【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter2 みんな、どこに行く?

 寝坊助の彼にとって、意外なことにその夢は目覚ましとなってくれたのかもしれない。のび太はすくと起きると、いつも着ている黄色いシャツに黒い短パンを履き、いつも通りに脱衣所にて歯を磨き、顔を洗いに行く。

 その隣にはそんな必要もないはずのロボットのドラえもんが同じ行動を取っているという珍妙な光景。

 そして、いつもの台所兼食卓に行き、母の玉子が作ってくれたいつものおいしい朝ごはん。目玉焼きとベーコン。それにキャベツを主体にしたサラダをさっさと食べると、もう一度二階の自分の部屋へと向かい、最後の持ち物の点検を行う。

 大丈夫。全部持っている。着替えに浮き輪に枕。おやつに漫画。今回の『二泊三日』の旅行にピッタリの物が全部、カバンの中に収められていた。確認を済ませたのび太はカバンを背負うと、ドラえもんに『早く早く』と急かす。

 『いつもはこんなに早くないのに』とぼやくドラえもんを玄関に連れて行くと、いつも履いている青色の靴を履き、一度、二度と床を蹴ってちゃんと履いていることを確認する。そして最後には、いつも通り。

 

「ママ! 行ってきます!」

「行ってきますぅ!」

 

 と、玉子に出かける挨拶を、ドラえもんと一緒にするのだった。それは、まるで兄弟のようにも見えた。

 玉子はその言葉に『気を付けるのよ』と声をかけると。のび太は家のドアを開けた。

 さぁ、冒険の始まりだ。

 

「みんな、準備はいい?」

 

 いつもの空き地。それは、彼らにとってはこの小さい箱庭の事だった。

 大きな、人一人が入ることも簡単な土管が三つ、そして人一人を影の中に隠すことができる木が一本に、夏の今は雑草がボーボーと生えて、辺り一面からはセミの鳴き声が聞こえるだけの空き地。

 一体だれが所有権を持っているかどうかもあやふやなような場所で、彼らはいつもいろんな遊びをしていた。野球や、サッカーや、おもちゃの鉄砲を使った拳銃コンテストなんてものもやったことがある。

 特に野球の時などはお隣にある神成さんという人の家に野球ボールが入り込んだり、時には縁側の窓ガラスを割って怒鳴られることがよくある。

 そんな空き地に、ドラえもん達五人は集まっていた。

 

「「「「OK!」」」」

 

 ドラえもんの言葉に、子供たち四人は口を揃えて言った。背中には皆それぞれに鞄を持って、まさにバカンス気分。特にジャイアンのカバンのでかさは、その体格もあって巨大に見えるのは気のせいではないだろう。

 そんな四人の姿を見たドラえもんは、自分の腹部についているポケット、“四次元ポケット”の中を探り始めた。

 “四次元ポケット”は、その名前の通り中には四次元空間と言うとても大きな世界が広がっており、そこにはたくさんの“ひみつ道具”と呼ばれている便利な道具が収められているのだ。彼らはいつも、それを使って色々な冒険をしてきた。そして今回も、冒険の幕を開けるのはその“ひみつ道具”であった。

 

「“どこでもドア”!」

 

 と言って、ドラえもんが取り出したのは“どこでもドア”。ピンク色をしたドラえもんよりも大きく、そして幅のあるドアである。その大きさ、そして彼が軽々と取り出したことから、“四次元ポケット”が一体どれほど便利な物であるのかが痛感できる。

 その“どこでもドア”を前にした四人の子供たちに対して、ドラえもんは聞く。

 

「で、どこの海にするの?」

「う~ん、そうだなぁ……」

 

 この“どこでもドア”は、その名前の通り地球上、いや地球から十光年離れた場所までを自由に行き来することができる道具であるのだ。使用する際には、扉に向かって『○○まで』と言ったり、または条件づけることによってそのドアが行き先にも現れたりする。時には念じるだけでその場所に連れてってくれる便利なドア。

 それをくぐれば、簡単にその場所に行くことができる。海外旅行だって朝飯前なのだ。このドアができたために未来では不必要となってしまった列車が出るなどの支障はある物の、しかしそれだけ便利な道具ということの裏返しでもある。

 話をのび太たちの方に戻すが、確かに、一口に海と言っても色々な海がある。日本を取り囲んでいる日本海や東シナ海、北東のほうにはオホーツク海がある。

 はたまた海外の方に目を向けると綺麗なサンゴ礁がたくさんあるオーストラリアのグレートバリアリーフ、ダイビングで有名になったモルディブ、はたまた―――。

 

「カニ舞台ってとこ行ってみようぜ!」

「ソレを言うならカリブ海だし、もう二回行ったでしょ?」

「そうだったけか?」

 

 カニ舞台、ではなく、カリブ海。北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の間に存在する海域で、こちらも大きなサンゴ礁やそのサンゴ礁に住む魚たちを見るためにダイバーがダイビングをする、観光地として人気のスポットだ。

 だが、スネ夫の言う通り、彼らはカリブ海にはいったこともある。それも二回も。その事については前回説明したため省くが、果たしてどこに行こうかと五人が考えていたところ、のび太が何かを閃いたように土管の上に昇って大きく手を広げて言った。

 

「ねえ、どうせなら海の上に僕たちだけの無人島つくろうよ!」

「えぇ!?」

「私たちだけの……」

「「無人島!?」」

 

 この言葉に、子供たちどころかドラえもんもまた驚きと言うか呆れと言うか、そんな顔を見せた。まさか、『無人島に行こう』ならともかくとして、『無人島を作ろう』と来るとは。

 しかし、実際に彼ら、というよりドラえもんとのび太は、二人で日本の海底に力を加えて一つの島を作ったことがあった。その時は日本の領土内に作ってしまったために日本領土として国に取られてしまったのだが。

 

「のび太くん、流石にそれは無茶がすぎるよ、でも無人島って言うのもいいかもしれない」

 

 その経験もあってもう一度ソレをやるという事に難を示した、というか同じことになる、あと時間がかかりすぎるなどの諸々の事情を考慮してあきれ果てたドラえもんの声とともに不満顔を見せたのび太。

 だが、確かに無人島を作るまではいかなくとも、無人島に行くと言うのはいいアイデアなのかもしれない。

 誰もいない島。誰にも荒らされていない森林。汚染されていない海。それは社会で疲れ果てている人間たちにとってどれほどの幸せをもたらしてくれるものであろうか。

 まだ子供である彼らにとって、そんな社会の現実なんて知ったことではないかもしれない。だが、それを抜きにしても無人島というのは人を一回り成長させてくれる環境で溢れている。

 ドラえもんは、のび太に土管から降りるように促し、“どこでもドア”の前に立つと言った。

 

「決定! 誰も人が住んでいない無人の島へ!」

 

 と言った瞬間だ。“どこでもドア”の隙間が一瞬光を放った。その光は、いつものソレとは全く違うのだが、炎天下でその異常にドラえもんが気が付くことはなかった。

 そして、まるで自動ドアのようにゆっくりと開かれて行くドアの向こうを見た彼らは―――。

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁい!」」」」」

 

 感嘆の声を上げながら駆け出して行った。そしてドラえもんがドアを閉めると、桃色のドアは空き地から消えうせる。

 まるで最初から、そんなものこの世界になかったかのように―――。

 

「青い空!」

「白い雲!」

「綺麗な砂浜!」

 

 と、口々にスネ夫、のび太、静香が言った。誰も言っていないが、背後にはうっそうとした森、そして大きな山が聳え立ち、まさしく誰の手も届いていない無人島のように、彼らの目には映った。

 

「よっし、早速泳ごうぜ!」

 

 と言ったジャイアンの言葉にまるで示し合わせたかのようにドラえもんは“四次元ポケット”の中を探り、ある道具を取り出した。

 

「はい! “きせかえカメラ”!!」

 

 その“ひみつ道具”の名前は“きせかえカメラ”。カメラの中に服の写真や絵を入れてそのまま人を撮影すると、写した人間の服装をカメラの中に入れているソレと全く同じものにするという、その名前の通りに着せ替え人形のように簡単に服を変えることのできるカメラだ。

 

「はい、泳いできて!」

「わぁい!」

 

 と言って、三人の男女は水着姿になると喜んで海の方へと走っていった。

 ―――三人?

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