【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞 作:牢吏川波実
この前の話を投稿した後で、自分は誰かに見てもらえる小説を書いているんだ、そう実感できました。
永遠に自分は未熟者かもしれません、ですが、その未熟な部分を少しずつ改善し、これからも読者の皆様に楽しんでもらえる小説を書いていこうと、そう、改めて身に刻み込めました。これからも、誠心誠意執筆してまいります。
誰かが面白いと思ってくれる。そんな作品を作るために。
一瞬だけ、眩暈のようなものが、彼、そして彼女たちを襲った。しかし、それも一瞬だけのものですぐに慣れてしまったのか周りの事をよく観察できるほどの余裕が出てくる。
そして、その瞬間に八人が見た光景は―――。
「うわぁ……」
「こ、ここが!」
「≪シンギュラー≫の、向こう……」
昔、こんな言葉を書いた文豪がいる。『長いトンネルを抜けるとそこは雪国であった。』その言葉を借りるとするのならば、そう拙い言葉でも借りれるのだとしたら、それは。
巨大な虚空を抜けると、そこは―――。
「ドラゴンの、世界」
であった。
この世界、通称ドラゴンの世界にきてから十数分。彼女たちは空の上で待たされることとなった。ドラゴンの一匹が言うには、自分達のリーダー的な存在にあるドラゴンに自分達が話をしたいという旨を伝えなければならないらしい。
それにしても、なんてすごい景色なのだろう。一面に広がる綺麗な緑に生い茂った森に、白い地肌の巨大な崖。それから、流れ落ちる怒涛のような水によって出来上がった滝によってつくられた滝つぼの迫力は、以前白亜紀の時代に赴いた際に落下したソレを凌駕する迫力があった。
≪七人≫の男女は、その景色に目を奪われて、周りを飛び回っているドラゴンには一切気を使っていなかった。
「……」
そう、唯一人エルシャを除いては。エルシャは、万が一のことを考え、アサルトライフルの引き金から手を離していなかった。もしドラゴンが襲ってきたら、もしも≪ガレオン級≫が光弾を放ってきたらすぐに対処できるようにと、そしてすぐに逃げられる様に逃走経路を考えている。そんな、彼女に周りの事なんて見ている余裕はなかった。
この面子の中で、一番年上、と言ってもまだのび太たちの世界で言うところの高校三年生に当たる十八歳であるが、ソレはもはや義務的な物であると感じていたのだろう。
「エルシャ大丈夫!」
「え?」
しかし、その緊張も、ヴィヴィアンの言葉によって解かれてしまう。ヴィヴィアンは明るい声でさらに言う。
「なんでかはわからないけど、あたし全ッ然怖くないもん!」
「ヴィヴィちゃん……」
「それに、なんだか、懐かしい匂いがする……だから、きっと大丈夫!」
「……そう」
エルシャは、彼女の言葉に笑顔で返した。エルシャには≪アルゼナル≫で育った≪ノーマ≫には珍しい思いやりがあったから。
そう、同類なのだ。自分もヴィヴィアンも。≪アルゼナル≫で過ごしていると、必ず些細なことで喧嘩を起こす短気な≪ノーマ≫や、自分の人生に悲観している≪ノーマ≫を何人も見て来た。でも、その中でもヴィヴィアンと自分は異質。
能天気と言うか、いつも明るい笑顔を振りまいてくれる、このおてんば娘のヴィヴィアンには本当に頭が下がる。考えてみれば、彼女もまた、のび太と同じでお人よしと言うか、人懐っこいと言うか、だからこそ自分は彼女の事をとても気にしていたのだろう。
そして、それはアンジュもまた同じだった。≪アルゼナル≫では自ら他人に壁を作るような言動を振りまいて、他人と関わらないようにしてチームワークを求められる任務であったとしても単機で行動して、無茶をする。
そう、≪アルゼナル≫の中でも異質の≪ノーマ≫と、守ってあげなければならないと思える≪ノーマ≫。それが、ヴィヴィアンとアンジュだった。
その二人がいたから、エルシャは緊張を解くことができなかった。守ってあげなければならない。そういう思いやりがあったからこそ。でも、だからこそ、そのヴィヴィアンからの言葉に、彼女は引き金から手を引くことができたのだ。大丈夫。あの子が言っているのなら、きっと大丈夫だと信じて。
『お待たせしました。こちらです』
「ッ!」
と、その時。ドラゴンの内の一体が、そんな言葉を発し、全部のドラゴンが一直線にある方向を目指す。それに、のび太たちもまた一緒についていくために、そのエンジンをふかしていく。
「行かなきゃ……ダメなのよね……」
「ちょうど燃料も切れてきたし、ここまで来たら行くっきゃないでしょ」
「そうね」
エルシャは、やはり迷っていたものの、アンジュからそう言われて意を決して前に進むことに決めた。
彼女たちの≪パラメイル≫は、メイルライダーが任務中に逃走することを防止するために、一度の出撃で帰って来れる分しか燃料が積まれていない。故に、もうそろそろその燃料が切れ始める頃合いであったのだ。
だが、そういう建前はともかく、彼女たちは知りたかった。知らなかった、知ろうともしなかった事実。彼らが機会をくれた。それに運命めいた彼女たちは、前に進むことにした。真実に至るための、大切な一歩を。
そして、それから数分後の事だった。
「あ、あれは……」
「宮殿!?」
彼女たちの前に現れたのは、まさしく宮殿であった。それまで彼らが見ていた滝がかわいく思えるほどに大きな滝に囲まれた、ほとんど円形の都。その中には≪三つ≫の小さなデコボコとした山が、小さいのと、中くらいのと大きいのと、三つ等間隔に並んでいる。ソレに大きな山が他に二つほどある。
ふと、のび太はその丸い都に既視感のような物を覚えた。何だろう。この配置に覚えがある。でもどうしてそう思ったのかよくわからなかった。けど、のび太はなんだか、懐かしい気持ちになった。
まるでそう、遠い昔に見て来た友達の故郷に、もう一度戻ってきたかのように。
そして、彼らが目を奪われたのはもう一つだけあった。それこそ、その宮殿の前に立っている、≪数人の女性≫。それに初めて気が付いたのは、スネ夫だった。
「それに、あそこに見えるのって!?」
「人……間?」
アンジュは、信じられなかった。このドラゴンの世界に、住んでいる人間がいたこと。
そして、それと同時に、どこかで疑問が確信に変わったような気がした。“動物語ヘッドフォン”、それは一方通行の“ひみつ道具”、だと思う。ソレを使って、ドラゴンの言葉を理解しても、自分たちがドラゴンに伝える言葉は彼らの言葉に翻訳はできないはず。そう、もしドラゴンが人間の言葉を理解し、そして人間と常に接してその言葉を理解できるような知性を持った、生き物だったのではなければ、考えられないこと。
「よっと! うわぁ!?」
「ヒィッ、ま、またぁ!?」
ヴィヴィアン、スネ夫とほぼ同時に≪パラメイル≫から飛び降りると、すぐさまその場にいた女性たちに取り囲まれ、剣や槍でけん制される。その姿はまさしく≪アルゼナル≫に来た時のそれと同じようだったので、スネ夫は手を挙げて自分たちには交戦の意思がないことを示す。
「あなた達、騙したのね!?」
と、憤慨しながら太ももに常備されていた拳銃を抜いたアンジュとエルシャ。しかし、その引き金が引かかれることはなかった。
「いえ、騙したわけではありません。ただ、念には念を入れませんと……特に貴方たち三名は、私たちの仲間の命を奪った、この世界の者にとっては仇と言ってもいいですから」
「ッ!?」
と言って現れたのは他の人間とはまた別の、どこか自分と同じ雰囲気を持っている女性だった。そんな人物が出て来たからかアンジュ、並びにエルシャもまた己らが向けていた拳銃を下げる。
でも、それ以上に気になった言葉があった。≪仲間の命≫、その言葉に似た言葉は確かに向こうの世界でもドラゴンたちに言われた。そう、≪ドラゴンたち≫だ。だったら、どうして目の前の人間にも、同じ言葉を吐かれるのか。アンジュは、ふと何か思い当たるような気がした。しかし、結局答えに辿り着くことはなかった。
それはまるで、彼女自身の心がその答えに辿り着くのを拒否しているかのように。
「ようこそ、偽りの地球の民よ」
「偽りの……地球?」
「話は既に先行した者達から聞きました。大巫女様のところへと、案内します」
≪大巫女様≫。それが彼女たちのトップなのだろうか。でも、偽りの地球とは、一体何のことだ。自分たちが生まれ、育った。あの地球の事を言っているのか。でも、偽りという事は、本当の地球は、一体どこにあると言うのか。
そんな次々と生まれる疑問をよそに、女性は宮殿の方に向おうとしていた。それと同時に、刃物を構えていた女性たちもまた、周囲を囲んではいるものの、しかし武器を収めて一緒に歩いていく。
「ちょっと待って! 貴方は、一体……」
そんな彼女に向けて、声をかけるのび太。その言葉を聞いた女性は、立ち止まると、振り向き、そして笑顔で言った。
「申し遅れました。私は、近衛中将サラマンディーネ。貴方達が、ドラゴンと呼称するモノの、一人です」
「ドラゴンの……一人?」