インフィニット・ストラトスinアイアン…マン? 作:高橋ヒナタ
とりあえず第2話もセットで。
私が篝火ヒナタとして生を受けてはや4年。
4歳の誕生日を迎えた私は両親に少し無理を言って
ある道具を揃えてもらった。揃えてもらったというよりは
父の職場にお邪魔させてもらったと言うべきか。
「作れそうかい?ヒナタちゃん」
「かんたんな物ですけど何とか作れそうです」
父やその同僚にジッと見守られながら私が作っているのは
所謂ICチップや集積回路と呼ばれる電子部品だ。
アルミ蒸着なんかを自宅で行うには無理があったので
それを行える場所が欲しいとねだったところ
父が会社に相談をしてくれて、「
工業製品製造メーカーの工場の一角を貸してくれたのだ。
「これが…簡単なもの?トランジスタはいくつあるの?」
「とりあえず2,250コで作っています」
「に、二千…だって?」
前世じゃ自作する集積回路のトランジスタ数は軒並み
数億以上だった気がするが、今回は環境が環境なので
最初のマイクロプロセッサであるIntel4004と同数の
2,250個で制作してみたが、驚かれてしまったらしい。
4歳としては少な過ぎただろうか?
(
少なくとも人工知能を自作するには圧倒的に性能不足だ。
もちろん最初はトニー同様言語インターフェースとして
ジャーヴィス…もといサポート用AIを作るつもりだが
エイジ・オブ・ウルトロンでの彼は、軍団のボスとなり
ウルトロンから核ミサイル発射コードを守りきったのだ。
今の私ではそんな人工知能など作れない。
「お姉さんも倉持志望だって言うし、うちは安泰だね」
「お姉ちゃんがここへ?」
「ヒナタちゃんも来るかい?」
「…考えておきます」
「ヒナタちゃんなら起業するって手もありそうだけどね。
俺が倉持社長に掛け合ってみようか?」
「おう、うちの娘の進路を勝手に決めないで貰おうか」
「…興味アリって顔してるぞ」
「何ぃっ?!」
お父さん、気持ちは嬉しいけどちょっと過保護過ぎだよ。
それはそれとして、起業に興味があるのは事実だ。
トニーだってスターク・インダストリーズを持っているし
私が「カガリビ・インダストリーズ」を起業するのは
決しておかしな話じゃないだろう?
╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌
その後軽く倉持技研を見て回って──否、驚かせて回って
父よりも一足先に自宅へ帰ると、いつもの2人が
それぞれ弟と妹を連れて遊びに来ていた。
「ほら2人とも。挨拶」
「おりむらいちかです!」
「しのののほうきだ…!」
「うん、元気いっぱいでいいね」
千冬さんに「何お年寄りみたいな事言ってるんだ」と
ツッコミを入れられたが仕方ないだろう。
私の中身は80過ぎの孫溺愛おじいちゃんなんだぞ。
特に長男は跳ねっ返りで可愛くねぇなと何度も思ったが
孫はホントに可愛いのなんの。あの子の成長をもっと──
いかんいかん、脱線してしまうところだった。
一夏くんも箒ちゃんもまだ4歳ということで
原作の凛々しい感じはほとんど無い。
あどけなさをマシマシにした千冬と束って感じだ。
「2人ともバンソーコーまみれだけど何かあったの?」
「ちふゆねぇとけんどうしてたんだ!」
「わたしもおとうさんにおしえてもらっていた」
ゑ?この2人この歳で剣道に手ぇ付けてたの?
そりゃあ強いわ。
「きいてくれよ!ちふゆねぇすっげぇつよいんだぜ!
おれがいくらいどんでもコテンパンにされちゃうんだ」
「…すごいんだね一夏くんのお姉さんの千冬さんは。
でも勝ちたいならゼッタイあきらめちゃだめだよ。
あきらめなければ可能性は0にはならないんだから」
「??…あきらめちゃダメだってことか!わかった!」
何だかアホの子っぽいけど4歳だし仕方ないか。
それはそれとして──
「千冬さん?やりすぎはダメですよ?」
「し、しかし一夏は強くなりたいと…」
「ダ、メ、で、す、よ?いいですね?」
「あ、あぁ…分かった」
「一夏くんのペースに、合わせてあげてください」
このブラコン姉は弟への愛が行き過ぎるあまり
出席簿アタックやら何やら、厳しくし過ぎる所がある。
その癖は治してやらないと後々姉弟仲に亀裂が──
記憶の限りではこの2人には無縁そうだが、それでもだ。
他人にまで迷惑を掛けたりするのは良くないので。
で、それを聴きながら何やら不穏な会話をしている
シスコン姉にも説教をしてやらねばならんようだ。
「束さん。正座」
「なんだいひなちゃん、星座早見盤でも欲しいのかい?
それならこの束さんが世界一鮮明な星座早見盤を──」
「す、わ、る!」
「はいぃっ!」
ここでのペースはこちらが握る。異論は認めん。
「何しれっと真剣与えようとしてるんですか?
今の箒ちゃんにそんなの持たせたら腕を失いますよ」
「なっ…束!なんてものを渡そうとしている!」
「でもでも…箒ちゃんが強くなりたいってぇ…」
「はぁ…千冬さんにはあぁ言いましたけどね。
甘やかしすぎも良くないんですよ?」
「はぁい…」
このまま行くとこっちはこっちで箒の高校入学と同時に
"何かとんでもないモノ"をプレゼントしそうだ。
そんな事になった日にゃ世界は滅茶苦茶になりますよ。
「なんだかたいへんそうですね」
「箒ちゃん…!いい?2人とも。言いたいことがあったら
エンリョなく自分のお姉ちゃんたちへぶつけるんだよ」
「「は〜い!」」
全く…この世界の姉ズは面倒くさいのばかりだ。
あ、姉ズと言えばあの生徒会長さんもそうじゃん。
姉ズでまともなのってひょっとして
うちの姉もどこか変人なところあるし…。
早々に胃薬のお世話になんてなりたくないんだがなぁ…。
╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌
たいへん賑やかな来客さんたちはお帰りになられた。
そうなればやることはひとつ。アイアンマンスーツや
アークリアクター制作へ向けた下準備だ。
まだ工具類や資材は殆ど買い揃えられていないので
主な作業は設計や各種数値の手動計算になる。
かなり余分に買い込んでもらった「じゆうちょう」に
「2Bえんぴつ」で一つ一つ書き込んでいく。
スマホや液タブなんて便利なモノはまだ無い。
「………はぁ…CADとかが使えたらなぁ」
個人的にはウォーマシン&ローディも好きなキャラだが
アイアンマンスーツがベースになっているのなら
ウォーマシンよりアイアンマンスーツを先に作りたい。
しかしそうなると、アイアンマン特有の人間的な形状──
曲線を多く採用したあのディテールを、紙と鉛筆だけで
イチから書き起こさなければいけないのである。
でもまぁ、意外と楽しくなってくるものだ。
「しょくばいにするならパラジウムだけど、高いから…
しばらく他の合金をたよろう。こうりつを考えると──」
アークリアクターのメカニズムも前世の記憶を元に
幼児の学習能力を以てすればあっという間に解明出来る。
あとはそのデータを元に計算、計算、計算あるのみだ。
指が真っ黒になろうが、じゆうちょうを何冊使い切ろうが
別に構わない。最低限デジタルへ落とし込み易いように
落とし込み先に合わせた追記をしておけばいい。
そうやってじゆうちょうを片っ端から埋めていって
両親に「自由帳じゃ足りなさそうだ」と思わせるのだ。
これは姉も使っていた技法だから間違いは無い。
「ジャンク屋にでも行ってみようかな」
トニーはアフガニスタンで囚われの身にも関わらず
インセン教授と2人だけでジェリコミサイルをバラして
小型アークリアクター1号機を完成させたのだ。
トニーに出来たなら私にも…出来るかは分からないが
即席の溶鉱炉や金型くらいなら篠ノ之姉妹が住んでる
篠ノ之神社にでも行って粘土なり砂なりをかき集めれば
ある程度は確保出来るはず。ミサイルは無理があるが
パラジウムに拘らなければ代用品はいくらでもある。
「ヒナタちゃーん!夜ご飯出来たわよー!」
「はーい今行きまーす!」
結局夕飯までずーっと鉛筆動かしてたよ。
右手の小指なんかもう真っ黒だ。
夕飯を食べる前に洗いに行っておこう。怒られてしまう。
あ、さりげなく両親に手の有り様を見せておくのも
忘れずにやっておかないと。私頑張ってるよーってのを
見せておかないと。
╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌
そんなこんなな生活を続けること更に約一年。
自作を続けている集積回路のトランジスタ数は
既に50万個を突破し、私は内燃機関の組立へ手をつけた。
最終目標は当然アークリアクター&リパルサーレイだが
私がこの世界のトニー・スタークになるのなら
他にもあれこれ作れた方が便利だろう。
例えばそう、クインジェットとか。ヘリキャリアとか。
おっと、そんな話へ脱線している場合じゃない。
私は今「面白いものを見せてあげる」って言われて
篠ノ之神社へ呼び出されているんだった。
「久しぶりですね、束さん。ちゃんと寝てます?」
「よく来てくれたね〜♪ささ、こっちこっち♪」
相も変わらずなテンションの束さん。
中学へほぼ籍だけとはいえ進学したことをキッカケにか
彼女は髪の色を淡い紫色へ染めていた。
それはそれで問題なんだろうけれど、それ以上の問題は
彼女の目元の深ーい深ーいクマ。間違いなく寝てない。
それも3日とかそこらじゃ済まないレベルに。
千冬さんからアイアンクロー教わろうかな…あダメだ
この規格外に5歳女児のよわよわアイアンクローなんか
びくともしないわ。千冬さんにチクるのが1番だわ。
「ほら、束さんのラボへごあんな〜い♪」
「ひゃあぁあぁあぁ〜〜〜っ?!」
私の考えている事など知ったことかと言わんばかりに
束さんは私のことを神社裏山の横穴へ放り込んだ。
横穴はスライダーになっていたみたいで
私はものすごい勢いで地下のラボへと連れ去られた。
「おえぇ…ちょっと吐きそう」
「…ひなちゃんには急だったかな、大丈夫?」
「えぇ、まぁ。なれてますから」
貴女の無茶振りにはね、と内心で付け足しておく。
最近千冬さん共々勘が鋭くなってきていて
千冬さん相手に似たような形で失礼なこと考えてると
あっさり見抜かれて手刀が飛んでくるんだけど
束さんはその辺は気にしていないみたい。
なんでこの2人ニュータイプしてるんですかね?
一夏君なんか後々何回出席簿を食らう事になるのやら…
おっといかん、また脱線しかけた。悪い癖だな。
「まだ未完成なんだけどね…」
束さんは私が落ち着いたのを確認すると
ラボの一角でシートを掛けられていた発明品を
特別だぞと言って私に見せてくれた。
バサァッ!
「じゃじゃーん!どうだーカッコイイだろー?!」
「これが…パワードスーツ、ですか…!」
「そう!その名も『
まだスラスター──もといカスタム・ウイングも無く
武装も装備させられていないが、この機体は間違いなく
彼女が後に作る事になるマルチフォーム・スーツ
「インフィニット・ストラトス」の1号機「白騎士」だ。
まさかもうここまで完成していたとは、と驚かされる。
「さすがは束さんですね…これはすごい…!」
「でっしょおぉぉ!ふふん♪束さんはすごいんだぞ!」
特にパッシブ・イナーシャル・コントローラーは
私でも設計図を見ただけでは理解し切れない程だった。
名前の通り常時発生している慣性──大雑把に言うなら
重力によって生じる下方向への慣性のみを相殺する事で
機体を空中浮遊させる機能だという。
更に驚かされるのはそう、搭乗者保護用のシールドだ。
バリアシールドと絶対防御の2層構造になっていて
宇宙放射線やデブリなどから身を守ってくれる。
これは一般的な対人兵器はおろか、対戦車兵器でさえも
搭乗者へ傷をつけることは難しい強度を誇っていた。
勿論シールド用エネルギーはその分削れるんだろうが
それでも人間が対戦車ライフルやRPG-7なんざ食らったら
本来ひとたまりもないのだから。
「それで宇宙へ行くんですね」
「完成すれば太陽系の惑星はお隣さんになるよ♪
他の恒星とか銀河とかはまた別で考えないとだけど…」
「おとなりの星はプロキシマ・ケンタウリなので
光の1パーセントの速さでも420年かかりますね。
アンドロメダ銀河へ行こうと思ったら…ええと……
2億5000万年かかることになります」
「着く頃には私たちみーんな仏様になっちゃうね」
加瀬康之さんボイスで「他所の星まで飛ぶおつもりなら
改善の必要があるでしょう」なんて聞こえた気がしたが
惑星と恒星では規模が──まぁそれはそれとして。
彼女が白騎士をここまで組み立てているということは
ISの正式発表やそれに伴う「白騎士事件」の発生が
すぐ近くへ迫っているということを示している。
確かあれは原作本編の10年前に起きているハズ。
となると千冬さんや束さんが14歳の時という事になる。
今束さんは13歳なので、あと1年ほどしかない。
(…白騎士事件、か。…どう止め──いや、止められない)
アフガニスタンでテン・リングスに捕えられるまで
軍事技術によって世界平和が成されると信じていた
トニー・スタークが、自分の作った兵器や技術で
散々痛い目を見ているのを知っている身としては
何とかIS発表を遅らせたいところだが…難しいだろう。
私の夢に束さんが賛同してくれたというよりは
束さんの夢に私が賛同したという形なので
仮に私が止めに入っても間違いなく彼女はISを公表する。
(…ならば!)
ここは、逆転の発想でいこう。
「束さん、倉持の技術発表会を利用してみない?」
ISが認められないというのなら、名のある企業を使って
嫌でも認めざるを得ない状況を作り出してやるんだ。
こちらがISの正しい使い道を先に示してやって
ISで戦争することがおかしい事だと認識させるんだ。
それでもダメなら?
──私はアイアンマンになる予定の女だ。
せめて、ド派手にヒーローしてやるさ。
本編突入まではさっくり行くつもりで書いたんですが
意外と長くなってしまったんですよね…
原作開始は8話となっております。
本作に2期(GX版8巻以降のオリジナルストーリー)は要る?
-
要る(時間を掛けてでも書いてくれ!)
-
要らない(8巻で綺麗に終わらせてくれ)