【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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 前回の話のスネ夫のネタの元ネタを当ててくれたヒトがいた。
 やっぱり、あのYouTuber様のおかげでしょう。まぁ、かく言う自分もそこからネタ仕入れてたりしてますし。


chapter27 毎度お馴染み

 サラマンディーネの姿は、大巫女の御前にあった。いつもだったら、そのすぐそばにあるスペースにてその場に来た者の懇願や政をしているサラマンディーネ。

 しかし、こと今回は逆、アンジュたちと同じように赤いカーペットの上を歩いてきた彼女は、片手を突き、片膝立ちで座ると言う。

 

「特異点を、昨日と同じ場所に開くとな?」

「はい。そして、アルゼナルから、子供達を連れて来たいと、向こうの世界の者が言っています」

 

 大巫女に、彼女の、エルシャの願いを。彼女の頼みを。

 

「もし成功できたら、そのままこちらの世界で暮らし、二度と我々の仲間に、危害は加えないと。そう二人は言っています」

 

 この、二人と言うのはアンジュとエルシャの事である。ヴィヴィアンに関しては元々この世界の人間であり、その真実を知った今仲間を殺す必要はないと考えているため、最初からこれからもドラゴンを殺すという事は考えられなかった。

 でも、アンジュとエルシャは、そのことを交換条件に用いることによって交渉を有利に進めようとしているのだ。自分たちの仲間の命の保障と条件に、二度とドラゴンに手を出さないと、宣言することによって。

 

「そんな言葉、信用できるのか?」

「そのままあの島に戻られてしまったらどうなる!?」

 

 と、大巫女の近衛を務める、つまり自分と同じ立場の人間たちからの声が飛び交う。

 確かに、彼女たちの心配ももっともだろう。なぜならアンジュもエルシャも、これまで何人もの仲間を殺してきた憎き相手、そう易々と信用していいのかと。

 でも、もうそう言った次元の話は終わっているのだ。争いが憎しみを産み、その憎しみが新たな争いを産む。ソレを知ったからこそ、アンジュは、もうドラゴンを殺さないと、誓ってくれた。なら、自分もソレに答えなければ。サラマンディーネはその言葉に対して凛とした表情で言う。

 

「彼女、エルシャは子供のことを大切に思っている節があります。言葉に嘘偽りはないと……私は、信じます」

「……分かった。よかろう」

「大巫女様!?」

 

 大巫女は、その言葉に同意した。周囲の人間からは驚きにも似た悲鳴が上がる中、彼女は言う。

 

「その代わり、サラマンディーネ、其方も向こうの世界へ行くのじゃ」

「私も、ですか?」

「そう。もし何か不審な行動を見せた時には……」

 

 念には念を入れなければならない。もし自分たちの事を裏切るようなそぶりを見せるようだったら、背後から彼女たちの事を撃ち落としても構わない。そんな非情とも言える、しかしドラゴンの、こちらの世界の人間の頂に立つ人間としてはごく当たり前の言葉。

 

「……分かりました」

 

 多分そんなことはない。そう思いながら、サラマンディーネはその言葉に同意し、頭を下げる。こうして、恐らくドラゴンと≪ノーマ≫による初めての共同戦線。≪アルゼナル≫の子供たち救出作戦が幕を開けたのである。

 

「時に、サラマンディーネ」

 

 と、その前にだ。大巫女は聞いた。

 

「はい、何でしょう?」

「其方、向こうの者との決闘に敗北してその所有物になったそうだな?」

「な、なぜその話を?」

 

 確か、あれは自分たちの中での話、他には誰もいなかったはずなのに、どうして大巫女がその内輪話を知っているのだろう。そんな困惑にも似た発言をしたサラマンディーネに対して、大巫女はいたずら小僧のような笑みをその陰に移して言う。

 

「フフ、楽しみじゃ。こちらの世界の人間と、向こうの世界の人間。その所有者となったその者が帰ってきた時が……」

「……」

 

 なんだか知らないうちに自分が遊び道具にされている感覚がサラマンディーネには芽生える。

 というか、確かに大巫女の言う通り、考えてみるとこっちの世界の人間つまり自分だが、それと向こうの世界の人間の中でもエースと言われるアンジュの両方を所有することになったエルシャは、とんでもない戦力を持っていることとなる。

 何だろう、いっそ彼女をトップとした国が作られてもおかしくない程に思えてしまうのは。簡単にイメージできてしまう。そんな姿が。少なくとも、子供たちの事を考えて頑張った彼女の姿を見ている自分には、どんな困難にも打ち勝つ彼女の姿がイメージできていた。

 もし、本当に彼女がこっち側の世界で暮らすのなら、それ相応のポストを用意しようか、サラマンディーネは、そしてこの世界に来てからその動向をつぶさに監視するように命じていた大巫女もまた密かに思うのであった。

 

「えぇ、この機体置いてくの!?」

「せっかく乗れるようになったのに、宝の持ち腐れじゃんかよ!?」

 

 と言ったのは、宮殿の外で待っているのび太とジャイアンである。彼らは、自分たちが乗ってきた≪パラメイル≫を指さした。因みにそのすぐ隣には、アンジュとエルシャ、それからヴィヴィアンの≪パラメイル≫。あとサラマンディーネが使う≪龍神器≫と言う物が合計三つ置かれていた。

 そして、のび太たちの困惑に対してドラえもんが言う。

 

「いや、無闇に兵器を持ち込むわけにはいかないよ。僕たちはあくまで、アルゼナルの幼年部の子供達を連れてくるためだけに行くんだから」

 

 それが、向こうの世界の兵器だったとしても。彼は、自分たちが乗ってきた≪パラメイル≫はこっちの世界に置いて行った方がいいと考えているのだ。

 むやみやたらに兵器を持ち込めば、争いの種になる。少しでもその危険性を排除しなければならないのだ。安全に、子供たちを連れてくるためには。

 

「そうだけどさ、もしアルゼナルの人たちが襲って来たらどうすんのさ!?」

「私やアンジュちゃん、ヴィヴィちゃんがいれば大丈夫だと思うけど……」

「問題は、サラマンマン達ね」

「貴様! 何度も何度も無礼であるぞ!」

「やる気!?」

「まぁまぁ」

 

 と言ってナーガが剣を抜こうとしているところをアンジュもまた臨戦態勢を取った。この喧嘩っ早い性格、少し収めなければ彼女の寿命に影響する。そう、ドラえもんは思っていたそうだ。

 因みに、ナーガやカナメもまた、サラマンディーネの側近として≪龍神器≫に乗って向こうの世界に赴く予定となっていた。

 

「でも、アンジュさん達はともかくとして、ヴィヴィアンさんも帰るの?」

 

 静香がすぐそばにてライダースーツに身を包んだヴィヴィアンに聞いた。確かに、彼女の故郷はこの世界なのだ。ならば、彼女もまた一緒についてくることはないのに、そう考えても不思議はないだろう。

 しかし、ヴィヴィアンはなんて事のないようにいつも通りの笑顔で言った。

 

「そ! サリア達にお別れしにいかないといけないし!」

「そうなの。それじゃ、やっぱりヴィヴィアンさんも、この世界で暮らすのに決めたんですね?」

「うん! だって、お母さんさんがいるし!」

「フフ、そうですね」

 

 よかった。静香たちは安心した。薄々は勘づいていたことだが、ヴィヴィアンが真実を知って仲間殺しを続けるはずがない。ただ、自分の事を育ててくれた仲間たちの所に一度帰って、挨拶がしたいだけだったのだ。そのための、移動手段である≪パラメイル≫。道具と言う物の本来の使い方ともいえよう。

 

「特異点の準備ができました。出発します」

 

 と、その時だ。宮殿の方からサラマンディーネがラミアを連れて現れたのは。どうやら、ラミアはヴィヴィアンを見送りに来たらしい。少しの間だけとはいえまた離れることになる彼女を心配しているようだ。

 そんなラミアに対して、ヴィヴィアンはいつものように笑顔で言う。

 

「大丈夫お母さんさん! すぐ戻って来る! 今度、サリアやヒルダやロザリーやクリス! 私の仲間たちを紹介するから!」

「えぇ、楽しみにしてるわ」

 

 と言うと、ヴィヴィアンはラミアに頭を撫でられてから自身の≪パラメイル≫に騎乗する。そして、他の者たちも同じく。

 

「それじゃ毎度お馴染み、“タケコプター”!」

 

 ソレを見たドラえもんは、“四次元ポケット”からすでに名称だけは出ていた“ひみつ道具”の“タケコプター”を取り出すと、のび太たちに手渡し、彼らはソレを頭に付け、スイッチを付ける。すると、彼らの身体は徐々に徐々に浮かび上がり、ついに地面からその足が離れたのであった。

 

「それじゃ、行ってくるね! お母さんさん!」

「えぇ、気をつけて」

 

 ラミアの姿が遠くなる中、ヴィヴィアンは大きく手を振った。ラミアは、それに律儀に答え、ついに彼女の姿も宮殿の姿も見えなくなった。

 そして、この世界に来た時と同じ場所に来た時だった。

 

「特異点、開放!」

 

 サラマンディーネの一声で、空に≪シンギュラー≫。彼女たちの言うところの特異点が現れたのである。

 そして、その向こうにあったのは―――。

 

「ッ!?」

 

 攻撃を受けて、今にも炎上しそうな、≪アルゼナル≫の姿だった。




 映画皆勤賞“ひみつ道具”二つのうちの一つ“タケコプター”、ここで登場しました(因みにもう一つは当然“四次元ポケット”)。
 てか、ナーガさん。アンジュがサラマンディーネの名前を間違えるたびに武器を構えるのが持ちネタになってるネタ要因にされております。……どうしてこうなった?
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