【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

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chapter31 真なり星歌

「っと、ここまでくれば大丈夫かしら……」

 

 静香は、羽織っていた“透明マント”を取ると、離島の一つに着陸した。そこは、≪アルゼナル≫からかなり離れている島で、絶対に敵の索敵範囲内に入らないような小さな島だった。本当はここで一度子供たちを“壁紙格納庫”から出した方がいいのかもしれないが、念のために戦闘が終わるまでは我慢してもらおう。

 

「皆無事かしら……」

 

 そう、戦闘をしているのだ。今もなお、あの場所で友達が、そして≪アルゼナル≫の仲間たちが。ほぼ一日、いや半日も一緒にいなかったメンバーが多数だが、それでもおなじ≪人間≫なのだ。心配しない方がおかしい。

 どうか、皆無事で帰ってきますように。そう彼女が願っていた時だった。

 

「ッ! 誰!?」

 

 背後にある草むらから、音がした。動物とか、そんなんじゃない。確実に人間の歩く音。そう感じた静香は、ドラえもんから預かっていた“空気ピストル”という小さな空気の弾を発射できる機械を指先に付ける。

 もしも相手がロボットに乗っていたらあまり効き目なんてない。しかしもし生身の人間であったのならば気絶させることができるほどの道具。彼女は、ソレを構えるとその人物が現れるのを待った。

 一発で仕留めなければ。相手は、もしかしたら戦闘に特化した兵士なのかもしれないのだから。ちゃんとその姿を現したときに、撃たなければ、倒すことはできない。

 そしてそれから数秒後、現れたのは―――。

 

「え、貴方は!?」

 

 彼女にとっては、意外過ぎる人間であった。

 

 ≪アルゼナル≫内部にある≪ジャスミンモール≫。そこは、その名前の通りジャスミンという女性が経営している販売所であり、そこでは色々なおしゃれアイテム、武器、衣装、その他もろもろ文字通りいろんなものが売られていた。

 この世界では≪マナ≫を利用することによって物の売買ができる。しかし、彼女たち≪ノーマ≫はソレができないため、≪キャッシュ≫という、日本と同じ通貨システムが利用されていた。でも、今の彼女たちにはそんなことをしている余裕はなかった。

 

「該当者、ありません。本当に殺すんですか?」

 

 目の前の兵士に、頭の後ろに手をやり、床に座らされていたのだから。兵士四人は武装しており、その銃で自分たちを殺すという話をしていた。ある≪ノーマ≫は言う。いつの日にかこんな日が来ると、思っていたと。

 自分達≪ノーマ≫という存在は、この世界にとっては不必要な存在。でも、この≪アルゼナル≫という場所を与えられ、そのうちに≪ノーマ≫という存在でもいいのかもしれないと思うようになっていた。

 確かに、毎日鬼のように働かされ、辛くて、苦しくて、逃げ出したくなる日々だった。でも、それでも≪ノーマ≫という自分にも居場所があるのだと、思わせてくれ、多くの仲間たちができた、そんな≪アルゼナル≫。

 でも、結局はただの≪ノーマ≫の集積場。化け物を集めるだけ集めてこき使い、役目を終えたら殺すだけのただの死体安置所。

 

「第一目標、アンジュリーゼ。第二目標ヴィルキス。第三目標メイルライダーズ、それ以外は処分」

 

 処分。そうだ、処分なのだ。殺すとか、殺されるとか、いう話ではなく、そもそも物として見られていた。だからこそ、処分。

 でも、それでもいいかなと思っていた。そこにいるのは、自分が赤ちゃんの頃から一緒にいて、大きくなってからも汗水を流して働いてきた仲間たち。彼女たちも、覚悟はできていた。

 だから、一人たりとも泣くことなく目をつむり、ある者はしかし仲間たちの最後を見ようと、恐ろしいことを承知で目を開けていた。

 大丈夫。怖くない。どうせいつかは死ぬのだ。それが今、このタイミングで来ただけ。

 大丈夫。怖くない。だって仲間が一緒に死んでくれるのだから。処分してくれるのだから。

 大丈夫。怖くない。もうこれで、働かなくて、このくそったれな故郷から離れられるのだから。

 大丈夫。怖くない。きっと―――。

 

「やれ」

 

 天国は、優しい場所だから。

 彼女たちに、銃口が向けられた。刹那。

 

「ドカン! ドカン! ドカン!! ドッカン!!!」

「ぐわッ!」

「うぉぉ!」

「え?」

 

 奇妙な声とともに、目の前の兵士たちが倒れていった。一体何が、そう思った時だった。

 

「おい、お前達、大丈夫か?」

「は、はい」

 

 現れたのは、オレンジ色の服を着た男。そう、ジャイアンである。

 彼は、その手に“空気砲”と言う前述した“空気ピストル”の上位互換とも言うべき“ひみつ道具”で兵士たちをなぎ倒したのである。

 無警戒であったとはいえ、小学生一人にやられる兵士もどうかと思うのだが、その分ドラえもんの“ひみつ道具”が優秀である証拠。そして、“隠れマント”を上手に使い、兵士たちのすぐ近くまで隠密行動ができたジャイアンの手柄である。

 

「よし、“チッポケット二次元カメラ”!」

 

 と、彼は“四次元くずかご”の中から一つのカメラを取り出した。そして、ソレを混乱の真っただ中にいる≪ノーマ≫の女の子たちに向けると、そのシャッターを押した。

 瞬間、カシャという音とともに女の子たちは消え、一枚の写真が、女の子たちが映った写真が現像される。

 この“ひみつ道具”、“チッポケット二次元カメラ”は、人や物などをそのシャッターで写すと、被写体が写真に取り込まれると言う道具なのだ。つまり、これを使用することによって安全に人々を避難させることが可能な“ひみつ道具”である。

 

「しばらく我慢してくれよな!」

 

 と言って、その写真を“四次元くずかご”の中に入れたジャイアン。この写真は、お湯をかけることによってその中にいる人や物を元に戻すので、それまでの間四次元空間の中で我慢してくれと語りかける。

 そして。

 

「ついでだ!」

 

 と言って、ジャイアンはその場にいた兵士四人もまた撮影し、その写真に向けて。

 

「しばらくそこで反省してやがれ!」

 

 と言うとこちらもまた“四次元くずかご”の中に入れる。今はまだ気絶しているだけだが、しかし起き上がった時にまたこの≪アルゼナル≫の人間を襲うかもしれない。だから、写真の中に封印しておいた方が得策だと考えたのだ。

 ある種ジャイアンらしくない、頭脳プレイとも言える。

 

「この、離せ! 離せぇ!!」

 

 一方、≪アルゼナル≫上空ではいまだに激しい戦闘が繰り広げられていた。その中で、第三中隊に所属するターニャがイルマのように≪ピレスロイド≫によって捕獲されそうになっていた。

 その瞬間。

 

「ハァァァァ!!」

「キャァ!」

 

 現れたのは、焔龍號に乗るサラマンディーネである。伸縮式ブレードの≪天雷≫にて、その≪パラメイル≫の装甲もろとも≪ピレスロイド≫を破壊していく。

 まったく、最初はミィ、つまりヴィヴィアンを無事に連れて帰る事を目標にしていたのに、今ではいっちょ前にこの世界の人間を守るために戦っているようだと彼女自身も思う。その理由は、やはり―――。

 

「ドラえもん殿!」

「よし! 回収完了!」

 

 彼らに、影響されたからだろうか。自分の命がかかる戦場であると言うのに、誰かの命を守ろうとするその姿に感化されたからなのか。ともかく、ターニャもまたイルマのように救出され、ドラえもんの“四次元ポケット”に収納される。

 今のところ撃墜された機体も、連れていかれた機体と言うのもない。のび太も、スネ夫も、臆病ながらも頑張って戦っているし、第三中隊所属の他の四機も、密集して互いに互いの死角を補って戦っている。そこに、ヴィヴィアンが加勢に入ったようなので、彼女たちは大丈夫だろう。

 アンジュやサラマンディーネ、そしてその側近二機に関しては言わずもがな。ドラえもんもまた救助作業を続けながら敵を倒し続けていた。

 が、どれだけ倒しても延々と増え続ける≪ピレスロイド≫。業を煮やしたアンジュが通信を入れる。

 

「ちょっと! サリア他数名なんで出てこないのよ!?」

『仕方ないでしょ! デッキが壊されて、出撃できないんだから!』

『あと他数名に入れるなこの痛姫!!』

「あぁ、もう!」

 

 デッキが破壊されて出撃できない。のならば、これ以上の増援は望めなさそうだ。それに引き換え≪ピレスロイド≫の数はどんどんと増えていっているし、どうすればいい。

 答えは簡単だ。

 

「ならば、戦艦を潰すのみです」

 

 そう、その≪ピレスロイド≫達が飛び出してきている戦艦を潰せばいいだけなのだ。

 

「潰すって!? どうやって!」

 

 しかし、アンジュは言った。ことここに置いてロボットを操っているのにどうやってと言うのも変と思うかもしれないが、問題なのはその戦艦の布陣している陣形にある。

 見たところ一隻一隻がかなり幅を取って布陣しているその陣形。一番大きな船を囲むようにして進むその陣形からして、いっぺんに倒すのは不可能に近い。

 かといって、一隻毎に倒していると先ほどからずっと出続けている≪ピレスロイド≫に捕縛される恐れがある。ソレを考えて、戦艦を潰すことに対してアンジュは異義を唱えたのだ。

 それに対して、サラマンディーネは言う。

 

「私に任せてください。ナーガ、カナメ! 援護を! アレを使います!!」

「サラマンディーネ様!?」

「ですがあれはまだ試し撃ちも!?」

「これが試し撃ちです!」

「ッ! 分かりました!」

「了解!」

「何をするの?」

 

 と、アンジュが問うた瞬間であった。≪焔龍號≫は空中で停止し、両手を広げた。そして、聞こえて来たのは―――。

 

「この歌!」

「あの夢で聞いた曲に似ている……」

 

 歌、である。ソレに反応したのはアンジュとのび太。アンジュにとって、その歌はとても大切な物。ミスルギ皇国に代々伝わる歌に似ていた。

 のび太にとっては、それはあの無人島に行く前日。自分たちがまだ自分たちの世界。自分たちの時代にいた時に夢の中で聞いた歌にそっくりだから。

 

「♪」

「真なり星歌を、知ってるのですか!?」

 

 サラマンディーネの言葉に何も返さず、彼女は歌い続ける。自分の歌を、自分のテンポで。その時だ。≪ヴィルキス≫、そして≪焔龍號≫が金色に光り始めたのは。

 いや、光り始めたのではない。その体色を完全に金色に染めた二機、そしてその≪メイルライダー≫たる二人は歌い続ける。自分たちの歌を、自分たちの声で、紡ぐ。

 そして≪ヴィルキス≫と≪焔龍號≫の両肩部にあった装置が起動し始め、そこからそれぞれ青白い光と赤い光が、まるでハリケーンのように渦を巻いて戦艦に向かって行ったのである。

 ソレにより、その旗艦を含めたすべての戦艦が文字通り≪塵≫と化し、海には大きな裂け目が、まるでモーゼが海を割ったかのような大きな裂け目が≪二本≫生まれる。

 そして、着弾点であろう二つの兵器の行き先には巨大な黒い塊のようなものが出現し、それが消えた瞬間。海に大きな穴が二つ、空いていたのであった。

 

「な、何よこれ」

 

 アンジュは、≪ヴィルキス≫の中で驚愕に顔を歪めていた。それもそうだろう。歌をうたっていたらいつの間にか自分の知らない武装が動き始めて、目の前の艦隊を吹き飛ばしたのだから。

 

「収斂時空砲。次元すらも破壊するとされているこの機体最高火力を出せる兵器。ヴィルキス、≪ラグナメイル≫に装備されているモノをコピーしたのですが、まさかここまでの威力とは……」

「しゅうれん、じくうほう……兵器って、これ……」

 

 こんなの、兵器も兵器、殺戮兵器じゃないか。そうアンジュは思っていた。すべてが吹き飛んだ。海も、海底も、そしてその上に浮かんでいた船も全部、全部無くなってしまった。自分は、また人殺しをしてしまった。今度は、この世界の人間を、殺したのだ。大勢、一体何人殺したのか、彼女自身も分からない。

 まさか自分の乗る機体にここまでの威力を出せる武器があって、それを知らなかったなんて、改めて考えても恐ろしいものがある。

 

「全く、酷い有様だな」

「え?」

 

 刹那、一機の機体が現れて、彼女に向けて光剣を振り下ろした。

 

「クッ!」

 

 アンジュは、なんとかその攻撃を受け流すと、機体本体を蹴って背後に離脱した。

 

「アンジュ!」

「なに!? 今の!?」

「いきなり出てきた!!」

 

 そう、いきなり出てきたのだ。目の前に。前兆も何もなかった。一瞬にして目の前が黒く塗りつぶされたと思ったら、いきなり光剣を振り下ろされたのだ。それに反応できたのはラッキーだったと言える。

 しかし、目の前の機体は一体。

 

「あれは、まさか!?」

 

 その時、サラマンディーネが何かに反応していた。よく見ると、その機体の肩に人間が乗っているようだ。金色の長髪の男。背はかなり高くて細身の美男子。

 けど、アンジュは気に喰わなかった。恐らく、本能的な物なのだろう。そんな直感で人を判断するのはどうかと自分でも思う。でも、その男の顔を見るだけでかなり気持ち悪くなってしまうのは確かだった。

 そう、その男こそ、全ての元凶。この破壊と殺戮を生み出し、全ての人間を裏で操る者の正体。深淵よりも黒く、最も人間らしい邪な欲望を持った邪心の邪神。

 

『エンブリヲ!!』

 

 その時、ジルの叫び声が聞こえて来た。




 あの歌の歌詞を書きたかったのですが、何度も何度も同じ小説で同じく歌を使うのはそれこそくどいかなと思ったので、あの歌が出てくるのは、残りあと二回だけになります。
 今回、確実子供向け映画アウトシーンを書くにあたり、どうすればいいのかと思案した結果……当該人物を映さない=出番皆無にすることで回避しました。よって、ある人物の出番がなくなりました。
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