インフィニット・ストラトスinアイアン…マン? 作:高橋ヒナタ
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ありがとうございます!
今回と次回、あとたぶん次々回で
学年別トーナメント編…もといVTシステム編。
『まもなく、第一試合の開始時刻となります!
出場生徒の皆さんは指定のアリーナへ──』
ついに始まった、学年別トーナメント。
数日間をかけてほぼ全ての生徒がしのぎを削り合い
学園最強格のIS乗り3人が決める一大イベント。
世界でも唯一無二のIS操縦者養成学校なだけあって
このイベントはISに関わるありとあらゆる組織が注目し
トーナメント上位入賞者には国家代表候補生への選抜や
大企業専属パイロットとしてのスカウトなど
夢に見るような大躍進の機会が与えられるのだ。
「第一試合でそこがぶつかるのか。興味深いね」
「注目はドイツのレーゲン型だろうか」
「私はデュノア社の復権に期待したいね」
「あの御曹司か…確かに見込みはあるだろう」
注目の視線は生徒のみならず機体にも向けられる。
代表候補生らに与えられる機体の中には
量産を見据えた設計を行っているものも多く
中でも現在欧州連合にて進行中の統合防衛計画
「イグニッション・プラン」の次期主力機については
特に注目度が高いと言えよう。
[第4アリーナ:第一試合]
[織斑一夏&シャルル・デュノア]
[ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒]
そしてその学年別トーナメント第一試合にて
一年生部門の中で最も注目度が高いであろうカードが
早くもぶつかろうとしていた。
「一夏は思いっきり暴れてきて。僕が援護するから」
「あぁ、任せたぜ。」
かたや世界最強と同じ名の太刀を継ぎし白亜の機体を駆る
世界で初めて発見された男性IS操縦者織斑一夏と
彼に次ぐ2人目の男性IS操縦者──という事になっている
フランスの貴公子シャルル・デュノアのペア。
「その剣の腕、期待している。篠ノ之箒。
だが無理はするなよ」
「そうか…ありがとう。その期待には応えねばな」
かたや若くして少佐の地位にまで上り詰めたドイツ軍最強
このカード唯一の実戦経験者ラウラ・ボーデヴィッヒと
かの大天災を姉に持ちながらも専用機ひしめくこの魔境に
訓練機で飛び込んだダークホース篠ノ之箒のペア。
これほどの対戦カードに注目しない者はいないだろう。
何せ、各々のネームバリューが大きすぎる。
織斑千冬の弟、篠ノ之束の妹、ドイツIS軍最強
フランス大手企業の御曹司と来ているのだから。
『準備は宜しいですね?それでは!試合開始まで──』
「一夏。作戦通り行こう」
「あぁ!」
「では、暫し足止めを頼むぞ」
「うむ」
カウントダウン開始と同時にそれぞれが武器を構える。
一夏は雪片弐型を、シャルルは二丁の
ラウラは右肩レールカノンを、箒は使い慣れた
『3!…2!…1!』
そして、攻撃の構えを取る。
ジャキッ…と金属の擦れる音が静かに響き──
『試合開始ッ!!!』
「勝負だ一夏ッ!!」
「受けて立つッ!!」
真っ先に激突したのは、一夏と箒だった。
雪片と葵がガキンと音を立ててぶつかり合い
激しい火花と重たい金属音が鳴り響く。
一夏はそれ以外に武器を持っていないゆえに
箒は剣以外の扱い方を全く知らないがゆえに
両者はアリーナのほぼ中心で剣戟を交わし合う。
「先に墜ちてもらうぞっ!」
「そうはいかないよっ!」
そんな激闘を後目に、残る2人も戦闘に突入する。
射程や攻撃力に優れるレーゲンの大型レールカノンを
シャルルは持ち前の器用さで回避し反撃を放つ。
「やはり剣の腕前は箒の方が上かっ!」
「伊達に鍛錬を積んでいた訳では無いのだ!」
一夏と箒の戦闘は、やや膠着状態へと陥った。
機体性能という意味でいえば白式の方が高いのだが
一夏は家計を助けるためにバイトをしていた影響で
剣の腕が鈍ってしまっており、総合戦闘力という意味では
どちらに軍配が上がるか分からない状態なのである。
「一夏っ!」
「シャルル!?」
そこへ突然シャルルがスッと割って入ってくる。
2人が鍔迫り合いに入った一瞬の隙を狙い
箒の攻撃をカットしに来たのだ。
「させんッ!!」
ドォンッ!!
「くっ…」
だがそれをラウラは許さない。
一瞬聞こえたレールカノンの励起音に反応し
シャルルがその場を飛び退けば、さっきいた場所を
鋭い砲弾が通り過ぎていた。
「うおぉぉっ!!」
「っ?!」
シャルルとラウラが周囲を駆け抜けていった直後
一夏が最初の大技を起動した。零落白夜である。
箒は鍔迫り合い中にシャルルの牽制から逃れようとして
大きくバランスを崩している。これはチャンスだ。
「クッ!!」
ガキィンッ!!!
「がっ?!」
しかし、剣道全国大会優勝の実力は伊達では無かった。
耐エネルギーコーティングが施された防御用短刀「茜」を
咄嗟に呼び出して攻撃をガードしたのだ。
零落白夜を受け止めた茜はあっという間に赤熱し
あと一発受けられるかどうかという状態になってしまうが
思いもよらぬタイミングで攻撃を受け止められた一夏は
貴重な零落白夜直撃のチャンスを完全に逃してしまった。
「やるっ…!この私が捉え切れんとはっ!」
「ふふふっ…そう簡単には捕まらないよ!」
一方でシャルルとラウラの戦闘だが、世代の差もあって
ラウラが優勢になるだろうと思われていたにも関わらず
どちらかといえばシャルルの方が優位に立っていた。
絶妙な距離感を保ちながらアサルトライフルなどで
パラパラと攻撃をばら撒き続けるシャルル。
一見すれば、消極的な戦闘を続けるシャルルを
ラウラが積極的に追いかけているように見えるが
実はラウラはシャルルを"追わされていた"。
(これが例の「砂漠の逃げ水」か…厄介だな…)
砂漠の逃げ水。あるいはミラージュ・デ・デザート。
夏の暑い日、アスファルトの道路に雨でもないのに
水溜まりが出来ているように見えることがあるだろう。
あれこそが蜃気楼、またの名を逃げ水。
砂漠という水分が極めて少ない地で起こるソレは
時にオアシスと見間違えられ、惑わされてしまった旅人は
ありもしない水を求めて自ら死へと向かってしまうのだ。
シャルルの使う「砂漠の逃げ水」とはそう
対戦相手が「追いかければ攻撃を当てられそう」と感じる
絶妙な距離感で戦うことで不用意な攻勢へ転じさせ
迂闊にも飛び込んできた相手を刈り取る妙技。
シャルルが優勢を保っていた秘訣はそこにあった。
[白式 残りSE:742]
[ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ 残りSE:840]
[シュヴァルツェア・レーゲン 残りSE:825]
[打鉄(篠ノ之箒機) 残りSE:784]
戦況はほとんど互角。
特に、機体性能で大きな差をつけられている箒が
一夏を相手に善戦出来ているのがとても大きかった。
彼が全盛期のままだったならそうはいかなかっただろうが
今の彼なら時間稼ぎくらいは十分出来る。
「──破ッ!!まだまだ弛んでいるぞ一夏!」
「帰宅部3年連続皆勤賞は!やっぱ響くよなぁっ!」
どのみち零落白夜に被弾すれば一撃KOなのだからと
最低限の防御力を残した機動力特化のカスタムを施し
剣しか使わない都合上普段は殆ど空っぽの拡張領域には
予備の葵と先程折れかけた分を含めて計4本の茜に加え
よほどのスピード狂でもなければ使わないという
推進用エネルギー回復パックも目一杯詰め込んできた。
これは、箒が篝火ヒナタに「私も専用機が欲しいな」と
何気なく口にした時に貰ったアイデアが元になっている。
通常ならばここまで偏ったカスタムは非常に扱いにくく
設計当初の想定より大幅に弱くなる場合が多いのだが
剣道で培われた高い動体視力や瞬発力、集中力などが
その異常とも言える高機動戦闘を支えていたのだ。
そして、試合はほぼ互角なまま進んでいった。
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──ドイツ某所。
「…"黒い雨"の様子は?」
「大きな変化はありません」
「そうか。」
IS関係者向けに公開されている中継映像を
静かに見つめている技術者達が、ここドイツにも。
彼らは、ラウラ・ボーデヴィッヒが駆る機体
シュヴァルツェア・レーゲンに先日新たに搭載された
最新式のOSの開発を担った一団である。
「博士の妹が訓練機で出てきたのは意外だったな」
「えぇ。ウサギは随分と呑気なようですね」
イグニッションプランの次期主力機選定コンペを
間近に控える欧州諸国にとって──勿論ドイツにとっても
実際の戦闘で得られるデータは少しでも多い方がいい。
ましてやそれが、かの白式相手であるならば。
今頃、イギリスやフランスの各地でも同じように
技術者達が映像を前にして討論をしている事だろう。
「ダメージレベルは?」
「現在、E。間もなくDに突入します」
「心理グラフはどうだ?」
「ややブレはありますが安定しているようです」
フランスの"2人目"の妙な戦い方に惑わされながらも
レーゲンは中々に良い戦いを繰り広げている。
これらのデータを元にして次世代型量産機を製造すれば
欧州でのシェアを一気に獲得する事も可能だろう。
だが、この施設の責任者の男は目の前の戦果に対し
どこか苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「ここから大きく悪化する可能性は?」
「……無いかと」
自国の選手が安定した戦いを見せているのだから
普通ならば喜ぶべきだろう。
ではなぜ彼はそんな表情を浮かべたのか?
「システム喚起率19.2%。起動は不可能です」
「散々織斑千冬への執着を煽ってやったというのに…」
彼らは純粋に代表候補生の少女の勝利を願うような
真っ当な集団ではないからだった。
「システムを強制起動させろ」
「遠隔起動にはリスクが伴いますが…」
「世界へVTシステムの脅威を知らしめる絶好の機会だ。
これを逃す訳にはいかん」
「了解です」
たとえそれがとてつもなく危険なものであろうと
研究の為ならば容赦無く実行ボタンを押すことの出来る
狂気に呑まれた集団だったからだ。
そして彼らは解き放ってしまう──
[Valkyrie Trace System:ManualStartUP]
禁じられた紛い物の戦女神を。
冒涜の塊たる存在を。
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「──やっぱり存在感すごいね…赤と金って」
すぐ隣に座っていた簪ちゃんがぼそっと呟いた。
あぁ…やっぱり気が散って仕方ないんだね。
私は今、一夏君達の試合を観客席で見ている。
新調したアイアンマンスーツ「mk.6」を着たまま。
「ごめんね簪ちゃん。最近問題続きだからさ」
「いや、お姉ちゃんの指示だってのは知ってるから
そんなに気にはしてないって…」
これは楯無さんからの提案でもあった。
クラス対抗戦の無人機襲撃やレゾナンス襲撃事件など
私たちの身の回りで立て続けにトラブルが起きたことで
より大きな行事である学年別トーナメントの際にも
何かしらの干渉が行われる可能性が大きいと判断され
すぐに出撃出来るよう待機していてくれと頼まれたのだ。
「来るならこの試合と思ったんだけど…」
「来ないね」
今の所ラウラちゃんには特に異常は起きていない。
とはいえ、彼女は一夏君と和解した日に千冬さんから
お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになれ、と
そういった趣旨の発言を受け取っているので
そもそもあのシステムは起動しないものと思われる。
がしかし他所からの横槍が無いとも限らないので
こうしてスーツを着たまま試合を観戦しているのだ。
何せクラス対抗戦や学年別トーナメントだけではなく
後に控える行事である臨海学校や学園祭なども全て
何かしらトラブルが起きて台無しになっているので
"歴史の修正力"を考えれば油断する訳には行かない。
『打鉄、シールドエネルギーエンプティ!』
『くっ…ここまでか…』
『篠ノ之箒よ、後は私に任せろ!』
試合はそのまま順調に進み、まずは箒ちゃんが脱落。
一夏君のシールドエネルギーを大きく消耗させ
おまけにシャルル君の武器を二挺も破壊するという
彼女としては大健闘の末の脱落であった。
箒ちゃん本人もやりきったという顔をしてる。
この時点で原作から乖離している点といえば
ラウラちゃんと一夏君のシールドエネルギー残量だろう。
ラウラちゃんのシールド消費量がやや多めに
一夏君のシールド消費量が少し控えめになっていた。
『シャルル。1vs1でやらせてくれ』
『いいの?!』
『あぁ。…勝負だラウラ!』
『そう来なくては!さぁ来いッ!』
そして、箒ちゃんが脱落した直後にシャルル君が下がり
一夏君とラウラちゃんによるタイマンが始まる。
両者のシールドエネルギー残量は、一夏君が220
ラウラちゃんが409と零落白夜発動の影響で
少なくない差がつけられてしまっているが
一夏君の闘志の炎はむしろより強まっているようだ。
そして、両者が向かい合い──
『何だっ…!?ぐっ…があぁあ゙ぁぁっ!!』
『ラウラ!?』
『一夏離れてっ!様子が変だ!』
ラウラちゃんが突然悶え苦しんだかと思えば
機体から溢れ出た黒い液体に呑まれていった。
やはり来るのか。VTシステム。
次回、VTシステム戦。
今パート、仕上げを病み上がりの時期にやったので
色々とミスをしている可能性が無きにしも非ずです。
以前のパートと噛み合わない部分などありましたら
報告頂けるとありがたいです。