【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 分かっていた事ですが、やはりラスボスの扱いについては慎重にならなければならないと再認識しました。
 もう一度、その部分をよく考えたいと思います。まだ、話数的にも余裕があるので。


chapter20 始祖アウラと絶望と光

「うわあぁい!」

 

 サラマンディーネが淹れてくれたお茶を飲んで十数分後。彼らは、空高くにいた。その足下に≪ガレオン級≫の頭を土台にして、空中を滑空する。

 とても爽快な風が顔に当たり、それがとても心地よく、この地球がとても汚染された星には思えなかった。≪パラメイル≫に乗っていた時にもその涼やかな風は感じていたけれど、でもこうして生き物の上に乗って感じる風は、どこか格別な印象を彼らにもたらしていたのだ。

 いや、生き物じゃない。人間だ。自分たちはいま、この世界で暮らす人間の一人に乗せてもらっているのだ。ソレを噛みしめながら、彼らは眼下に見える民家を見ていた。この数。かなりの人間がこの世界で暮らしているようだ。

 恐らくその中には、≪自分たち≫のせいで空き家となってしまった家も、あるはずだが。そう、感じながら体育座りで俯いているアンジュに、エルシャは笑顔で言った。

 

「まさか、ドラゴンに乗る事になるなんて、夢にも思わなかったわね……」

「えぇ、そうね……」

 

 と、話をごまかすように、彼女に呟いた。

 もしかしかしたら、最終手段。≪パラメイル≫が破壊されて自殺覚悟でドラゴンに飛び移って手持ちの銃で攻撃する、なんてことはあるかも知れないとは思っていた。でも、こんな穏やかな気持ちでドラゴンの上に乗ることができるなんて思ってもみなかった。

 エルシャは、そう思いながら、でも、心の中ではやっぱり整理がつかないままにアンジュに聞いた。

 

「アンジュちゃん、まだ気にしてるの?」

「何について?」

「……全部」

「……上手く、考えられない……」

 

 そう、考えられなかった。怒涛のように押し寄せた情報量に、脳が理解するのを拒否していたのかもしれない。でも、受け入れなければならない時が来るのだ。そう自分に言い聞かせる。そして。

 

「それは、エルシャも同じでしょ?」

「……」

 

 自分の行って来た過ちを、悔い、そしてその罰を受けなければならないのだ。確信にも似た嘆き。

 

「アンジュさん……エルシャさん……」

 

 静香は、声をかけるべきか迷っていた。その時だった。

 

「着きました」

 

 と、サラマンディーネが言ったのは。サラマンディーネが指し示す方向にあった物。それは、アンジュにも見覚えのあるものだった。いや、どちらかと言うと、その≪元の状態≫の方に見覚えがあった。

 

「≪暁ノ御柱≫?」

「あけのみはしら? なんですそれ?」

「ミスルギにもあったのよ。あんな塔が」

 

 ミスルギ皇国。それは、アンジュが皇女として暮らしていたかつての故郷。そして、そこにあったのが今自分たちの目の前にある≪暁ノ御柱≫であると言う。彼女が言うには、ミスルギ皇国の皇宮にあり、シンボルタワーとしてソレを中心として様々な行事を執り行われていた物であるそうだ。

 

「アウラの塔。かつての、ドラグニウムの制御システムですわ」

「え……」

 

 だから、そんな事に使う塔であるなんて、彼女は知らなかった。いや、知る由もなかった。少なくとも、あの世界の事、この世界の事を何も知ろうともしなかった彼女にとっては。

 

「ドラグニウムが発見されたのは、二十三世紀中盤の事です」

「ぼ、僕が生まれたずっと後だ!」

 

 と言いながら、サラマンディーネは建物の中を歩いていく。因みに、ドラえもんが産まれたのが2112年。つまり、二十二世紀の前半の事であるので、ドラえもんの反応も正しい。

 サラマンディーネも、ソレに頷くと、ある場所で止まった。そこには、何か操作パネルのようなものが置いてあって、ソレに彼女が触れると、円形の台が光り出し、まるでエレベーターのように下に下にと降りていく。

 

「世界を照らすはずだったその光は……いつしか、戦争へと使用されました。そして、人類社会は滅びを迎えたのです」

「ッ……」

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間達は、新天地を求めて旅立ちました」

「つまり、地球の外に出たって事?」

 

 と憶測を論じたドラえもんに対し、サラマンディーネは首を横に振って言う。

 

「もう一つの地球へと、旅だったのです」

「それが、私たちの地球……」

 

 と、アンジュが唖然とした表情で言った。エルシャが、そんな彼女に変わって行った。

 

「もしかして、ソレって私達のご先祖様だったりして?」

「さぁ、分かりません。残された人類は遺伝子操作によって、生態系ごと作り変わった。ソレこそが、ドラゴン。そう、説明しましたね」

「えぇ」

 

 そして、そのドラゴンたちを殺していた。人間を、殺していた。まるで改めて念を押すかのように、そして罪をアンジュたちに自覚させるように言ったサラマンディーネ。

 エレベーターはそのうち、≪アウラの塔≫の恐らく最深部と思われる場所に到着し、止まった。

 

「うひゃ、だだっ広いところだぜ」

「ここに、アウラがいたのです」

 

 と、サラマンディーネが説明する。ジャイアンの言う通り、そこにはあまりにも巨大なスペース。高級マンションが何棟も入りそうな円柱状の巨大な穴が開いているだけのだだっ広い空き地がそこにあるだけだった。

 

「アウラ……でも、人間なんでしょ? 確か。どうしてこんなに大きなスペースが必要なの?」

 

 確かに、アンジュの疑問ももっともだ。アウラとは、あのノビザウルスランドを発掘し、人間たちが汚染された地球で暮らすことができるようにと遺伝子改造を施した人物。それだけであるのならば、こんなに大きなスペースなんてあっても宝の持ち腐れ、と言うところじゃないだろうか。

 

「手を、重ねてください」

「え?」

 

 と言って差し出したサラマンディーネの手に、何の疑いもなく手を重ねていくドラえもん組。そして、エルシャ。

 

「こうかしら? ほらアンジュちゃんも」

「……」

 

 エルシャに促されて彼女の後に手を置いたアンジュ。そして、その瞬間であった。

 

「うわぁ!?」

「な、なんだこれ!?」

 

 金色の光に包まれた、真っ白い巨大なドラゴン。そう、≪始祖アウラ≫が降臨したのである。

 

「バーチャル映像。いや、僕たちの脳内に直接映像を映してるのか!?」

「その通りです。アウラはドラグニウムの発見者の一人にして自らの肉体を改造して汚染した世界に適応する事を証明した、偉大なる始祖。貴方達の言葉で言うなら最初のドラゴン……ですね」

 

 そうだ。考えてみれば分かることだったじゃないか。汚染された環境であるこの地球に適応した姿であるドラゴン。それを開発、研究し、そして遺伝子操作を施した当人が、ソレをしないわけがない。彼女は最初に自分自身を遺伝子操作することによってその安全性と、利便性。そして、自らがこの世界のいわば神様になったことによって、この世界を確立させたのだ。

 

「発見者の、一人?」

 

 ふと、のび太が疑問符を呈した。そう。発見者の≪一人≫だ。つまり、アウラの他にも誰かが一緒にドラグニウムと言う物を発見したことになる。

 

「共同研究を行っていたチームがあったのです。その中でも有名なのが、始祖アウラとフィオナ。その助手のジョン。そして……」

「そして?」

 

 その言葉を最後に、彼女は苦々しい顔をして説明は終わってしまった。

 この時、ドラえもんの脳裏に何か浮かび上がる物があった。その名前の組み合わせ、以前どこかで聞いたことがあるようなないような。でも、彼はついぞ思い出すことができなかった。当然だろう。

 なぜなら彼らは、その一方の人物に会ったことがなかったのだから。その人物の事を、文字でしか、知らなかったのだから。そして、もう一人の名前もまた、偽名でしかほとんど知らなかったから。

 

「私達は罪深き人類の歴史を受け入れ、贖罪と浄化のために生きると決めたのです。アウラと共に」

 

 と言って浮かび上がった映像はまた別の場面になった。青空の下で、多種多様のドラゴンが空を飛ぶ光景。その中には、≪アルゼナル≫でドラゴン狩り、いや人間狩りを行っていたアンジュやエルシャも知らないような種類のドラゴンがたくさんいた。

 ≪アルゼナル≫の人間たちにとって、それまでに交戦記録のない、データの全くないドラゴンは初物とされ、それと戦ってデータを取るだけでも特別ボーナスが支給されることになっている。今、自分たちが見ているこの光景を≪アルゼナル≫に持って帰れば、それだけで一体どれほどのお金が手に入ることか。エルシャは、そう現実逃避するかのように思っていた。

 とその時≪ガレオン級≫のドラゴンの一体が崖の上に着くと、そこから生えている紫色の結晶を食べ始めた。

 

「あのドラゴン、何か食ってんぞ!」

「あれが、汚染されたドラグニウムです。ソレを体内に入れて安定化させ、結晶化してるのです」

「要するに自分たちの身体を濾過装置みたいなものにしているってこと?」

 

 と、自分たちの時代の言葉で例えたドラえもんに頷くと、サラマンディーネはさらに続ける。

 

「そう、私達はアウラと共に、浄化と再生への道を歩み始めたのです」

「ッ!?」

 

 と、その時だ。エルシャの顔色がこわばったのは。それは、映像の中に、子供たちが映った瞬間だった。背中から羽を、おしりからは尻尾を出して、嬉しそうにはしゃいでいる子供たち。ソレを見た瞬間、エルシャは愕然として崩れ落ち、サラマンディーネから手を離してしまった。

 

「ですが……」

 

 それと同時に、映像もまた終了し、元のだだっ広い空間に戻ってきてしまった。まるで、エルシャの気持ちを察したかのように一度目をつぶった彼女は言った。

 

「アウラは、もういません」

「どうして?」

「連れて行かれたのです。ドラグニウムの発見者の一人であり、≪ラグナメイル≫を生み出し、世界を破壊し、捨てたすべての元凶……」

 

 歯を食いしばったサラマンディーネは叫ぶかのように、はたまた自分の怒りを表すかのように言った。

 

「エンブリヲによって!」

「エンブリヲ? それって、確か……日記にあった……」

「日記?」

「はい、僕たちがいた無人島で見つけたんです……そこにあった≪パラメイル≫を、僕たちはコピーして……」

 

 無人島。この言葉に反応したアンジュ。まさか、ひょっとすると。そう考えたアンジュは言う。

 

「その日記、今持ってる!?」

「あ、はい! えっとえっと……これです!」

 

 と言って、ドラえもんは一冊の日記を取り出す。それを奪うかのように取ったアンジュは。その中身を見た。

 

『モーガンさんが死んだ。これで俺は一人になった。無理だったんだ。≪エンブリヲ≫に戦いを挑むなんて。世界を壊そうだなんて。何をしても一人。孤独に気が狂いそうになる。人は、一人では生きていけない』

『今日。女の子が流れ着いた。≪ヴィルキス≫とともに。かなり狂暴で、人の話をまるで聞かない女の子だけど、≪アンジュ≫は……光だ』

「ッ!?」

 

 やっぱり、これは、あの男の、タスクの日記だ。自分がかつて、仲間のイタズラ―にしては度が過ぎる物―によって流れ着いた島で出会った、あの男性の日記。彼女は、続きを読む。

 

『外の世界から差し込んだ光。父さん。母さん。彼女を守る。それが俺の、俺だけの使命……』

「あいつ、そんな事……考えてたんだ……」

 

 あんなことをしておいて。その時だ。アンジュは、ようやく笑みをこぼした。この世界に置いて、この、混乱する世界に置いて初めてとなる笑顔を。




 ドラえもん好きならこの時点で『あぁそういう……』と思われると思いますし、私がなぜ、ドラえもんとクロスアンジュは合いやすいのではと思った理由でもあります。
 要するにこういうこと。
 ↓
 クロスアンジュ放送当時、ドラえもんとのクロスオーバーは実現不可能と思われていた。だが、今は違う!
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