【完結】映画 ドラえもんクロスアンジュ のび太と天使と竜の輪舞   作:牢吏川波実

36 / 64
 皆さんはこの答え、分かりますか?


chapter34 はったりかけたりできるけど、二度と取り戻せない物って?

「うわぁぁぁぁ!!!」

「のび太君!」

「のび太!」

「のび太!!」

 

 その瞬間、のび太の叫び声と共に、ドラえもん、スネ夫、そしてアンジュの声が響き渡った。海に落下していくのび太の声に対して、三人が一斉に声をかけたのである。

 

「そ、操縦桿が、効かないよ!!」

 

 そう、のび太は死んではいなかった。本能だったのだろう。エンブリヲがその剣を振り下ろしたその瞬間。確実にその剣は操縦席を捕らえており、のび太を殺そうとしていた。

 しかし刹那、彼はその背中をエンブリヲに見せたのだ。剣はのび太に当たることはなく、戦闘機の後部にあるエンジンに当たった。結果、奇跡的には助かったように見えるのび太。

 だが、どちらにせよこの高さから海に落ちたらコンクリートよりも固くなった海面に叩きつけられて木っ端みじんになる。何とかそれを阻止しようとのび太も頑張ってはいるもののエンジンが壊されたことによって操縦不能に陥り、どうすることもできないでいた。

 

「のび太殿! クッ!!」

 

 サラマンディーネはそののび太の姿をみてすぐに助けに行こうとした。しかし≪ピレスロイド≫が近づいて来てのび太に近づくことができなかった。それは他の機体も同じである。

 

「アンジュ!」

 

 そんな時だ。タスクはただ一人アンジュを救出するためにエンブリヲへと近づいていた。幸か不幸か、彼がアンジュの事しか見ていなかったが故に、彼女に近づくことができ、そして≪ピレスロイド≫による包囲を突破することができたのだ。

 アンジュは、そんなタスクに向って叫ぶ。

 

「タスク! 私の事はいい! だから、のび太を、あの子を助けてあげて!!」

 

 と。

 

「ッ! けど!」

 

 タスクは躊躇する。当然だ。自分が光と、希望とした女性が憎き一族の仇であるエンブリヲの腕の中にいるのだから。はやく彼女を助けなければ。そう考えるのは当然の事。

 しかし、アンジュにとって今は自分の事なんてどうでもよかった。

 タスクがアンジュの事を光と言ってくれたように、自分にとってもまた、のび太はドラえもん達の優しさは一種の希望のようなものになっていたからだ。

 だから、彼女は叫ぶ。

 

「良いから! さっさと行きなさい! じゃないとあの島でアンタがやった事全部ばらすわよ!!」

「やった事って、あれは事故で……」

 

 主に転びそうになって彼女の股間に頭を埋めたり、毒蛇の毒を吸い出すために彼女の太ももに吸い付いたりあと転びそうになってまた彼女の股間に顔を埋めたり、etcetc……。勿論彼自身が狙って、というか性的な意味を持ってそんな事をしようとしたことなんて一度もなかった。

 しかし、アンジュはその事を一切許していなかった。例え、タスクに助けてもらったことを感謝していたとしても。

 

「早く行く!」

「わ、分かった!」

 

 とにかく、言い訳ばかりをしているタスクにさっさと助けに行くように促した、というか命令したアンジュ。その勢いに負けて、タスクは急降下し、のび太のすぐそばに行く。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「君! こっちに飛び移るんだ! 早く!」

 

 というタスクの言葉を聞いたのび太は、何とか動くハッチをこじ開けるとそこから飛び出した。

 

「ッ!!」

 

 タスクは、そんなのび太に手を伸ばし、掴んだ瞬間に、ゆっくりとそのスピードを緩める。あまりにも勢いよく止まると、小学生ののび太の腕だ。脱臼、最悪腕が取れるなんてことになりかねない。

 そうならないために海面ぎりぎりまで機体のスピードを落として、彼を自分の後ろに乗せると、すぐに海の上を滑るように移動する。その瞬間、のび太が乗っていた戦闘機が落下してきて、爆散した。

 

「あ、ありがとう……えっと」

「俺の名前はタスク」

「タスク? あ、それじゃアンジュさんの彼氏さん?」

「か、彼氏? アンジュがそんなことを……?」

 

 と言うのはのび太の勘違いでもあり、あながち間違いとも言い切れない。実際にアンジュもまた最初は吊り橋効果的なアレでタスクに好意を寄せていて、日記で自分の事を光だと言ってくれたことで確かに、その心に恋心が産まれていたのだから。だが、彼氏であるとは確実に言えない間柄というややこしい状況でもある。

 まぁ、それは置いとくとしてだ。一番の問題は。

 

「全く、どいつもこいつも腹立たしい……なら、全部消し去ってやろう」

 

 と言って、エンブリヲは徐にその機体の向きをのび太たちの方向に向けると。

 

「♪~」

 

 歌を、歌い始める。

 

「永遠語り……? まさか!」

 

 アンジュは嫌な予感がした。いや、予感じゃない。これは、確証だ。その証拠に、先ほどまでは何もなかった。拡張されていなかった機体の肩部が開き、先ほどジュリオを含めた大勢の人間を殺めたヴィルキスと同じ武装が現れた。

 間違いない。この男はあれを使うつもりなのだ。

 

「だめぇ!」

 

 とアンジュは叫び、彼の頭に殴りかかろうとする。しかし。

 

「ッ! ッあぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

 エンブリヲは、アンジュの頭に触れた。その瞬間、体中を痛みが襲った。

 エンブリヲは、人間の身体に触れることによってその感覚を自由に操作する力を持っている。今彼は、歌いながら彼女の触覚が全部痛覚になるように彼女の肉体を変化させたのだ。それも、その痛みは五十倍になって帰ってくるという代物。

 

「やめ、てッ!」

 

 彼女は、それでも彼に殴りかかろうと手を挙げる。

 しかし。

 

「ッあぁぁぁあああ!!!」

 

 今の彼女にとって、自分の身体を撫でる風ですらも痛みだった。まるで全身をかまいたちに斬られているかのような痛み。耐えがたい苦痛。屈辱。そして、失う事の恐怖。

 それが今の彼女を覆い包んでいた。

 

「クッ! せめて遠くに、せめて威力を!! のび太君って言ったね! 息を吸って!」

「はいッ! はぁぁぁぁぁぁ……」

「行くよ!!」

「ッ!」

 

 その瞬間、タスクは、そのバイクと共に海の中にもぐったのである。少しでもその威力を弱めるために。そして少しでもエンブリヲの視界から逃れて、遠くに逃げれるようにと。

 しかし。

 

「♪~」

「止めてぇぇぇぇ!!!」

「ッ!」

「ッ!!!」

(お願い、間に合って!!!)

 

 その兵器の前には、全てが無意味だった。エンブリヲは、アンジュの感覚を元に戻すと、その叫び声を耳にしながら、あの殲滅兵器を放ったのである。

 のび太と、タスクがいる場所へと二筋の竜巻が電撃とともに襲い、そしてまるでブラックホールのような球体を海上に作る。そして、それが消え去った後に残ったのは―――。

 アンジュとサラマンディーネが放ったそれと同じように、大きく空いた海と海底の穴だけだった。

 

「の、のび太君!」

 

 その姿にドラえもんが。

 

「のび太!!」

 

 スネ夫が叫び声をあげる。

 

「のび太さん……!」

 

 そして、島の上にいる静香は祈るように手を合わせた。どうか、間に合いますようにと。

 

「え……」

 

 そして、その光は≪アルゼナル≫の内部で血だらけになりながらも幼年部の残りの子供を見つけて守っていたエルシャの目にも。

 

「!?」

「そんな……」

 

 戦闘中だったサラマンディーネやヴィヴィアンの目にも映っていた。

 

「タスク……のび太……」

 

 アンジュは、屈辱的にもエンブリヲの手の中でその光景を見ることとなってしまった。自分が、一番信頼を寄せていた男と、自分が一番守りたいと願った子供。その二人が消し飛ぶその姿を、一番いやな男の手の中で。

 

「そんな、のび太く、うわぁ!」

 

 そして、ドラえもんはのび太の身を案じてよそ見をしていた結果、数多くの≪ピレスロイド≫に掴まってしまい、戦闘機から無理やり連れだされ、ワイヤーで巻き取られる。

 

「止めろ! 離せ! ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ど、ドラえもん!!」

 

 その言葉も無人兵器には届くこともなく、ワイヤーから高圧電流が流れ始める。ドラえもんは確かに頑丈だ。しかし、そんな彼にも弱点があった。

 それが、電気。特に超高圧の電流を流されればどんな爆発でも壊れることがなかったドラえもんでもその機能を停止させてしまう。

 以前にも何度か壊れてしまう事があったが、そのほとんどが高圧電流を浴びせられたことによる故障であったのだ。そして、今回もまた、ドラえもんは耐えることのできない電流をその身に浴び、機能を一時的に停止させることになる。

 

「これで、全て手に入れた。さぁ、行こうわが妻よ……」

「ッ!」

 

 そして、エンブリヲはアンジュ、そしてその乗騎と≪ピレスロイド≫から解放されたドラえもんともどもその場から一瞬で消え、空中を飛び回っていた無人兵器たちはどこかへと退散するのであった。

 

「アンジュリーゼ! アンジュ!!」

「の、の、の……のび太ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 そして、その場には悲痛な声のサラマンディーネの、そしてスネ夫の声が響き渡るだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? ここどこだろう?」

 

「そうか、あの時……」

 

「僕、死んじゃったの、かな?」

 

「ママ、パパ、ジャイアン、スネ夫……静香ちゃん……」

 

「ドラえ……もん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。

 

「ク~イッ」

 

 懐かしい声が、彼の耳元で響き渡った。

 

「はったりかけたりできるけど、二度と取り戻せない物な~んナゾ?」

「はったり、かけたり? 二度と、取り戻せない?」

 

 どういう意味だろう。のび太が少しだけ考えている時だった。

 

「答えは……命?」

 

 その≪クイズ≫に対して、隣にいたタスクが声を上げた。その瞬間。

 

「クイ~ッ! ピンポン! ピンポン! ピンポン!」

 

 と、いう電子音とともに小さな破裂音。まるでクラッカーのようなものが耳元で聞こえた。

 自分は、とうとうおかしくなってしまったのか。それとも、走馬灯でも見ているのだろうか。

 楽しい楽しい、冒険の日々の走馬灯。だから、そんな声が聞こえて来たのだろうか。

 いや、違う。これは走馬灯なんて幻想的な物ではない。

 これは、そう。

 

「そしてもう一問。切っても切り離せない、絶対に無くならない友情を誓った人を、何て言う?」

「友……達……」

 

 もう一つ、懐かしい声が聞こえて来た。これは。

 

「正解だ……」

 

 現、実。

 ゆっくりと目を開けたのび太。そして、その目の前にいたのは。

 

「のび太!」

 

 金髪の、少年。そう、のび太の友達の一人。数々の冒険の中で出会った、一人の少年の姿だった。その少年の名前は―――。

 

「フロック!? それに……」

「久しぶり、のび太!」

「クルト!!??」

 

 フロックとクルト。数多くの冒険の中で知り合った、友達のうち二人が、ここに参上したのであった。




 のび太の宝島並びにのび太の秘密道具博物館(ミュージアム)のゲストキャラが特別参戦!
 クルトは最序盤で薄い伏線としか出てなかったからともかくとして、もしかしてフロックに関しては大きな伏線があったから分かったかもしれませんが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。