迫り合いに持ち込む。

 

「そう簡単にはやられないぜ!」

 

「らしいわね…!」

 

左手にも握られた双天牙月の片割れにも注意しつつ

素早く体勢を立て直して反撃を構える一夏。

これは箒との模擬戦で培ったスキルだ。

 

箒は剣のサイズこそ違えど近接用ブレード「(あおい)」と

防御用短刀「(あかね)」をよくセットで使っていた。

そう、二刀流の使い手との戦闘経験は豊富なのだ。

 

 

「けど、甘いわっ!!」

 

キュイィィッ…

 

そのまま一夏が反撃を加えるかと思ったその刹那

甲龍の両肩に備え付けられた球体状の部位が開き──

 

 

ドンッ!!

 

「なっ、何だっ?!」

 

一夏は突然強い衝撃に襲われた。

 

 

「今のはジャブよ!」

 

 

ドォンッ!!!

 

「ぐあっ!?」

 

[白式 シールドエネルギー残量:299]

 

続けて一発目よりも強い"衝撃"が放たれる。

 

ジャブと言われて2発目に勘付き回避に動いたが

完璧に回避し切ることは出来ず。

白式のシールドエネルギーが大きく削られてしまう。

 

 

 

「これが…『龍砲(りゅうほう)』ッ」

 

甲龍の両肩に付いている武器、それが「龍砲」だ。

 

特殊な機構を用いて空間上に見えない砲身を生成し

その際に発生する衝撃を砲弾として撃ち出す

イメージ・インターフェースという機構と連動した

第三世代型ISの特徴とも言える特殊武装である。

 

ちなみにその第三世代型という種別には白式や

ブルー・ティアーズなども該当しており

世界中で研究開発が進められている世代でもある。

 

 

ドンッ!!

ドォンッ!!!

 

「くっ…!」

 

「よく避けるわね!」

 

鈴は龍砲と双天牙月を器用に使い分けながら

まるで獲物を狩る猛獣のように執拗に攻撃を繰り返す。

龍砲はその特性上砲弾がほとんど見えないうえ

射角も実質無制限。これを使って敵を翻弄しながら

双天牙月で渾身の一撃を叩き込むのが鈴の戦いなのだ。

 

そんな鈴を相手に、一夏は雪片弐型以外に唯一持つ

自身の中で最も信頼出来る泥臭い武器「諦めの悪さ」で

必死に食らいついていく。

 

 

「うおーーーッ!!」

 

「当たってなんかあげないわよっ!」

 

「くそっ外した…っ!」

 

[白式 シールドエネルギー残量:247]

 

とはいえ間違いなく一夏が劣勢だ。

 

友人達からのアドバイスに従って、零落白夜の発動は

出来る限り攻撃を当てる一瞬に絞って発動させているが

それでもジリジリとシールドが削れていくのは事実。

 

 

ガキンッ!!ガキィンッ!!

 

[白式 シールドエネルギー残量:192]

 

ドンッ!!ドォンッ!!!

 

[白式 シールドエネルギー残量:157]

 

たとえどんな小さなチャンスであろうと

零落白夜を完璧に決めさえすれば自分の勝利だ──

そう自分で自分を鼓舞して戦い続ける一夏。

 

 

「全力で行くからなっ!」

 

「来なさい!格の違いを見せてあげるわ!」

 

 

「「うおぉぉぉーーーっ!!!」」

 

一瞬の間の直後、両者渾身の力を込めて駆け出す。

 

そして──

 

 

 

 

 

ズドォォォンッ!!!

 

「「!!」」

 

アリーナ中央に凄まじいビームが降り注いだ。

 

 

 

「何だ!?何が起こった!」

 

「あそこ!なんかいるわ!」

 

ビームの衝撃で巻き起こった爆発の中心地に何かが居る。

 

不気味な形をした、黒いロボットのような存在だ。

恐らくはISだろうか。突如乱入してきた黒い機体は

左腕を一夏達の方へと掲げ──

 

ビ-ッ!!ビーッ!!ビーッ!!

 

[!WARNING LOOKED!]

 

「あぶねぇっ!!」

 

「きゃっ?!」

 

バシューーーッ!!

 

無警告でいきなりビームを放ってきた。

 

 

「ちょっ…ちょっと馬鹿!離しなさいよっ!」

 

「お、おい暴れるなって!」

 

幸い狙われていた鈴は一夏が()()()()()()()()

救出したため特に被害は出なかったが

ビームが通り抜けていったその先にあるアリーナの壁は

凄まじい高温で赤熱し溶けだしていた。

 

侵入時にアリーナのシールドを破壊しただけあって

セシリアの使っていたライフルより更に高火力なようだ。

もし当たればひとたまりもないだろう。

 

 

 

『織斑くん!凰さん!今すぐ脱出してくださいっ!』

 

アリーナ管制室の山田先生から退避が促される。が──

 

「いや、俺たちでしばらく食い止めます!」

 

「そうね。あたし達が逃げたらアイツがどこへ行くか!」

 

一夏と鈴はその提案を蹴った。

というより、蹴るしかないのだ。この現状。

 

未確認機が妨害電波でも発しているからなのか

この第1アリーナは機能がハッキングされており

アリーナシールドの強度が最大の「レベル4」に設定され

ピット出入口を含む全てのゲートも閉鎖されているので

逃げようにも逃げられないのである。

 

しかも、黒いISは侵入時にシールドを突破しているので

仮に何らかの方法で一夏たちがアリーナから退避した場合

狙いが観客席へ移っても不思議では無い。

 

「あたしが龍砲で援護するわ!」

 

「なら俺が突っ込む!武器これしか無いしな!」

 

一夏と鈴はそれぞれ己の得物を手に迎撃を開始した。

 

 

 

「クッ…速いッ」

 

「何やってんの一夏っ!ちゃんと狙いなさいよ!」

 

「狙ってるっつーのッ!!」

 

しかし、黒いISは一夏が放つ零落白夜だけは

それが一撃必殺の武装であることを理解しているのか

異常なまでの反応を見せ、必ず回避してきた。

 

「諦めるもんかよ…っ!」

 

それでも、一夏は戦い続ける姿勢を崩さない。

 

同じように"雪片"を持ち、零落白夜をも持つ姉と違って

自分は剣の腕も未熟だし力もあんなに強くはない。

けれど、意志の強さだけは負けるつもりは無い。

絶対に諦めない心はいつか必ず勝利を掴む──

そう信じて戦い続けた。

 

 

 

そんな時だった。

 

 

 

『何をやっている一夏ぁっ!!

その位の敵に勝てなくて何とするっ!!!』

 

 

放送室の篠ノ之箒から激励が飛んだのだ。

彼女は、劣勢に追い込まれた幼なじみを心配して

少しでも力になれるよう行動したのだろう。

 

だが、それはこの場に於いては悪手だった──

 

 

『………?』

 

「…まさかっ!?」

 

黒いISの興味を引いてしまったのである。

 

 

キュイィィィ…ッ

 

腕のビーム砲が放送室へ向けられる。

 

ISならシールドと絶対防御で耐えられるだろうが

生身の箒にはアレを防ぐ手段など無い。

 

 

「クッ!鈴ッ!!俺の背中を龍砲で撃て!!」

 

「なっ…何するつもりよッ?!」

 

「いいから早くッ!!」

 

一夏は咄嗟に思いついた手段で攻撃を阻止しようとするが

黒いISのチャージが終わる方が早かった。

 

 

「クソッ箒逃げろぉッ!!!」

 

 

 

 

 

この世にはこういう言葉があるのを知っているだろうか?

「ヒーローは遅れてやってくる」という言葉が。

そしてこの学園には1人、隠れたヒーローが居る。

そう。彼女は、皆を助けに遅れてやってくる───

 

 

 

ズドォォォンッ!!!

 

 

 

「なっ…!今度は何だっ!?」

 

今まさにビームを発射しようとしていた黒いISへ

上空から別のビーム攻撃が降り注いだのだ。

 

大きく怯まされた黒いISは、そして一夏と鈴は

揃って上空へ視線を向ける。

 

 

 

Ichika,(一夏君、) Lingyin,(鈴音ちゃん、) You miss me?(会いたかった?)

 

バシュウッ!!!

 

赤と金で彩られたアーマーを纏ったその人物は

どこからともなく流れ始めた「shoot to thrill」をBGMに

こちらへ飛び込みながら両手の掌から光線を放ち

黒いISを吹き飛ばす。

 

そして、左拳を地面へ叩きつけつつ左膝と左足と右足の

四点を使って行う膝に悪くて最高にクールな着地──

「スーパーヒーロー着地」とも呼ばれるそれを披露し

その少女はアリーナへと降り立った。

 

 

 

「アイアンマン…!」

 

誰もが知るマーベルコミック界のスーパーヒーロー

アイアンマンが、少年たちのピンチを救いに

颯爽と現れたのだ。

 

「やぁ。無事かい?」

 

「…あぁ、何とかな」

「一夏を撃たなくて済んだわ。ありがと」

 

 

「さ、一夏君。トドメは任せたぞ」

 

「おう」

 

アイアンマンに吹き飛ばされ壁にめり込んだ黒いISは

身動きが取れないままコアに零落白夜を突き刺され

アッサリと沈黙した。

 

 

 

 

 

 

 

「千冬さん、アリーナの制御は奪い返しました。

観客席の生徒たちの避難誘導をお願いします」

 

『…アリーナの放送システムのオーバーライドは

見なかった事にしておこう』

 

「あははっ…そうしてくれると有り難いです」

 

──避難時に転倒し擦り傷を負った生徒が数名

ビーム砲によるアリーナ内壁の破損が数箇所

同じくビーム砲による校舎外装の破損が数箇所。

結果として、無人機によるクラス対抗戦襲撃事件は

大きな被害が殆ど出ない形で終わっていた。

 

ただ、事後処理は長引きそうではあったが…。

 

 

 

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

 

 

 

 

 

──IS学園地下。

 

 

「織斑先生〜連れてきましたよー」

 

「ありがとう山田くん。待っていたぞ」

 

アイアンマンの知名度を活かして避難活動を手伝った後

私は基本的に生徒は立ち入ることが出来ない

IS学園の地下施設に、山田先生と一緒に訪れていた。

 

何をしに来たかと言うと、私たちの目の前に並べられた

2機の無人機の残骸をどう処分するかについて

会議を行うためだ。

 

 

 

「………無人機…か」

 

私は正体を知っていたから驚きはしないが

基本的にISとは人が乗っていないと動かないものなのだ。

無人では武器を使うどころか移動することすら出来ず

ただの鉄の塊にしかならない。

 

それを少年少女達が相手とはいえ2機の第三世代専用機を

軽々とあしらえるほどに動かすとなると

求められる技術力はどれほど高くなることやら。

 

「篝火さんは何か分かりますか?」

 

「…ユニビームで中枢を破壊しちゃいましたからね」

 

軽く残骸を調査してみたが、片方は零落白夜で

もう片方はユニビームで機能中枢が焼ききれていて

詳細は分からなかった。

 

「J.U.P.I.T.E.R.。パーツの製造元は分かる?」

 

『市販のパーツとは一致しません。独自規格かと。』

 

「ジュピター、と言ったか。首謀者は追えるか?」

 

『学園周辺に派遣された正規のISはありません。

恐らくはテロ組織などによる犯行でしょう』

 

当然のように製造元も運用元も一切不明

かろうじて分かったのは正規軍ではない事ぐらい。

 

 

「篠ノ之博士じゃないんです?こんなもの…」

 

真耶ちゃん、そう思うのも分かるが違うと思うぞ。

 

「…こいつは無防備な箒ちゃんにまで武器を向けた。

あの人は重度のシスコンですからそんな事しないですよ」

 

「…ヒナタ。何故こっちを見ながら言うんだ?」

 

「…………はぁ…自覚無いんですね」

 

「???」

 

同じくらいブラコンな目の前の黒髪美人教師は置いといて

もしこれを束さんが動かしているのだとしたら

ISに乗っている一夏君はともかく、生身の箒ちゃんに

ビーム砲を向けさせることはまずありえない。

 

 

 

「ねぇ、こっちのコアはまだ動くんじゃない?」

 

「これか」

 

で、そんな調査の中で楯無さんが目をつけたのは

私が校舎上空で戦った方の無人機。

 

一夏君が零落白夜で破壊した方のコアは

本来決して壊れるはずは無いのに壊れていたが

こちらは周囲がユニビームで溶けている程度で

取り出せばまだ使えそうな感じがした。

 

 

「解析してみましょうか」

 

「山田くん頼む」

 

真耶ちゃんがコアを解析に掛ける。

 

 

 

「あれ?…変ですね。反応しません」

 

「反応しない…だと?」

 

「そんな事ってあるの?」

 

コア人格が居なくなったコアはこんな反応を返すのな。

まぁこのコアは元々存在しなかったコアなので

別にこれが動かなくなっても問題は無いのだが

"中身"がどこへ逃げたのかは調べる必要がありそうだ。

 

上手いことウサギと接触出来ればいいが。

あの子今も絶賛雲隠れなうだからね。

 

 

 

 

 

「──ここにいましたか織斑先生」

 

「学園長?!何かあったんですか?」

 

「忙しい所申し訳ないんですが…」

 

「………転入生…こんな時期にか?」

 

 

あー、そうか。あの2人の転入届けが来るのは

クラス対抗戦の直後になるのか。

 

面倒事が増えないと良いが…期待は出来なさそうだ。

 

 

 





本当は一夏君をもう少し活躍させたかったんですが
中々良い形が思い浮かばなかった…。

最近毎日毎日クソ暑くてしんどいんで
少し執筆をのんびりにします。すまんな。

次回の内容はまだ未定。

追記:修正情報
千冬さんのことをシスコンと表記していた所を
ブラコンに訂正しておきました。
指摘受けるまで全然気づかなかった…
シスコンだと一夏"ちゃん"になっちゃうのに
なんで気が付かなかったんだろう…?
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