【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter30 子供達の選択

『こちら静香。子供達を無事保護したわ。エルシャさんは、そのまま白兵戦を続けるって!』

「分かった。静香ちゃんはそのまま“透明マント”で、安全な海上へ避難を。“タケコプター”はフル充電してあるからそのまま遠くの島まで逃げれるはずだ」

『了解!』

 

 通信を終えたドラえもんと静香。静香は子供たちの安全を確保するために別の島に逃げるようにとドラえもんから指示を仰ぎ、彼の言う通り“透明マント”という、羽織ると透明になることができる“ひみつ道具”そして、前回も使用した“バリヤーポイント”も使用して安全に遠くの島に逃げることになった。

 

「どどどどうするのさドラえもん!」

「僕たちも、このままじゃ殺されちゃうよ!」

 

 と言っているのはスネ夫とのび太である。現在静香以外の四人はアルゼナルの陸地部分にある大きな山の陰に隠れている。しかし、上空から見た限りだと島自体が無人機によってかなりの被害を受けているし、尚且つ遮蔽物があまりない。おそらくここ自体も危なくなってくる可能性が十分にある。だから、二人がうろたえるのも無理はないだろう。

 

「大丈夫。どうやら、今襲って来ているのは無人機ばかりらしい。だったらやりようはある」

 

 と言って、ドラえもんが出したもの。それは、のび太たちにとっては懐かしいものと言っても過言ではない“ひみつ道具”だった。

 

「“スタークラッシュ”ゲーム! これの戦闘機に乗り込んで戦えばいいんだ!」

「そうか、これがあったんだ!」

 

 そう、それはかつて銀河を漂流して自分たちの星を探していたリアンたち宇宙少年騎士団とともに『アンゴル・モア』を打倒するために使用した“ひみつ道具”だ。本来ならば、その中で遊ぶだけの道具でしかない。だが、その入り口を開けたままにしていれば、中から戦闘機を引っ張り出して乗り込み、戦う事ができるのである。

 運が良いことに、≪今回も≫飛んでいる敵機は無人機であるようなので、戦艦を狙わない限り相手の命を奪う確率は非常に低くなる。故にドラえもんはその道具を出したのだ。

 

「でも、これビームしか出せないんだよねぇ? こんな乱戦状態でそれだけって大丈夫なのかなぁ? ねぇ、ジャイアン」

 

 と、ジャイアンに同意を求めようとしたスネ夫。確かに、この戦闘機は身軽で≪パラメイル≫よりも楽に乗れるものであるのだが、問題がある。武装が、ビームしかないのだ。故に、アンジュやサラマンディーネの乗っている機体より武装や破壊力に劣る。スネ夫はソレを問題視してるのだ。

 

「……」

「どうしたのジャイアン?」

 

 しかし、ジャイアンの方はと言うと、炎上する地面つまり≪アルゼナル≫から出る煙を見ながら何か考え込んでいる様子だった。

 そして、決意したかのように言う。

 

「悪いみんな、俺は残る!」

「えぇ!?」

 

 残る、という事はこの炎上する≪アルゼナル≫の中に入るという事か、そんな無茶な。そう誰もが思った時だった。ジャイアンは必死の目つきで言う。

 

「見ろ、いろんなところで爆発が起こって、火事が起こってるんだ! きっと、助けを待ってる奴がいるはずだ! そいつらを放っておけるか! 助けに行く!!」

「そ、そんな危険すぎるよ! 相手は兵隊なんだよ! 殺されるに決まっているよ!!」

 

 というスネ夫。そう、相手はプロの軍人なのだ。ソレを相手にして小学生がただで済むはずがない。それはジャイアンも、そしてドラえもんにも分かることだった。

 しかし、≪アルゼナル≫内部にいる人を助けなければならない。ドラえもんもそう思っていた。

 

「いや、確かに救助のほうも人を回した方がいい。ジャイアン。できる限りの“ひみつ道具”を“四次元くずかご”の中に入れて渡すから、それを使ってアルゼナルの人たちを助けて。もし危ない目に遭ったら静香ちゃんとおなじく、“隠れマント”を使うんだ」

「任されよう!」

 

 と言いながら、ドラえもんは“四次元くずかご”を取り出し、その中身のごみをその場に投げ捨てた。

 “四次元くずかご”とは、その名前の通りにゴミ箱なのだが、中に入れた物は上記のようにすぐに取り出すことができるため、“四次元ポケット”とほぼ同じ役割をしている道具とも言える。

 今回その中に、ドラえもんは“ひみつ道具”をありったけに入れると、“隠れマント”、武器である“空気砲”、“ショックガン”をジャイアンに渡した。

 

「僕とのび太くんとスネ夫くんは、さっき言ったとおり、“スタークラッシュ”の戦闘機で出る! 念のために二人にもある程度武器になりそうな“ひみつ道具”を貸そう!」

 

 と言って、ドラえもんが取り出したのは拳銃型で、衝撃波を放つことができる“しょうげき波ピストル”とどんな敵にも必ず命中する“アタールガン”。さらに“スモールライト”といった道具だ。

 

「分かった!」

「もう、こうなりゃやけくそだ!」

「皆、くれぐれも言っておくけど、これは敵を倒すためじゃない。誰かを助けるための戦いなんだ! 決して無茶をしないように!!」

「「おう!」」

「お、おう……」

 

 そう、これは戦争のための戦いじゃない。救助のための戦いだ。ドラえもんが念を押すと、のび太とジャイアンは元気よく、そしてスネ夫は心細そうに腕を上げた。

 

「ハァァァァ!!!!!」

「フッ! ハァァァ!!!」

 

 一方、上空ではアンジュやサラマンディーネたちが多くの≪ピレスロイド≫を落としていた。その数の多さというデメリットを、機体の性能、そして本人たちの実力でカバーできるのは、流石と言ったところ。

 特にサラマンディーネに関しては、実践に投入するのが初めての≪焔龍號≫を良く使いこなしていると言ってもいい。その所有している赤い光線を放つビーム兵器の威力は、他の≪パラメイル≫の持っているソレを凌駕する物だった。

 

「アンジュ……」

「あの痛姫さま、どっか行ったと思ったらこんな時に帰って来やがって!」

「おまけになんだ、あのパラメイルは!?」

 

 一方で、発進デッキの方で白兵戦、というより持久戦を繰り広げていた≪アルゼナル≫第一中隊はその様子を見て驚いたり唖然としたり、あと怒っていたりと様々な反応を示していた。

 特にサリアは、アンジュがヴィルキスを華麗に扱う様子を見て悲し気な表情を浮かべていた。

 今まで隊長としてドラゴンとの戦いを経験する中で何度も、アンジュがヴィルキスに乗って戦う姿を見て来た。でも、ドラゴンとの交戦がないで、客観的にみると、やはりその動きには目を見張ってしまう物がある。

 どうして、アンジュはあんなにヴィルキスを上手に扱えるの。どうして、私じゃダメなの。サリアは、ずっと、ずっとそう呟いていた。ずっとずっと、泡のようなつぶやきを。

 

「み、未確認機が、こんなに!?」

 

 一方で、彼女たちよりも先に出撃したことで無事に、とは言いづらいが戦闘に入れていたアルゼナル第三中隊の面々は危機に陥っていた。

 無理もない。今まで自分たちが戦って来たドラゴンとは、全然違う動きをして襲う機械の化け物なのだから。困惑するのも分かる。

 しかし、この乱戦状態の戦場で立ち止まってしまったこと。それが彼女の失策だった。

 

「ひっ!」

 

 第三中隊の一員であるイルマは、群がってきた≪ピレスロイド≫を落とすために銃を乱射する。しかし、そのどれもが当たることはなく、自分の≪パラメイル≫にワイヤーを括りつけられ捕獲され、身動きが取れなくなってしまった。

 

「た、助けてぇェェ!!!」

 

 そう叫びながら≪ピレスロイド≫に連れられてどこかに行ってしまいそうになるイルマ。できるなら彼女のことを助けてあげたい。しかし、この乱戦という危険地帯の中でわざわざ助けに来るような奇特な人間が。

 

「待ってて!!!」

 

 いるんだよなぁ、これが。

 “スタークラッシュ”ゲームの中に入り込み、戦闘機に乗り込んだのび太はしかし、そのコックピットを開けると、“しょうげき波ピストル”を使って彼女の機体に取り付いている≪ピレスロイド≫を一体ずつ、彼女を連れて行こうとしているので動き続けているにも関わらず正確に撃破していく。

 

「“ひらりマント”!!」

「す、“スモールライト”ッ!!!」

 

 さらに、彼女に群がろうとしていた≪ピレスロイド≫もまた。ドラえもんやスネ夫によって次々と撃破されていく。ドラえもんは戦闘機の下部につけたどんな攻撃でも跳ね返す“ひらりマント”で≪ピレスロイド≫の攻撃を跳ね返し、スネ夫もまた勇気を出してコックピットからその身を乗り出して“スモールライト”で近くにいたことごとくを小さくして無力化する。

 結果、イルマにとりついた、とりつこうとしていた≪ピレスロイド≫は全て殲滅されたのだ。

 

「たす、かった……?」

「凄い射撃精度ね!」

「のび太君の得意技さ」

 

 その射撃精度。移動している機体についている≪ピレスロイド≫を、≪パラメイル≫やソレに乗っているライダーに一切当てることもなく正確に撃ち抜いたのび太に、アンジュは賞賛を送る。そう、これが彼の特技である射撃だ。

 アンジュはここ数日彼と過ごす中で思っていた。もしも彼が、その優しさを無くし、いや、無くさざるを得なくなって軍隊にでも入ったら、きっととんでもない戦績を残すだろうと。

 でも、そんな世界が間違っているのは知っている。戦争をする。そんな愚かな世界はいらない。のび太を、戦争に参加させるような世界線にいさせたくない。本当は、こんな無人機との戦いですらも彼女にとっては不本意な事。

 のび太を、いやドラえもん達を絶対に人殺しにさせない。そんな覚悟を持って、アンジュはのび太たちのいる場所に向かう。

 

「大丈夫!?」

「貴方、確か噂になってた男の≪ノーマ≫!?」

 

 そう、イルマがのび太の言葉に返答した。そう言えば聞いたことがある。三日か四日ほど前に男の≪ノーマ≫が≪アルゼナル≫に来て≪パラメイル≫を乗りこなしているのだと。自分とは違う中隊、エース中隊である第一中隊に配属されたためその姿を見たのは本当に一瞬だけだったが、その逆に平凡すぎる顔は、覚えるなと言われる方が無理なほどだった。

 

「その機体じゃもう戦えない! こっちに飛び降りて!」

「え? でも! キャァ!」

 

 と、下の方から現れた戦闘機に乗った青いタヌキに言われたイルマは躊躇する。確かに自分の機体は、無人兵器の攻撃によってダメージを負って、もう浮いていることすらも困難と言っていいほど。戦線離脱するべきなのは分かっているのだが、しかしそんな珍妙なタヌキのいう事を聞いてよいのだろうかと。

 が、しかしそこに弾丸を一発、彼女の操縦席に打ち込んだ人間がいた。

 

「早くしなさい!」

「キャァァァァ!!!」

「全く」

 

 アンジュである。その勢いにひるんだイルマは、すぐさま≪パラメイル≫から下りる、いや落ちるとドラえもんの戦闘機に回収される。

 ソレを見たアンジュは再び戦闘に戻っていった。

 

「アンジュさん、乱暴だなぁ」

 

 とのび太は言いつつもある意味で彼女らしいと言わざるを得ない行動に苦笑いする。だが、確かにそこまでしなければ飛び降りる勇気なんて出ないのは確か。

 それに、ここで逃げることを促すのもまた、彼女の優しさの表れなのだろう。本人はきっとそうは思っていないだろうが。

 

「よし、さっきの子はもう大丈夫! 早く他の機体を落とすんだ!」

「イェスマム! じゃなくてイェスサー! も違くて……じゃあ、イェスたぬきさん!」

「僕はたぬきじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぃ!」

 

 とヴィヴィアンの言葉に叫んだドラえもん達は、次々と戦場を駆け巡るのであった。




 自ら志願したとはいえ、子供を兵士がたくさんいる場所に送るドラえもんの若干ヤベェ奴感が出てしまいましたが、まぁ原作でも“無敵砲台”相手にのび太に手榴弾渡して特攻したりしてましたし、まだ“ひみつ道具”を渡すだけマシですね。
 あと、子供向け映画なのに人殺してるシーンあることについてですが、考えてみれば大山版のび太の大魔境で殺害シーンなくても画面外で確実に死んでる犬人間が複数いるから、実は直接映すのはともかく画面に映らない形で殺害はセーフなのでは思い、前回のエルシャによる兵士の殺害シーンも脳内設定では画面外で行われてたと考えればギリギリセーフかなと思って書いたんですけど、小説ってやっぱり視覚的な情報を文章でしか伝えられないので、難しい者ですね……。
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