【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 恐らく、夏休みから帰ってきた皆々様。
 しかし、のび太くん達の夏休みはまだまだ続くようです。


chapter21 文明の真実と死の憎しみ

 日記は、アンジュの懐にしまわれることになった。これ以上他人に読まれたくないから、というか、書かれている内容的に他人に見られたくなかったから。あまりにも自分が狂暴だとか光だとかこっぱずかしいことが書かれているので、他人には見せられなくなったのだ。

 と言っても、もうドラえもんにはその中身を知られているわけなのだが、ともかく話を戻して、サラマンディーネは言った。

 

「……アンジュリーゼ、あなた方の世界、どんな力で動いているか知っていますか?」

「≪マナの光≫よ?」

 

 そう、≪マナの光≫。それを使えることが、アンジュの世界でのステータス。ソレを使えない人間が差別され、僻地に送られ、≪ノーマ≫という人種にされてこちらの世界の人間たちと殺し合いをさせられる。

 その≪マナ≫は、まさしくアンジュの世界の文明を構築していた。だからこそ、≪マナ≫に依存して、多くの物事をわざわざ自分の手を動かしてするという事はほとんどない。それはまさしくドラえもん達がかつて救った、チャモチャ星のように。

 

「そのエネルギーは?」

 

 エネルギー、そんなこと考えたことがなかった。なぜならずっと教え込まされていたから。≪マナの光≫は無限のエネルギーなのだと。≪マナ≫にできないことはない。≪マナ≫があれば、何もいらない。そう、教え込まされてきた。

 

「マナの光は、無限に生み出されるって……ッ! まさか!」

 

 無限のエネルギー? そんなもの存在しない。≪ヴィルキス≫を動かすのに燃料が必要であるように、自分たちが生きていくために食料を必要とするように、何者においてもエネルギーと言う物が必要となってくる。

 そう言えば≪モモカ≫が≪マナ≫を使っている時に疲れている様子なんて微塵も感じなかった。自分も、≪モモカ≫の≪マナ≫に頼り切りで自分が≪ノーマ≫であったことすらも気が付かない大バカ者となってしまった。

 だからこそ知らない。そのエネルギーが体内から出ている物なのか、それとも―――。

 

「そうか! そのアウラってドラゴンからエネルギーを抽出してるんだ!」

 

 外部から供給されているのかも。その事実に気が付いたのは。ドラえもんだった。

 

「どう言うこと?」

「さっきの映像を見ただろ、のび太君? あの大きさ、きっと体内にとてつもないエネルギーを隠し持っていたはずだ!」

 

 確かに、のび太は思い出す。あの、≪母親≫のように大きくそしてとても真心が籠ったようなその姿を。あの巨体ならばきっとその体内に宿っているエネルギーは相当なものになるはずだ。

 

「でも、そのエネルギーがずっと続くことはない……アンジュさん」

 

 そう、永久機関なんて物は存在しない。もしも存在するとしたら、歴史的な大発見だ。今まで何十何百何千もの研究者が探求してでもたどり着けなかったソレに、彼女たちの世界の人間が辿りつけたか。否だ。≪マナ≫に頼りきりだった世界の人間がたどり着けるわけがない。それには、からくりがあったのだ。

 ドラえもんは、呆然自失のエルシャではなくアンジュに聞いた。

 

「な、なによ?」

「殺されたドラゴンは、その後どうなるんですか?」

「そうね……小さいのはともかく大きいのは、この前、島に流れ着いた時に運ばれていくのを……ッ!」

 

 その瞬間、アンジュにもドラえもんが何を言いたいのかはっきりと分かった。そう、さっきサラマンディーネは言っていたじゃないか。男のドラゴンは、汚染されたドラグニウムをその≪体内≫に入れることによって結晶化し、浄化していると。

 

「そう、そのドラゴンの中にはきっと、浄化されたドラグニウムが大量に保管されていたはずだ!」

「ま、まさかそのドラグニウムをアウラって人に……!?」

 

 エルシャは、ようやくその目を覚まし、衝撃の事実にやはり言葉を無くした。もし、これが事実だとすると、自分たちは人間社会の歯車を回すためのエネルギーを回収するためのただの駒だったことになる。

 自分たちの役割は、≪マナ≫を使えず役にも立たない≪ノーマ≫が、人間社会にドラゴンを招き入れないための戦いだと、そう思っていた。それでも、生きる目的があるのだと、そう考えて戦って来た。

 でも、違った。その真相は、もっと闇が深いところにあったのだ。なんてことはない。自分たちはただ、アウラの同胞たちの命を奪い、その同胞の命をアウラと言うエネルギー源に送るための道具だった。ここまでひどい道具の使い方が、あるだろうか。いや、ない。

 自分たちがドラゴンを狩れば狩るほどに、アウラや、彼女たちから仲間を奪うだけじゃない。≪始祖アウラ≫もまた、同胞たちの命を差し出されると言う屈辱を味わわされてきていたのだ。

 

「その通り。それが、貴方達の戦いの意味」

「ッ!?」

「あなた達が命懸けで戦う真実」

「そ、んな……」

「それじゃ、これまでドラゴンが……貴方たちの仲間がアンジュさん達の世界に来ていたのは……」

「アウラ奪還の為、時折部隊を編成し、あなた達の世界に特異点を開き、侵攻した。その逆も然り、ドラグニウムを継続的にアウラに与えるため、向こうの人間が特異点を開いた……それが、真実です」

 

 つまり、アンジュたちの世界にいるはずのアウラを探し出すためにドラゴンを送り込んでいた。そして、アンジュたち≪アルゼナル≫の面々は、その大事な任務を阻害するための邪魔ものだった。だから、戦っていた。

 そして、向こうの世界にはその全てを理解した上で、ドラゴンたちを向こうの世界に送り込んでいる人間たちがいた。全ては、自分たちが楽な暮らしを続けるために。そう言う事だったのか。

 その程度の事で、自分たちは、命がけの戦いをしていたのか。

 

「……」

「分かっていただきましたか? 偽りの地球、偽りの人間、そして偽りの戦いの意味が……それでも」

「え?」

 

 言葉に詰まっていたアンジュに対し、サラマンディーネは問うた。エンブリヲたちが逃げ出した地球。エンブリヲがアウラを攫う事によって供給されたエネルギー源で自分たちに何の疑いも持たずに過ごしていた向こうの地球の人間たち。そして、そのアウラのエネルギーを持続させるための、大義なき戦。その意味。

 ソレを知ったうえでもなお。

 

「偽りの世界に帰りますか?」

 

 あなたは、まだ、≪殺し続けますか≫? と。

 アンジュは、数秒だけ言葉を出すことができなかった。その間、ドラえもんや、エルシャ達はアンジュの言葉を待った。いや、待つしかなかった。ドラえもん達にとっては、彼らにとって手出しすべきではないとてつもない問題だったから。エルシャは、まだその問いに対して答えを出す勇気がなかったから。

 そして、アンジュは問いに対して問いで返す。

 

「もし、そうと言ったら?」

「あなた方を拘束するしかありません。これ以上、私達の仲間を殺させるわけには参りませんから」

「……」

 

 それはそうだろう。自分達はこれまで多くの彼女の仲間たちを殺めて来た。その真実を知ってもなお、彼女の仲間を殺し続ける道を選ぶ人間を、元の世界に送り返したりなんてしないだろう。

 でも、自分の世界は、向こうの世界、ドラゴンを殺し続けなければ生きていけない世界なのだ。そこが、自分の、自分たちの故郷なのだ。いや、そんな建前とか、言い訳なんてどうでもいい。どう答えればいいのか分からなかったのだ。

 全てが偽りに満ちたあの世界と、彼女の語る本当の世界と言う不確かな真実。そのどちらを頼りにするのか。いや、どちらを選べばいいのか。

 分からない。分からないからこそ、誰も答えを出せないのだ。

 それが、≪命を張る≫という事。≪命を懸ける≫という事。

 

「アンジュちゃん……サラマンディーネさん。一晩……いえ、しばらくの間、考えさせてもらえませんでしょうか?」

「エルシャ!?」

 

 と、悩んでいるアンジュに対してエルシャが助け舟を出す。いや、正確に言えば彼女も考える時間が欲しかったのかもしれない。今後の事を。自分自身の戦いの意味。その結果、そして自分が本当に守るべきものが何なのかを。

 

「いろいろ話を聞いて疲れたでしょ? しばらく彼女たちにお世話になって……その間に考えましょう?」

「その方がいいわ、アンジュさん」

「腹も減ったしよ」

「あ、僕も……」

「色々あってもうくたくただよ~」

 

 と、静香たちもまたエルシャの言葉に同意するかのように言った。

 

「では、こちらへ」

 

 サラマンディーネは、再びあのエレベーターのある円形状の場所へと向かおうとする。そんな彼女の背中に向けて、アンジュは叫ぶ。

 

「待って!」

「なんでしょう?」

 

 これだけは、ただ、これだけは聞いておきたかった。戦いの意味がどうであれ、彼女たちの使命が何であれ、ただ、このことだけを聞かなければ自分の中の考えはまとまることはない。

 だから―――聞いた。

 

「貴方達の目的はわかった。でも、そのせいで一体何人死んだと思ってるの!? ココ・リーヴにミランダ・キャンベル、ゾーラ・アクスバリ! 他にも、確かナオミって子もいた……」

「ナオミちゃん……」

 

 それは、彼女が殺してしまった三人の少女の本名。本当の名前を返してもらった後の三人の名前。その後にアンジュの口から出た名前は、自分が≪この≫改造されたライダースーツを着る前に本来着ていたライダースーツの前の持ち主の名前。

 最初に渡された時には血が付着してて、ただ名前として≪NAOMI≫と記されていただけの、顔も、声も、何も知らない女性。

 しかし、エルシャは知っていた。自分と同じで、桃色の髪を持ち、誰よりも、もしかしたら自分よりも部隊内の人間関係を気にしていた女の子。十四歳だった。彼女の語ったココやミランダとは幼年部で同期だった。でも、二人よりも先に機体のテストに出ることになって、ドラゴンに急襲されてそのまま海に―――。

 自分も、彼女の墓石を買うときには、まだ配属前でそんなにお金を持っていなかったココとミランダと一緒にお金を出し合って、その冥福を祈った女の子。そうか、彼女は、会ったこともない仲間の事も、覚えていてくれたのか。エルシャは、どこか嬉しいような気がした。

 

「それだけじゃない! たくさんの仲間を殺しておいて!」

「私の世界を守る為です。貴方も同じ立場なら、同じ選択をしたのではありませんか?」

「ッ!?」

 

 もし、自分だったらどうしていたのか。そう言われたアンジュは、その拳を握りしめて、床にたたきつけた。そこから流れ出る血も、構いもせずに。

 図星だったからだ。自分だって、もしも仲間を殺されそうになったら、仲間が奪われたら。≪あの子≫に危険が及んだのなら、絶対に助け出そうと必死になっていたから。例え、何を犠牲にしてでも。だからそれ以上、何もいう事ができなかった。自分には、そんな権利がないと、分かっていたから。

 

「アンジュさん……」

 

 そんなアンジュの事を見て、のび太は何を思ったのだろうか。




 エルシャのこの保護者的立ち位置、ストーリーを進める上で非常に役立ちます。てか、むしろ役立ちすぎてこれ原作未見の人、エルシャいなくて原作でどうやって話が進んだのか分からないのでは?
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