【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter28 アルゼナル炎上

「なな、なんだなんだなんだぁ!?」

 

 ドラえもん達は、特異点を通って驚愕していた。本当だったら、特異点は昨日ドラゴンが現れた、≪アルゼナル≫よりももっと遠い位置に出現させるはずだったのに、それが≪アルゼナル≫のほんの真上に開いていたのだから。

 いや、それ以上に異様なことがある。

 

「≪アルゼナル≫の対空設備が動いてるわ!?」

 

 そうエルシャが言った。よく見ると確かに、≪アルゼナル≫がある土地の地面からは大砲や大きな銃器が見え、そこには人がいるように見える。ソレは彼女が言う通り、≪アルゼナル≫に用意されていた対空用兵装。もしもドラゴンが≪アルゼナル≫のすぐ近くまで来た時に撃退できるようにと用意された兵器が、動き出しているのだ。

 まさか、謀られたのか。だとしたらどっちがだ、自分達か、あるいはドラゴンの人間であるサラマンディーネがか。いや、違う。対空設備の狙いは、どちらかと言えば自分達とはまた違った方向、何かの機械が飛んでいる方向に向かっていた。

 よく見ると、ミサイルも飛び交っており、ソレを次から次へと落としている大砲の姿を見ると、ドラゴンとまた別の敵を想定しての攻撃なのだろう。でも、一体だれが≪アルゼナル≫に攻め入ったと言うのか。アンジュは、その攻撃が来た方向を見た。そこには。

 

「あの船は、確かミスルギ皇国の!?」

 

 そこにあったのは、紛れもない。自分が皇女を務めていた。自分がまだ人間だと信じ切っていた時にミスルギ皇国に配備されていた軍艦だった。いや、軍艦だけじゃない。そこから飛び立った兵器もまた、よく見ると以前何度か妹と一緒に父に連れていかれた軍事施設に配備されてあった。

 確か、≪ピレスロイド≫と言ったか。その中から高速に動かす刃を出し、他にも銃弾やワイヤー、更にはそこに電撃も流すことができる無人兵器。父からは、もしものために用意しただけで使う予定はないと聞かされていたが、しかしソレがなんで、それもこんなに空を埋め尽くすほどあるのか。

 ふと、アンジュはその≪ピレスロイド≫の群れの中に戦っている≪パラメイル≫の姿を発見した。しかし、ソレは自分が所属しているパラメイル第一中隊じゃない。確か、パラメイル第三中隊の機体だ、だが徐々に徐々に追い詰められている様子。

 一体、自分たちがいない間に何があったと言うのだろう。

 

『ヴィルキス! アンジュ! 聞こえるか!?』

 

 と、その時だ。通信機を通して、聞き覚えるのある声が聞こえて来た。

 

「司令!?」

 

 ≪アルゼナル≫司令であるジルだ。アンジュは叫ぶように矢継ぎ早に聞く。

 

「これは何!? どういう状況!? 何が起こってるの!?」

『見ての通りさ。人間どもが用済みになった化け物を始末しに来たのさ』

「なッ……」

「そんな……!」

 

 その言葉に、アンジュもエルシャも。何なら、後ろにいたサラマンディーネすらも驚愕していた。

 人間たちが、≪ノーマ≫を始末しに来る。確かにそんな状況、思い浮かべていなかったと言えば嘘になる。

 でも、だ。≪アルゼナル≫は確か多くの国が極秘でお金を出し合って、ドラゴンからの侵略から自国を守るために作られたシステムだ、と説明を受けたことがある。

 しかしその裏には自分たちの国で≪マナ≫を使い続けるための道具としての≪ノーマ≫を管理、利用するための工場だったはず。それを破壊しに来るなんて、どういった思惑があると言うのか。アンジュたちには分からなかった。

 

『ッ! 既に白兵戦も始まっている! ……仕方がない、お前達はアルゼナル周辺の敵を排除しろ!』

「くっ!」

「イェスマム!」

 

 その言葉にいち早く反応したヴィヴィアンは、自らの≪パラメイル≫を動かすと、数多くいる≪ピレスロイド≫に向って突っ走って行く。アルゼナル第三中隊が戦っている、その場所へと。

 それにしても、よく観察すれば出ている中隊はその六機の≪パラメイル≫だけ。サリアや、ヒルダが戦っている様子は見えない。一体どこにいってしまったのだろう。まさか、もう落とされてしまったのでは。そんな嫌な考えが彼女の中に横切った瞬間であった。

 

「アンジュリーゼ!」

 

 と、サラマンディーネが声をかけて来たのは。振り向くと、そこには閉じようとしていた≪シンギュラー≫を背にして浮かんでいた三機の≪龍神器≫の姿があった。アンジュは叫ぶ。

 

「サラマンディーネ! 逃げなさい! 私達の戦争に巻き込まれるわよ!」

 

 と。そう、このままでは何の関係もない彼女たちまで、自分たちの世界の厄介ごとに巻き込むことになってしまう。そして、もし彼女たちの誰か一人でも戦死してしまったら、エルシャと、エルシャが守ろうとしている幼年部の子供たちの居場所を向こうの世界に作ることが難しくなってしまう。

 そう考えたアンジュの言葉に、しかしサラマンディーネは笑って言う。

 

「ようやく、ちゃんと名前を呼んでくれましたね。アンジュ……そうはまいりません!」

 

 と言って、彼女たちはむしろアンジュの前に出て来て言った。その間にも閉じた≪シンギュラー≫。アンジュは驚いたように聞く。

 

「なんで!?」

「ミィを必ず連れて帰ると、そう、ラミアに誓いましたから」

「!?」

 

 ミィ、つまりヴィヴィアンを、必ず母親の所に返す。ただ、そのためだけに残ったのか。いや、そのために、残ってくれた。

 ようやく帰ってきた娘なのだ。ソレを、もう一度、いや今度こそ失うなんて悲劇、二度と繰り返してはならない。その目には決意のような何かをアンジュもまた感じていた。

 

「まったく、死んでも化けて出てこないでよね!」

「分かっています。私も、近衛中将として、絶対に負けません!」

 

 と言って、サラマンディーネ、アンジュ、そしてナーガもカナメも≪ピレスロイド≫の群れに向かって行った。

 残されたのは、エルシャとドラえもん達一行である。

 

「どうするのさドラえもん!?」

「やっぱりあの機体持って来た方が良かったじゃねえか!」

「そんなの今言ったってしょうがないだろ!?」

 

 と、ジャイアンの言葉に反論するドラえもん。確かに、こっちの世界がこんな状態になっているのならば自分だってあの機体を持ってきていた。でも、ことここにきてソレに気が付いたのなら、どうしようもない。そんな正論で言い争いをする彼らをよそに、動き出したもう一つの機体。

 

「ッ!」

 

 エルシャである。自分たちの置いてきた≪パラメイル≫から通信設備だけを外して持ってきていた静香がエルシャに聞く。

 

「エルシャさん何を!?」

「子供達を、幼年部の子供達を助けないと!」

 

 と言って、≪アルゼナル≫へと向かっていったエルシャ。そうだ。先ほど司令は言っていた。すでに白兵戦が始まっているのだと。

 であれば、最も危険となるのはまだ自分の身を守るすべも持っていない子供たち。エルシャは、その子供たちを助けるために単身≪アルゼナル≫へと向かって行ったのだ。

 

「待って!」

「待つんだ! 静香ちゃん! こんな中を生身で飛び回るなんて危険すぎる!」

 

 と、静香がその後を追おうとするが、ドラえもんが制する。確かに彼の言う通りだ。こんな弾丸が飛び交う戦場の中を、身体一つで飛ぼうなんて無茶が過ぎる。それはいくら彼女が優しすぎるからと言っても、止めないわけにはいかなかった。

 

「でも!」

「分かってる! 僕たちもエルシャさんに協力をしよう。でもその前にえっとえっと」

 

 と言いながら、ドラえもんは“四次元ポケット”の中を手当たり次第に探っていく。そして、見つけたのは。

 

「あった! これを持って行って!」

「これって!?」

 

 静香は、その“ひみつ道具”を始めてみたも同然だった。

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