インフィニット・ストラトスinアイアン…マン?   作:高橋ヒナタ

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起きたので続きを更新。



第3話

 

 

 

倉持技研から廃品や不要な工具類を譲ってもらいつつ

スーツやリアクター、サポートAIの制作を進めていたら

1年などあっという間だった。

 

 

「緊張しているのかい?」

 

「んー、まあちょっとね」

 

私たちは今、倉持技研が主催する技術発表会へ

特別枠として参加している。

 

父は「お前なら大丈夫だ」といって励ましてくれるが

私が心配しているのは私の発表じゃない。束さんの方だ。

インフィニット・ストラトスの基礎理論について

簡単な説明をされた時、父は頑張って聞いていたけど

「かろうじて分からんでもない」と言っていた程なので。

まぁ父はある程度まで理論を構築出来たら

実際に組んでみて作ってみて──って人だから

まだ分からないけれど…。

 

 

 

『では特別ゲスト、篝火ヒナタさんどうぞ!』

 

名を呼ばれたので私から先に壇上へ向かう。

 

それと同時に、実験室を映している映像の方でも

私が組み立てた最新式エンジンが運び込まれる。

 

 

「あー、それでは発表させて頂きますね。これは──」

 

ざっくりと理論を説明し、そしてそれに沿う形で

エンジンを動かしてやればすぐに歓声が上がる。

父の事をよく知る技術者達にとっては

とても馴染みのある発表スタイルだったことだろう。

 

メインは束さんのISとはいえ、この新型エンジンも

既存のエンジンより効率や安全性、整備性などに長け

価格も性能の割には手頃というスグレモノだ。

私は、人に見せるものに手抜きはしない。

 

 

「素晴らしい発表だった!ぜひうちに来ないか?!」

 

「いえ、進路はもう少しゆっくり決めますので…」

 

「あのエンジンを販売して欲しいんだ!我が社に!」

 

「その内倉持が出すと思うので、そちらへお願いします」

 

やはりというか好評なようだ。

 

ここでアークリアクターを出したらどうなるんだろう。

あれはまだ基礎理論を構築したばかりの設計中だけど…。

少し気になる所だが、リアクターを表へ出す気は無いし

誰かが悪用する気なら直々に潰しに行くので。

 

 

 

『2人目の特別ゲスト、篠ノ之束さんどうぞ!』

 

肝心なのはこちらだ。

 

しかし私と違って名前を知られていないからか

観衆の期待は中々高まっていかない。

 

 

「私の発表は『インフィニット・ストラトス』で──」

 

何やら不穏な空気が漂い始める中で束さんが口を開く。

 

これから発表するものが"宇宙開発用"である事を

事前にしっかりと説明しつつ、機体制御システムを担う

P.I.C.や宇宙環境から身を守るシールドの概要を

極力分かりやすく、私が教えた話術も活かして説明する。

 

「「「………」」」

 

しかし、技術者達の表情は逆に曇っていく。

 

その後も、装備品などを量子へ変換して格納する

拡張領域(バススロット)」という画期的なシステムも公表していくが

一向に雰囲気は明るくならなかった。

 

 

 

「………私の発表は以上になります」

 

結局最後まで白けた雰囲気は改善されず。

束さんの発表が終わる。

 

(ダメか…ッ)

 

80年近く技術者をやっている私でさえ理解するのに

束さんの説明が必要だったのだから、一介の技術者では

あの技術を理解することは難しいだろう。

 

私が出直しを考えていた時、1人の技術者が立ち上がり

とんでもない事を口にしてくれやがった──

 

 

 

「倉持からの発表だからと期待してはるばるやって来たが

こんな子供の妄想に付き合わされるとは思わなかった!

倉持社長、何考えてるんです?こんな子供を招き入れて!

篝火君に社長の座を譲ったらいいと思いますよ?!

彼の娘の方がよほど素晴らしい発表をしてくれた!」

 

「!!!」

 

束さんの方から「ギリッ」と音が鳴る。

比喩なんかじゃない。とても、悔しそうな…。

 

まさかの結果だった。大手企業の名を使った事で

虎の威を借る狐だと思われてしまったらしい。

 

 

「束くんと言ったな?ここは子供の遊び場じゃあない!

我々大人が人類の発展について議論し合う場なんだ。

出来もしない妄想を持ち込まないでもらおうか!」

 

「貴様…ッ!」

「束さんダメ!待って!」

 

今にもあの男を惨殺しに行きそうな束さんにしがみつき

何とか最悪の状況を止めようと試みる。

しかし、あの千冬さんでも止められない束さんを

6歳の少女が止められるはずも無い。

ずるずると引きずられてしまう。

 

 

「お願い!これじゃあ束さんの夢まで壊れちゃうよ!」

 

「ッ…クッ…」

 

夢を捨てることになってもいいのかと問えば

かろうじて束さんの動きが止まる。

いくら激怒していても、凡人の策に踊らされて

夢を諦める事になるのは気に食わないらしい。

 

 

「………ひなちゃんに免じて貴様は許してやる」

 

束さんがやっと牙を収めてくれた。

普段の束さんを見ているとあまり想像は付かないけれど

あれでも並の大人を遥かに凌駕する身体能力の持ち主。

彼女がその気になれば首の骨をへし折るのも容易いのだ。

このままいけば何百と人が詰めかけているこの会場で

スプラッタな事件が起きてしまうところだった──

 

 

「はっはっは!いくら吠えようが負け犬の遠吠えだな!

自分より頭のいい年下の少女を前にそのザマじゃあ

お前はまだまだガキだって事だ!はっはっは!」

 

「なっ…なんてことを言うんです!死にたいんですか?!

束さん!ダメですよ!?殺しちゃダメですって!!」

 

「ふん!たかが14の女子に俺が殺されるだって?

篝火…お前俺に喧嘩売ってるのか?!

お前は大人の世界を分かってると思ってたが…

そんな馬鹿1人庇うようじゃ程度が知れるなッ!」

 

 

売り言葉に買い言葉、会場に緊迫感が漂う。

 

こうなってしまえば私に止める手立てはもう無い。

多分千冬さんでも止めきれないだろうから

この世界に今の束さんを止められる人はいないだろう。

彼は殺され、篠ノ之束は終わってしまう。

 

 

 

 

 

「ひなちゃん………帰るよ」

 

 

 

だが、篠ノ之束は止まった。

 

 

 

「たば…ね…さん…?」

 

「……………」

 

ホッとしたのもつかの間。脇に抱きかかえられつつも

彼女の顔を覗き込んでみれば、大粒の涙を流しながら

その瞳の奥に何もかも飲み込みそうなほど深く暗い

まるでブラックホールかのような闇を湛えていたのだ。

歯をギリギリと食いしばり、泣き叫びたくなるのを

必死でこらえながら。

 

完全に私の失敗だった。良かれと思ってやった事が

裏目に出て束さんを深く傷付けてしまった。

彼女より70歳以上も年上だというのに情けない…。

 

 

 

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

 

 

 

 

 

──翌日。

 

 

 

束さんは意外にも特に不調に陥ることはなかった。

まるで昨日の出来事を意に介さないかのように。

 

本編の束さんならそれで普通なんだろうが

何せ昨日あれだけ闇に呑まれていたのだ

それがケロッと復活したら気にもなるだろう。

 

「………ねぇ束さん。大丈夫なの?」

 

「心配ありがと。私は平気だよ」

 

少し声を掛けてみたが、答えはこの通りだ。

明らかに笑顔を貼り付けているのが見え見えだったから

色々と話題を振ってみてソレを剥がそうとしたが

束さんは頑なにその笑顔を剥がしてはくれなかった。

 

私の元老人としての勘からして、あの仮面の裏では

世界を滅ぼせる程の激しい感情がまだ渦巻いているはず。

けれど、結局は見えずじまいだ。

 

 

 

「ISのこと…どうするの?」

 

「まだ作り続けてるよ。私たちの夢を載せた翼だもん。

今度はちゃんと完成させてから発表しようね」

 

「うん。分かった」

 

白騎士事件はどんな形であれ必ず起きるんだろうが

束さんの仮面をこれ以上剥がそうとするのはやめにする。

 

ここまで仮面を剥がされるのを拒むのなら

それは無理やり剥がすべき仮面ではないのだろう。

であるなら、しばらくは優しく接していく事にする。

北風と太陽ってやつだな。

 

 

 

 

 

その後は、特に代わり映えの無い日々が続いた。

 

束さんが隙あらば私の家に上がり込むようになったけど

私は特に気にせず彼女を部屋へ泊まらせたりした。

何を思ったのか束さんはヒカルノお姉ちゃんとも

以前よりだいぶ積極的に話すようになったし

ISやアイアンマンスーツの開発も加速したしで

中々に良い事づくめだ。

 

「あれ、千冬さん?いつのまに…」

 

「一夏と箒の同伴だ。今日は道場が休みなのでな」

 

束さんが入り浸るようになった結果、束さんを追って

箒ちゃんや一夏君が、そしてその2人を追って千冬さんが

頻繁に我が家を訪れるようになったので

毎日毎日やたら賑やかになったのもまた良い事だろう。

 

 

「うおぉーっ!アイアンマンじゃん!すっげー!」

 

「ダンボールとはおもえないです」

 

ついでに、少し前から段ボールと木材で組み立てていた

アイアンマンスーツのプロップとでも言うべき衣装を

一夏くん達にもお披露目する。

 

成長後を見据えて身長や体型は成人女性の平均を用いてて

今の私には着られないので、スーツアクターは私の母だ。

とはいえ、母は母で何がとは言わないが"デカイ"ので

一部のアーマーがキチンと装着出来ていなかった。

姉さんも現時点で中々のスタイルを手に入れているし

もしかして私もそれくらい成長するのだろうか…?

だとしたらその辺考慮して設計を少し見直さないと。

 

「パワーアシストとかは入ってるの?」

 

「いいえ、パワーアシスト自体は入っていないです。

でも装置を組みこむスペースはかくほしてます」

 

「前は見えているのですか?」

 

「見えてますよ〜千冬ちゃ〜ん」

 

アーマーは好評だったようで、特に一夏くんは大興奮だ。

さすがは男の子。ロボットものには興味があるんだね。

私も前世じゃガンダムとかも大好きだったし。

特にユニコーンガンダムが好きだったから、もしかしたら

ガチャガチャとメカが動くのが好きなのかもしれない。

アイアンマンmk.5?大好きですよそりゃあもう──。

 

 

 

「どう?お父さんから貰ったパソコンは使ってる?」

 

「うん。大かつやくだよ」

 

アイアンマンスーツのプロップが出来ているように

父を経由して倉持技研から譲ってもらったパソコンにも

J.A.R.V.I.S.のプロトタイプとでも言うべき

人工知能の試作品が組み込まれている。

 

「これがそうなんだ…まだ未完成みたいだけど」

 

「まぁ市販品にインストールしてる訳だからね」

 

業務用とはいえCPUもメモリもストレージも市販品なので

音声は発さないし出来ることも多くは無いが。

 

 

「下手なアクロニムだけど…『J.U.P.I.T.E.R.(ジュピター)』だよ」

 

「確かひなちゃん英語出来たよね」

 

「普通に出来るよ。でもなんか無性に気に入ったんだ」

 

アクロニムの完成度の低さを指摘されるが仕方ないだろう

このアクロニム、前世の私がまだ英語を覚えたての頃に

四苦八苦して組んだものなのだから。

 

エイジ・オブ・ウルトロンでF.R.I.D.A.Y.の他にも

曜日の名前を冠したサポートAIが一瞬だけ映ってたから

「W.E.D.N.E.S.D.A.Y.」とか「S.A.T.U.R.D.A.Y.」とか

そんな感じのにしようかと思っていたのだけれど

中々思いつけなくて、じゃあ曜日を惑星に置き換えて

そっちで作れないかと試してみて、その中から

しっくり来たのが「J.U.P.I.T.E.R.」だった訳だ。

 

 

「外付けハードディスク余ってるから幾つかあげるね」

 

「いいんですか?!ではありがたく…64PB?!」

 

「ふふん♪エクサバイト級を自作したから余ったんだ♪」

 

そんな感じでパソコンの中身を一通り見せてあげたら

期待出来そうなものを見せてもらったからね、と言って

束さんが恐らくは拡張領域の応用品なのであろう収納から

自作品のハードディスクやCPUなんかを譲ってくれた。

 

これがあればスーツ制作やJ.U.P.I.T.E.R.完成も

大幅に早まることだろう。実に有り難い。

 

 

 

 

 

╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌╌

 

 

 

篠ノ之神社裏山の極秘ラボにて。

 

 

 

「…絶対に完成させて…奴らを見返してやる…!」

 

 

束はあの日以降、家に帰ればすぐラボに篭もり

インフィニット・ストラトスを完成させるべく

白騎士と向き合い続けていた。

 

自分の発明を子供の妄想とバカにされたからというのも

大きな行動理由のひとつではあったが、彼女の中で

特に大きな原動力となっていたのが、この世界でただ一人

自分の話に着いて来れそうな友人として千冬と同レベルで

大切に想っていた少女が、下手に意地を張ったせいで

見る目が無いと蔑まれてしまった事にあった。

 

(凡人共に何を言われようと私は別に構わない…でも

あの子を悪く言うのは許さない)

 

その子に出会ったのは、千冬の友人だという少女から

話が合いそうな子がいるから会いに来ないか?と

言われて、仕方なく会いに行った時だった。

 

けれど実際にあってみれば、自分の話に着いてこれるし

威圧的な態度に一切物怖じしない面白い子だった。

ちゃんと寝ているの?とか、ご飯は食べてる?とか

田舎のお年寄りみたいな事を何度も言われたものの

自分のことを心配してくれているのがよく分かる

とても優しい話し方だった。

 

会いに行くたび、話をするたびに好きになっていき

気付けばもう1人の親友になっていった。

 

 

「………これを完成させて、ひなちゃんに謝らなくちゃ」

 

そんな親友に今自分がしてあげるべき事は

IS──インフィニット・ストラトスを完成させて

私の理論が、あの子の見る目が間違っていないのだ、と

世界に示してやる事。

 

 

「…あまり無茶はするなよ」

 

「分かってるよちーちゃん。あんまり無茶しすぎると

また"おばあちゃん"に怒られちゃうからね」

 

「そうか。ではそのままそっくり伝えてこよう。

『おばあちゃんに怒られたくはない』と言ってたとな」

 

「あー待って待って!そんな伝え方しないで!」

 

「なら適度に休むことだな」

 

はぁ〜い…

 

"親友1号"も内緒で手伝ってくれているのだ。

尚のこと成し遂げねば。

 

 

 

 

 

しかし、そんな少女達の想いを嘲笑うかのように

インフィニット・ストラトスは別の価値を見出され

歪な形で世に出ていく事になる。

 

 

 

「──ちーちゃん!!これ…っ!!」

 

「ミサイルが接近中…だと?!」

 

 

 

そう。白騎士事件が、起ころうとしていた。

 

 

 





ジュピターのアクロニムの内容は一応あります
ただ、それで成立するかあんま自信ないんで
どうしてもって言われたら公開します。

書き溜め分はだいたい2話分ずつまとめて
反応を見つつ公開していこうかなと思っとります。
早くアイアンマンスーツの活躍を見たいって?
もう少し、もう少し待ってくれ…!

本作に2期(GX版8巻以降のオリジナルストーリー)は要る?

  • 要る(時間を掛けてでも書いてくれ!)
  • 要らない(8巻で綺麗に終わらせてくれ)
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